男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ：第737回「自分が変わることによって，夢の形状も変わる」

著者近影

　夢は逃げない。逃げるのはいつも自分だ。

　この言葉は，私のプロレスラーの後輩が好きな言葉である。どうやら「クレヨンしんちゃん」の野原ひろしが発した言葉とされていたりもするけど，実際は実業家の高橋 歩さんという方の言葉のようだ。

　仮に，夢を持ったとしよう。その夢に向かって，人はできることを積み重ねる。そして積み重ねるうち，その夢に近づけば近づくほど，その夢に対して自分の才能なのか，運なのか，努力なのかが足りないことに気づいてしまう。結果，夢をあきらめてしまう。確かに，夢は一歩もその位置を動いていない。動いてしまったのは，自分のケツ意なのだ。
　夢は非情でもある。一歩も動かない。融通など利かない。例えば，年齢制限のある夢でも基本的には待ってくれない。自分が年齢を重ねていっても，夢は条件を動かしてくれない。夢は夢として，そこに居続ける。自分が夢をあきらめた後でも。
　夢は優しい。どんなに無茶な夢でも，持つこと自体を許してくれるから。周りが「絶対無理に決まっている」と決めつけても，夢は動かない。自分があきらめない限り，そこに夢として居続けてくれている。そのことにどれだけ，人は救われるか。


　先週の予告通り，「ゼルダの伝説　ティアーズ オブ キングダム」をプレイしました。夢を感じました。ここに詰まってるんですよ。ゼルダの世界が。世界のルールも何もかも。一言で言えばリアルなんだけど，リアルとはまた違った世界。確かにプレイヤーはリンクを操作します。リンクの動き，一挙手一投足が違和感なく操れます。これはリアルと言っても差し支えない。でも，この作品の凄さはその先にある。

　実はリアルではない世界を，リアルとして錯覚させる力がもの凄いんですよ。例えば，高いところから落ちた場合，ダメージを受けてヤリ直せます。これ，現実だと死んじゃいます。でも，ゼルダの世界はそれでいいんです。この現象に対して「まあ，ゲイムだしな」とすら思わない。ナチュラルに受け入れちゃってるんですよ。知らず知らずのうちに。ここが凄い，と私は思うんです。
　それよりも，このゼルダの世界で「じゃあ，どうすればいいのか」を考えるように設計されている。もちろん，人の感じ方なんて十人十色ではあります。でも，なるべく多くの人がゼルダの世界に対して疑問を持たないようにデザインされているのは，単純に凄いと思うんですよね。


　一方で，最初はシンプルに難しいとも思いました。ちゃんと慣れたあとから考えるとなんてことない仕掛けでも，初見ではどうしていいか分からない。その要素が強いかな，とも感じましたね。これ，まさに夢なんですよ。夢は動かない。それと同じように，ゼルダの世界も動かない。プレイヤーである私が仕掛けに対して，どのようにアプローチするかなんですよ。少なくとも，プレイヤー視点では。

　おそらく，仕掛けを解く方法はいくつもあります。例えば「ボタンを押せ」という課題に対して，物を投げて押してもいいし，足場を作って直接押してもいいし，長い棒をつなげてそれで押してもいい。ボタンを押しさえすればそれでいい世界なんですよ，ゼルダの世界は。ただ，逆に思いつかなければ，何をしていいのか分からない。そんなときでも，ゼルダの世界は助けてくれない。まさに夢。

　だから，「世界はそこにある。方法は問わない」というルールに慣れるまでは難しく感じてしまうかもしれない。それこそ「夢は逃げないけど，自分が夢から逃げ出してしまう」というケースがあるのかもなあ，とはプレイしてて感じました。
　かくいう私も最初の祠で何をしたらいいか分かんなくて，プレイを2日間止めたしね。あらためて挑んでみたら，ちょっとした気づきで何とかなったんだけれども。これ，けっこう深い話な気がしてるのよ，私。


　夢もちょっとした気づきで見え方が変わったり，頑張る方法やアプローチを変えてみたり，カッコよく叶えるんじゃなくて邪道な叶え方を模索してみたりすると形が変わっていくんじゃないかな，と。人生が思い通りにいかないのは，みんなもご存じの通り。夢もまた然り。夢は動かないんだけど，そもそもは自分が作り上げたものだからね。
　自分が変わることによって，夢の形状も変わる。夢は叶えたいものじゃないですか。でも夢は動かない。だったら，夢の形を叶えやすいものに変えてしまえばいいんですよ。誰に何を言われてもいいじゃないか。叶えることが重要なんです。他人ではなく自分の人生なんだから。夢の在り方だって自分次第。そこから逃げずに見る角度を変えると，夢は変わるんだなあということに気づいた今週でした。

　ゼルダの新作，面白いよ。たぶんまだ序盤だけど。夢をあきらめなければ，まだまだ面白くなってきます。だからみんな，夢をあきらめないで！　そんな感じでまた来週。

今週のハマりゲイム
PlayStation 5：「eFootball 2023」
PlayStation 4：「アーケードアーカイブス マジンガーZ」
Nintendo Switch：「ゼルダの伝説　ティアーズ オブ キングダム」「Winning Post 10」
iOS：「ロードモバイル」
iOS：「ウイニングイレブン カードコレクション」

■■男色ディーノ（プロレスラー）■■ ディーノ選手が所属するDDTプロレスは，6月3日（土）17：00より神奈川・横浜ラジアントホール大会「DDT YOKOHAMA Unlimited Vol.3」を，翌4日（日）16：00より神奈川・小田原アリーナ・サブアリーナ大会「日本障がい者レスリング連盟プレゼンツチャリティー大会 〜What are you doing 2023 TOUR in ODAWARA」を開催します。ディーノ選手は両大会共に飯野“セクシー”雄貴選手とのタッグで，3日はアントーニオ本多選手＆高鹿佑也選手＆瑠希也選手と，4日は高尾蒼馬選手＆須見和馬選手と対戦予定。「最近，ハンディキャップマッチが多いんだけど，もしかして我々は団体からアンドレ・ザ・ジャイアント扱いをされているのでは？　となると目指すは世界10番目の不思議」とのことです。