レビュー
Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト
●Razer BlackWidowシリーズの国内ラインナップ第一弾(2014年4月22日発売予定)
- Razer BlackWidow 2014:
緑軸,英語配列,価格1万4256円(税込) - Razer BlackWidow 2014-JP:
緑軸,日本語配列,価格1万4256円(税込) - Razer BlackWidow Ultimate 2014:
緑軸,英語配列,価格1万9332円(税込) - Razer BlackWidow Ultimate 2014-JP:
緑軸,日本語配列,価格1万9332円(税込) - Razer BlackWidow 2014 Stealth:
オレンジ軸,英語配列,価格1万4256円(税込) - Razer BlackWidow Ultimate 2014 Stealth:
オレンジ軸,英語配列,価格1万9332円(税込) - Razer BlackWidow Ultimate 2014-JP Stealth:
オレンジ軸,日本語配列,価格1万9332円(税込)
果たして新型の緑軸&オレンジ軸で,Razer BlackWidowは何が変わったのか。今回4Gamerでは,日本語配列で緑色LEDバックライト付きの最上位モデルから,緑軸の「Razer BlackWidow Ultimate 2014-JP」とオレンジ軸の「Razer BlackWidow Ultimate 2014-JP Stealth」を入手できたので,発売直前となるこのタイミングでテスト結果をお届けしてみたい。
デザインと機能は2013年モデルそのままに
キースイッチをRazer独自のものへ変更
北米のIT系メーカーで流行している“バージョン表記を入れない病”にかかったのか,Razerは,BlackWidowの新型に「2014」表記を付けていない。しかし,上で示したとおり,国内販売代理店であるMSYは2014表記を追加しており,分かりやすくなっているため,本稿でも以下,入手した2製品は「BlackWidow Ultimate 2014」「BlackWidow Ultimate 2014 Stealth」と表記したいと思う。
つや消しの黒で統一された上面とキートップ,そして緑色LEDバックライトの搭載は完全に同じ。[Windows]キーのWindowsアイコンが,2013モデルだとWindows 7のスタートボタン的だったのが,2014モデルでWindows 8のスタートボタン的になったのが,外観から見分けるための唯一の違いと言えるかもしれない。
10キーの上部は一見何もないように見えるが,つや消しされた表面の下にLEDインジケータが仕込まれている |
メインキーボードの左端に[m1]〜[m5]キーを搭載。このキーを含め,ほぼすべてのキーをカスタマイズできる |
なので,キーボード製品としての基本仕様をもう少し詳しく知りたい場合はBlackWidow Ultimate 2013のレビュー記事を参照してもらえればと思うが,復習がてら念のためおさらいしておくと,底面部のサイズは実測で約470(W)
キートップのデザインにはステップスカルプチャ方式が採用されている。キートップの高さは[Space]キーで7mmほどだ。
この理由だが,キースイッチの変更による可能性はある。もちろん,安定性向上のため。内蔵する錘(おもり)を重くしたという可能性も考えられなくはない。
実際,重量のおかげで安定感は極めて良好といえ,少なくとも筆者が使った限り,スタンドを畳んだ状態はもちろんのこと,立てた状態でも,ゲームプレイ中にガタつくことはまったくなかった。従来モデルでも十分な重さがあったので,この重量化が従来製品比で明確なメリットを生んでいるとは言わないが,安定感があるのはよいことだ。
“Razer独自”の緑軸&オレンジ軸は
中国Kaihua製のカスタムモデルか
以上,BlackWidow Ultimate 2014とBlackWidow Ultimate 2014 Stealthは,2012モデルから,キースイッチを交換しただけの製品と述べても間違いではないわけだが,では,唯一にして最大の特徴である,Razer独自の緑軸スイッチとオレンジ軸スイッチとは,いったいどんなものなのだろうか。キートップを外して,スイッチに寄って撮影したのが下の写真だ。
軸のすぐ近くに「RAZER」の刻印があるが,それとは別に,あまり見慣れないロゴマークがあるのも目を引く
ではこの謎のマークは何かという話になるが,調べてみたところ,これは中国Kaihua Electronics(凱華電子,以下 Kaihua)のロゴマークのようだ。
Kaihuaはマイクロスイッチを手がけるメーカーで,最近はCherry MXとそっくりの――誤解を恐れず言い切ってしまえば“パチモノ”の――メカニカルキースイッチを手がけ,それが一部のメーカーで採用されている実績がある。あくまでも想像だが,「Cherry MXと似たようなキースイッチを作れるのであれば,Cherry MXをカスタマイズしたようなキースイッチも作れるはず」と,RazerもしくはKaihuaが考えて,それを実行に移した結果が,今回の緑軸とオレンジ軸なのではなかろうか。
いずれにせよ,緑軸とオレンジ軸にはRazerの刻印もあるので,Razer製以外のキーボードで採用されることはないのではなかろうか。
青軸より浅い緑軸の操作感は青軸とほぼ同じ
茶軸より浅いオレンジ軸は今までにない操作感
オリジナルキースイッチの出自(?)が分かったところで,緑軸とオレンジ軸それぞれのスペックをまとめつつ,実際に使ってみよう。
■緑軸(BlackWidow Ultimate 2014)
公称の押下圧は50g。錘(おもり)を使った実測でも45gでは沈まず,50gで沈み込んだので,だいたい公称どおりと述べてよさそうだ。Cherry MX Blueも押下圧は50gなので,この点は変わっていないことになる。
一方,キーストロークは公称約1.9
筆者の手元にあるBlackWidow Ultimate 2013(のCherry MX Blue)スイッチと比べると,まず,公称値が変わっていないキーの重さはほとんど同じ。キータイプ時に指先が感じるクリック感,そして耳で聞こえるクリック音は,BlackWidow Ultimate 2013からほとんど変わっていない印象だ。先のBlackWidow Ultimate 2013レビュー時とは撮影した環境が異なるため,下に示したムービーと比較すると違った印象を受けるかもしれないが,筆者の耳で聞こえる音は非常によく似ており,「違うと言われれば違うかもしれない」程度の違いしかないように思われる。
ちなみにこれは,Cherry MX Blueと同じように,クリック音が「チッチッチッ」と耳に付くことと同義でもある。世の中にはこのクリック音が好きな人もいるので,全面的に否定することはしないが,かなりうるさいので,人を選ぶのは確かだろう。
一方,キーストロークの公称値で0.3mm浅くなったスイッチは,体感でも明らかに浅くなっている。BlackWidow Ultimate 2013だと1.5mm程度でスイッチがオンになるのに対し,BlackWidow Ultimate 2014ではこれが実測約1.2mm。この0.3mmという違いは,実際に打鍵してみるとすぐに気づくはずだ。
浅く,しかもスイッチを押したとき指先にかかる適度な抵抗と音のおかげで,使い始めの“誤爆率”は低い。ぱっと使って使いやすいキーボードになっているといえるだろう。また,スイッチが入るポイントが浅いので,慣れてくると,従来のCherry MX Blueスイッチ採用モデルと比べて,やや高速に操作できるようになった印象がある。自分の腕が上がったように感じられるのは気分がいい。
ただ,キーの重さと動作音があまりにも似ているため,BlackWidow Ultimate 2013と比べると,新鮮味がなかったりもする。
■オレンジ軸(BlackWidow Ultimate 2014)
オレンジ軸は,「スイッチがオンになる部分に明確な手応えがなく,クリック音もなく,押下圧は一定」というタイプだ。BlackWidow Ultimate 2013 Stealthで採用されていたCherry MX Brownだと,「押下圧は一定でクリック音はないが,スイッチがオンになる部分にわずかな手応えがある」タイプだったので,特性は若干異なる。
Razerの示しているスペック比較だと,明確にCherry MX Brown系なのだが,どちらかといえば「押下圧が一定で,スイッチがオンになる部分に手応えも音もない」タイプであるCherry MX Redに近いキースイッチと言えるのではないかと思う。
公称の押下圧(=バネ圧)は45gながら,錘を使った実測だと,45gでは沈まず,50gでは沈んだので,その間といったところ。錘だとなかなか公称値どおりの値は出ないことも踏まえると,だいたい公称値程度の押下圧と述べていいのではなかろうか。
ちなみに,先ほど「似ている」と述べたCherry MX Redだと,公称の押下圧は45gで,キーストロークは2.0mm
残念ながら筆者の手元に日本語配列版BlackWidow Ultimate 2013 Stealthがないので,従来製品との比較は行えないが,Cherry MX Brownスイッチ採用のダイヤテック製キーボード「Majestouch 2 Camouflage Tenkeyless」(型番:
実測してみると,手元にあるキーボードに搭載されたCherry MX Brownは,1.5mm程度押し込んだところでスイッチがオンになるが,それに対してBlackWidow Ultimate 2014 Stealthのオレンジ軸だと1mm強といったところだ。測定誤差を踏まえても0.3mmは確実に違いがあるはずで,だから体感できるのだと思われる。
軽いバネで,浅い距離からスイッチが入るため,最初は“誤爆”が増え気味になる。指が軽く当たっただけでもキースイッチが反応するためで,その意味でいうととっかかりはあまりよくない。使いこなせるようになるまでの慣れに要する時間は相対的に長くなりそうだ。
こちらも,実際にキータイプしている様子は下のムービーにまとめたので参考にしてほしい。
■実際にゲームで使ってみる
では,実際のゲームにおける使用感はどうだろうか。いつものように,筆者が最も高速にプレイできるタイトルである「Enemy Territory: Quake Wars」で2製品を比較してみたが,使用感はどちらも悪くない。
ただ,2台をとっかえひっかえ使ってみると,オレンジ軸のほうが爽快感がよいというか,キレのある印象を受けた。その理由が何なのかははっきり言えないのだが,もしかすると,オレンジ軸のほうが,「キーがオンになっている時間」が少しだけ短いからという可能性はある。
実際,キーを押下して,その後に指を離したとき,キーが戻ってスイッチがオフになるまでの移動距離はオレンジ軸のほうがやや短かった。リセット距離が短く設定されているオレンジ軸のほうにキレを感じるのはこれが理由かもしれない。
もちろん,時間をかけてキー操作に慣れていけばこういった誤操作は減っていき,素直にキレのある操作感を味わえるようになる。初心者向けではないかもしれないが,個人的にはかなり好みの操作感だ。
一方の緑軸は,「ほとんどCherry MX Blue」なので,Cherry青軸が好きな人なら違和感なく使えるはずである。
「キースイッチが中国メーカー製に変わったこと」による品質の低下を心配する読者はいると思うが,少なくとも入手した個体では,品質の悪いキースイッチにありがちな押下圧のバラツキは感じられなかった。完全に押し込んだときのグラ付き方もCherry MX BlueやCherry MX Brown採用キーボードと変わりなし。この点は「良くも悪くもCherry MXシリーズに似ている」ことのメリットといえるかもしれない。
ゲーマー向けキーボードの差別化ポイントは
機能からスイッチに移行する?
もちろん「突き詰めると,どれも似たようなものになる」のは収斂進化ともいえるわけで,妥当といえば妥当だ。とはいえ,メーカーにとっては自社製品を差別化しづらくなり,ゲーマーにとっても選ぶ楽しみ,キーボードを変える楽しみが減るということにもなってしまう。
最後にキーボードとしての評価をあらためてまとめておくと,緑軸採用のBlackWidow Ultimate 2014は,Cherry MX Blue採用のBlackWidow Ultimate 2013と,操作感にそう大きな違いはない印象だった。一方オレンジ軸採用のBlackWidow Ultimate 2014 Stealthは,“Cherry赤軸風”ながらも,いままでにない感触が得られる。最終的には好みの問題になると思うが,個人的にはオレンジ軸がお勧めだ。
Ultimateモデルは価格が2万円近いだけに,10キーレスモデルであるTournament Editionの早い市場投入にも期待したい。
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BlackWidow Ultimate 2014製品情報ページ
BlackWidow Ultimate 2014 Stealth製品情報ページ
Razerの緑軸&オレンジ軸解説ページ(英語)
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