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印刷2008/10/12 23:53

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[TGS 2008#104]KONAMIの小島監督とカプコンの辻本プロデューサーが語る,ゲームクリエイターの心構えとは?

 東京ゲームショウ2008最終日となった本日(10月12日),イベントステージでは「CoFesta 2008 クリエイターズトークショウ」が開催された。
 出演したクリエイターは,「METAL GEAR SOLID」シリーズでおなじみKONAMIの小島秀夫氏と,「モンスターハンターポータブル 2nd G」のプロデューサーであるカプコンの辻本良三氏の2名。さらに,メディアを代表してエンターブレイン代表取締役の浜村弘一氏,流通を代表してゲームズマーヤ葛西店店長の秋谷久子氏,さらに一般のゲーマーを代表して(?)よゐこの有野晋哉氏も加わり,さらに司会の鈴木史朗氏を含めると総勢6名がステージ上でゲームについて語り合った。

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 最初の話題は,「ユーザーの顔を思い浮かべながら制作されていますか?」というもの。
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 まず小島氏が,「自分が好きなもの,得意なもの,興味のあるものを作っています」と語り,おやおやひょっとしたらユーザーのことは考えていないの? と聴衆に疑問を抱かせた直後,「自分の中にある,兄弟や親,友達,恋人などの人格になりきって,彼らがどう評価するかを考えるんです。ある程度仕上げたときに,スタッフや一般のモニターにやってもらいながら,その人がどこに喜ぶかを秒単位でチェックし,そして“こういう人にやってもらいたい”という想定の範囲内で,調整しています」と語った。
 つまり,開発初期から中盤の段階では,自分の中での客観的な評価を行い,終盤に差し掛かってからは,真の意味での客観的な評価を得ながら,開発を行っているということである。そういう意味では,間違いなくユーザーの顔を思い浮かべながらゲーム開発をしているということなのだろう。
 辻本氏の場合は,「ユーザーが実際にどういう流れでプレイし,どこで驚くかを考えながら構成をしています。例えば,携帯型のゲーム機の場合は,移動中の15分しかプレイできなかったりするし,家でゆっくり遊べることもありますので,こういった環境に注目しながらゲームの内容をつめていくことがあります」と,小島監督よりも具体的な作業工程について語った。
 とはいえ小島氏も辻本氏も,ユーザーに遊ばれることによって初めてゲームというジャンルが成立するという考えは共通していると見て良さそうだ。

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 また,「ゲーム制作の過程において,最も大切にしているものは?」という問いに対しては,辻本氏が「ゲームを作るスタッフといっても,プランナーやプログラマーをはじめ,いろいろなセクションがありますが,ゲームを作り上げる面白い要素は,どのセクションから出てきてもいいものですし,常にみんなが『これが面白い』と言い合える環境を作ること」とゲーム開発時の組織のあり方についてコメントすると,小島氏は「例えば何十時間ゲームを遊んで,『楽しかった』というだけではなく,『あのゲームのおかげで私はこういう人生を送れた』とか『人に対して優しくなれた』とか,そういうことを思ってもらえるように……ということを考えながらゲームを作ってきました」と,こちらはクリエイターとしての心構えを語っていた。
 こういったときに出てくる発言の差こそが,“プロデューサー”と“監督”の違いなのかもしれない。


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 「ヘビーユーザーとライトユーザーのどちらを意識しているか?」というテーマでは,小島監督が「ライトユーザー向け,ヘビーユーザー向け,その真ん中向けなど,いろんなゲームがあっていいと思います」と前置きしながらも,「僕が才能を発揮できるのはコアなゲームです。ヘビーなユーザーのためにヘビーでもの凄く濃いゲームを作りたいと考えています」と発言。近作の「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOT」でも見せた,ある種「一見さんお断り」的な作り方を,これからも続けていくことこそが,自身の責務であると感じている様子だ。
 対する辻本氏は,「カプコンはアクションゲームが得意で,その主軸はボタンを押すと画面の中で何かが反応するという部分。そのうえで,『モンスターハンター』のように多人数で遊べるとなった場合は,シビアにも遊べるしライトにも遊べるというものを目指しています」と語り,主軸となる部分をきちんと自覚しつつ,ライトユーザーにもヘビーユーザーにも楽しんでもらえるような作り方を重視する考え方を披露。
画像集#005のサムネイル/[TGS 2008#104]KONAMIの小島監督とカプコンの辻本プロデューサーが語る,ゲームクリエイターの心構えとは?
 さらに,「これからのゲーム」については,小島氏がDVD-Video登場と共に映画などにオーディオコメンタリーなどの追加コンテンツが生まれたことを例に挙げ,「自分で選択して中身が代わるという意味で,あれも僕の中ではゲームなんです。今は映像も文字も音楽もすべてデジタルになっていますから,カジュアルなものもヘビーでコアなものも,どんなものが出てきてもおかしくないはずです」と語ったうえで,「すべてを含むのが“ゲーム”という表現だと思いますので」と結ぶと,辻本氏は,「ゲームは,入力に対して何かが起きて,それを遊んでもらうものだと考えています。最近はマルチプレイで遊ぶ環境が増えてきましたが,今後はさらにオンラインで遊ぶというものが出てくるかもしれないと思っていますし,遊び方だってまだまだ進化/成長する余地があるとも考えています。遊び方が増えれば,それに合わせたゲームがどんどん出てくる可能性もありますよね」と,コメント。
 このあたりにも,クリエイターの作家性を重視する“監督”と,ゲームを取り巻く諸環境を重視する“プロデューサー”という立ち位置の違いが表れているように感じられた。


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 また,「これからのクリエイターに求められる要素」というテーマでは,小島氏が「何かを生み出すというのはエネルギーを放出することであって,それで人を感動させるためには,やっぱり好きじゃなきゃダメです。夢を実現するためには障壁を乗り越えなければいけませんが,不可能だと思われていることの9割は前例がないだけで,本当は可能なことなんです。不可能をどうやって可能にするかを常に考え,夢を持って物作りをしてほしいです」と熱く語ると,辻本氏は「ゲームに限らず面白いことに対して敏感であり,どん欲であることが大事です。すべてのことはゲームに反映できる可能性がありますから」と冷静に発言。ここにもまた,両者のコントラストがくっきりと表れていた。


 こんな感じで進んだトークショウは,クリエイターを目指す人達へのメッセージで終了。ここでは両者とも,ゲーム作りのためにはゲームに限らない幅広い知識や経験が重要であることを語っていたのが印象的だ。
 小島氏と辻本氏とでは,ゲーム制作に対する考え方というか,ゲーム制作のスタイルが大きく異なっているような印象を受けた今回のトークショウだったが,“面白いもの”を作るためには“面白いもの”を敏感に察知するアンテナと,ゲームに限定されない知識や経験が物を言うという根っこの部分は,共通しているのだろう。
 このあたりを会場にいたゲームクリエイター志望者がどうとらえ,どう生かしていくのか,その答えをゲームという形で目に出来る日を楽しみにしたい。

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小島氏「ゲームだけじゃなく物作りはすべて,作りたいと思ったら作ってください。まず作って,作ったものを友達やいろんな人に評価してもらって自分を見直し,自分の才能をソリッドにしていってほしい。一人で作れる人もいますが,それができない人は仲間を見つけてください。同じ志のある人と一緒に物作りをして,切磋琢磨して,ドンドン成長していければいいと思います」
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辻本氏「ゲーム作りは最終的に自分のアイデアや発想をゲームの中に入れて,世の中に残せるという夢のある職種です。ぜひその夢に向かってがんばってください」
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鈴木氏(左)「私は「バイオハザード4」をプロフェッショナルモードでプレイステーション2,ゲームキューブ,Wiiで合計5回クリアしたほどゲームが好きなんですが,ゲームから苦労,苦痛に耐える強靱な精神力をもらいました。ゲームを悪く言う人もいますが,ゲームは人類にとって新しい進歩のツールだと思っています」
有野氏(右)「若手のとき,「どうせ面白くないんだからネタは数を作れ」と言われ,たくさん作りました。その中には「ゼンラムーン」といういまでもお蔵入りのネタもあるんですが(笑)。経験がついたら昔のやつができたりすることもあるんです」
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秋谷氏「小さなお子様からお年寄りまで,お店に足を運んでくれる年齢の幅が広がってきています。昔から比べると,ゲームというジャンルの守備範囲が広がったということでしょうね」
浜村氏(右)「若いときにしか経験できないことがあって,40,50歳になると若い人の遊びが分からなくなるんですね。だから,年寄りのクリエイターより自分のほうが分かる遊びがある分,エライんだぐらいに勇気を持ってゲームを作っていってほしいです」
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    モンスターハンターポータブル 2nd G

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