インタビュー
「ハースストーン」最新拡張セット“深淵に眠る海底都市”合同インタビュー。開発チームが新たな種族やキーワード能力のコンセプトを語る
“深淵に眠る海底都市”の舞台となるのは,海底に眠る古代都市「ジン・アズシャリ」だ。目玉となるのはミニオンの新種族「ナーガ」,新たなキーワード能力「超大型」と「海底探査」で,それらの新要素を含む全135種類の新カードが収録される。
“ヒドラ年”のスタート地点でリリースされる今回の拡張セットでは,コアセットのリニューアルも行われるため,ゲーム環境が一変することになる。本稿では,そんな新拡張の開発に携わったChadd Nervig氏とLeo Robles氏に向けて行ったオンライン合同インタビューをお届けしていく。
「ハースストーン」,新拡張“深淵に眠る海底都市”を本日リリース。4月15日にリリース記念番組“甲板員の宴”を生配信
Blizzard Entertainmentは本日,デジタルカードゲーム「ハースストーン」の新拡張「深淵に眠る海底都市」をリリースした。本拡張は古代都市ジン・アズシャリの海底遺跡への潜航調査がテーマになっていて,海洋生物を中心とした135種類の新カードと,新キーワード「超大型」「海底探査」,新種族「ナーガ」が追加された。
「ハースストーン」公式サイト
新拡張セットはワンターンキルやコンボ要素を軽減
新種族は今後も継続して登場予定
――これまでは,ローテーションの最初のパックが,複数の拡張セットにまたがって語られるストーリーの始まりになることもありました。今回はどんな形になるのでしょうか。
Chadd Nervig氏(以下,Nervig氏):
いえ,シリーズではなく単独の拡張セットとなります。
――今年も各拡張セットに向けたミニセットはリリースされるのでしょうか。
Nervig氏:
現状ではお伝えすることはできません。ただ,ミニセットが人気であることは理解しております。……とだけお答えしておきます。
また,現時点ではアップデートに焦点をあてた告知を中心に行っているだけで,ミニセットに関する発表が行われないことについては,特に明確な意図があるわけではありません。
――グリフォン年では,しばしばOTK(ワンターンキル)やコンボデッキが環境を支配していました。それに対して,ヒドラ年については開発チームから「ボードを中心とした戦うゲームメイクをしたい」という旨の情報が発信されています。今回の拡張セットはそういった点を重視してデザインされているのでしょうか。
Nervig氏::
ご指摘の通り,去年はOTKやコンボデッキが流行しました。もちろん,それらのデッキを楽しんでいるファンの方もいるのは認識しています。しかし,そのぶん今年はOTKやコンボの要素を軽減し,ミッドレンジ(中期戦)やコントロール(長期戦)のデッキが楽しめる環境を目指しています。
――拡張セットの舞台を古代都市「ジン・アズシャリ」に設定し,新種族「ナーガ」を追加することにした理由を教えてください。
Leo Robles氏(以下,Robles氏)::
“海底”というコンセプトを考え,それにマッチするテーマを探したところ,ジン・アズシャリがピッタリだったというのが理由の1つです。
そして,ジン・アズシャリをテーマにするのであれば,住人であるナーガも登場するべきですよね。そういった流れで,種族としてナーガを追加することになったんです。
●新種族:ナーガ
ナーガは呪文と強い結びつきを持つ種族で,ナーガが手札に存在するときに呪文を使った時に発動する能力を多く持っている。呪文を中心とした戦いを得意とするメイジだけでなく,ハンターやウォリアーにもナーガ種族のカードが登場するようだ。
――新種族としての登場となると,ゲームバランス上の影響も大きくなるかと思います。そういった形での実装を決断した理由はどこにあるのでしょうか。
Nervig氏::
今回の拡張セットでは,スペルを重視したデッキや,多彩なミニオンのシナジーを活用したデッキなど,さまざまな楽しみ方を用意しています。そうした,新しいプレイスタイルを提供するために,新種族という形でナーガを登場させることを決めました。
――以前に登場した種族「キルボア」は,現在まで追加がありませんでした。今回のナーガは,今後の拡張セットに登場するのでしょうか。
Robles氏:
ナーガは今後の拡張セットでも,継続的に追加していくことを考えています。キルボアに関しては,もともとバトルグラウンドから移行した種族ですので,前提が少し違うと考えてください。
――新キーワードの「超大型」と「海底探査」は,いずれも大量のマナを必要とします。いずれも,レイトゲーム(ある程度の時間をかけることを前提とする戦い方)を想定したデッキとの相性が良いように感じますが,実際にはどんなゲームメイクを意識してデザインされたのでしょうか。
Robles氏:
これらのキーワードは,レイトゲームを意識してデザインしたわけではありません。コントロール系デッキで活用できるのはもちろんですが,アグロデッキ(短期決戦を狙う攻撃的なデッキ)でも海底探査を活用することでスピーディな攻めを継続することができます。完全なコントロール向けのキーワードという意識はありません。
●キーワード能力:海底探査
デッキの下から3枚を見て,その中から1枚を選んでデッキの一番上に置く能力。デッキの底に埋まってしまったキーカードを掘り起こせるのはもちろんのこと,新カードの中には強力なカードをデッキの一番下に置く(テキスト上では“沈める”と表現)能力を持つものが存在する。
――「超大型」は特徴的なキーワード能力ですが,いつ頃からアイデアとして用意されていたのでしょうか。
●キーワード能力:超大型
複数のカードで構成される強力なミニオンを表現する能力で,本体を召喚すると自動で“追加部位”が召喚される。本体と追加部位は強力なシナジーを持ち,1枚でゲームを一気に変える可能性を秘めている。
Robles氏::
今回の拡張セットに向けて“カードの枠に収まらない巨大なミニオン”を表現するために作ったキーワード能力です。海底の規格外に巨大なクリーチャーを表現するには良いアイデアだろう,というわけですね。
Nervig氏::
ただ,正確に言うと「激闘!ドラゴン大決戦」でも一瞬だけ浮上したアイデアではあったんです。でも,当時は実装が難しく,お蔵入りになってしまっていました。
――「超大型」は複数のアートが1枚のミニオンを表現する形になっていますね。これを実装する上での開発エピソードなどありますか?
Robles氏:
このキーワード能力は,シンプルに「巨大なミニオンを作ってみよう!」というアイデアからスタートしました。
デザインにあたっては,カード1枚を新しく考えるというより,登場させたいキャラクターのアイデアから「これをハースストーンのカードとして遊ぶにはどうしたらいいだろう」と考えています。これまでのカードとは,少し違う作り方になりましたね。
――今年以降のシングルプレイコンテンツは,どういった形式のものを用意していますか?
Nervig氏:
これに関しては,現時点でお伝えできることはありません。ただ,ソロプレイコンテンツに関しては新しいものを用意していますので,期待しておいてください。
――ひさびさのメックメイジ強化を含め,ワイルド環境にいても影響が大きそうな新カードが多く発表されています。ワイルドに対する何らかの施策は用意されていますか?
Nervig氏:
「メイックメイジだ,やったー!」と,メックメイジの帰還を喜ぶ声は耳にしています。ですが,ワイルドにおける弱体化などは考えていません。ワイルド環境も含めて,いろいろなデッキを考えてみてください。
――今回のシネマティックトレイラーは,普段とは雰囲気が違いましたね。その意図や,反響について教えてください。
Nervig氏::
今回はモダン風のスタイルを取り入れて,普段とはまったく異なるアプローチを採用しました。我々としても「今までとは違うことをやってみたい」という意識があり,このトレイラーの形につながりました。この挑戦は,コミュニティの方からも高評価をいただいています。
これまでは挿入歌を用意して各言語向けにローカライズしていましたが,歌をあえて入れず,音楽だけで雰囲気を楽しめるようにしています。また,英語版に限る話になりますが,盲目のプレイヤーの方でも快適にプレイできるよう工夫を凝らしていますので,その点もご注目ください。
――トレイラーには「探検同盟」のサー・フィンレーが登場していましたが,ほかのメンバーも登場するのでしょうか。
サー・フィンレーが登場することは間違いありませんが,残念ながらレノたちは登場しないかもしれません。
――トレイラーを作る時,ハースストーンチームはどこまで深く関わっているのでしょうか。
Nervig氏:
もちろん,トレイラーチームというのは存在しています。しかし,制作を丸投げする形ではなく,互いにアイデアを出し合いながら作っています。
――今年の拡張にも隠しパズルのようなものがあるのでしょうか。
Nervig氏:
もちろん“隠し”パズルなので,ここで「ある」とは言えません。でも個人的には,コミュニティの人がそれを発見して,共有して,みんなで楽しむ流れは大好きです。……という言及に留めさせてください(笑)。
――最後に,日本のハースストーンコミュニティに向けたメッセージをいただけないでしょうか。
Nervig氏:
日本のコミュニティの皆さんが,新しい拡張セットに触れていただくのが楽しみです。自由に旅行ができるようになったら,僕はすぐにでも日本に行きたいと思っているので,その時はよろしくお願いします。(日本語で)ありがとうございます!
Robles氏:
新しい拡張セットでは,ゲームを含めていろいろな楽しみ方を用意しています。それを味わってもらえるのが,すごく楽しみです。
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(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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