インタビュー
[E3 2018]「Ninjala」ってなんじゃ? E3 2018のガンホーブースに現れた謎のSwitch向け最新作について森下一喜氏と荒川 健氏に話を聞いた
ガムの風船を膨らませ,棒を振り回してバトルするカラフルなキャラクターと「Ninjala」というタイトル,そしてガンホーのロゴ。「いったいなんだったのだ。ガンホーのSwitch進出タイトルとなると大きなニュースだが,しかし数秒って?」 そんなことを考えながらE3 2018の会場であるLos Angeles Convention CenterのWEST EXHIBIT HALLに入って驚かされた。ホールの入口すぐにかまえたガンホーのブースが,まさにその「Ninjala」一色だったのだ。
たくさん並んだ試遊台には賑やかにゲームを楽しむ多くの人達が,ステージではプロゲーマーを招待してのエキシビションマッチ,忍者ショー「GungHo’s Ninja Showdown」が行われ,盛り上がりを見せている。「そもそも『Ninjala』ってなんじゃ?」思わずそんなダジャレも出てしまうガンホー謎のSwitch向け最新作だが,本作のプロデューサーおよび原案・シナリオを担当する森下一喜氏,開発ディレクターの荒川 健氏に話を聞いてきたので,その内容をお届けしよう。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。本作については会場に入ってすぐ驚かされたのですが,配信ではなく会場で大々的に発表した理由はなんなのでしょう。
森下氏:
まさにそれですよ。最初に任天堂さんの配信でほんの数秒だけ見せておいて,あれはなんだろうってなった人たちがE3の会場で「これだったのか!」となる。そういう手口です(笑)。
4Gamer:
では,私はまんまと術中にはまったのですね。
森下氏:
少しでも情報が漏れないよう,出展の準備段階でもブースを幕で覆って隠していたんです。忍者だけに忍んできたんですよ,これまで(笑)。
荒川氏:
水面下で隠れて進めてきましたからね。
4Gamer:
それは制作も,ということですか。
森下氏:
そうですね。制作からここまで。やっと言えるとなって気が楽になりました。
4Gamer:
企画はいつ立ち上げたものなんですか。
森下氏:
5年前くらいですね。もともと子供から大人まで楽しめるゲームで,アクションにこだわった対戦ゲームを作りたいというのがあったんです。そこでたまたまスポーツチャンバラを見て,「そういえば子供のころ,チャンバラとか忍者ごっこしたなあ」みたいに思い返したとき,このスポーツチャンバラと忍者ごっこっていいんじゃないかと。
4Gamer:
Switchで出そうとなったきっかけはなんでしょう。
森下氏:
みんなで顔を合わせてワイワイやるゲームを作りたかったんですよ。そこでSwitchというハードが出るとなって,この企画でやりたいことや,提供したい遊び方とすごく相性がいいなとなったんですね。
あとは,“ごまかしのきかないアクションゲーム”というか,日本のゲームらしいこだわりがあり,職人芸によって作られた,みたいなものです。
4Gamer:
その腕を買われた日本の職人である荒川さんですが,最初に企画を聞いたときはどう思ったのでしょう。
荒川氏:
2年前くらいですが,子供のころにある原体験や,誰もが経験しているようなものを形にしたい。それをアクションゲームとしてユーザーに届けたいと熱く口説かれて,ですね。
僕はもともと伊賀忍者だったので,そこで感銘を受けまして。
4Gamer:
えっ。伊賀忍者……ですか。
森下氏:
彼は伊賀忍者の末裔なんですよ。アルカトラズにいて,そこを水遁の術で抜け出して来て,それを僕が助け出して……。
4Gamer:
設定がブレブレですが(笑)。
荒川氏:
という感じで,2年前からこんなことばっかり話しているんです(笑)。だったらこの楽しいノリでゲームを作っていこうと。
4Gamer:
そんな楽しいノリで作られているという本作の世界観ってどんなものなのでしょう。
森下氏:
世界には忍者存続を目的とする世界忍者協会「WNA」というのがあって,「ニンジャガム」というのを作っているんです。忍者の遺伝子を引き継いだ子供がこれを食べると,忍びの力が覚醒していろんな忍術が使えるようになるんですね。
忍者の素質を持つ人を探し出すため,忍者スポーツ大会「ニンジャラ」を開催するんですが,その裏にはさまざまな大人の思惑が見え隠れする……というストーリーがあります。
4Gamer:
対戦ゲームとしてだけではなく,ストーリーモードもあるんですか。
森下氏:
シングルモードはありますが,あくまで設定というところですね。このゲームには8人のキャラクターが登場するんですけど,それぞれにバックグラウンドがあります。
4Gamer:
気になりますね。どんなものがあるのでしょう。
森下氏:
例えばピンク髪のベレッカという女の子ですが,彼女は忍者の遺伝子を持つWNAの研究者で,ニンジャガムを開発してそれを食べたらこの小さな姿になった。そんな人物背景を一人ひとり設定してあって,それぞれ一風変わったものになっていて面白いですよ。
4Gamer:
なるほど。荒川さんが先ほど急に伊賀の血筋と言い出したときはどうしたのかと思ったのですが,まさかちゃんとゲームに関連したものだったとは。
森下氏:
まだ設定の練り方が足りないけどね(笑)。
4Gamer:
ゲームのアクションについてはいかがでしょう。
森下氏:
最大8人で対戦ができるんですが,ガムを膨らませて作った棒やハンマーで相手にダメージを与えたり,IPPON!(一本)を取ったりしてポイントを集め,一番高得点だった人が勝ちというシンプルなものです。ほかにもポイントを獲得する手段はあるんですが,なによりIPPON!ですね。
ガムを膨らませて武器を作ったり,ダッシュしたり,忍術を使ったりといったアクションはすべてニンジャガムが基軸になります。
荒川氏:
ガムを膨らませることによって忍びの能力が使えるようになるんですが,その大きさによって性能が変わるんです。小さな膨らみで武器を作ると,使いやすいけどダメージをあまり与えられない。大きく膨らませて武器を作ると,振りは大きいですが,一撃でIPPON!を取れるような高ダメージを生み出せます。
いっぱい攻撃をすることでゲージを溜めると忍術が使えるんですが,それも武器ごとに違っていて面白いですよ。
森下氏:
ガムを膨らませて武器を作り,風船をぶつけて相手をガムでべちゃべちゃにして,動けなくなったところを近づいてIPPON!みたいな,基本はとてもシンプルで分かりやすいものです。
でも,1人を動けなくしてIPPON!を取りにいこうとすると,それを狙ったほかのプレイヤーに後ろからやられるということも起きるんです。
4Gamer:
違う人に意識がいっているところに,後ろから忍び寄ってパカっと叩いて「やーい」って逃げるみたいな感じがありますね。
森下氏:
あとは,IPPON!の気持ちよさですね。決めたときはもちろん最高ですし,やられたときは悔しいけどなにかスカッとしたものがあるんですよ。
荒川氏:
IPPON!を決めるためにガムをどう膨らませて活用するのか。このあたりをつかめると,なかなか戦術的な楽しさも生まれてきます。
初心者同士の対決だと,子供が遊ぶチャンバラや忍者ごっこみたいな感じなのですが,これが上級者同士になると,忍び寄る動きとか振る舞いとかが変わってくるんです。忍者ごっこが本当の忍者みたいになっていくのが面白いポイントだと思います。
4Gamer:
ゲーム自体がかなり賑やかですが,このカラフルな色使いも気になるところです。
森下氏:
ビビッドなカラーでいくというのは企画の初期からあったんですが,大きなところだと,任天堂さんのハードらしい色というのがあるんですね。世界中の任天堂ユーザーやゲームファンの人に,Switchのゲームとしてギャップを感じさせない,明るく楽しい色合いにしました。
4Gamer:
今回出展されているデモ版は,どのようなものなのですか。
森下氏:
そうですね。初めていくラーメン屋で食べるラーメンですよ。
4Gamer:
えっ,どういうことでしょう。
森下氏:
初めてのお店って,まずはそこの定番を選びませんか。そういうラーメンみたいなものです(笑)。まだまだトッピングもあっていろんな味が楽しめるけど,定番の味はこれだという。そんな意味で,まずゲームの基本的なところの面白さを知ってもらうためのデモ版ですね。
4Gamer:
冒頭の質問とも重複しますが,なぜその場にE3 2018を選んだのでしょう。
森下氏:
アメリカは大きな国ですし,E3という注目度の高い舞台に集まる世界の人たちがどんな反応を見せてくれるのかを知りたかったんです。名前を覚えてもらうためにもどんどん遊んで広めてもらって,感想も聞きたいと。
4Gamer:
ちょっと気になるところなのですが,日本向けにはまだ正式なアナウンスってないですよね。
森下氏:
まずは北米欧州での反応を,という感じですね。基本的には,ゲームがある国には全部出したいっていう思いがあり,出すんだったら世界同時というのが理想です。
荒川氏:
僕たちにとってはこのE3が本当のスタートだと思っていて,これからどんどん触ってもらえる機会を設けたいと思っています。ちょっと宣伝ぽくなりますが,それで多くの人にたくさんゲームを知ってもらって,ハッシュタグ「#Ninjala」みたいなのでゲームの感想を広げてほしいです(笑)。
4Gamer:
グローバルな展開はもちろんですが,日本にも良いニュースが届くことを期待しています。本日はありがとうございました。
インタビュー後に森下氏と荒川氏,ガンホーのスタッフとの4人対戦でゲームを体験。「接待プレイはしませんよ」といって本当に圧倒的な強さを見せつける森下氏にボコボコにされながらも,インタビューで話してもらったゲームの魅力をしっかり確認できた。
最初はボタン操作を間違えてモタモタしているうちにガムでべちゃべちゃにされ,巨大な武器のフルスイングでIPPON!を取られまくったが,操作はシンプルで3戦ほどで基本的な動作は覚えられた。インタビューにあるとおり,IPPON!を取ったときは実に気持ちよく,取られた際も「やったな,まてー!」みたいな気持ちで楽しめてしまうのが,“子供の頃の遊び”にこだわって,大事に作られている本作の重要なポイントではないだろうか。
まだスタートしたばかりということだが,海外向けのティザーサイトもE3に合わせて公開されている。今後の情報公開にも期待だ。
「Ninjala」ティザーサイト(英語)
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