プレイレポート
[GDC 2024]日本在住の奇才ルーカス・ポープ氏のPlaydate専用新作「Mars after Midnight」で感じた,キッチンヘルパーと顧客への敬愛
Playdateは,6cm×4cmの1ビットグラフィックスによるモノクロディスプレイを搭載した,手のひらに乗るサイズの小さなゲーム機だ。本体正面のA/BボタンとDパッドに加え,側面にクランクを搭載しているのが本機最大の特徴だ。2022年4月にリリースされて以降,現在までに20作以上のゲームがリリースされており,ハードウェアも7万台ほどが販売されている。
3月13日にリリースされたばかりの「Mars after Midnight」は,火星上にある「Off-Colony Community Support Center」で,深夜営業する食堂を切り盛りしていくという“仕事シミュレータ”だ。1ビットグラフィックスという点では「Return of the Obra Dinn」と非常に似ているが,小さなスクリーンサイズに収めるため,簡素にまとめられた印象となる。
最初にプレイヤーがすることは,ノックされたドアに付いている覗き窓をクランクを使って開け,どんな客がやってきたのか調べることだ。この際に注意したいのは,ドアには目の数が異なる顔マークが3つ描かれたメモが張り付けられており,招き入れていいのは目の数や表情(感情)が合致した客だけである。招かれざる客はやり過ごさなければならない。
クランクを回すスピードに合わせて覗き窓を開ける感覚は非常に良いが,パズルとしては簡単すぎる。それもあってか,どこか「いないいないばあ」のような,どんなエイリアンが顔を覗かせるのか,それ自体を楽しむことが強調されているようだった。
食堂では“砂漠虫のパイ”といった軽食を提供するが,このときに主人公であるプレイヤーも,2本のタコ足と3つの目,そして鳥のようなクチバシを持つエイリアンそのものであることに気付く。ゲームプレイは一人称視点でウネウネする触手をうまく使って,食い散らかされた食器を片づけていくのだが,その作業に嫌味な感覚はない。単に自分のカウンター業務をまっとうすべく,すべてのお客さんに対応していくだけだ。
そうした仕事のシミュレーションを通して,プレイヤー自身も黙々と働くキッチンヘルパーへの敬愛やシンパシーをどことなく感じるようになっていく……。いや,プレイヤーはそうした作者の感情が読み取れる,といったところだろうか。
実際,1時間もしないほどで終了するゲームの終盤には,どこかほっこりと来るような,ちょっとした演出も施されており,1つの作品としてうまくまとめられているようだった。
Playdateを所有していなければプレイすることもままならない「Mars after Midnight」だが,ルーカス・ポープ氏の世界を堪能できるゲームであるだけに,機会があればプレイしてみたいという人は多いはず。Playdate公式サイトでは,現在6ドルで販売中だ。
Playdate「Mars after Midnight」紹介ページ
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