連載
東京レトロゲームショウ2016:第37回 手強すぎる「Commandos 2: Men of Courage」で,15年ぶりにトライアル&エラーとは何かを思い出してみる
1998年,秋葉原の片隅にある輸入ゲームショップで目にとまった,「Commandos: Behind Enemy Lines」というゲーム。スペインのPyro Studiosというあまり聞き慣れないメーカーが開発した本作には,当時,アメリカ軍のグリーンベレーに憧れ,さらにテレビドラマ「特攻野郎Aチーム」の大ファンだった筆者に,パッケージを手に取った瞬間,「これだ!」と感じさせるものがあり,気がついたら買っていた。だって,コマンドですよ,コマンド。
Steam「Commandos 2: Men of Courage」紹介ページ
日本での知名度はもう一歩かもしれないが,第1作は欧米で大ヒットし,翌1999年にはスタンドアロンの追加パックという感じの「Commandos: Beyond the Call of Duty」が,そして2001年にはシリーズ第2弾となる「Commandos 2: Men of Courage」が,さらに2003年には「Commandos 3: Destination Berlin」がリリースされている。日本では,第1作が「コマンドス:特殊工作大作戦」としてズーから,2作目以降は「コマンドスネクスト:続・特殊工作大作戦」「コマンドス 2」「コマンドス3:デスティネーション ベルリン」として,アイドス(当時)から日本語版が発売されている。
ちなみに,第1作を遊んで以来,コマンドスシリーズの熱狂的なファンとなった筆者は英語版と日本語版の両方をすべて所持しているのが自慢だ。
しかし今回,いざ遊ぼうと思ったら肝心のパッケージが行方不明になっていた。あれ? だが安心してほしい。「Steam」などを使えば,プレイしたい懐かしのゲームがすぐさま,比較的安価で手に入る。「コマンドス」シリーズも「Steam」に全4作品がラインナップされており,単品だけでなくセット販売もされているので,押し入れを探すのは面倒だとばかりに思わず買ってしまった。
すでに気付いている人もいるかもしれないが,今週の「東京レトロゲームショウ2016」は,そんな「コマンドス」シリーズから,「Commandos 2: Men of Courage」を紹介したいと思っている。筆者のように寝食を忘れてプレイした経験のある人も,「コマンドー」は知っているが,「コマンドス」は知らないという人も,ぜひチェックしてほしい。来いよ,ベネット!
コマンドスって,知ってますか?
本作は,第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を舞台に,グリーンベレー,工兵,スナイパー,マリーン,スパイ,ドライバー,シーフ,ナターシャ,ウイスキーという9人の特殊部隊員を操作して,ドイツ軍の拠点制圧など,さまざまなミッションを遂行していく斜め見下ろし型のリアルタイムストラテジーだ。
9人の特殊部隊員は職業を表す一般名詞と氏名などの固有名詞がごっちゃになっているが,役割は後述しよう。ちなみにナターシャはご想像のとおりロシア人の女性隊員で,またウィスキーはブルテリアだ。したがって,9人というより,8人と1匹というのがより正確な表現だろう。なお,隊員はたとえ1人でも,コマンドスと複数形で呼ばれる。
緻密に描かれたグラフィックスは当時からその美しさが話題になったものだが,解像度は昔のままなので最大1024×768ドットだ。ゲームの舞台となるマップはどれも比較的広く,自由にスクロールして眺めることができる。ミッションによっては数人のコマンドスがマップの各所に点在することになるため,画面を最大6つに分割して,それぞれの兵士を表示することも可能になっており,当時としては画期的なアイデアだった。
グラフィックスの見た目は2Dだが,内部的には3D処理が行われており,視点の切り替えや拡大縮小表示ができる。建物などとキャラが重なることが多く,そのときは画面を回転させて確認する必要があるのだが,あんまりクルクル回していると意外に酔うので注意が必要だ。
ユニットとなるコマンドスは,全員が歩く,走る,伏せる,匍匐,建物の出入り,銃を撃つといったいくつかの行動がとれる。ここで各兵士について簡単に説明すると,まずグリーンベレーは,ナイフで敵兵を倒したり,音響デコイで敵兵をおびき出したりする能力を持つ。工兵は地雷探知機で地雷の探知&撤去&設置ができるほか,遠隔操作爆弾が使える。スナイパーは遠距離からの狙撃が得意で,ドライバーは車両の運転はもちろん,車載武器や重火器が使える。スパイは変装して敵陣に乗り込み,毒薬注射で敵兵を倒したりでき,ウイスキーは地雷を発見したり,吠えて敵の注意を引きつけたりすることが可能だ。こうした,各コマンドスが持つ特殊技能を駆使しなければ任務の遂行ができないというゲームデザインになっている。
ミッションとしては,捕虜の救出,極秘資料の入手,暗号解読器の確保など,さまざまなものがある。ミッションごとに投入できるコマンドスは決められており,投入されたコマンドスを状況に応じて臨機応変に切り替えながら作戦を進めていくわけだ。
銃のほかに手榴弾や爆薬なども使えるが,基本は隠密行動で,複数のコマンドスが銃を撃ちまくりながら敵陣に攻め込む場面は本当に限られている。装備も必要最低限の物しか与えられないので,敵地で武器やアイテムを調達したりすることも多い。それらを事前に用意したり,地雷を撤去しておいたりなど,下準備が必要なミッションも少なくない。
トライアル&エラーを繰り返してミッションを完遂せよ
上記のように,ミッション遂行には敵兵に発見されないように行動することが重要だ。敵兵は音に敏感に反応するので,ヤツらの近くで走ったり,銃を使ったりするのは,殺してくださいと言っているようなもの。
また,敵には「視界」もあり,視界に入ると発見されて攻撃を受ける。視界は兵士の正面に対して放射状に広がっており,顔の向きに合わせて左右に動く仕掛けだ。また視界には遠距離と近距離があり,遠距離で見つかっても即座に発見状態にはならないので,すぐに視界から外れるか伏せれば大丈夫。しかし,近距離視界ではどんな状態でも,視界に入った時点で発見されて攻撃を受ける。
コマンドスは撃たれ弱く,ほとんどの場合,敵兵に見つかるとハチの巣にされてミッション失敗になる。すべてのミッションにおいて,敵兵は同じ場所で同じ方向を監視していたり,同じルートを集団で行き来しながら巡視していたりという具合に,決まった行動パターンがあるため,何度もやり直し,どの位置に移動して,どのタイミングで倒すか,あるいはやり過ごすかなどを,じっくり考えながら作戦を進める必要がある。最初はかなり悩むが,この隠密行動をしている感じがたまらん,という段階に至れば,あなたも立派なコマンドスだ。
テンキーでコマンドスを選択し,殴るなら[Q]キー,立つ&伏せるは[SPACE]バー,手榴弾は[A]キー,地雷探知機は[D]キーといった具合に命令を下すわけだが,そのあたりの覚えの悪い筆者はしばしばキーを間違えてアタフタしている。覚えきれない!
こうした操作ミスだけでなく,たとえ慎重にゲームを進めていても,いきなり地雷を踏んでドカン! など,一瞬でこれまでの苦労が水泡に帰することがよく起きる。ゲームにはNormal,Hard,Very Hardという3段階の難度が用意されているが,一番低くしても,とにかく死にまくりで,数え切れないほど失敗を繰り返すはずだ。
見ていたら,1人が定期的に箱のワインを取ってテーブルに戻ることに気づいた。そこで,ワインに睡眠薬を入れたら,全員が眠った |
タバコやワインを使って気をそらし,そのスキに背後から殴って気絶させるという手順は,ゲーム全般を通して使える常套テクニックだ |
必ず達成しなければならないミッションのほかに,クリアには影響のないサブミッションも用意されている |
倒した敵兵から装備や道具を回収できる。鍵のかかったドアを開けるために敵兵から鍵を奪うシーンもある |
チュートリアルが終わってプレイする最初のミッション「Night of The Wolves」では,敵の基地から暗号解読器を盗み出すことになるのだが,最初のミッションという優しさは微塵もなく,約20年ぶりに再挑戦した筆者は,あまりの容赦のなさに何度も泣き出しそうになった。目標にたどり着くまでの手順が複雑で,試行錯誤を積み重ねて一つ一つ問題を解決していかなければならないのだが,それだけに,任務が達成できたときの達成感はきわめて高い。そして,この快感をまた得ようと,任務達成の余韻に浸る間もなく新たな任務に挑戦していくのだ。自分で書いていて,かなりマゾゲーであるような気がしてきたが,欧米では「コマンドス的なゲーム」という言い回しがあるほどポピュラーな本作,あなたもぜひこの快感を味わってほしい。
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