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【ミートたけし】なぜ「世界の平和が俺を守る!」のか
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印刷2023/10/31 08:00

連載

【ミートたけし】なぜ「世界の平和が俺を守る!」のか

ミートたけし /  川村 竜  / ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー

画像集 No.001のサムネイル画像 / 【ミートたけし】なぜ「世界の平和が俺を守る!」のか

ミートたけしの「世界の平和が俺を守る!」

ミートたけしYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@meatalk


第1回:なぜ「世界の平和が俺を守る!」のか


画像集 No.002のサムネイル画像 / 【ミートたけし】なぜ「世界の平和が俺を守る!」のか
「音楽は世界を救う」

 皆さん,一度くらいはこんなセリフを聞いたことがあるのではないだろうか? かく言う私も音楽を始めたばかりの純粋無垢だったあの頃,本気でそう思っていたこともあった。
 20数年間,プロミュージシャン,作編曲家として生きてきて,それなりの数の人々に感動を与えてきた自負はあるが,東日本大震災や,コロナ禍を経て,音楽の存在価値というものをあらためて考えさせられている今,私が到達した答えは「音楽は世界を救えない」というものだった。
 しかしながらこれは決して後ろ向きな言葉ではない。
「平和な世界があってこそ音楽が在ることを許される」という意味なのだ。

 つまり本当に救われていたのは音楽のほう,というわけだ。この「音楽」はそのまま「私」に置き換えることができる。私が愛してやまないスーパーヒーロー達は声高に「世界の平和は俺が守る!」と奮闘している。
 だが私は今,こう叫びたい。
「世界の平和が俺を守る!」と。

 ごめん,固っ苦しく始めてみたけどこのあたりが限界だわ。だけど書いていることは本音で,要は人は一人じゃ生きられない! 必要とされて初めて僕らは存在できるってことが言いたかったんだ。
 人が生きていくうえで「本来ならば」衣食住以外のものは必要ない。必要ないはずなのに音楽をはじめとする娯楽と言われるものは,僕らの人生において必要不可欠だ。必要ないのに必要不可欠,そんな矛盾こそが人間が人間である理由だと思う。
 そんな僕にとって必要不可欠だった音楽の立場を脅かす存在が現れた。格闘ゲーム。いわゆる格ゲーってやつだ。


格闘ゲームとの出会い


 明確な勝ち負けが存在しない音楽界でもう20年以上プロとして活動を続けてきた自分にとって,「相手に勝つ喜び」という感情は今まで味わったことのないものだった。

 いや,違う。

 それよりも「相手に負ける悔しさ」のほうがヤバかった。何だこれ。もういい大人なのに泣きそうになるくらいはらわたが煮えくり返る。自分がこんな感情になるなんて自分でもびっくりだった。さらに言うと,自分を打ち負かした相手から煽られたときなんてもう,この世の終わりなんじゃないか,と思うくらい胸が張り裂けそうになる。

 俺より若いガキに……。
 俺より稼いでないヤツに……。
 俺のほうがベースうまいのに……。
 俺には印税だってあるのに……。


 止まらない。罵詈雑言が止まらない。口から「負け惜しみ」という名の呪詛がとめどなく溢れてくる。自分の中の価値,判断基準が音を立てて崩れていく。

「ベース最高でした!」→うん,ありがとう
「○○の曲聞きました! めっちゃ好きです」→わぁ,うれしいなぁ。
「対ありでした。参りました! 強かったです!」→……イキそう。

 こんなにも楽しい世界が音楽以外にもあったなんて!! 僕を守ってくれる世界がさらに拡がっていく感覚に全身が打ち震える。それは自分を取り巻く環境だけではなく,人間関係においても変化をもたらしてくれた。
 「ストリートファイターV」を始めた頃(2019年あたりか),当時のアシスタントが熱狂的な格ゲー動画勢で,「竜さん! 格ゲーは対戦会です! オフライン対戦会に行きましょう!」と,興奮しながら詰め寄ってきたことを今でも鮮明に覚えている。

画像集 No.003のサムネイル画像 / 【ミートたけし】なぜ「世界の平和が俺を守る!」のか
 そんな彼に連れられて向かったのが中野にある「RED BULL Gaming Sphere TOKYO」だった。初めてのオフライン対戦会。自ら「ミートたけし」の名をプレートに書き込み首から下げた。一体,どのように参加すればいいのだろうか? どんなルールでやっているのだろうか? そんな不安に駆られて立ち尽くしている中,メガネをかけた痩せすぎた男性がその体躯に似つかわしくない,大きなはっきりとした声でこう話しかけてきた。

 「ミートたけしって,マジすかその名前! めっちゃピッタリっすね!」

 ……なんだこいつ?
 その後も使用キャラやストVを始めたきっかけなど,軽快なトーンのまま質問を浴びせてくる男性。

「じゃ,何かあったらいつでも声かけてください!」

 そうやってまた対戦台へと戻っていく男性。なんだいいやつじゃん。そう考えているとアシスタントが駆け寄ってきて,「今の誰だか知ってるんすか!?」と,興奮気味に話しかけてくる。
 当然誰だか皆目見当もつかなかったので素直に誰なの? と聞くと,彼はさらに興奮しながらこう答えた。

「2D神っすよ!!!!」

 なんだ。神様か。
 自分は無宗教なので知らなかった。

 いや,そういう問題じゃない。っていうか知らねぇよ。後に彼が有名プロゲーマー・マゴであることを知らされた。

 この出会いをきっかけにさまざまな格ゲーマーとのご縁をつないでもらい,今ではあのウメハラにベースを教えるくらいには格ゲー業界に身を置かせていただくことになったのだが,それはまた別の機会に。


生まれて初めて味わった「緊張」


画像集 No.004のサムネイル画像 / 【ミートたけし】なぜ「世界の平和が俺を守る!」のか
 オフライン対戦会でもう一つ,思い出に残っている話がある。それは初めて参加したシルバーランク限定大会,要するに初心者限定のオフライン大会へ参加したときのことだ。
 自分の試合が近付いてくるにつれて体に異変が起き始めた。今まで音楽のステージで武道館や横浜アリーナ,東京ドームなど,いわゆる大舞台と呼ばれるステージにはあらかた立ってきたし,そこで緊張することなんて一度もなかった。
 よく「緊張しない秘訣とかあるんですか?」なんて聞かれるが,そのたびに「自信がないからなんじゃない? 適当にやれば大丈夫だよ」と質問者がまったく求めていないであろう回答ばかりしてきた。

 本当にごめん。

 こーれは無理だわ。これが「緊張」ってやつなんだとしたら解決策なんてねぇわ。心から謝る。自信とかじゃない。適当とかじゃない。手の震えが止まらねえ……。
 心の準備などできるはずもなくそのまま試合が始まった。頭が真っ白だ。画面の中の自キャラが意思とは無関係に動きまくる。緊張とは裏腹に司会・実況の方の声はなぜかきれいに耳に入ってくる。

「おーっと! ミートたけし! 何だ今の動きはぁ!? ここは実家じゃないんだぞおお!!」

 実家じゃない? なんだ?
 こいつ俺の実家知ってんのか?
 いや,そういうことじゃないのか?
 というかお前誰なんだ?
 完全にパニックだった。
 試合中に頭の中が「実家」に支配されるくらいには。

 内容をまったく思い出せないが試合に負けた後,対戦相手が満面の笑みで握手を求めてきたのを覚えている。優しく握り返して笑顔でお礼を返す。返すべきなんだ。それは分かってる。笑え……笑うんだ俺。「ありがとうございました」と言えば,すべて終わるんだ。終わらせろ……終わらなきゃいけないのに……。
 ベースという楽器の特性か僕の握力は85kgほどなのだが,力のリミッターが外れちまってるのを本能的に感じる。今なら室伏にも勝てるかもしれない。それほどの力を込めようとしている己を全力で制する。爆発しそうな屈辱と溢れ出しそうな涙を堪えて放たれた言葉は……

「あ。どもっす」

 だっさ。きっも。何それ?
 自身の矮小さを否応がまでに叩きつけられた。
 俺はこんなにも心の狭い人間だったのか?
 俺はこんなにも器の小さい人間だったのか?
 違った。
 世界が広いんだ。
 こんな広い世界を守ろうとしていた自分の傲慢さに呆れ果てる。やはり世界は守るものなんかじゃない。守ってくれるものなんだ! 無理やりタイトルの「世界の平和が俺を守る!」に,こじつけようとしていると思う方もいるかもしれない。
 答えは「YES」だ。
 そんなことよりも,僕が今みんなに伝えたいのは,ゲームが僕を取り巻く環境とつながる縁を劇的に変えてくれたってことだ。タイトルなんてどうだっていい。そもそもこういうのは何となくでいいんだ。第1回は編集部から「タイトルの由来でいきましょう!」とか言われたけど,何となくで付けたタイトルでそんなつらつら長いことを書けるわけないだろ。
 しかもそれを言い始めたら「ミートたけし」って何だよ。T.Nゴンから改名要請がきたら秒で名前を変える覚悟でやってる。さて,タイトルについて書き続けるのも限界なので,このコラムでどんなことを書いていきたいのかをつづろうと思う。


このコラムで伝えていきたいこと


 そもそもこのコラムのお話をいただいたきっかけは,僕のYouTubeチャンネルを編集の方が視聴してくれていて,そこからのご縁でつながったものだった。僕のYouTube動画はいわゆる「物申す系」に括られがちだが僕自身はそう思っていない。基本的には動画を視聴してくれた方が「考える」ことと「素直になる」ことの大切さに気付き,そしてより良い世界になっていってほしい,心からそう思ってチャンネルを運営している。そう。僕を守ってくれる世界は平和でなければならないからね。
 ただ生まれ持った天邪鬼な性格が災いして,ただただいい話をしていてもつまらないし,すべての人に真意を伝えたいとも思っていない。普段の雑談は台本的なものは一切なく,取り上げたトピックに対して思ったことを思ったようにしゃべっているだけなのだが,一応,頭の中にはある程度のマップは描きながら話している。
 冒頭,前半はわざと引きの強い言葉や,トゲのある言い回しを使っているので,大半の人はそこで離脱するのかもしれない。でも最後まで見れば僕の動画は「愛」であふれていることに気付いてもらえると思う。最後まで見てもダメな人は……感性が合わないだけなので諦めてもらうしかない。
 YouTubeで動画をアップする以上,いわばエンタメ寄りな部分を常に意識しなければならないし,前述の言わばプロレス的アプローチ(プロレスファンはこの使い方をすると怒るらしいが便利なので使う)を意図的に取り入れているのだけれど,このコラムではそういう部分を一切排除しよう,というご提案をいただいた。
 ある種,YouTubeで曲解されがちな「過激なご意見番ミートたけし」というイメージを,本来の真意である「世界平和を望むミートたけし」という形へ導けるように,より素直な思いをつづっていこう,ということになった。
 さらに連載を後押ししてくれた編集さんの言葉が,

「PVは気にしないでいいんで,好きなことを書いてください」

 コレだもの。
 絶対この編集さんヤバいわ。すんごい僕のこと好きじゃん。めちゃくちゃやる気出ちゃいました。とは言えやっぱりたくさんの方に読んでもらいたいし,PVが増えればそのうち書籍化とかもしちゃったりして,もっともっと楽しくなると思うのでぜひこのコラムも広めていただきたい。
 ていうか書籍化したい。ていうかする。してみせる。「○○書店にて,ミートたけし著作発売記念サイン会!」とか,もう想像しただけで昇天しそうだ。でもそのためにはしっかりと楽しんでもらえるコラムを書かないとね。

画像集 No.005のサムネイル画像 / 【ミートたけし】なぜ「世界の平和が俺を守る!」のか

 毎日毎日,「ストリートファイター6」やって,「APEX Legends」やって,曲作って,ベース弾いて,コラム書いて,あー本当に幸せ。いつ寝てるのって? 寝てねえよ!! 寝るのがもったいないくらい充実した人生を送らせてもらってるよ。
 だから,このコラムを読んでくれてるあなたに,少しでも僕の幸せを分けることができるならもっともっと幸せ。みんなの幸せが僕を幸せにしてくれるのだ。

 つまり,

「世界の平和が俺を守る!」

 ってわけ。

■■ミートたけし / 川村 竜(ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー)■■
ベーシストとして国内外各所でライブやコンサートで演奏活動をしつつ,配信活動も活発に行っているミートたけしこと川村 竜さん。現在は主にYouTubeチャンネル「ミートたけし-MEAT TAKESHI-」とTwitchチャンネル「ミートたけしの『太くてニューゲーム』」で,雑談配信をしたりゲーム配信をしたりと大忙しの様子です。
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