レビュー
最小限の照明でけっこうキレイに顔出し配信できるLEDリングライト
Razer Kiyo
2018年5月25日,Razer製Webカメラ「Razer Kiyo」(レイザー キヨ,以下 Kiyo)の国内販売が始まった。
5月18日の記事でお伝えしているとおり,Kiyohaカメラの周囲にLEDリングライトを標準搭載した製品で,このLEDリングライトにより,Webカメラを使うときにユーザーの顔を明るく照らせるというのが最大の特徴だ。
カメラの世界だと,リングライトは小物の接写用やポートレート用,自撮り用といった具合に,近年,さまざまな製品が登場している。そのメリットは「複雑な照明設定をしなくても,リング中央にカメラを置いて被写体を正面から捉える場合,おおよそキレイに光が回った状態となり,極端なテカリや影が生じにくくなる」点にあるが,そんなメリットの獲得を目指したKiyoは,期待どおり働いてくれるだろうか。本稿ではKiyoの実力をチェックしてみたい。
設置方法にかなり融通の利くKiyo。「手に持っての配信」にも対応
重い理由はその可変構造にある。Kiyoは本体側に2か所の可動部を持っており,これを使うことで机上に単体で自立させたり,ノートPCや液晶ディスプレイの上端に引っかけて固定させたりすることができる。底部には三脚用となる直径約6mmのいわゆる細ネジ穴もあるため,小型三脚の上に取り付けて使うといったことも可能だ。
LEDリングライトの中央に配置されるカメラは有効画素数約400万画素で,720p(1280
ハイエンドではないが,ハイクラスではあるスペックといったところで,実際のところゲーム実況の場合,プレイヤーの映像は画面の一角に表示する程度になるはずだから,その前提に立てば十分なハードウェア仕様と言っていいだろう。
また,録音周波数48kHz,サンプリング周波数16bit,感度−38dB/Paというスペックのマイクも内蔵している。音質にとことんこだわるというのでもない限り,Kiyoだけで配信者の撮影環境は整えられるわけだ。
さて,LEDリングライト側には12基のLEDが入っている。リングの外周部は調光ダイヤルになっており,回すと,消灯を含む12段階の明るさ調整が行える。
明るさは1mの距離で10ルクス。室内の照明が普通に点灯している状況というより,室内を若干暗くしたような状況を想定したスペックのように思われる。実際,部屋を明るくしていると,最大光量であってもKiyoの効果は「顔に落ちた影が和らぐ」程度だ。なので,Kiyoを運用するときは,若干薄暗い状況を基準に配信環境を整えるのが望ましい。
実際にあれこれ検証したが,Kiyoを配信者から0.5mくらい離した状態を基準にすると,配信者にとって都合のいい距離を掴みやすいようだ。
カタログスペックによると色温度は5600K。とくにちらつきはなく,また目視レベルだと色温度のブレ幅もそれほどないようだ。デジタルカメラで撮影してみても色はほぼ一定だったため,室内照明と合わせる場合にも都合がいいものになる。
KiyoはWindowsのクラスドライバを利用する製品で,「Razer Synapse 3」(や「Razer Syanpse 2.0」)にも対応せず,ドライバソフトウェアによる色合いの調整には対応しない。そのため,ただ薄暗い部屋というよりは,暖色系の間接照明を置いた環境のほうが配信環境は整えやすいはずだ。あるいは暖色系のデスクライトとKiyoを組み合わせるというのもアリだろう。
「カメラと照明,マイクを1台で完結させやすい」点に魅力を感じるならアリ
実際に運用してみると,よく考えられた製品だと思う。設置方法に自由度があるため,ノートPCに設置した状態から手で持ったり,さらに机上へ置いて自立させたりといったことがとてもやりやすい。手前にカメラを傾けることができるため,配信者の手元を映すといった場合も最小限の手間で済む。
総じて,配信中におけるアングル変更のしやすさは,ほかのWebカメラと比べてかなり上だという印象だ。また,とそこそこの性能があるため,これ1台で配信環境を完結させることができるのもいい。
というわけで,稲森美優さんにあれこれと試してもらった動画を使い,ここまでの評価をおさらいしていこう。先に示した動画も含め,キャプチャに用いたアプリケーションは「OBS Studio」(Version 21.1.2)で,録画設定はプリセット「超高品質,ファイルサイズ大」で,エンコーダは「ソフトウェア(x264)」を使用した。音声のサンプリングレートは44.1kHzだ。
配信向けの前提で映像をチェックしたい場合は,再生画面を小さくすると雰囲気をつかみやすいと思う。
次に照明を消した状態だと,オートフォーカスの遅さが目立つ。ただ,ゲームプレイ中,配信者はそれほど動かないので大きな問題ではなく,むしろ室内の光量を落として部屋の中をあまり見せないようにしたいときに使えることのほうをより注目したい。
気になるのは前述した色温度で,暗い環境ではかなり青白く映るため,色合いをなんらかの形で調整したくなるというのが正直なところだ。
それでいて価格はWebカメラとして明らかに高めなので,ここはかなりのネックとなるが,「照明もマイクも全部Kiyoだけで完結させやすい」のが,ほかにない魅力なのも確かだ。あれこれ追加で揃えるのが面倒だとか,Webカメラの設置環境に制限があるとかいった場合には,Kiyoが選ぶべき配信用Webカメラの第1候補になるのではなかろうか。
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