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[gamescom]原子力潜水艦クルスクの事故をテーマとした「KURSK」の制作意図とゲーム概要を聞いてみた
この事故をテーマとして,ポーランドのデベロッパであるjujubeeが作ったゲームが「KURSK」(PC / PS4 / Xbox One / Mac)だ。アドベンチャーとサバイバルを中心とした一人称視点のこの作品について詳しく話が聞けたので,レポートしたい。
「潜水艦の内部で火災」の絶望感
まずはgamescom 2016の会場でプレイできたデモの模様からお届けしよう。
本作は本来,モスクワから物語が始まるそうだ。やがてクルスクに乗り込んだ主人公は,そこでクルーと話をしたりすることで物語が進んでいくが,やがて爆発が発生,そこからはアクションとサバイバルに満ちたゲームへと変わっていく。デモ版では,この爆発が起きる直前からゲームがスタートする。
操作はゲームパッドで行い,アナログスティックでオブジェクトをポイントして,ボタンで動作という一般的なもの。ポイント可能なオブジェクトにはマーカー(白丸)がついているので,「どれに触れるんだろう?」と悩む必要はほとんどない。
しかるに爆発が起きると,周囲は煙と炎に包まれ始める。爆発のショックで歪んだ扉を強引に開けた主人公は,そこから先に広がる地獄へと足を踏み出していく……というところで,筆者が操作する主人公は死亡とあいなった。ほかのプレイヤーを見るともっと先までいけるみたいなので,要領よく,すばやくプレイすればもうちょっと長くプレイできたのだろう。
爆発後のプレイ感覚としては,アクションゲームというほど忙しくはないが,アドベンチャーゲームというほど「燃え広がる炎の只中で,何か手がかりはないかとあちこち探しまわる」ようなことはできない。それをして死んだ筆者が言うんだから間違いない。
このパートについては,「Heavy Rain」をひとつの目標としているとデザイナーが話していたので,「だいたいアレくらいな感じ」でQTEがあったりアクション的な要素があったりすると考えておけばいいだろう。
クルスク事故がテーマなのにマルチエンディング!?
さて,このプレイ後,開発者でjujubeeのCEOであるMichael Stepien氏に,開発方針や意図,ゲームの全体的な構造などについて聞いてみた。
まず開発方針だが,「アドベンチャーとサバイバル,そしてドキュメンタリーの融合」を目標としているという。「プレイヤーはただゲームを楽しむだけでなく,当時の社会情勢や発生した事件などについて学べるようなものにしたい」とのことだ。また,「あまり本を読んだり映画を見たりしない人に,過去の事件を知ってもらったり,あるいは知るきっかけになるようなゲームを作りたかった」とも語っている。
ゲームは,大きく分けて2部構成となっている。
第1部はほぼ完全にアドベンチャーゲームで,プレイヤーはほかのクルーと話をしたり,与えられた命令を実行したりする。しかしながら,この段階で既に厄介な話は動き始めている――クルスク内部で「政治的な何か」が起きているのだ。
プレイヤーは乗組員や水兵の信頼を勝ち取りながら,ときに秘密を守るべく行動しなくてはならない。乗組員との会話では選択肢が出現し,その選択肢によってプレイヤーの影響力が変化するのみならず,ストーリーそのものも分岐していくそうだ。
爆発が起こってからが第2部で,ここから先は上で説明したように,ややリアルタイム要素が強めの,サバイバル・アクションとなる。プレイヤーは火災を消火し,水を排水し(あるいは浸水から逃れ),またどうにかして酸素を確保し続けねばならなくなる。
興味深いことに,本作はマルチエンディングだという。
「いや,でもクルスクの乗組員は全員死んだわけですから,マルチエンディングと言っても,結局プレイヤーは死ぬのでは?」と聞いてみたところ,「クルスクの事故に関する発表はすべて『公式見解』だから,そこではもしかしたら我々の知らないことが起こっていたかもしれない……という陰謀論的なスタンスでマルチエンディングを作った」という見事なコメントが返ってきた。なんというか,「分かってる」感がすごい。
ともあれ,本作はUnity5で制作されており,PC/Macでリリースされるほか,PS4とXbox Oneでのリリースが予定されている。またVR対応も試みてはいるが,いまのところ未定とのことだ。楽曲に「Withcher 3」のMikolai Stroinski氏を起用するなど,随所に妙な力が入りまくった作品となりそうだ。