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印刷2019/01/10 00:00

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西川善司の3DGE:徹頭徹尾GeForceづくしだったCES 2019のNVIDIA。AIも自動運転もテーマとしなかった理由は?

 米ラスベガスで2019年1月8日に開幕したCES 2019だが,開幕前から各社がさまざまなイベントを行うのは通例となっており,NVIDIAは00日め(=開幕2日前)となる1月6日にプレスカンファレンスを実施した。
 その内容の一部はすでに速報としてお伝えしているが,ざっくりカテゴリ分けするなら,

  1. GeForce RTX 2060発表(速報記事
  2. G-SYNC関連アップデート(速報記事
  3. ノートPC向けGeForce RTX 20シリーズ発表(速報記事
  4. そのほか

の4つに分けられるかと思う。
 本稿ではこれらのテーマそれぞれを整理しながら,NVIDIAがCES 2019で何をしたのかについて考えていきたい。

今回の目玉はGeForce RTX 2060の発表だった
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1.GeForce RTX 2060発表


 いつものように,今回のプレスカンファレンスでもNVIDIAのJensen Huang(ジェンスン・フアン)CEOが登壇したが,CES 2019における氏の発表で最大のものがGeForce RTX 2060(以下,RTX 2060)であることは論を俟(ま)たないはずだ。

RTX 2060 Founders Editionを掲げるHuang氏
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 「RTX」系列かつ,長らくミドルクラスGeForceの型番となっている「下2桁60」の新製品ということで,リアルタイムレイトレーシングや,深層学習型AIを用いたポストプロセス処理「DLSS」(Deep Learning Super Sampling)の性能が気になるという人が多いと踏んだのだろう。Huang氏はRTX 2060の性能について,かなりの時間を割いて説明していた。

 まず,2019年1月時点における「リアルタイムレイトレーシング対応タイトル」の代表格となる「Battlefield V」(以下,BFV)の場合,2560×1440ドット解像度条件だと平均60fpsを確保できるが,DirectX Raytracing(以下,DXR)を有効化するとフレームレートは50fps程度にまで落ちてしまうとのこと。しかし,解像度を1920×1080ドットにまで下げたうえで,近々にパッチで対応するというDLSSを適用して2560×1440ドットへアップスケールするようにすれば,リアルタイムレイトレーシングを活用しても平均60fpsを確保できるようになるという。

RTX 2060の場合,BFVではDXR有効とDLSS有効による合わせ技で“1440p@60fps”を実現できるとHuang氏
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 さらにゲーマーとしては「そもそもDXRを活用できるゲームタイトルってまだ少ないよね。既存のゲームタイトルだとどれくらいの性能が出るの?」というのも気になるところだが,これについてもHuang氏はきちんとフォローしていた。
 いわく,(置き換え対象となる)「GeForce GTX 1060 6GB」(以下,GTX 1060 6GB)比で約1.5倍の性能とのこと。このあたりは4Gamerのテスト結果ともおおむね一致するが,シェーダプロセッサ「CUDA Core」の総数はGTX 1060 6GBの1280基に対してRTX 2060は1.5倍の1920基となっているので,このあたりは妥当な性能向上率とも言えるだろう。

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既存のゲームタイトルでRTX 2060とGTX 1060 6GBの性能を比較したスライド
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年を経るごとにゲームが必要とするGPU性能が上がるだけでなく,解像度とフレームレートの関係も1920×1080ドットの60Hzから2560×1440ドットの144fpsまで要求水準が上がってきた。同時に,60型番のGeForceを使うユーザーの数は2013年のKepler時代と比べて2.5倍となり,NVIDIAにとって無視できないレベルに達しているという

 ただ実のところ,2桁数字が同じGPUとして,GTX 1060 6GBからRTX 2060でCUDA Core数が1.5倍になったというのは,かなりの大盤振る舞いだったりする。
 下に示したのは上位モデルとその置き換え対象とでCUDA Core数を比較したものだが,CUDA Core数の違いは1.5〜1.2倍程度に留まっているのが分かるだろう。RTX 2060では,置き換え対象となるGPUの基本スペック引き上げ率が,上位モデルと比べて明らかに大きい。

  • GeForce RTX 2080 Ti(4352基) vs. GeForce GTX 1080 Ti(3584基):1.21倍
  • GeForce RTX 2080(2944基) vs. GeForce GTX 1080(2560基):1.15倍
  • GeForce RTX 2070(2304基) vs. GeForce GTX 1070(1920基):1.2倍

 なぜかだが,おそらくこれは,RTX 2060に一定レベルのリアルタイムレイトレーシング性能を与えるための配慮だ。

TuringアーキテクチャのStreaming Multiprocessorブロック図
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 GeForce RTX 20シリーズでは,採用するTuringアーキテクチャの仕様上,CUDA Coreなどをまとめた演算ユニットである「Streaming Multiprocessor」(SM)ごとにレイトレーシングエンジンたる「RT Core」を1基搭載しているため,CUDA Coreの数はレイトレーシング性能に直結する。

 そして,GTX 1060 6GB比で1.5倍のCUDA Coreを搭載したRTX 2060はRTX 2070比で約83%のCUDA Core数となるため,レイのキャスト性能もRTX 2070の6 GRays/sに対して5 GRays/sと,こちらも約83%を実現できている。シリーズ最上位モデルとなるGeForce RTX 2080 Tiと比べても半分というレベルを確保できており,たとえば1920×1080ドットの60fpsという条件だと,1ピクセルあたり毎フレーム40レイを投射可能と,それほど悪いスペックでもない。

 もちろん,当面のレイトレーシング法の活用で生成される影生成や環境光遮蔽陰影,鏡面反射材質における映り込み生成,半透明材質の透過屈折,大域照明による間接光再現などといった要素も絡んでくるので,ゲーム側のレイトレーシング設定を下げる必要は出てくるだろうが,「リアルタイムレイトレーシングを有効化した途端,ゲームをプレイできるフレームレートではなくなってしまう」ような事態は生じにくいはずだ。レイトレーシング法の醍醐味は相応に享受できるだろう。

プレスカンファレンスでHuang氏は,RTX 2060を使ってBFVのリアルタイムレイトレーシングデモを披露。上位モデルと比べてもそれほど遜色のない鏡像生成を行えていた
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 問題があるとすれば,十分なレイトレーシング性能を確保できた代わりに,RTX 2060の北米市場におけるメーカー想定売価が349ドル(税別)と,GTX 1060 6GBの発表時と比べて100ドル上がってしまったことだ。RTX 2060は,性能を重視した結果,従来製品でいうところの「ミドルクラス市場向けGPU」的な立ち位置から,ややズレてしまった感がある。

RTX 2060カードの北米市場におけるメーカー想定売価は349ドル(税別)。GeForce GTX 1070が登場したときの同449ドルよりは100ドル安価だが,それでも「ミドルクラス市場向け」と紹介するのはなかなか厳しい金額と言える
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 その意味で,今後登場してくるであろう,「2050」の型番を持つ製品がどのようなスペックと価格になるのかというのはとても興味深いところだ。

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 北米時間2019年1月15日に搭載カードの販売が始まる「GeForce RTX 2060」。ミドルクラス市場向けとして知られてきた下2桁「60」のモデルながら,メーカー想定売価は349ドル(税別)とかなり高めの設定だが,果たしてこれはGeForce RTX 20シリーズの恩恵をゲーマーに広くもたらしてくれる存在なのか。テスト結果をお届けしたい。

[2019/01/07 23:00]
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 日本時間2019年1月7日,NVIDIAは,GeForce RTX 20シリーズの新製品となる「GeForce RTX 2060」を発表した。搭載グラフィックスカードは北米時間1月15日発売予定で,北米市場におけるメーカー想定売価は349ドル(税別)となっている。

[2019/01/07 14:01]


2.G-SYNC関連のアップデート〜HDMI 2.1時代を見据え,G-SYNCはFreeSyncと統合していく!?


G-SYNCが立ち上がったのは2013年のことだ
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 可変フレームレートの映像をスムーズに表示させるメカニズムとしてのG-SYNCをNVIDIAは2013年に発表し,独自のディスプレイ同期技術として訴求し続けてきた。G-SYNCの発想自体は画期的なもので,とくに「可変フレームレート」という概念を許容しない放送業界および映像機器業界に大きなインパクトを与えた。

 競合のAMDも翌2014年には対抗技術「FreeSync」を発表したが,こちらは後にディスプレイ技術の標準化団体であるVESA(Video Electronics Standards Association)によって,DisplayPort 1.2aの拡張仕様「Adaptive-Sync」となった(関連記事)。付け加えると,2017年に発表され,2019年には本格的な運用が始まると見込まれているHDMI 2.1の「Variable Refresh Rate」(以下,VRR)機能も,動作メカニズムはFreeSyncそのものである。

 「可変フレームレートの映像をスムーズに表示させるメカニズム」の立ち上げ自体にはNVIDIAが大きく貢献したものの,利用するには特別なNVIDIA製ハードウェアが必要という高いハードルのあるG-SYNCは,結果的に,業界スタンダードとしては受け入れられなかったのだ。
 すでにある伝送プロトコルの仕様改善と解釈拡大によってG-SYNCとほぼ同等のことを実現できてしまうFreeSyncを業界はほぼ一致して選択した,と言ってしまってもいいだろう。

 とはいえ,今日までG-SYNCブランドをせっかく育ててきたNVIDIAとしては,簡単に引っ込めるわけにもいかない。そこで今回のプレスカンファレンスでNVIDIAは,G-SYNCの“生き残り策”とでも言うべき発表を2つ行った。
 1つが「G-SYNC Ultimate」で,これは要するに「最上位のG-SYNC体験が得られる規格」である。

 G-SYNC Ultimateの要件は,「可変フレームレートの映像をスムーズに表示させるメカニズム」を当然として,追加で,

  • G-SYNC HDR(関連記事)対応
  • エリア駆動バックライトシステム搭載
  • 4K@144HzのIPSパネル採用
  • DCI-P3色空間対応
  • 中間調応答速度4ms以下

などの条件を満たし,そのうえでNVIDIAが規定した映像表示品質テストをパスする必要がある。そこまでして名乗れる最上位のG-SYNCブランドというわけだ。

G-SYNC Ultimateは究極のG-SYNC規格という位置づけ。それだけに複数の要件がある
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 現在のところ,対応するのは2018年発売のASUSTeK Computer「ROG Swift PG27UQ」とAcer「Predator X27」の両27型モデル,そして北米市場において2月に4999ドル(税別)で発売予定となっている65型の「HP Omen X Emporium 65」の3製品のみである。HP Omen X Emporium 65は「BFGD」(Big Format Gaming Display)として訴求されてきたが,最終的にはG-SYNC Ultimateというマーケティングキーワードとともに登場することになるのではなかろうか。

最初のG-SYNC Ultimate対応製品は3つ。有機ELパネルなどに関する要件提示はなかったりするので,「発表済みのG-SYNC HDR対応ディスプレイがそのままスライドしてG-SYNC Ultimateディスプレイになります」感が強い
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 そしてより衝撃度が高いのが,速報でもお伝えした「G-SYNC Compatible Monitors」である。
 前述のとおり,単体ディスプレイにおいては,G-SYNCを実現するためのハードウェア(以下,G-SYNCモジュール)を搭載するものしかNVIDIAはこれまでG-SYNC対応製品と認めてこなかった。

 しかし,今回のG-SYNC Compatible Monitorsプログラムでは,NVIDIAが「よし」と認めた製品に限っては,G-SYNCモジュールを搭載していないFreeSync――AMD発の規格を認めるわけにはいかないからか,Huang氏はずっとAdaptive-Syncと呼んでいたが――対応ディスプレイにおいてもG-SYNC機能の有効化を容認するというものになっている。要は,NVIDIA指定のFreeSync対応ディスプレイでも「G-SYNC対応」を謳えるようになるのである。
 あるいは,FreeSync対応ディスプレイのFreeSync機能をGeForceから利用できるようになると言ったほうが理解しやすいかもしれない。

発表時点ではFreeSync対応ディスプレイのうち12製品でG-SYNCを有効化できる。有効化に対応したGeForce Driverは北米時間1月15日リリース予定だ
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 ユーザー側のメリットは,言うまでもなく非常に大きい。今後も“素”のG-SYNCブランドを継続することになる既存のG-SYNC対応ディスプレイでなく,相対的に安価なFreeSync対応ディスプレイとGeForceを組み合わせて,「可変フレームレートの映像をスムーズに表示させるメカニズム」を利用できるからだ。

 ただしNVIDIAは,G-SYNC Compatible Monitorsプログラムの拡大は予告しており,対応ディスプレイが増えていくとも言っているが,すべてのFreeSync対応ディスプレイでG-SYNCを利用できるようになるとは言っていない。「G-SYNCブランドを名乗っても差し支えないとNVIDIAが認めた,高品位の製品」のみをサポートするとしている。

 おそらくは,G-SYNC Ultimateと同様に,NVIDIAの品質認証部門にテストを依頼し,そのテストをパスした製品だけが「G-SYNC Compatible Monitors対応リスト」に入るというビジネスモデルなのだろう。そのテストが有償か否かは明らかになっていないが,SLI認証が有償であることを考えるに,無料というのは考えにくいところだ。
 とはいえ,G-SYNCモジュールを搭載するのと比べれば相当に低いコストでFreeSyncとG-SYNCの両方に対応できるディスプレイを市場投入できるわけで,そのメリットはディスプレイメーカー側にとっても大きい。

 HDMI 2.1時代に入ると,FreeSyncは事実上の業界標準になるため,NVIDIAとしてはその前にG-SYNCブランドをどうにかしなければならなかった。とはいえ「G-SYNCは負けました」と素直に宣言するのではダメージが大きいため,ひとまず既存のG-SYNCをプレミアムブランド化することでパートナー企業を納得させつつ,「NVIDIAが認めたFreeSync対応ディスプレイだけをG-SYNC Compatible Monitorとして扱う」ことで,G-SYNCという「名」を残すことにしたという理解でいいだろう。

 NVIDIA側のメンツはともかくとして,今後,GeForceユーザーでもフル機能を利用できるFreeSync対応ディスプレイが増えていくことは,素直に喜びたい。

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 日本時間2019年1月7日,NVIDIAは「G-SYNC Compatible Monitors」プログラムの開始を発表した。これは,Adaptive-Sync対応ディスプレイをNVIDIAが独自に検証し,G-SYNCと互換性のあるディスプレイとして認定するというものだ。1月15日リリースのドライバを導入すると認定ディスプレイでG-SYNCを利用できるようになるという。

[2019/01/07 14:41]


3.ノートPC向けGeForce RTX 20シリーズ発表


 Huang氏はCES 2019のプレスカンファレンスで,ノートPC向けGeForce RTX 20シリーズを発表した。ラインナップは「GeForce RTX 2080」「GeForce RTX 2070」「GeForce RTX 2060」の3モデル。一部の例外を除き,NVIDIAはこれまで基本的に,デスクトップPC向けGPUの選別品や低スペック版,低クロック版をノートPC用として展開してきたが,今回も同様のようだ。

プレスカンファレンスで,GeForce RTX 2080搭載のGIGA-BYTE TECHNOLOGY製ノートPCを披露するHuang氏
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 なお,プレスカンファレンスでは,1月29日以降,40製品以上のGeForce RTX 20シリーズ搭載ノートPCが登場することと,そのうち17製品が薄型ノートPC向けバリエーションモデルとなる「Max-Q Design」版を搭載して登場することが明らかになっているが,それ以上のことをHuang氏は語らなかった。

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1月29日以降,40製品以上ものGeForce RTX 20シリーズ搭載ノートPCが登場の予定
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Max-Q Design版GPUを採用する,薄型筐体のゲーマー向けPCが2019年はさらに増える
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MSIの「G565 Stealth」は,GeForce RTX 2080と垂直リフレッシュレート144Hz対応の液晶パネルを採用する
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Acerの「Predator Triton 500」はGeForce RTX 2060搭載。「デスクトップPC向けGeForce GTX 1070より速い」そうだ

 主なスペックは速報記事を参照してもらえればと思う。

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NVIDIA,ノートPC向け「GeForce RTX 20」を発表

NVIDIA,ノートPC向け「GeForce RTX 20」を発表

 日本時間2019年1月7日,NVIDIAは,ノートPC向けGeForce RTX 20シリーズを発表した。ラインナップは「GeForce RTX 2080」「GeForce RTX 2070」「GeForce RTX 2060」の3モデルで,搭載するノートPCは北米時間1月29日以降に順次発売となる見込みだ。

[2019/01/07 14:34]


4.そのほか


 今回のプレスカンファレンスではひたすらGeForceが主役だったのだが,それ以外に挙がった内容もGeForce関連だ。Huang氏は,Turing世代のGPUにおける新要素をここで4つ挙げたが,最も注目したいのは,「Open Broadcaster Software」(以下,OBS)に関するアップデートである。
 氏いわく,GeForce RTX 20シリーズ(とQuadro RTXシリーズ)の採用する新世代NVENCプロセッサにOBSが最適化を果たしたとのこと。1月下旬にリリース予定のOBS新バージョンは,現行版と比べて,ゲーム配信によるフレームレートへの影響を約66%低減させることができるという。

x264ベースのソフトウェア処理と,従来のOBSでNVENCを利用したケース,そして新世代OBSでNVENCを利用したケースでフレームレートへの影響を比較したというグラフ。ゲーム映像の配信がもたらすフレームレートへの影響は約4%で済むようになるとされる
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 NVENCを搭載する従来のGeForce GTX,具体的には700シリーズ以降のGPUでも,新版OBSにおける最適化の恩恵を受けられるとのことだ。

 HTC製VRヘッドマウントディスプレイ「Vive」の開発キットにNVIDIAのVR開発支援ライブラリ「VR Works」が採用されたこともHuang氏はトピックとして挙げていた。具体的には,視線追跡型レンダリング(Foveated Rendering)のサポートにおいてVR Worksの技術が応用されているらしい。

 また,映像制作関連でも2つの話題がある。1つは,いま挙げた新世代NVENCに関するもので,業務用映像制作機器やソフトウェアを制作しているRED Digital Cinemaが同社の8K映像編集関連SDKにおいて新世代NVENCに対応したとのこと。もう1つは,AutodeskのArnoldレンダラーがTuring世代のGPUに対応したことである。

Turing世代のGeForce(とQuadro)に関する4つの新情報。ゲーマー的に要注目なのがOBSの最適化であることは言うまでもない
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 またこれはほとんどオマケだが,ゲーム内写真撮影機能として知られる「Ansel」の関連のアップデートもあった。
 よく知られているとおり,Ansel対応ゲームが増えたり,ゲーム機用ゲームタイトルのほうでもAnsel風の機能を持つタイトルが出てきたりした結果,ゲーム内の3D世界を作品として“撮影”する「In-game Photography」のムーブメントも広がってきているが,NVIDIAとしては,こうした展開をさらに盛り上げるべく,CES 2019の期間中,米ニューヨークのタイムズスクエアにあるデジタルサイネージに,世界各国の「Ansel Photographer」が撮影した美しいスクリーンショットをスライドショウとして流す試みを開始したそうだ。

プレスカンファレンスでは,実際にタイムズスクウェアの当該サイネージを撮影した映像が流れた。道行く人はいったいなんの広告なのか理解するのが大変かもしれない。In-game Photographyムーブメントを知っているゲーマーだけがニヤリとできる広告といったところかも
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 日本でも同様の試みをやってくれると結構面白そうだと思うが,どうだろうか。


CES 2019で「GeForceづくし」のプレスカンファレンスを行ったNVIDIA


 ここまでも何回か触れたとおり,CES 2019のNVIDIAプレスカンファレンスは,ゲーマー向けGPUであるGeForceの話にほぼ終始した。近年のNVIDIAはAIや自動運転の話を積極的に行ってきただけに,CESでしかNVIDIAのプレスカンファレンスに参加しないような来場者には驚きをもって迎えられたようだ。実際,来場者の中には日本から来た自動車関連のジャーナリストも複数いたが,彼ら彼女らからは「自動運転の話がないので記事にしにくい」という声が異口同音で聞かれた。

 ちなみに今回のプレスカンファレンスだが,オープニングトークから最初の発表案件であるRTX 2060の登場まで,約1時間かかっている。
 その1時間でHuang氏が話した内容は,2018年にQuadro RTXやGeForce RTXを発表したときの内容とほぼ同じ。「GPUの進化がゲームグラフィックスを進化させ,より高品位なゲームグラフィックスを切望することがGPUを進化させた」「しかし,そのゲームグラフィックスの進化もそろそろ新しいステップへの踏み出しが必要となってきている」「それは従来のラスタライズ法に踏み留まるのではなく,レイトレーシング法の採用に踏み出すことである」というストーリーだ。
 「そもそもレイトレーシングとは?」という話は,筆者の連載バックナンバーを参照してほしい。

Huang氏がプレスカンファレンスで示した「GPUとゲームグラフィックスの進化の歴史」。2000年以降,GPUとゲームグラフィックスの進化は事実上,プログラマブルシェーダ技術の進化とシンクロしていた
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 また,Turingアーキテクチャにはもう1つ,AI推論アクセラレータとしての「Tensor Core」があるわけだが,こちらについてもHuang氏は十分な時間をかけて説明していた。最近のスマートフォンにおいてマーケティングキーワードにもなっている「AIチップ」に相当するTensor Coreを画像処理に応用し,AI画像処理エンジンともいえる「DLSS」(Deep Learning Super Sampling)を実現した,といった内容だ。

DLSSで用いる「学習データ」は,NVIDIAのDGX2などのスーパーコンピュータを用いて,たっぷりと時間を掛けて学習した「低解像度画像→高解像度画像」の相関学習の結果であることや,DLSSを活用すると,「ある解像度」で描画したゲームグラフィックスを数段上の解像度にアップコンバートしたり,あるいはアンチエイリアシング処理を適用したりできること,レイトレーシングの活用にあたってはそこそこの解像度で描画したうえで,画質の作り込みにはDLSSの助けを借りることなどを,Huang氏はじっくり解説した
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 「NVIDIAが考える新世代GPU」とは,「リアルタイムレイトレーシング法への対応」と「Tensor Coreを活用したAI画像処理によるDLSS」の2つの機能を備えているプロセッサだ……ということを,1時間かけて,さまざまな図版やデモを披露しながら,Huang氏は力説し続けたわけである。
 4Gamer読者のようなゲーマーが聴衆であれば,「やあ待たせたね! GeForce RTX 20シリーズに新しい仲間が登場するよ!」で挨拶は済むのだろうが,CESの来場者はそうではないということなのだろう。

 なら,AIや自動運転に関して発表すべき内容がCES 2019時点のNVIDIAにはなかったのかというと,そんなことはない。CES 2019でNVIDIAは別途,「世界で初となる『商用利用可能な』レベル2+(※)自動運転ソリューション」としての「DRIVE AutoPilot」など,自動運転関連の発表を複数行っている(関連リンク1関連リンク2)。

※加速と操舵,制動のうちいくつかの操作をシステムが運転手の代わりに行う準自動運転走行である「レベル2」の拡張版

 要するにNVIDIAは今回,AIや自動運転よりも,「レイトレーシング対応とAI画像処理DLSS対応のRTXシリーズのGPU」こそを,より多くの人に知ってほしかった。だからこそ,CES 2019というタイミングからすれば極端にも感じられるカンファレンス内容にしたのだと思われる。

 その理由は何だろうか。
 筆者は,「レイトレーシング対応プロセッサと推論アクセラレータを搭載しているGPUがNVIDIAのRTXシリーズしかない現状」が背景にあると考えている。

 競合のAMDやIntelはこの点で足並みを揃えておらず,また,肝心のNVIDIA製GPUでも,今回のカンファレンスが始まるまで,最新世代GPUのハイクラス以上でしかサポートされていなかった。しかし,RT CoreとTensor Coreは新世代のNVIDIA製GPUにおける最大の特徴であり,開発のコストもおそらく相当にかかっている。普及に向けて,失敗は許されない。

 だからこそNVIDIAは,少なくとも上位モデルと比べれば普及価格帯にあると言えるRTX 2060や,より一般層に訴求できるノートPC向けGeForce RTX 20シリーズの発表を,世界最大のトレードショウであるCES 2019に合わせ,全世界の「NVIDIAのゲーム用GPU情報を定期的に追っているわけではない人達」に向けて,ゲーマー向けGPUの現状と将来をプレゼンしたのではないだろうか。

MicrosoftやEpic Games,Unity,Frostbiteといった業界の大物が,GeForce RTXの考え方に賛同しているとアピールするスライド
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 おそらく2019年には,RTXというフレームワーク,そしてGeForce RTX 20シリーズというGPUが成功できるか否かについて,一定の見通しが立つはずだ。CES 2019をGeForceアピールの場に使ったNVIDIAの賭けが成功するかどうか,今後も同社の動向は注意深く見ていく必要があると考えている。

NVIDIAのGeForce RTX 20シリーズ製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    GeForce RTX 20,GeForce GTX 16

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