ついに発売を迎えた「セブンスドラゴン2020」，秋葉原で開催された発売記念抽選会のフォトレポートを掲載。発売に寄せた開発陣合同インタビューも

　2011年11月23日，セガより発売されたPSP用RPG「セブンスドラゴン2020」の発売記念抽選会が，東京・秋葉原の「クラブセガ秋葉原 新館」にて開催された。出演声優や開発スタッフのサイン色紙，イラストを手がける三輪士郎氏の「直筆サイン入り高画質イラストパネル」など，豪華なプレゼントが用意されたこのイベントには，前作からのファンを始め多くの来場者が集まり，会場を賑わせていた。

　また当日は本作でプロデューサー務める小玉理恵子氏のほか，楽曲を手がけたサウンドコンポーザーの古代祐三氏，初音ミクが歌う本作の主題歌「SeventH-HeaveN」の作詞/作曲/編曲を務めたsasakure.UK（ササクレ・ユーケイ）氏も来場。さらに，取材後に行われた合同インタビューではディレクターの新納一哉氏，キャラクターデザインの三輪士郎氏も駆けつけた。

　イベントの模様は，末尾の写真に説明を譲り，まずイベント後に行われた合同インタビューの模様をお伝えしていこう。

左からコスプレのお姉さん，古代祐三氏，小玉理恵子氏，sasakure.UK氏

「セブンスドラゴン2020」公式サイト

――発売を迎えての感想をお願いします。

小玉理恵子氏（以下，児玉氏）：
　実はこの5人が一堂に会したのは，これが初めてなんですよね。なので，皆で「発売されてよかったよね」と言い合えるのが非常に嬉しいです。

sasakure.UK氏：
　長い期間を経ての発売ということで，とても嬉しいですね。今回の楽曲はボーカロイドの技術的な良さを全面に押し出したものになっているので，それが皆さんに伝わればいいなと思っています。

古代祐三氏（以下，古代氏）：
　ちょうど昨年（2010年）の11月ぐらいからBGMを制作していたのですが，あっという間に時が経ってしまって，時の流れは早いなと実感しています。長い期間，制作に関わらせてもらったので，発売されて良かったと感じています。

新納一哉氏（以下，新納氏）：
　前作ではプレイヤーからのご指摘を多数いただき，反省点もいっぱいありました。今回はそれを踏まえて，ハードや世界観を変え，新しいクリエイターの方達と頑張って作りました。昨日（11月22日）はTwitterで，皆さんからたくさんのメッセージをいただいて，泣いてしまいました。ぜひ買って楽しんでほしいと思います。

三輪士郎氏（以下，三輪氏）：
　キャラクターデザインのお仕事というのは今回が初めてで，最初はすごくプレッシャーがありました。でも新納さんや小玉さんといった，自分がこれまでプレイヤーとして楽しませてもらっていたクリエイターの方達と一緒に作品が作れて，とてもありがたかったです。前作ファンにも受け入れてもらえたら嬉しいですね。


――開発秘話などがありましたらお願いします。

新納氏：
　デバッグにしても調整にしても「やれるところまでやっていいよ」と小玉さんから言っていただけて，ビックリするくらいギリギリまで色んなことをやりました。実は僕，その直後に倒れて手術したんですけど，こんな時期まで（開発を）引っ張っていいのかと思うくらい，引っ張らせてもらえたので，僕としてはありがたかったですし，セガさんには申し訳ないという気持ちでいっぱいです。

小玉氏：
　ゲームというのはバランスの取り方で善し悪しが分かれてしまうので，今回はとことんやってもらおうと思ったんです。スタッフ一同，バランス調整には時間をかけたので，皆さんには満足してもらえる出来になっていると思います。

sasakure.UK氏：
　僕は古代さんの楽曲をアレンジしてボーカロイドの主題歌を作ったんですが，それが一度リテイクになってしまったんですね。
　後でリテイクを受けたバージョンを聴いてみたら，確かにボーカロイドの良さが前面に出ていない部分があったんです。なので，その料理の仕方が大変でしたね。終わった後にも完成したものを聴いてみましたが，やっぱり直して良かったなと思いました。
　
古代氏：
　実は製作中，1つだけ辛いことがあったんです。皆さん同じ気持ちだったとは思うんですが，3月の地震の時，かなりテンションがブルーだったんですね。しかもその時に，何だか怖い感じの曲を作っていて，「なんでこんなテンションの時にこんな曲作らなきゃいけないんだっ」って思ってました。なので，3月11日から1か月くらいはほとんど何もできなくて，かなりきつかったです。

三輪氏：
　キャラクターデザインはかっちり決まったイメージがあったので，それに沿ってデザインしていったんですけど，それが楽でもあるし，「いや，俺はそうじゃない！」って意見がぶつかったこともありましたね。でもそれが大変でもあり，面白いところでもあるので，とても楽しかったですね。あと，製作中は月刊の連載と同時進行でやっていたので，それも大変でした。


――製作中はかなりディスカッションされたんですか？

三輪氏：
　僕は，セーラー服は上下黒がいいと思ったんですけど，新納さんは「夏服じゃないとダメです！」っておっしゃって，お互い譲らなかったこともありましたね（笑）。

女性SAMURAI（サムライ）

新納氏：
　SAMURAI（サムライ）の女性は，ある種主役ともいえるキャラクターなので，髪も黒だし，黒服だとちょっと暗いかなって思ったんですよ。三輪さんはセンスのある方なので，デザインが格好良すぎるところがあるんですよね。格好良すぎるから直してくれっていうのも謎なんですけど（笑）。もうちょっとベーシックに落として，みんなが愛着の湧くような感じにしてほしいなって。

小玉氏：
　最後の最後なので言ってしまいますが，私は入院して，もしかしたらもうゲームが作れなくなってしまうのではと思った時期もあったんですね。実は「セブンスドラゴン2020」の企画書を読んだのは病室だったんです。新納さんが病室まで来てくださって，ウチの部長と私に「こういうものを作ろうと思うんですけど」とプレゼンしてくれました。それから一年半くらいなので，非常に感慨深いです。

――前作はオーケストラを使った楽曲が多かったと思うんですが，今回は打ち込み系が多いですよね。その点で工夫した部分はありますか？

古代氏：
　最初，三輪さんのイラストを見せていただいた時，これは前作と同じような楽曲はまったく合わないですね，という話を新納さんとしていたんです。そこからどうしようかって試行錯誤していったんですけど，割とクラブミュージック寄りのものが合うことが分かってきたので，結果として打ち込み系のサウンドを採用するに至りました。前作のアレンジも入っているんですけど，ほとんど新作のような感覚で作りましたね。

――皆さんがそれぞれ担当した部分で，ここはぜひ見てほしいというところがありましたらお聞かせ下さい。

sasakure.UK氏：
　主題歌はすごく思いを込めて作ったので，ゲームをプレイしてから主題歌の歌詞やアレンジを聴くと，理解が深まってまた違った発見があると思います。ですので，主題歌はぜひヘビロテしてほしいですね。

古代氏：
　実は初音ミクバージョンをやるって聞いたのが，開発が終わる1か月前くらいだったんです。今回はメロディが捉えられないような，歌モノとは真逆の方向性の曲を作っていたので，最初は「初音ミクをどうやってのせるんだろう」と思いました。でも上がってきたのを聴いて，「こんな風になるんだ！」って，良い意味で驚いたんです。
　私の今回の楽曲がアンダーグラウンドな感じだとしたら，初音ミクバーションはすごくポップなんですよ。ただ単にアレンジしただけでなく，ミク用の素敵な曲もいっぱい入っているので，ぜひいろんな方に聴いていただきたいですね。


三輪氏：
　選択できるプレイヤーキャラクターが今回は10体なので，前作よりも減ってしまってはいるんですが，その分ノンプレイヤーキャラクターをたくさんデザインさせていただいたので，その辺りも楽しんでいただけると嬉しいです。
　あとミクのデザインはメインキャラクター以上に紆余曲折があったんですけど，最終的にはいいものができたと思うので，そこもぜひ楽しんでほしいですね。

新納氏：
　このゲームのテーマでもある，東京が舞台だからこそのサブキャラクター，イベントなどの世界観を見てほしいですね。あとバトルのバランスは最後まで調整したので，そこもぜひ見てほしいです。まあ，僕個人としては全部見てほしいというのが本音ではあるんですけど。

小玉氏：
　前作から言ってるんですけど，さわり心地のいいRPGにしたいよねっていう部分については今回も守っています。あと世界が滅びるという重い話ではありますが，シナリオやセリフについては人間の強さを表現しているつもりです。そこの軽妙さにも注目してほしいですね。


三輪氏：
　前作にも登場したキャラクターが3人ほどいるんですが，彼らは前作とまったくイメージが変わらないのもいれば，前作とは全然違うデザインになっているキャラもいます。その辺は色々考えつつデザインしましたので，プレイ中はその部分も見てほしいですね。

新納氏：
　あとプレイする時は，ぜひメディアインストールをしてほしいですね。快適さが全然違うので。よろしくお願いします！

――本日はありがとうございました。

会場には「セブンスドラゴン2020」の職業の1つである“SAMURAI（サムライ）”のコスプレをしたスタッフの姿も

抽選会の様子。見事「三輪士郎氏直筆サイン入り高画質イラストパネル」を当てた男性は，前作からの「セブンスドラゴン」ファンとのことで，本作も非常に楽しみにしていたと話していた