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フレーム生成や動画アップスケーリングなど新機能を実装した「AMD Software 24.1.1」が登場
WHQL(Windows Hardware Quality Labs,ウィクル)通過版となるAdre
さらに新GPUへの対応だけでなく,AMDが以前から予告していたドライバレベルのフレーム生成技術「AMD Fluid Motion Frames」(以下,AFMF)が正式にサポートされたことがトピックとなっている。また,Radeon RX 7600 XT発表時にアピールされていたドライバレベルの動画アップスケーリング機能も導入された。
なお,Adrenalin 24.1.1は,Polaris/Vega世代のGPU向けドライバも,久しぶりに同時リリースされた。ちなみにAMDは,海外メディアの取材に答える形で,Polaris/Vega世代GPU向けドライバは,メンテナンス状態に移行したことを明らかにしている。つまり,今後はPolaris/Vega世代GPU向けのドライバに,新機能が実装されることはない。一方で,バグやセキュリティホールへの対応は行われるとのこと。サポートが打ち切られるわけではないので,ユーザーは安心していいだろう。
というわけで,本稿ではRDNA世代以降の単体GPUおよびAPU向けのAdrenalin 24.1.1の機能を中心に概要をまとめていく。
ゲームを問わずにフレームレートを増やせるAFMF
まずはAFMFだ。すでに4Gamerでも何度か紹介しているが,AMDは超解像技術「FidelityFX Super Resolution」(FSR)の最新版「FSR 3」で,フレーム挿入技術によるゲームの高フレームレート化機能を提供済みだ。FSR 3は,NVIDIAの「DLSS 3」に相当する技術で,ゲーム側の対応が必須である。先行するDLSS 3は,NVIDIAによる積極的なゲーム開発者サポートの甲斐もあって,順調に対応ゲームを増やしているが,FSR 3は後発だけに本稿執筆時点で4タイトルしか対応していない。
ゲーム側の対応が必要なFSR 3に対して,ドライバソフト側で挿入フレームを生成することで,ゲーム側で対応することなくすべてのゲームでフレームレートを引き上げるとアピールしているのがAFMFだ。
AFMFの設定は,ワンタッチ最適化機能「HYPR-RX」に組み込まれており,HYPR-RXを有効化すると,自動的にオンになる仕様だ。もちろん,ゲームごとやグローバル設定でオン/オフを設定することも可能だ。ちなみに,AFMFを有効化すると遅延低減技術「Radeon Anti-Lag」も連動してオンになる仕様だが,これはAFMFが原理的に遅延を増大させるためと推測できる。
AMDは,AFMFによる効果の一例として,Radeon RX 7600 XTでAFMFを含むHYPR-RXを利用すると,最大97%ものフレームレート向上が得られるとアピールしている。
また,1月末発売予定のデスクトップPC向けAPU「Ryzen 7 8700G」やノートPC向けAPU「Ryzen 7040/8040」の上位モデルに統合されている「Radeon 780M」におけるAFMFの効果も強調している。Radeon 780Mは,携帯型ゲームPCでお馴染みのAPU「Ryzen 7 7840U」にも組み込まれているGPUだが,フルHD解像度でぎりぎりゲームをプレイできるかどうかという程度の性能なので,AFMFでフレームレートを引き上げることができれば確かに恩恵が大きいだろう。
なおAFMFは,DirectX 11および12対応タイトルで利用でき,V-SYNCをオフにしてフルスクリーンでゲームをプレイする必要があるとのこと。ボーダレスフルスクリーンを使用するタイトルは,Windowsの「設定」から,システム→ディスプレイ→グラフィック→「規定のグラフィックス設定を変更する」にある「ウインドウゲームの最適化」をオンにすることが推奨されている(※Windows 11のデフォルト設定ではオンになっている)。
ゲームを問わずにフレームレートを引き上げるAFMFは,聞くだけでは夢のような技術だが,ゲームエンジン側から映像の移動方向(モーションベクトル)を得られないので,不自然なフレームが挿入されてしまう可能性はつきまとう。また,先に触れたとおり,システム遅延の増大は避けられない。
どこまで実用的かは,タイトルによって変わると思うが,ゲーム中に[Alt+Shift+G]キーを押すことでオン/オフを切り替えられるので,効果を確かめつつ利用するかどうかを決めるといいだろう。
動画アップスケーリング機能はシングルディスプレイ環境限定
目玉機能の2つめは,ドライバによる動画アップスケーリングの機能だ。AMDによると,Windowsで再生するほぼすべての動画で,アップスケーリングを利用できるとのこと。動画アップスケーリングの設定は「ゲーム」タブの「グラフィックス」に用意されている。
ただ,現時点で動画アップスケーリングは,シングルディスプレイ環境でしか利用できないという地味に厳しい制限がある。ゲーマーの間でもマルチディスプレイ環境は珍しくないだけに,シングルディスプレイのみという制限は残念だ。
また,Chromium系のWebブラウザで動画アップスケーリングを有効化するには,「chrome://flags」(※Microsoft Edgeでは「edge://flags」)を開いて,「Media Foundation for Clear」というフラグをDefaultからEnabledに切り替える必要があるとのこと。シングルディスプレイ環境のRadeonユーザーは試してみるといいだろう。
ほかにも動画関連の機能強化では,1年ほど前のAdrenalin 23.2.1で実装された動画ストリーミング向け画質向上機能である「Pre-Analysis」および「Pre-Filtering」機能と,文字などのボケを改善する「Content Adaptive Machine Learning」(関連記事)が4K解像度まで対応できるようになった。また同時に,HEVCやAVC,AV1エンコーダの最適化も行われたとのこと。これらによって動画ストリーミングにおける画質が向上しているそうだ。
Adrenalin 24.1.1ではそのほかに,新作タイトルとして「龍が如く8」「鉄拳8」への対応が行われたほか,「Radeon Settings」に「Smart Technology」というタブが新設された。このタブでは,AIベースの音声ノイズ低減技術「AMD Noise Suppression」や,視線追跡を利用したプライバシー保護技術「AMD Privacy View」の設定を一括して行える。設定項目が増えたので,それを整理するための要素だろう。
●Adrenalin 24.1.1の対応GPU
- Radeon RX 7000シリーズ
- Radeon RX 6000シリーズ
- Radeon RX 5000シリーズ
- Radeon VII
- Radeon RX Vegaシリーズ
- Radeon RX 600・500・400シリーズ
- Radeon Pro Duo
- Radeon RX 7000M/7000Sシリーズ
- Radeon RX 6000Mシリーズ
- Radeon RX 5000Mシリーズ
- Radeon 600シリーズ(OEM向け)
●Adrenalin 23.1.1の対応APU
- Ryzen 7000シリーズ
- Ryzen 6000シリーズ
- Ryzen 5000Gシリーズ,Ryzen PRO 5000シリーズ
- Ryzen 4000Gシリーズ,Ryzen PRO 4000シリーズ
- Ryzen 3000シリーズ,Ryzen PRO 3000シリーズ
- Ryzen 2000シリーズ,Ryzen PRO 2000シリーズ
- Athlon PRO 200GEシリーズ
- Ryzen Mobile Processors with Radeon Graphics
- Athlon Mobile Processors with Radeon Graphics
- Ryzen PRO Mobile Processors with Radeon Graphics
- Athlon PRO Mobile Processors with Radeon Graphics
- Radeon 600シリーズ(Ryzen 6000 APU)
●Adrenalin 24.1.1が統合するコンポーネント(※比較対象はAdrenalin 23.12.1)
- Display Driver Version:23.40.02-240111a-399551C
-AMD -Soft ware -Adre nalin -Edi tion (←23.30 .13.01 -231 128a -398 226C -AMD -Soft ware -Adre nalin -Edi tion) - Radeon Settings:2024.0111.1250.2016(←2023.1128.1811.2005)
- 2D Driver:8.1.1.1634
- Direct3D:9.17.11.0260(←9.14.10.01526)
- OpenGL: 24.01.231107_282afec(←23.11.230906_ab0988b)
- OpenCL: 31.0.24002.92(←31.0.23013.1023)
- AMD Windows Driver: 31.0.24002.92(←31.0.23013.1023)
- Audio Driver:10.0.1.30
- Vulkan Driver:2.0.294(←2.0.283)
- Vulkan API:1.3.270(←1.3.264)
●Adrenalin 24.1.1における最適化
- 記載なし
●Adrenalin 24.1.1における新要素
- Radeon RX 7600 XTに対応
- AFMFを実装
- 動画アップスケーリング機能を実装
- 動画ストリーミングの画質を改善
- ユーザーインタフェースに「Smart Technology」タブを新設
- AMD推奨機能を自動で有効化する「AMD Assistant」機能を新設
- 「龍が如く8」「鉄拳8」に対応
●Adrenalin 24.1.1で解決した問題
- DirectMLを利用する一部のワークロードで,処理性能が低下することのあった問題
- Radeon RX 7000シリーズにNixeus製「NX-EDG274K」など特定のディスプレイを接続している環境で,ドライバアップデート後に断続的にグレーの画面が表示されることのあった問題
- 特定のUniversal Windows Platformアプリ(UWP Application)において,グラフィックスAPIの情報が「N/A」と表示されることのあった問題
- 「Warframe」プレイ中,新しいエリアをロードしたりミッション開始時に激しいカクつき(スタッター)が生じることのあった問題
- 「Call of Duty: Modern Warfare III」プレイ中,煙エフェクトの中に黒いゴミが見えることのあった問題
- Radeon RX 5500 XTなど一部のAMD製GPUで,「Starfield」をプレイすると,黒のテクスチャがちらつくことのあった問題
- 工場出荷時のリセットを設定してインストールを行うと,断続的にインストールに失敗することのあった問題(※Adrenalin 23.12.1まで無効化されていた工場出荷時のリセットがAdrenalin 24.1.1で復活した)
- さまざまなゲームで「Performance Metric Overlay」のFPS表示がN/Aになることのあった問題(※Polaris/Vega世代のみ)
- 「Radeon RX Vega 64」など一部のAMD製GPUにおいて,Radeon Softwareのチューニングタブの設定を変更すると,Radeon Softwareが反応しなくなったり,システムがクラッシュすることのあった問題(※Polaris/Vega世代のみ)
- 「Radeon RX 590」などの一部のAMD製GPUで,「Halo Infinite」や「The Last of Us Part I」などさまざまなゲームをプレイ中に,ドライバが断続的にタイムアウトすることのあった問題(※Polaris/Vega世代のみ)
- AMD Audioコプロセッサドライバが正しくインストールされないことのあった問題(※Polaris/Vega世代のみ)
●Adrenalin 24.1.1における既知の問題
- Radeon RX 6900 XTなど一部のAMD製GPUで,「Deathloop」のロード時間が長くなることがある(※Adrenalin 24.2.1で解決予定)
- Radeon RX 6800など一部のAMD製GPUで,「Dead Space」においてリアルタイムレイトレーシングのオプションを有効化すると,ゲームがクラッシュすることがある
- 「Overwatch 2」で初めてマッチをプレイするときに,激しいカクつき(スタッター)が生じることがある(※Adrenalin 24.2.1で解決予定)
- AMD SoftwareでAV1コーデックを選択して録画すると,音声と動画が同期しないことがある(※2024年第2四半期を目処に解決予定)
- Radeon RX 7000シリーズで「Oculus Rift S」を使用すると,表示が緑色になることがある
- Radeon RX 7900 XTXなどの一部のAMD製GPUで,Windows再起動後にストリーミングゲームプレイアプリ「Parsec」のホストアプリがクラッシュすることがある(※Adrenalin 24.2.1で解決予定)
- Ryzen 7 7840UやRyzen 5 PRO 6650Uなど一部のAMD製APUで,Microsoft Teamsを使用した会議中に断続的にループしたカメラ映像を表示することがある(※Vega世代を含むすべてのAPU製品が対象)
- 一部のハイブリッドグラフィックス構成で,AFMFが正しく表示されなかったり,AFMFが使用できないことがある(Adrenalin 24.2.1で解決予定)
- 複数のGPUを使用するハイブリッドグラフィックス構成の一部で,「Adobe Premiere Pro」のGPUアクセラレーションがグレーアウトして利用できないことがある(※Polaris/Vega世代のみ)
- 関連タイトル:
AMD Software
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