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戦場の霧ならぬ恋愛の霧を突破せよ。カップルの関係性の推移を描いたボードゲーム「Fog of Love」のプレイレポートをお届け
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印刷2017/11/08 13:33

プレイレポート

戦場の霧ならぬ恋愛の霧を突破せよ。カップルの関係性の推移を描いたボードゲーム「Fog of Love」のプレイレポートをお届け

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 2017年10月26日から29日まで,ドイツのエッセンで開催されていたボードゲーム見本市SPIEL’17。初日のビジネスデーでの新作一覧展示の時から,筆者は,男女のペアがパッケージに描かれた「Fog of Love」のことが気になっていた。
 とはいえ,どこからどう見ても「カップルで遊んでください」といわんばかりのこのゲームを,男ばかりの4Gamer取材班が,はたして試遊できるのだろうか……。

 そんな不安を抱きつつも結局好奇心に負けてブースに行き,おそるおそる確認してみたところ,なんとカップルでなくても――そして男同士でも――遊べるという。
 しかも,実際にプレイしてみると,キャラクターになりきってのロールプレイや,相手プレイヤーの行動を読む技術が要求されるなど,ゲームとしても面白いではないか。そこで本稿では,このちょっと変わった恋愛コメディ(時にシリアス)ゲームを紹介したい。

展示ブースの模様。うーん,ファビュラス
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「Fog of Love」公式サイト



ゲームの勝利に大きな影響を与えるキャラクターメイキング


 Fog of Loveは,さまざまなイベントを乗り越えて,望ましい恋愛関係を築き上げていく2人用の協力ゲームだ。最終的にどのような関係を目指すかは,それぞれのプレイヤーが手札として所持するディスティニーカードで決定する。「協調的な関係」から「支配的(あるいは従属的)な関係」まであり,それぞれ異なる達成条件が用意されている。
 そして,それらの条件を満たすには,相手に対する感情を示す「愛情ポイント」や,その都度変動する2人の関係性を表現した「パーソナリティトラック」のパラメータを変動させて,一定値をキープしなければならない。

同性カップルというシチュエーションにも対応。このあたりの配慮は,本作のデザイナーのJacob Jaskov氏がLGBTに寛容なデンマーク出身であるからかもしれない
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 面白いのは,個々のプレイヤーでゲームの勝敗判定を行うという点だ。このため,1人が勝利し1人が敗北する(つまり,恋愛関係に満足しているのは片方だけ),ということも起こりうる。
 ちなみに,「別れる」というディスティニーカードもあるので,ほかのエンディングの達成がどうも厳しそうだという場合は,そちらも目指せる。この点も,なんというかリアルだ。

 ゲーム開始前には,プレイヤーの分身となるキャラクターを作成する。キャラクターは「性格」「職業」「外見」の3種類の特徴で成り立っており,これらはドローしたカードから選択する仕組みだ。
 特徴の中でもっとも大切なのが,プレイスタイルに大きな影響を与える性格だ。性格カードには,ゲーム終了時に目指すべきパーソナリティトラックの各パラメータである,「几帳面 / だらしない」「好奇心旺盛 / 無関心」「穏やか / 荒々しい」「繊細 / 鈍感」「誠実 / 不誠実」「外向的 / 内向的」の6系統12種類が指定されている。

性格を選んだ結果,マッチョで冒険的,そして仕事の虫というキャラクターになった。この写真のように,特徴は相手プレイヤーには伏せられる
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 要するに,性格カードの指示にしたがってパラメータを強化することで,ディスティニーカードの達成に直接つながるわけだ。また,ゲーム終了時に性格カードが指定する条件を満たすことで,ゲームの勝敗に不可欠な愛情ポイントにボーナスがつく(逆に失敗するとペナルティが与えられる)。
 このため,プレイヤーは必然的に性格カードをなぞることになるが,ゲームとして見た時に興味深いのは,相手がどんな性格カードを持ち,どういった方向にパーソナリティトラックを進めようとしているかが,明確には分からない点だ。戦場の霧ならぬ恋愛の霧を見通し,相手の行動を推理することは,2人で勝利を掴もうとしている場合にはとくに重要になってくる。

 性格と同じく,自分のキャラクターの外見や職業も,ドローしたカードから選択し,そこに書かれた「選択ポイント」トークンをパーソナリティトラックに置く。これらは,性格カードに対する初期ボーナスと考えてもいいし,プレイヤーがロールプレイをするうえでも非常に便利だ。

職業はドローした3枚の中から選択できる。「神父」「犯罪者」「保険員」の中から選んだのは犯罪者(ちなみに相手の職業は政治家で,この禁断の組み合わせにはスタッフの人も大笑いしていた)
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職業と外見はこのように相手プレイヤーにオープンにされる
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さまざまなイベントを通じて相手の動向を読み解こう


 キャラクターメイキングが終わったら,いよいよプレイ開始だ。本作は3つのチャプターとその後のフィナーレによって構成される。各チャプターでは,場にある「ストーリーカード」を一定数ドローし,交代で場に出しながらそこに書かれたイベントに対応していく。
 そこでのイベントは,「共通の友人の結婚式に参加し,あらためて自分たちの関係を見つめなおす」「元カレ(あるいは元カノ)が来る高校の同窓会に,パートナーが参加するのを認めるか?」「食事のメニューを何にするか」「トイレのフタの開け閉め論争」など,笑えるものからシリアスなものまで多彩だ。

 ここで面白いのは,ストーリーカードにはイベントの深刻さに対応して「スウィート」「シリアス」「ドラマ」の3段階があり,後者になるほどゲームの推移に大きな影響を与えるようになっている点だ。
 また,最初のチャプターではおとなしめのイベントが多く発生するのに対し,最終チャプターでは2人の関係を二転三転させるような出来事が数多く起こるようになっている。長く関係を続けることで相手の意外な点が見えてきたり,さまざまな問題に直面したりするというわけだ。

ゲームボードもおしゃれ。カードやトークンの配置場所も,非常に分かりやすいデザインになっている
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 場に出されたストーリーカードには選択肢が書かれており,プレイヤーがどれかを選ぶことになる。この選択肢によって,ゲームボード上のパーソナリティトラックのパラメータが変動していく。
 このため,基本的には自分の性格カードやディスティニーカードの目標に沿って回答するのがいいのだが,なかには「相手と同じ回答を選ばなかった場合は愛情ポイントにペナルティを与える」という副次効果を持つものもあるため,注意が必要だ。

「一緒に何を食べる?」というイベントカード。ちなみに,取材中のドイツ料理に飽きていた我々は迷うことなく「中華」を選び,意思疎通ができているということで見事に追加の愛情ボーナスを獲得した
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 ゲームの勝利を目指すうえでもっとも効果的な戦略は,「譲れない部分を除いては,相手に合わせる」という,これまたリアルの人間関係でも通じる方法だ。また,そうやって自分が許容できるパーソナリティトラックの動きをそれとなく相手に伝え,こちらの性格カードや目指しているディスティニーカードの内容を推測してもらうことも,2人で勝利を目指す場合には重要になってくる。

 また,お互いが「誠実」と「不誠実」のような相反するパラメータを追求しようとしている場合には,その部分で被る愛情ポイントのペナルティを,ほかのボーナスによって埋め合わせたり,別のディスティニーカードを目指したりすることで,ゲーム目標を変えられる。
 ゲーム中盤以降に登場する,キャラクターの性格を変更する効果を持ったストーリーカードを使って,パーソナリティトラックでの競合を回避することも可能だ。もちろん,そうした可能性がすべてダメだった場合のために,プレイヤーは「別れる」という選択することもできる。

パーソナリティトラックのパラメータが変動するにつれて,伏せられている相手の性格や狙っているディスティニーカードの推理が可能になっていく
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 Fog of Loveは,一見するとカップルの関係を扱ったイロモノの作品だが,勝利するためには相手の手札や行動を読むことが要求される,ゲームらしいゲームになっている。
 それと同時に,キャラクターメイキングやそれに基づいたロールプレイ,そして各種ストーリーカードが提供するカップル間のハプニングは,それ自体が非常に楽しめるものになっている。

 また,本作でプレイヤーが強く意識する「相手と自分との要求の折り合いをつける」という行為は,恋愛関係に限らず人間関係全般でもよく見られる。これらの点からも,予想以上に幅広い層のプレイヤーに対応したゲームと言えるだろう。
 本作は2017年中の発売が予定されている(価格未定)。各種の人物特性やイベントのテキストは英語なので言語依存性は高めなことが難点だが,もし日本でも発売されることになったら,ぜひとも遊んでみてほしい。

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