業界動向
【山本一郎】モンスターストライクがApp StoreからBANされた件につきまして
私の裴元紹が号して100万(実数15万)の軍勢を率いて黄河を渡り,船を繋げたら火を放たれて敗軍の将になるようなプレイングができるようになるのでしょうか。いまから楽しみでしょうがありません。李典や蒋幹,韓馥など,微妙武将の人生を追体験できる日々を待っております。
日本で現在一,二を争う流行の大型アプリですので,何でこんな大口アプリがBANされたのということで一部憶測は広がっておりますが,ミクシィに関してはかねてからApple(日本法人ではなくアメリカ本社筋)からの警告の多いデベロッパであったと,関係者への取材で明らかになっています。
少なくとも,ミクシィの実施してきたモンスト関連事業については,適法性が微妙視される行為がオンパレードでありまして,ある意味「稼げるうちに稼ぎ切っておこう」という,スマホゲームで収益を上げている組織特有の香ばしい匂いが満喫できる事案であるということですね。
そもそも2015年5月より,Appleからミクシィに対し,以下にまとめた各種の問題点は通達されており,ミクシィ側もそれらに関して「問題である」という認識を持っていると見られます。
なおApp Storeの場合,アプリがストアからBANされると,アプリ内課金もできなくなります。ユーザーからすると,モンストに課金しようと思っても突然できなくなってしまう状態になります。
今回の現象面については,ねとらぼでアップトーキョーが記事にしておられましたので,まとめてご覧いただければと思います。
他サイト関連記事:「モンスターストライク」がApp Storeから突然消滅→シリアルコード利用停止の告知出す
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1508/29/news032.html
なお,現時点で判明している指摘されるべき問題点について,以下に整理しておきます。
1. 友人招待や商品特典などの「シリアルコード」入力でアイテム配布などの規約違反行為(※)
イベントやほかのコンテンツなど,タイアップ中にログインしたユーザーを対象に,プレイしていないユーザーを誘引するために発行するシリアルコードによる特典の配布は,ユーザー間同士の遊び方に差が出る取引を誘発する問題がありますので,利用規約上違反とされています。
モンストの場合は,かねてからタイアップでAppleからこのようなキャンペーンを行わないよう指摘が複数回行われていたにも関わらず繰り返し実施されていたこともあり,取引上不誠実な行為があるとされ,BANに踏み切る原因のひとつになりました。
シリアルコードが利用規約違反になる理由は明確で,ユーザーがAppleの課金システムを通さずに外部の決済システムからコードを購入できるようになると,Appleが決済手数料として徴収する30%の取り分が確保できなくなるからです。プラットフォーム事業者として各アプリ間だけでなく,プレイヤー間での公平な取引を行うことが米FTCにより義務付けられておりますので,ストアを迂回する決済手段は認められません。
一部まとめサイトなどで,古い情報としてApple representativeの見解が流れていますが,現在は,招待する側も招待される側も問題とされており,アプリBANの対象となっています。
したがって,友人招待やタイアップ企画などでユーザー層の拡大を図る目的でシリアルコードが発行されることは(※),以下で触れているブースト(リワード広告)同様に重大な規約違反となります。モンストの場合は,招待に対してシリアルコードを発行しないよう2015年5月ごろにAppleから指摘をされていたにもかかわらず,その後のアップデートでシリアルコードを入力する欄そのものを削除する代わりに,AppleにバレにくいようWeb経由で入力して送信する方法に変更しています。これが,デベロッパとして規約違反逃れであると判断され,その売り上げの規模に関わらずAppleがBANに踏み切った理由です。
なお規約の詳細は,Apple App Store Review Guidelinesに記載されています。
※編注:一部誤解を招く恐れのある文章を適切な形に修正しました
2. 無料ランキングの不正操作を行う可能性のある行為
ヤフーニュース個人でも以前指摘しましたが,俗に言うリワード広告は,AppStore/Google Play共にデベロッパが守らなければならないガイドラインに抵触するものであり,現在も横行しているため,アメリカFTCではこれらの欺瞞的取引を防止するための法律の策定が早期に検討されるなど問題視されています。
他サイト関連記事:グノシー他,AppBank「モンスト攻略」ブーストでアプリダウンロード数を水増し
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20150613-00046604/
そればかりかユーザーに対する褒賞を提供する胴元側に回り,アプリ紹介サイト大手による「モンスト攻略」なる問題あるブーストアプリに加担したということで,注意すべきデベロッパになったと見られます。
なお,ブースト/リワード広告の問題については,以下をご参照ください。
他サイト関連記事:App Storeで過去最大規模の「おこづかいアプリ」大量削除 ランキングを不正操作する「おこづかいアプリ」と「リワード広告」の関係とは
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1508/11/news138.html
モンストに関わるこの一連の問題については,Apple側に重大な情報提供があったと言われており,さらにGoogle Playにおいても同様の問題が対策待ちになっているとの情報もあります。今回はAppleのApp StoreでのBANだけであり,Google Playではリストに残されていますが,近い将来何らかの問題が起きる可能性も否定はできません。
3. 外部サイトでのリセマラを黙認し,ダウンロード数を水増しする行為
ゲーム開始後のチュートリアルが終わるとガチャなどを引き,一定の割合でSSRなど高級なレアカードが出る仕様になっているゲームアプリにおいては,無課金で最初から強いキャラクターを引いて有利にゲームを進めるための「リセットマラソン」(リセマラ)という遊び方をするユーザーが後を絶ちません。
これは,ユーザーが自発的かつ自然発生的にやっていることですので,それ自体は問題になりませんが,オンライン上にはこれらのリセマラを自動で行い,出るレアカードなどの確率を表示するサイトが存在します。以下のサイトはAndroid版ですが,これらの行為を黙認してダウンロード数を水増ししている実情については,アプリプラットフォーム界隈だけでなく消費者行政方面にも広く知られているところで,早い段階で是正をすることが求められていくと思われます。
関連サイト:モンストガチャ研究所
http://monnsutogatya.com/
リセマラについては,行政側もプラットフォーム事業者も,水増しを意図的に行うことについては問題視するものの,自然発生的にユーザーが行うものについては許容されるべきというスタンスのようです。
4. 自演招待代行業者を取り締まらず,ダウンロード数を水増しする行為
モンストには招待ボーナスというものが存在し,フレンドを招待するとオーブという有償アイテムが発行される仕組みになっています(公式サイトより)。
しかしながら,これらの仕組みを悪用する形で自演招待代行業者が野放しになっており,いまもTwitterなどで自演招待代行業者の営業書き込みが乱舞している状態になっています(Yahoo!での検索結果)。
本件においては,プラットフォーム業者から各デベロッパに対しての直接の指摘はまだ出ていませんが,問題行為が放置されているという認識は持たれています。ミクシィがデベロッパとして,望ましくない取引を放置しているということで,上記シリアルコード入力の問題と併せて「そもそも招待による褒賞も含めたシリアルコードの発行を禁じることで問題行為が広がることを防ぎたい」とAppleは考えているようです。
PCでのオンラインゲームに慣れ親しんだ方からしますと,本件は簡易的なRMT的なものだと理解していただければ早いかと思います。PC上でたくさんのIDで偽装したアカウント同士で招待しあって有償アイテムを増殖させる手口で,場合によっては反社会的勢力やよからぬ会社などの収益源になっている可能性はあるでしょう。
5. 最後に
一部で「AppleやGoogleの一存でアプリが削除されるのでは,首根っこをつかまれた状態であって健全ではないのではないか」という内容も議論されているようですが,基本的にはデベロッパに対して適正取引を行うためのガイドラインが発表され,問題があってリスト拒否(リジェクト)される場合は必ずガイドラインに抵触している条項が明らかになって,その結果,アプリを通じて消費者被害が出ないようにしている,というのがプラットフォーム事業者の実情であります。
つまり理由なく拒否することはなく,もしもそれが行われた場合は独占禁止法上の問題(優越的地位の濫用)にあたるため,あまり気にしなくてもよいと思います。
つまり,今回のモンストのBANは普通にガイドライン違反であり,過去から複数回指摘され,それ以外のデベロッパとしての活動にも問題があるため,その売り上げ規模にも関わらずBANに踏み切られた,という話です。
また本件に限らずデジタルコンテンツの適正取引については,日本の消費者庁や警察庁とアメリカFTCとの話し合いは定期的に行われており,プラットフォーム事業者がアプリの内容や広告の実施方法についての情報交換を重ねていて,問題点は,日米において相応の共通認識があります。
ミクシィがアプリ上の問題を解決し,ガイドラインに抵触する内容がなくなるのであれば,普通に再申請して数日内にBANからリストに復帰して通常運転に戻ると思います。逆に問題を放置したままであれば,BANが先行したAppleに追随する形でAndroid版もBANされる懸念はおおいにあります。
リワード広告やフレンド招待のシリアルコードといった問題と含めて,周辺の水増しによる欺瞞的取引もきちんと整理しながら,健全で明るく楽しいmixi界隈を形成していっていただければと思っております。アプリでしっかり稼いで,国産SNSの雄としてのmixi再興へ向けて進撃していっていただければ幸甚です。
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モンスターストライク
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