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「教育版Minecraft」を活用して,デジタルものづくり教育の発展を目指す。「Minecraft」が教育にもたらす効果などが語られたセッションをレポート
これは,大手町・丸の内・有楽町で「体力」「まちめぐり」「理科実験」「食」「工作」「音楽」をテーマに開催されるワークショップ「エコキッズ探検隊」(関連リンク)の催しのひとつで,“未来の丸の内をMinecraftで制作し,ARで現実世界に重ね合わせて見てみる”という試みだ。
また,Minecraftで未来の丸の内をデザインしよう!は,「教育版Minecraft」で制作された作品を全国・海外から募集し,その内容を競い合う「Minecraftカップ」に向けたワークショップでもある。
本稿では,大会ディレクターの土井 隆氏が,Minecraftカップ開催の意義と目的,デジタルものづくり教育の現状と課題,Minecraftが教育にもたらす効果などを語った,保護者&メディア向けの説明会と,未来の丸の内を子供たちがデザインしたワークショップの模様をお届けしよう。
「Minecraftカップ」は,教育活動の一環として子供たちへどのように作用するのか
土井氏はまず,来場者に向けて「Minecraftとはどういったものか」という説明を行った。「Minecraft」は,子供にはかなりの認知度を誇るが,それに比べ大人たちにはまだまだその内容が知られていないという現状がある。
まず子供が何をやっているのかを知り,一緒に見てあげることが重要だとと土井氏は語る。
Minecraftの概要に続いて,「Minecraftカップ」とは,どういったものであるかという解説へ移る。
2024年に開催6年目となり,2万人以上が参加するまでになった本大会は,子供たちが教育版Minecraftを使って,テーマに沿ったワールドを作り発表するというもの。会場ではその流れが映像と共に紹介された。
大会では子供たちがチームを結成し,テーマに沿った街のデザインを作成する。例えば,「誰もが元気に安心して暮らせる持続可能な社会」をテーマにした第5回Minecraftカップでは,ビートルートを使ったバイオエタノール発電,スカルクセンサーでの音力発電など,エネルギーを生み出す方法までを子どもたちが考えて,Minecraftで街を作成していた。
最後にはそうして作り上げた街について,自分たちの言葉でどのような街なのかを発表する。教育版Minecraftをプレイするだけでなく,チームでの行動,それに伴うやり取り,外部へのプレゼンテーションなど,さまざまな体験ができるというわけだ。
教育活動の一環として「Minecraft」がどう使われるか,そしてそれが子供たちにどう作用しうるか。データを伴った説明に,参加した保護者たちも興味深く聞き入っていた。
そして,今回開催される第6回Minecraftカップのテーマは,「Well-beingをデザインしよう〜未来を楽しむために,今できることを考えてみよう」だ。
今年からは学年別の部門を撤廃し,「まちづくり部門」「たてもの部門」のふたつに再編されている。これにより,以前よりも初参加者へのハードルが下がった。また,取り組み方が分からない子供たちのためにはワークブックを用意するなど,制作の流れを指南し背中を押してくれる丁寧な導線も用意されているという。
続いて,土井氏は教育版Minecraftがどのようなものかを解説する。
教育版Minecraftは,「プログラミング-コードビルダー」「元素・化学物生成器」「カメラ・ポートフォリオ」だけでなく,教師向けの管理ツールも実装され,各学問領域の学習コンテンツも充実している。創造力,共働性,問題解決能力,探求心,プログラミング的思考を身に着けられるデジタルツールとして,教育の現場で活用されている。
しかし教育版Minecraftは,耳にしたことのある人は増えているものの,こうした具体的な内容について知る大人はほとんどいないのが現状だそうだ。
「Minecraftカップ」の“デジタルものづくり教育”で教育格差をなくしていきたい
“デジタルものづくり”の学習効果については,東京大学との共同研究が進んでおり,「Minecraftカップ」に参加し作品制作を行うことで,特に視点の転換,多様な発想を生み出そうとする“柔軟性”が伸びるという結果が出ているそうだ。教育版Minecraftは,プログラミングを学べるだけではなく,こどもたちの発想や学ぶ姿勢を育んでいるのだと土井氏は語る。
「Minecraftカップ」は,運営委員会方式をとっている。さまざまな企業が教育版Minecraftを教育的な活動に活用したい,という理念を持ち,パートナー企業として参加している。
2018年に文部科学省が掲げたGIGAスクール構想により,現在ほぼすべての自治体に“一人一台”の端末が届けられているものの,いまだ運用面では現場に委ねられている部分が非常に大きい。それを利用する学校教員のリテラシー,教材・カリキュラム整備には大きな差があり,各家庭の意識差も大きいのが現状である。
そこで,身近な教育版Minecraftによってそれを変え,デジタル教育を十分に子供たちへと届けていく。そして,未来の製造業や技術革新を担う人材を育成する。これがMinecraftカップが掲げる “デジタルものづくり教育”の目的だ。
それには大人たちへの啓蒙も含まれており,日本財団をはじめとしたパートナー企業などと連携し,地域に根差したデジタルものづくりのコミュニティの育成や,教員・教育委員会への具体的なアドボカシーを実践することにも力を入れているそうだ。
土井氏は,「Minecraftカップ」を,野球における甲子園のような大会に育てたいと語る。競技人口が多くなることで,コーチコミュニティがうまく回っていくような広がりを持たせ,応援する環境を作っていきたいのだそうだ。
セッションには,大会の審査委員長であり,本ワークショップの講師でもあるタツナミシュウイチ氏も登壇した。タツナミ氏は,2018年にマインクラフトマーケットプレイスにて,アジア初,日本初の作品をリリースし,教育版Minecraft関連の書籍も複数発行している“プロのマインクラフター”だ。現在は教育版Minecraftをプラットフォームとした教育にも力を入れ,精力的に活動をしている。
タツナミ氏は,教育版Minecraftは“ものづくり”が本分であると話す。リリースの翌年に実装された“レッドストーン回路”は,3つの論理回路を組み合わせて,自動ドアや罠などを作り出す遊びができるのだが,それは高校の「情報I」でも登場するような内容だ。
これに衝撃を受けたタツナミ氏は,教育版Minecraftをデジタルのプラットフォームとして教育に活用することに大きな可能性を感じたのだという。そして,重要なのは大人の導き方であり,「Minecraftカップ」は明確な目標を掲げて目指すことができる良い機会でもあるとタツナミ氏は述べた。
日本の公教育は予算が少なく,環境整備の面ではまだまだ課題があるという。ライセンスの無償提供を進めていくなど,しっかり投資をして民間からもデジタル教育を支えていかないとならないのが,現状であるとタツナミ氏は語る。
それらを踏まえ,タツナミ氏は「大人が情報をアップデートしてください。次世代に必要な能力を育てるツールとして,教育版Minecraftを認識し投資をしてあげてください」と会場の保護者たちに呼び掛けた。
そして,土井氏から,実際に現在教育版Minecraftを導入している学校や地方でのワークショップ,企業との取り組みなど具体的な活動事例が紹介された。これらは「Minecraftカップ」公式YouTubeチャンネル(関連リンク)で確認できるので,あわせてチェックしてほしい。
ワークショップで制作したまちのデザインを,ARで現実世界とドッキング!
説明会と並行して,子供たちは4つのグループに分かれ,意見を交わしながら“未来のまち”を教育版Minecraftで作り上げていった。制作が終わると,子供たちはグループごとに外出し,出来上がったデザインをARで重ね合わせて見てみることに。ここからはワクワクの時間だ。
この技術は,株式会社ホロラボ(関連リンク)が提供しているものだ。教育版Minecraftで自分たちが制作した建築物が,AR技術により,実際の街の自分が指定した場所に原寸大で現れたように見える。
この楽しさを味わうことは,実際にXR技術の一端を体験するだけに留まらず,未来の街づくりや,それに求めらるものを肌で感じる機会になったのではないだろうか。また,計画性をもたせた作業やグループワークの体験など,多くの学びを楽しみながら得られる場でもあったはずだ。
今後もこういったワークショップや「Minecraftカップ」などを通し,“デジタルものづくり”の活動に触れる子供たちが増えていくことを期待したい。そしてそれを実現するには,我々大人世代も知識のアップデートをし,より理解を深めていく必要があるのでないだろうか。
「Minecraftカップ」公式サイト
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