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印刷2008/05/01 15:40

連載

キャラクターゲーム考現学
第30回:野球と涙とギャル「リトルバスターズ!」

 

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タイトル画面からも分かるように,「リトルバスターズ!」のメインテーマは「友情」である

 編集担当が忙しくなると,無慮お休みになってしまうのが泣きどころの不定期連載「キャラクターゲーム考現学」。お休みしている間にだいぶ宿題が溜まってしまったので,今週からひさびさに浮上し,それらを順次消化していこう。
 さて,本連載第3期(と勝手に呼んでしまうが)の隠されたテーマは,「キャラゲーの活路」である。ご存じのように非18禁のPCキャラゲー市場は近年,必ずしも活況にあるとは言いがたい。その理由と対策を,今回の連載では折々に挟んでいくつもりだ。

 閑話休題。今回のお題は,18禁版の発売が近づいたことで再度脚光を浴びつつある「リトルバスターズ!」だ。「KANON」「AIR」など「泣きゲー」で定評あるKeyの,最新作である。Keyはもともと18禁ゲームのメーカーだが,前作「CLANNAD」では全年齢版から商品展開をスタートしている。そしてコンシューマゲーム版を経てフルボイスの全年齢PC版を投入し,それがまた好調なセールスをマークするという横展開が「CLANNAD」の特徴であった。
 そして,はじめからフルボイスの「リトルバスターズ!」は,あらためて18禁市場に向け,ラインナップを延伸していく。1本のコンテンツを多様なターゲットに向けて(そしてコアなファンにはそれぞれ違う商品として)放つ方法を,VisualArts/Keyは選ぶ。PC版/コンソールゲーム版を含めた統合展開として,現在最も徹底した形といえるだろう。

 

 

Character Side:キャラごとの“泣き”エピソードを重ね真の主題に迫っていく構成

 

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昼休み,本当は立ち入り禁止のはずの屋上で小毬を見つけた主人公は,お菓子を勧められる。彼女は,ここが好きだという

 幼い頃に両親を亡くした主人公は,その悲しみから自分を救ってくれた仲間達と同じ学園に入学し,2年生になっていた。その時間がこのまま続けばいいと思っていた矢先,ひょんなきっかけから「昔みたいにみんなで何かやろう」という話になる。リーダー格の恭介は「それなら野球でもやらないか」と言い,メンバー探しが始まる。……というプロローグからゲームはスタートする。
 このメンバー探しの中で,主人公はさまざまなキャラクターと出会い,交流していくことになる。以前からの仲間は,一つ年上の棗 恭介,同じ年齢の井ノ原真人と宮沢謙吾,そして恭介の妹の鈴という4人。このメンバーのほかに5人のヒロイン達,そしてサブキャラクターとの交流や掛け合いで,物語は進んでゆく。

 

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たくさんの猫の面倒を見る鈴。本人も猫のような性格のせいか,猫になつかれている。ただ,学校の庭にこんなに猫はいない気もするが

 ヒロインとして登場するのは前述の棗 鈴のほか,絵本と童話とお菓子が大好きで,ほんわかした「天然少女」の神北小毬,同級生ながら「姉御肌」でしっかりしているように見えるが,実は可愛い女の子好きの来ヶ谷唯湖,主人公達とは別のクラスながら,なぜかいつも主人公の教室にいる「お気楽極楽」な三枝葉留佳,帰国子女で「えきぞちっく(自称)なマスコット」の能美クドリャフカ,体が弱くおとなしい,おしとやか系キャラの西園美魚という5人。

 ゲームの前半は,これらのキャラクターがチームとしてまとまり,野球をするというストーリーであって,コメディタッチで話が進んでいく。しかし,ストーリー後半,各ヒロインのルートに入ると,Keyの十八番である「泣きゲー」展開になる。実のところ,それぞれのヒロインは悩みを抱えており,それが各シナリオのポイントになっているのだ。

 

棗 鈴(なつめ りん)

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主人公の幼馴染みの一人。幼い頃からつるんでいた「リトルバスターズ!」の一人。リーダー格の棗 恭介の妹。人見知りで口下手のため,友人と呼べるのは理樹(主人公)達だけ。その代わりに大の猫好きで,休み時間などにはよく猫の面倒を見たり,一緒に遊んだりしている。本作のメインヒロイン。ランキングバトルの初期称号は「なかなか人に懐かない気高き仔猫」。
(CV:田宮トモエ)

 

神北小毬(かみきた こまり)

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絵本と童話とお菓子が好きな少女。学校の屋上が好きで,立ち入り禁止にもかかわらず,ドライバーで窓を外して昼休みに入り込み,お弁当とお菓子を食べている。主人公と出会うのもそこでだ。のんびりした口調で話し,よくドジをやらかす「天然少女」。ランキングバトルの初期称号は「ほんわりきゅーとなメルヘン少女」。
(CV:柳瀬なつみ)

 

三枝葉留佳(さいぐさ はるか)

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主人公とは別のクラスだが、休み時間には主人公の教室に入り浸っており,すっかりクラスになじんでいる。マイペースで騒ぎを起こしてばかりいる問題児。会話や行動が唐突で脈略がない。ランキングバトルの初期称号は「お気楽 極楽 騒がし乙女」。
(CV:すずきけいこ)

 

来ヶ谷唯湖(くるがや ゆいこ)

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尊大な物腰と先読みの鋭さから,周囲に頼られる「姉御肌」な同級生。神出鬼没で,物音も立てずいきなり主人公達の前に現れることがある。可愛い女の子が好きで,鈴やクド,おまけに主人公のこともよくからかう。ランキングバトルの初期称号は「ちょっぴりお茶目な姉御肌」。
(CV:田中涼子)

 

能美クドリャフカ(のうみ くどりゃふか)

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帰国子女のクォーター少女。通称「クド」。日本びいきの祖父の影響で日本人的な行動パターンをとるが,それを気にして英語で話そうとすると,変な英語になってしまう。猫的な鈴に対して,犬チック。みんなのマスコット的な存在で,しょっちゅういじられている。ランキングバトルの初期称号は「えきぞちっく(自称)なマスコット」。
(CV:金子明美)

 

西園美魚(にしぞの みお)

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休み時間にはいつも一人で本を読んでいる,おとなしい少女。物静かなためクラスでも存在感が薄く,親しい友人がおらず,クラスメイトからは裏で「カゲナシ」と呼ばれている。体が弱いためか,外出時はいつも日傘を差している。ランキングバトルの初期称号は「日傘を差した物静かな天然素材」。
(CV:荒井悠美)

 

棗 恭介(なつめ きょうすけ)

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理樹達幼馴染みグループのリーダー格で「野球をやろう」と言い出した張本人。メンバー唯一の上級生で,ほかのメンバーから慕われている。唐突に現れて,おいしいところを持って行くことがよくある。ランキングバトルの初期称号は「あらゆる日常をミッションにするリーダー」。
(CV:緑川 光)

 

井ノ原真人(いのはら まさと)

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幼馴染みグループの一員で,主人公のルームメイト。己の体を鍛えることに命をかける筋肉バカ。謙吾とはすぐケンカを始める。ランキングバトルの初期称号は「憎めない筋肉馬鹿一直線」。
(CV:神奈延年)

 

宮沢謙吾(みやざわ けんご)

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幼馴染みグループの一員で,真人とよくケンカをしている。幼い頃から剣道にすべてを懸けて練習しているという,ある意味真人とは違うベクトルのバカ。ランキングバトルの初期称号は「最強の男児にして真人のライバル」。
(CV:織田優成)

 

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なぜか中庭の隅っこで半ば強引に唯湖とお茶することになった主人公。本当はこんなことをしている暇はないはずなのだが……というシチュエーションは,よくあるパターン

 本作では各ルートだけでなく,全体を貫くストーリーが設定されており,これはすべてのルートをクリアしないと見えないようになっている。マルチエンディングが一般的になり始めた1990年代後半からなされた,さまざまな試みの一つの結実である,「複数のシナリオを前提としたループ世界」という「お約束」のなかで成立するストーリーだ。
 Keyのゲームにおける「泣きどころ」は基本的に一貫しており,いままでのタイトルでも本作でも,「人の絆」がメインのテーマとなる。とくに今作では,「ヒロインとの絆」よりも「友情」的な絆をメインにしている。前作「CLANNAD」が家族愛をテーマとしていたことと対をなす発想であり,根幹部分は各ヒロインとのエンディングを見たあとに姿を現すトゥルーエンディングで語られる。

 全体的な印象として,キャラクター造型よりもストーリーに重点を置いた作品となっており,そこもKeyの歴代作品と共通する部分だ。どちらかというと,「ストーリーを語るためにキャラクターを配置した」感じといえるだろう。

 

 

Game Side:ミニゲームは息抜き程度に留まるが,ストーリーの構築性には見るべきものアリ

 

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ミニゲームのメインになる「野球ゲーム」。投球に合わせてタイミングよくマウスをクリックすることで,球を打ち返せる

 リトルバスターズ!は,基本的にノベルタイプのアドベンチャーゲームであり,プレイ中に現れる選択肢を選ぶことでストーリーが展開していく。だがそれだけではない。本編中のさまざまな場所にミニゲームが挟み込まれているのも重要な特徴だ。とくに,「野球ゲーム」と「ランキングバトル」は何度も登場するようになっているだけあって,なかなか作り込まれたものになっている。

 野球ゲームは主人公を操作し,ピッチャー(鈴)の投げるボールをマウスクリックで打ち返すというもので,これを通してメンバーのパラメータを上げられるようになっている。
 また,ランキングバトルはRPGの戦闘シーンのような構成だが,キャラクターが操作できるわけではなく,基本的には見ているだけだ。勝ったほうが負けたほうに「恥ずかしい称号」を付けられる。
 ただ,これらのミニゲームがシナリオの展開に影響を与えることはなく,ぶっちゃけオフにもできる。各ミニゲームを1回プレイしたあと,以降そのゲームをオフにするかどうか確認が入るという形だ。あくまで控えめな気分転換要素であって,オン/オフは好みで決めればよいだろう。

 

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野球ゲームとランキングバトルについては,最初にプレイしたあとにオン/オフを設定できる。また,ほかのミニゲームの結果も,ゲームの進行にはとくに影響を与えない

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「ランキングバトル」の順位。下位のキャラクターが上位のキャラクターに戦いを挑み,バトルで勝利すると順位が変わり,同時に勝者が敗者の称号を恥ずかしいものに変えられる

 

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野球ゲームとランキングバトル以外にも,さまざまなミニゲームが用意されている

 さて,肝心のメインストーリーについて。個別のエンディングを見ると,どうにもボリュームと質にばらつきがある点は少々気になる。その意味で,全体的な構成バランスと,ミニゲームの効果的な使い方には,まだいささか課題を残している印象だ。
 とはいえ,ストーリー全体は高く評価できる。先ほども触れたように,マルチエンディングを前提とし,それをストーリー全体のパーツとして用いる手法は,現在一般化しつつある。本作には「Ever 17」のようなサプライズこそないものの,このマルチエンディング構造をなかなか効果的に利用し,それをトゥルーエンディングで結実させるストーリーテリングは見事なものだ。
 泣きゲーもすっかり定着し,それだけで人が驚くようなものではなくなった昨今であるが,そうした市場の変化に対応した進化を,Keyの作品も遂げている。ミニゲームなど,比較的目に付きやすい新要素でなく,あくまでストーリーで勝負する作品,それが「リトルバスターズ!」だ。

 

■■田村眞治(ライター)■■
「夢幻戦士ヴァリス」の時代から22年余,キャラクターゲームの歩みを見守り続けてきた(いや,別のことをしていなかったわけではない。念のため)ベテランライター。第3期連載に当たっては,もっぱらトラディショナルな形の作品を担当してもらうが,ぜひ最近の動向も押さえたうえで,持ち前の微妙な知識と組み合わせたオリジナリティの高い解説を展開してもらいたい。
  • 関連タイトル:

    リトルバスターズ!通常版

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