連載
結のほえほえゲーム演説:第52回「拝啓,才能という神様を信じているあなたへ。」
前回で2周年を迎えたこの連載について,あらためて振り返っているうちに,一つ思ったことがありました。普段の連載では,ゲームを軸に,自分の気持ちをお話することを心掛けています。ゲーム関連の番組に出演しているときもそうですが,主役はゲームなので,ゲームより前に出たくないのです。
しかし,今年最後の回ということもあり,今回は珍しく,自分の気持ちを軸に,ゲームの話をしてみようと思います。ちゃんと伝えられるか不安な気持ちではあるのですが,お付き合いいただけると幸いです。
突然ですが,皆さんは「才能」というものを信じていますか?
久しぶりに会った作家の友人と世間話をしていたら,その友人がとある人のことを「あの人はいいよ。才能があって」と評しました。かれこれ長い付き合いの友人が,「才能」という言葉を口にしたのを聞いたのは,それが初めてのこと。その時の私は「あぁそうなんだ」とか何とか言って会話を続けたのですが,どうってことない会話の,どうってことない言葉のはずなのに,その一言がなぜか私の心に引っかかり,ポツンと残ってしまいました。
31年生きてきて,今さらなんですけど。「才能」って何なんでしょうか? 実をいうと,私はまだ「才能」という言葉にピンときていません。
誤解を恐れずに言ってしまうと,「才能」という言葉を軸に語る人の姿が,まるで見たことのない神様に惑わされているかのように見えてしまうときがあるのです。
世の中には「才能」というものを信じる宗教があるのかもしれない。そんな印象に近いような気がします。
「才能がある」という言葉はれっきとした誉め言葉で,多くの場合,そこに他意はないと思います。逆立ちしても真似できないような特技,想像もできないような独創性,誰かを圧倒する力。それらに遭遇したとき,真っ先に「才能」という神様のお導きに注目することに,私は抵抗があるのかもしれません。
もちろん私にも,才能という言葉を借りて,自分のことを「〇〇の才能がない!」と言いたくなる瞬間は多々あります。
例えば音楽。幼少期にピアノを習っていた私は,両手で違う動きをしなければならないのがあまりにも苦手で……。マンツーマンのピアノレッスンにも関わらず,爆睡して先生にブチ切れられたこともありました。
そして運動。水泳の授業中,握力がなさすぎて自力でプールから上がれず,毎回クラスの友人にお尻を持ち上げてもらっていました。先生には「ふざけないで真面目にやれ」とブチ切れられるわ,クラスのギャルからは女子校にも関わらず「非力アピールのぶりっこ」とブチ切れられました。ブチ切れられてばっかりだな私。
楽器が弾ければバンドをやりたかったですし,絵がうまければ漫画家にだってなりたかったです。運動ができればスクールカーストだって,もうちょい上位に入れたような気がします。
でもまぁこれって,「才能」という言葉を使うほどのことじゃない気がするんです。私は,自分がそれらに対する適性を持っていないことを知った瞬間,他人より時間をかけてまで努力して,他人並みになろうとすることを放棄しました。
「これはきっと私の仕事じゃない」「私にはほかに生きる術があるはず」と判断したわけです。
自らの適性を知り,自らの戦い方を選ぶこと。それがうまくいっている人のことを,人は「才能がある」と呼んでいるのではないでしょうか。
例えば……
・悲惨な幼少期
君は、悲惨な幼少期を送った。それは耐えうる力を育てた。
・一族の末裔
君は、古い一族の末裔である。そう信じ、血統を誇っている。
・特筆なし
君の過去は平凡で故に幸せだった。すべての能力が平均的。
といった具合。
「悲惨な幼少期」は持久力のステータス,「一族の末裔」は技量のステータスが高く,「特筆なし」は全ステータスが平均的。注目すべきは,どの過去を選んでも,ステータスの合計値が60になることです。
皆さん,お分かりでしょうか。そう,これこそがまさに,自分の適性を知り,自分の戦い方を決める……ということなのです。過去によって長けているステータスはさまざまでしょう。「あぁ俺,数学の才能ないなぁ」なんて思う人もいれば,「私は恋愛の才能がないなぁ」と思いながら暮らしている人もいるでしょう。
でも,ステータスの合計値はきっと60なんですよ。
結局「才能」なんてものは「どこのステータスを重視するか」というだけのことなのではないでしょうか。自分には才能がない,あいつには才能があると思いこんで,才能という神様に振り回されるより,合計値としてはきっと60が割り振られているはず(だから自分の戦い方を探さなければ)! と思うほうが,楽じゃないでしょうか。
でも,イージーモードやハードモードが存在すると仮定して,妬んだりひがんだりするよりも,自分のキャラメイクやステータスに合った戦い方を考えることや,それでもこの方法で戦いたいという意思や覚悟のほうが,きっとよっぽど重要なんだと思うんです。だってBloodborneは,どの過去を選んでも,戦い方さえ掴めばクリアできるようになっているんですよ?
私はだいぶ偏ったステータスの振り方をしている気がしますが,自分が自分である覚悟は少しずつできてきました。2018年も,私は私なりに,あなたはあなたなりに,頑張っていきましょう。良いお年を。
最近プレイしているゲーム(2017/12/23)
PS4:「New みんなのGOLF」
Nintendo Switch:「ゼノブレイド2」
Steam:「レイジングループ」
iOS:「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」
■■結(女優・タレント)■■
女優・タレントとしてフリーランスで活動中。国内映画祭にて主演女優賞を多数受賞。幼少期からのゲーム好きが高じ,数多くのゲーム番組でMCを務め,イトキチ(糸吉)の愛称で親しまれている。
公式サイト:http://yui-monogatari.com/
公式Twitter:https://twitter.com/xxxjyururixxx
ニコニコチャンネル「結チャンネル」:http://ch.nicovideo.jp/yuichannel
- 関連タイトル:
Bloodborne
- 関連タイトル:
Bloodborne The Old Hunters Edition
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(C)Sony Computer Entertainment Inc. Developed by FromSoftware, Inc.
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