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[G-STAR 2023]「面白さ」ではなく「買う意味」をデザイン。齊藤陽介氏とヨコオタロウ氏が,「NieR:Automata」の講演で仕事観を語る
「NieR:Automata」は,プラチナゲームズが開発し,スクウェア・エニックスが2017年2月に発売したアクションRPG。外部ディレクターのヨコオ氏は,プラチナゲームズのある大阪まで単身赴任し,机を並べて作業したとのこと。
本作は,累計出荷数750万本を突破している。この成功を再現できるかという問いに,齊藤氏は「簡単ではない」,ヨコオ氏は「完全に無理」と話し,斎藤氏は「バランスの取れたチーム」が成功の要因だと分析した。
チームメンバーには両氏に加えて,コンポーザーの岡部啓一氏,ゲームデザイナーの田浦貴久氏,キャラクターデザイナーの吉田明彦氏が並ぶ。
才能にあふれるメンバーだったが,集めただけではチームはうまくいかなかっただろうと斎藤氏は指摘する。ヨコオ氏は「才能を集めればうまくいくのは嘘」と応じ,自身と田浦氏の良好な関係によって,ビジョンを共有できたことがよかったと振り返る。
続いてのトークテーマは,本作の世界観について。シリーズの整合性を取るためにアンドロイドを登場させることからスタートし,最終的に「ゴスロリの女の子が日本刀を振り回す」形になったという。海外のプレイヤーの嗜好は分からないので,日本人にとって良い作品を作り,海外ではニッチなマーケットに支持される想定だったようだ。
ヨコオ氏は既存の作品と被らないことが全体のコンセプトだったと語る。オリジナリティとはちょっと違い,「◯◯みたいなやつ」と言われないような要素を増やすことを意識したとのこと。
また,ヨコオ氏は自身の暗い作風について,敵を倒す要素があるならば,戦争による殺人が発生しているはずなので,明るいほうが不自然だという持論を展開した。加えて,最近のゲーム業界は暗いキャラクターが増えてきて競合が多いとコメント。しかし,そもそもヨコオ氏はNieR:Automataを,「暗い話」ではなく「変な話」として制作していると語った。
終盤は,プロデューサーとディレクターの違いについて話し合われた。
斎藤氏は,プロデューサーはゲームを商品だと考え,会社の収支につなげることが第一だが,作品性を気にしなくていいわけではないと語る。ディレクターは作品性を重視すべきだが,商品性をないがしろにしていいわけではなく,どちらもバランスが重要だとした。
ヨコオ氏にとってディレクターは,「面白さ」ではなく「買う意味」をデザインする仕事なのだという。絵が好き,音楽が好きなど,面白さ以外の魅力も商品にはあり,それらを組み合わせることで新しい購入理由を作ることが重要だとする。NieR:Automataは,面白くなくてもいいから,プレイヤーがほかの人に話したくなったり,記憶に残ったりするような商品を目指して制作したと語った。
最後に,斎藤氏はヨコオ氏が生きているあいだは,NieRシリーズを出すことを断言した。しかし,すぐには出せない事情があるようだ。ヨコオ氏と一緒に取り組んでいる別のプロジェクトがあり,それについては来年のどこかで話したいと述べ,講演を締めくくった。
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