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教育版マイクラの作品コンテスト「Minecraftカップ2022 全国大会」最終審査会レポート。 最優秀賞に輝いた作品は?
Minecraftカップ 公式サイト
Minecraftカップは18歳以下を対象に,「教育版マインクラフト」(Minecraft: Education)でテーマに沿った作品の制作と発表を行い,その発想やクオリティを競う催し。2019年の初開催から回を重ねるごとに規模を拡大し,今回のエントリー総数は前回の約2倍となる6019人,計426作品にのぼる。最終審査会では,全国13ブロックでの一次審査,二次審査を通過した39作品の発表と審査が行われた。
今大会の制作テーマは「生き物と人と自然がつながる家・まち〜生物多様性を守ろう〜」。SDGs(持続可能な開発目標)のうち,おもに目標14「海の豊かさを守ろう」と目標15「陸の豊かさも守ろう」を意識したものだ。
作品の最終審査はプロマインクラフターとして知られるタツナミシュウイチ氏,「カズクラ」でおなじみ動画クリエイターのKazu氏,建築家の髙﨑正治氏,積水ハウス代表取締役副会長執行役員の堀内容介氏ら,「Minecraft」や教育,建築などに携わる8名の審査員によって行われた。その結果,ジュニア部門(チームの最年長が満9歳以下),ミドル部門(同じく満12歳以下),ヤング部門(同じく満18歳以下)のそれぞれから最優秀賞が選ばれている。
まずはジュニア部門の結果を紹介しよう。最優秀賞に選ばれたのは,CCさんの作品「雷さまの方舟」。室町時代から戦国時代に使われていた軍船・安宅船をモデルにしたという方舟は,調査・研究施設を持つ巨大空中船だ。
小型の探索機を使って荒れ果てた土地の土や生物を採集し,研究や保護を行うことで環境を回復していくという。
「雷さま」は天候を操り,植林した苗木を森林へと育てることも可能。方舟には畑やレストラン,水の濾過施設,動物と人間が楽しめる遊園地などもあり,必要とするエネルギーは雷さまの起こす電気エネルギーや風力でまかなっている。表彰式では「地球が抱える問題は,この方舟に乗ればすべて解決しそうな夢と希望がある」ことを,受賞の理由として挙げていた。
「雷さまの方舟」紹介ページ
ミドル部門では,チーム高砂小学校の作品「Symphony of Lives(いのちのシンフォニー)」が最優秀賞を受賞した。
自然界で森林が果たしている酸素の生成,土壌の保水,菌類やバクテリアによる生分解などを行える都市を建設。それを森林の代わりとすることで自然の循環を促進,陸の環境を整えることで海の生態系まで守ってしまうという一石二鳥,いや一石三鳥なコンセプトの作品だ。
住宅は蜂の巣やシロアリの巣の仕組みを応用し,強固かつエアコン要らず。発電は人工光合成で行うためクリーンに行えるという具合に,バイオミミクリー(自然界の仕組みを真似て活用する技術)が上手く活かされている。自作アドオンを使ってアドベンチャーゲームのようなミッションを用意し,そのテキストをVOICEVOXを使って読み上げるなど,演出面にもこだわった作りで,遊びながら生物の多様性の大切さを学べることも高い評価を受けていた。
「Symphony of Lives(いのちのシンフォニー)」紹介ページ
そしてヤング部門の最優秀賞は,metaleさんの作品「巨大樹がつなぐ生命」だ。
この世界では巨大樹が生態系を支えており,人間の村は巨大樹を神として信仰しつつ,そこに集まる動物を狩って生活している。ただ巨大樹の力ゆえか,ティラノサウルスような恐竜も復活を遂げ,「この世界では,人間は生態系の頂点に君臨しているわけではない」とmetaleさんは語る。
生活様式も現代とは異なり,電気を必要としないものに移行している。さらに村が定めた禁足地には,かつての文明の名残もあり,人類の最後の希望だった植物研究所は放棄されて久しい姿となっていた。
この世界の人間は現代文明を捨てたが,それでも巨大樹の下で栄えている──。人類の繁栄とは何なのか,metaleさんなりの思いや哲学が伝わってくる作品だった。
「巨大樹がつなぐ生命」紹介ページ
今回のMinecraftカップに集まった作品群は「雷さまの方舟」「巨大樹がつなぐ生命」に代表されるように,社会の問題を人知を超えた存在や夢のテクノロジーによって解決した“小規模な集落・施設”が多く,参加者が自由にイメージを膨らませながら制作に取り組んだことが伝わってきた。だがそれは同時に,現実世界の大都市,そして社会が一朝一夕には解決できない諸問題を抱えていることを再認識させる。
作品の制作をきっかけに多くのことを学んだ子供達が成長し,各々の少しでも暮らしやすい世界を築いてくれれば……最終審査会を通じたそんな思いを抱いた。次回のMinecraftカップにおいても,夢と希望にあふれた作品と出会えることを期待したい。
なお,最優秀賞のほかにも,さまざまなアワードの受賞者が決定している。ぜひ以下のリンクから確認してほしい。
各アワード受賞者の紹介ページ
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