プレイレポート
[gamescom]膨大なテキストと独特のグラフィックスが彩る不思議な世界を探索する「Bear With Me」はこんなゲーム
ポイント&クリック型のアドベンチャーゲームを作るデベロッパは少なくないが,gamescomのIndie Arenaでは,とくに尖った雰囲気を持つ作品「Bear With Me」が展示されていたので,レポートしたい。
「5歳の頃から一緒にいる,キリンのMille」
「Bear With Me」(以下,BWM)は前述のとおり,スタンダードなポイント&クリック型のアドベンチャーゲームだ。デベロッパはExordium Gamesである。
主人公の少女「Amber」を移動させたいときは,移動先をマウスカーソルで指定してクリック。何かオブジェクトを触りたい(調べたり撮ったりしたい)ときは,そのオブジェクトを指定してクリック。このように操作はいたってシンプルで,長年に渡って洗練され続けてきたUIである。
もちろん,BWMには所持品の概念もある。集めたものを組み合わせたり,分解したりして,新しいアイテムに作り直すといった要素も,この手のゲームではよくある謎解き要素だ。
基本的にはスタンダードなポイント&クリックのアドベンチャーゲーム |
アイテムの管理も一般的なUI |
そういう意味では実にスタンダードなゲームであるBWMだが,まず露骨にほかの作品とは違うところがある。まずはそのアートワークだ。完全にグレイスケールで描かれたビジュアルは,どことなく陰鬱で,どことなく物寂しい。だが,これだけであれば,よくある「雰囲気ゲーム」である。BWMには,その先がある。
BWMの主人公であるAmberは,悪夢にうなされる。そして目が覚めたとき,彼女を起こしてくれたのはキリンのぬいぐるみの「Millie」であることを知る――というかこの段階で何もかもおかしいのだが,Amberはそれに対し一切驚きを見せない。
MillieはAmberに街で何か妙なことが起こっていると告げ,かつての相棒である熊のぬいぐるみ,「Ted」と仲直りして,また二人で捜査すべきだと助言してくれる。「熊のぬいぐるみとコンビで捜査」というのもだいぶアレな字面だが,本当にそういう話なのだから仕方ない。
しかるにTedに会ってみると,これが実に渋い声で喋るハードボイルドな探偵である。受け答えにも「らしい」冗談と言い回しが駆使されており,とにかくAmberとTedはかつて名コンビとしていくつもの難事件を解決してきたということが理解できる。かくして物語は幕をあけ,AmberとTedは街で起きてる怪事件の解決と,いなくなってしまったAmberの兄の捜索に出向くこととなった……といった形で,BWMの物語は進んでいく。
膨大なテキストが織りなす謎多き物語
ポイント&クリックのゲームとして安定したUIを持つBWMだが,「右クリックを長押しすると,干渉できるオブジェクトにマーカーが表示される」というのは便利な機能と言えるだろう。なにしろ本作はグレイスケールな世界なので,オブジェクトを強調表示して「これが触れます」と主張するのは難しいのだ。
個人的には,この機能は逆でもよかった(右クリックするとマーカーが消える)とは思うが,このあたりは好みにもよるところだろう。
その上で,BWMを明らかにほかのゲームと違うゲームにしているのは,その異様なまでのテキスト量だ。
BWMは,とにかくテキストが多い。ポイント&クリックのゲームにおいて,こんなにもテキストが多いゲームには初めて出会った気がする。日本のノベルゲーム並みにテキストが多いといえば,その規模が分かっていただけるだろうか。しかもフルボイス。当然スキップできるとはいえ,なかなか凄まじい規模の文量である。
もちろん,その充実したテキストと,特有のグラフィックから生み出される世界の雰囲気は申し分ない。「いったい何が起きているのか」という問いはアドベンチャーゲームにおいてひとつの大きな問いになるが,本作においては「そもそもAmberが見ているこの世界は何なのか」という疑念もまた,消し去ることができない。
また,英語で「Bear With Me」という表現は,「しばらくお待ち下さい」程度の意味を持った言葉でもある。果たしてそれがどのようなダブルミーニングで物語の中に影響をおよぼすのかも,気になるところだ。
全編すべて英語なので,英語は絶対ダメという人にはオススメできないが,英語の難度自体は低い。Steamですでにリリースされているので,ハードボイルドな熊と一緒に謎を解きたいならば,この作品は間違いなくオススメだ。
「Bear With Me」Steamストア
「Bear With Me」公式サイト
4Gamerのgamescom 2016記事一覧ページ
- 関連タイトル:
Bear With Me
- この記事のURL: