テストレポート
Razer,Xbox 360&PC向けの多ボタン&高機能ゲームパッド「Sabertooth」を発表。さっそく使ってみた
Razer直販サイト上の価格は79.99ドル。Onza TEおよびその下位モデル「Razer Onza」(以下,Onza)を持っている人は,特設ページで製品のシリアルナンバーを入力すると直販サイトから10ドル引きで購入できるキャンペーンも行われている。
Onzaシリーズ所有者向け割引購入用キャンペーンページ(英語)
ポイントとなるのは,Onzaシリーズよりさらに増えたボタンの数と,本体正面手前に用意された有機ELパネル,Onza TEから改良された「アナログスティックの調整機構」といったところだが,実際の使い勝手はどんなものか。
今回4Gamerでは,発表に合わせてSabertoothの製品版サンプルをRazerから入手できた。国内ではまだ発売予定が見えていないこのタイミングではあるが,Xbox 360でさまざまゲームのプレイに使ってみた結果を交えつつ,ファーストインプレッション的に製品を紹介してみたいと思う。
Onzaシリーズを踏襲した外観だが
大幅にパワーアップしたSabertooth
Onza TEやOnzaから引き続き,Xbox 360の公式ライセンスを得ているSabertooth。その旨がはっきりと謳われる製品ボックスを開けると,取り扱い説明書と大きなポーチが現れるのだが,Sabertooth本体とケーブルなど一式は,このポーチに収められている。
大柄のポーチが用意されているのは,自宅だけでなく,外出先やゲーム大会で使うことも想定されているためだろう。少々かさばるが,むき身で持ち歩くよりも故障するリスクが低くなるので,嬉しい配慮と言える。
ポーチの内容物。ゲームパッドにしてはかなり豊富だ。なお,ゴム製カバーとアナログスティック用ラバー製グリップキャップは写真右端の簡易ケースに入っていた |
本体向かって右側のグリップ部に,Razerのコーポレートマークがプリントされている。なかなかセンスがいい |
- Sabertooth本体
- トルクスドライバー
- ゴム製カバー×2
- クイックリリースコネクタ付きケーブル
- アナログスティック用ラバー製グリップキャップ×2
Sabertooth本体の基調色は,Razer伝統ともいえる黒。本体はほぼ全面的に滑り止め防止用のラバーで覆われている。実際に手にとってみると,スベスベとした手触りがあり,指紋がベタつくといったことは一切ないのだが,滑り止め加工の“目の粗さ”がXbox 360パッドよりも細かいため,体感的にはわずかながらフィット感が薄れている気がした。とはいえ,使用者の好みの問題が大きく関わる点でもあるので,「あくまでも筆者の感想である」と括弧書きで強調しておきたい。
重量は,本体単体で実測約206g。クイックリリースコネクタ付きケーブルを取り付けた状態では同290gだった。参考として,筆者の手元にあるXbox 360用ゲームパッドの重量を実測してみたので示しておくが,なんとなくゴテゴテと重そうに見えるSabertoothが,実は有線のXbox 360パッドより軽いというのが分かると思う。この点は高く評価してよさそうだ。
- Xbox 360 Wireless Controller SE(リチャージブルバッテリーパック込み):約296g
- Xbox 360パッド:ケーブル込み約320g,ケーブルを重量計からどかした参考値約210〜215g
- Onza:ケーブル込み約311g,ケーブルを重量計からどかした参考値約182〜188g
Xbox 360にはない6ボタンが追加されたSabertooth
6ボタンには何を割り当てるのが正解か
さて,ようやくお待ちかねの入力系,そして本体正面手前の有機ELパネルである。
まず入力系からだが,Xbox 360公式ライセンス品ということで,Xbox 360に用意されているボタンは当然のことながらすべて用意されている。そのうえで,バンパーボタン([LB]/[RB])とアナログトリガー([LT]/[RT])の近くに[M1][M2]のMulti-Function Button(以下,MFB)が左右1個ずつ置かれるというのはOnzaシリーズから変わっていないが,Sabertoothではさらに,本体背面にMulti-Function Trigger(以下,MFT)が2個用意されるのだ。
MFTは2つ用意され,1つあたり2系統の入力が可能で,結果[M3]〜[M6]ボタンとして機能するため,ゲームの操作に使えるボタンの数はXbox 360パッド比で6個,Onzaシリーズ比で4個増えていることになる。
Sabertoothを上側から見たカット。バンパーボタンとアナログトリガーの近く,本体中央寄りのところへ[M1][M2]のMFBが用意される |
Onza TEのレビュー記事より再掲。Onzaシリーズではバンパーボタンとアナログトリガーの,文字どおり「間」に[M1][M2]が置かれていた |
なお,有機ELパネルを左右から囲むように置かれる2ボタンは[Profile][Program]ボタン。いずれも本体のカスタマイズに関連したものだ。
- 有機ELパネルの向かって左にある[Profile]ボタンを押し,使うプロファイルを選択(※プロファイルは2つ。[Profile]ボタンを押すごとに1と2で切り替わる)
- プロファイルを選択したら,有機ELパネルの右に置かれた[Program]ボタンを2回押す
- 有機ELパネルの表示がRazerロゴから「program mode」に変わるので,設定したいMFBもしくはMFTを押しっぱなしの状態で,押しっぱなしにしたMFBもしくはMFTに割り当てたいボタンを1回押す
- Sabertoothが振動するので,押しっぱなしにしていたMFBもしくはMFTから指を離す
- [Program]ボタンを押す(※有機ELパネルの表示はRazerロゴに戻る)
今回は登録の模様をムービーにしてみたので,興味のある人はチェックしてもらえればと思う。
「Xbox 360用のゲームタイトルで使うボタンはXbox 360パッドに用意されるボタンやトリガーの数を超えないわけで,なぜ6ボタンへ重複してボタンを登録しなければならないのか?」と思う人もいると思うので説明しておこう。たとえばFPSやTPSをプレイする場合,視点を動かす右アナログスティックの操作をしながら同時に[A/B/X/Y]ボタンを押すのは極めて困難だ。
そこで,MFTやMFBに[A/B/X/Y]ボタンを割り当ててしまえば,アナログスティック操作に干渉されず使用できるようになる。
ちなみにMFBだが,先ほど比較写真でも示したとおり,配置がOnzaシリーズから変わっている。OnzaシリーズのときはMFBとバンパーボタンを押し間違えやすかったが,Sabertoothでは大きさと配置が変わったことで,“誤爆”の危険が低下している。これにより,使い勝手はさらに向上したといえるだろう。
一方,MFTの[M3]〜[M6]だが,まず,割り当てられるボタンの数が増えるメリットは間違いなくある。たとえば「Battlefield 3」だと,Xbox 360パッドでは[Back]ボタンに「スコア表示」と「スポット」の機能が割り当てられており,これらを利用しようと思った場合には左アナログスティックから親指を離さねばならないのだが,Sabertooth背面のMFTに[Back]ボタンを割り当てると,移動中でもスコアの表示や敵のスポットが可能になる。これは大きなアドバンテージだと述べていいだろう。
しかし,4ボタンすべてを使おうとすると,[M3][M4]を押すとき,本体背面を支える中指を上方向へ大きく動かす必要もあることは気になった。「Call of Duty: Black Ops 2」で慣れるべく努力したのだが,結局最後まで(上段に用意される)[M3][M4]の操作には慣れず,MFTは[M5][M6]のみを割り振ることになったくらいである。
アナログスティックの調整機構はスマートに
限界を超えた高感度にも設定可能
Onza TEは,Xbox 360パッドよりも抵抗が弱く,ピーキーなアナログスティックをあえて採用しつつ,ダイヤルを回すと抵抗感そのものを強くできるというのが,大きなウリだった。だがSabertoothで「抵抗感調整ダイヤル」は用意されていない。アナログスティックの抵抗は,Xbox 360パッドと同等になっている。
そんなSabertoothで実装されたのが,アナログスティックの感度調節機能だ。
アナログスティック感度の初期値は「00」で,「−10」から「10」まで,マイナス方向,プラス方向へそれぞれ10段階用意されている。数値をマイナス方向へ振ると感度が下がり,プラス方向へ振ると高くなる。
ここでFPSやTPSの話をすると,こういったジャンルにおいて,アナログスティックは,倒した角度に応じて移動速度や旋回速度が変わる仕組みになっている。FPSにおける視点旋回速度を例に続けると,少しだけ倒せば視点はゆっくり旋回し,大きく倒せば速く旋回する。
おそらくSabertoothでは,内部処理で,アナログスティックの“遊び”(≒アナログスティックが反応する傾きの幅)を調整しているのだろう。いずれにせよ,アナログ判定の幅を好みのところへ設定できるわけで,ユーザーによっては大きなメリットを得られるかもしれない。
話が多少前後するが,設定方法も確認しておこう。
設定したいプロファイルを選んで,「program mode」にするところまではMFBやMFTの設定と同じだが,今回は,設定変更したいほうのアナログスティックを押し込む。すると,有機ELパネルの表示が「ras sens: 00」(もしくは「las sens: 00」)と表示されるので,方向キーの上下で任意の値を選び,再びアナログスティックを押し込む。Sabertoothが振動したら,最後に[Program]ボタンを押せば設定完了だ。
こちらも一連の流れをムービーでまとめてみたので,チェックしてもらえればと思う。
基本操作用のボタン類はどうか?
OnzaやXbox 360パッドと比較してみる
Xbox 360パッド互換となる基本的な入力系もチェックしていこう。
まずアナログスティックだが,Xbox 360パッドやRazer Onzaシリーズで,指を置く場所は凹んでいるだけで,滑り止めのようなものが用意されていない。これに対してSabertoothのアナログスティックは,指を載せる部分のラバーコート部が粗い加工になっていて,目に見えるほどの凹凸により,グリップが格段に増している。
さらに,「それでも足りない」という場合は,黄緑色のゴム製グリップキャップを装着すると,さらにグリップ力を高められる。キャップを取り付けるとアナログスティックの高さは若干上がるが,筆者としてはこのキャップを付けた状態のほうが扱いやすく感じた。
Sabertoothのアナログスティック(左)。指を載せる窪みの目が粗く,滑り止めとして大いに貢献している。カバーキャップは指を載せる部分にハニカム状の滑り止めがあり,かつ,指を載せる面が広がることで,操作性がさらに向上する(右) | |
Sabertoothのアナログスティックにキャップを付ける前(左)と後(右)で高さを比較したカット |
Onzaシリーズだとボタンの高さが約1mm程度だったのが,Sabertoothで2mm強となったことが影響している……のかどうかはなんともいえないが,Onzaで批判の的になっていた「[A/B/X/Y]ボタンのヘタりやすさ」は,1週間程度,がんがん使い込んだ限りでは感じられなかった。国内発売時の正式なレビューで,この点はアップデートしたいと思う。
なお,[A/B/X/Y]ボタンは通電時に光る。このあたりはRazer製品らしいところだ。
で,使いやすいのかどうかだが,複数のアクションタイトルで試したところ,3つの問題点に気づいた。具体的には以下のとおりだ。
- 左手親指のどの部位で操作するかによって使用感が大きく変わる
親指の先端を方向キーに置いておき,滑らすように押しこむ操作方法の場合,方向パッド同士の間隔と高低差にギャップがあるため,指先にひっかかりやすい。親指の腹や親指の第一関節といった,接地面が大きな部位で操作するなら,ボタン間のギャップを気にせずコントロールできるのだが,細かい操作は難しい印象だ - ボタンのストロークが長く,スイッチが硬い
スイッチが反応するまでに要する押し込みでのストロークが長く,その抵抗感も一般的なゲームパッドより強め。耐久性を重視した結果だと思うが,格闘ゲームによく見られる「,あるいはといった,横方向の入力を素早く2回行うときに,失敗しやすい。使い込んで慣れられれば問題ないはずだが,筆者は原稿執筆時点でもまだ難を感じている - セパレート型がゆえに,斜め入力が難しい
いわゆる「波動拳」や「昇竜拳」といった入力は入るが,入力方向を2回転させる「ファイナルアトミックバスター」や,複雑なコマンド入力となる「レイジングストーム」だと,筆者にはハードルが非常に高く感じられた
普通にゲームをプレイするだけならとくに問題ないのだが,方向キーを多用するアクションタイトルや格闘タイトルでは,Onzaシリーズよりは数段マシになったものの,まだやや難しいというのが筆者の見解だ。慣れられるかなと思いいろいろ試してみたものの,格闘ゲームを遊んでいるときは,自然とアナログスティックに指が伸びてしまった。
[LB][RB]のバンパーボタンは,Xbox 360パッドと比べて丸みが抑えられており,指を置いたときの設置面が広く取られているのが好印象だ。
Hyperesponse仕様となる[A/B/X/Y]ボタンのカチカチ感は好みが分かれそうだが,筆者は使いやすいと感じている。
Razer Onzaから確実に進化
ハードコアゲーマーなら一見の価値あり
アナログスティックの感度調整機能は,倒した角度によって可変する旋回速度を一定にしたいという人にはうってつけの機能だ。ただし,ゲーム上の設定に体を馴染ませて遊ぶタイプの人だと不要だろう。これがメリットになるかどうかは人によると思う。
一方,セパレート型の方向キーは確実に人を選ぶ。Razerは格闘ゲーム向けにアーケードスティックを準備していることから(関連記事),“そういうこと”なのかもしれないが,少なくとも格闘ゲームには不向きだ。また,本文で何度も繰り返したが,Onzaの発売後,比較的早いタイミングで流通した個体で批判の的となった,アナログスティックや[A/B/X/Y]ボタン,アナログトリガーの耐久性に関して,現時点で評価を下すことはできない。
なので,国内発売まで,筆者は使い続けたうえで,耐久性を判断してみたいと思うが,少なくとも箱から出した直後の完成度は相当に高いといえる。今回はXbox 360でのみ試したが,XInput対応タイトルであればPCでもまったく問題なく利用できるので,PC用のゲームパッドとしても,有力な選択肢となるのではなかろうか。国内発売の発表を楽しみに待ちたい製品だ。
Razer Sabertooth Elite Gaming Controller for Xbox 360製品情報ページ
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