プレイレポート
[プレイレポ]「FORSPOKEN」は,崩壊寸前の異世界に招かれたイマドキ女子が,魔法とパルクールで立ち向かうオープンワールドアクション
本作の世界観は,近代的な技術が存在せず街の外にはドラゴンなどのモンスターが闊歩しているという,いわゆるファンタジー世界で,しかもとある現象により滅亡の危機に瀕している。これを救うのが目的……ならよくある展開だが,実は主人公のフレイは我々と同じ世界に住むニューヨーカーの女性であり,部外者かつ基本的に世界の行く末に興味がないというのが,物語上のスパイスになっている。
4Gamerではすでに序盤を先行プレイしたレポートを掲載しているが,今回製品版を改めてプレイする機会を得たので,そのレポートをお届けしよう。プラットフォームはPS5版で,掲載しているスクリーンショットや操作キーの説明はそれに準じている。
崖っぷち女子フレイ,異世界に(望んでもいないのに)立つ!
本作の主人公は,ニューヨークに住む若者「フレイ・ホーランド」だ。孤児として育った彼女は厳しい環境に置かれ,20代になったばかりでありながら複数の逮捕歴を持ち,地元のギャングに手を貸して悪事を働くなど,荒れた生活を送っていた。物語そのものも裁判所から始まり,辛うじて執行猶予を得て何とか自由の身になるなど,切羽詰まった状態であることが描かれる。
とはいえ,そんなフレイもこの状態に甘んじているつもりはまったくなかった。心機一転,新たな地でやり直すため,彼女なりの壮大な計画を立てていたのだ。それは自分の協力したギャングの犯罪計画から金をかすめ取り,バレる前に高飛びすること。金の入手には成功し,後はペットの猫と翌朝逃げるだけの段取りになっていたのだが……うまくいかず追い詰められてしまう。
途方に暮れるフレイだったが,今後の身の振り方を考えている最中に,不思議な光と出会う。引かれるものがあったのか後をつけていくと,光の正体は廃屋に放置されていた腕輪で,それを手に取った途端に謎のゲートに吸い込まれてしまう。気がつくとフレイは,今までいたニューヨークとはまったく別の場所に移動しており,さらに先ほどの腕輪は,外せない状態で身につけられていた。
一蓮托生となったしゃべる腕輪に「カフ」と名前をつけたフレイは,この世界が「アーシア」と呼ばれ,謎の瘴気(フレイが「ブレイク」と名付ける)の蔓延によって滅亡の危機に瀕していること,自分が強力な魔法の力を使えるようになっていることを知る。こうしてフレイはカフと共に,元の世界に戻る方法を探す冒険に出ることになる。
しかし道中には右も左もわからない広大な世界。そこには破滅をもたらすブレイク,そして強力なモンスターや,必死に滅亡を回避しようとする人々など,数多くのトラブルや困難が待っていた……というのが,導入部の物語である。
冒頭でも触れたがフレイはあくまで外部からの訪問者であるため,アーシアの崩壊そのものを止める動機は強くない。あくまでこの“地獄のような世界”から抜け出すことが目的だと,定期的に口にしている状態だ。
さて本作の基本システムは,オープンワールド型のアクションRPGとなる。プレイヤーはフレイを操り,広大な異世界であるアーシアを探索していく。前述のとおりアーシアにはブレイク(瘴気)が広まっているため,一部の街を除き生きている人間は皆無に等しい。フレイ自身はなぜかブレイクの影響を受けないが,至るところにブレイクで生み出されたと思われるモンスターやゾンビがうろつき,人工物は町の廃墟や遺跡が残るのみと,美しいながらも非常に荒涼とした地形が広がっているのが印象的だ。
とは言え,アーシアはただ広いだけではない。無人の廃墟にもその歴史をうかがえる手記やフレイが使える装備が置いてあったり,敵対するNPC同士が戦うイベントが発生したり,各地のモニュメントを訪れることでフレイの能力がアップしたり,最深部に大型のボスが待ち受けるダンジョンに挑めたりする。アイテム入りのチェストなども豊富に各地に置かれているので,とにかく移動して回ればたいがい“何か”が手に入る。細かい収集物を除き,基本的にすべての施設はマップに標準で表示されるので,「最初に廃墟を回ってチェストを回収しながら,次はダンジョンに挑もうかな」といった計画が立てやすいユーザーフレンドリーさも備えている。
道中には拠点になるセーフハウスも点在しており,泊まってライフを回復したり,クラフトを行うことも可能だ。
物語を進めるには指定した場所に移動してイベントをこなす必要があるが,基本的にそれ以外の寄り道もすべてフレイの強化につながる仕組みになっているので,探索しながらフレイの実力が上がっていくのが楽しい。本作はレベル制を採用しており,敵を倒したりイベントをクリアしたりすることで経験値を溜めるのが分かりやすい強化だが,ほかにもクラフトや魔法強化でも実力の底上げができ,その素材やマナの入手機会がフィールドのあらゆる場所に用意されているのだ。移動や探索が徒労に終わることがまずないのは特に好印象と言える。
アーシアは広いだけでなく,かなりの高低差があるフィールドになっているが,技術レベルと危機的な状況により乗り物のようなものはない。ならば移動手段は? ということになるが,ここが本作のキモの一つだ。
フレイは元々ストリートで生き抜くためにパルクールを得意としていたようで,これが手に入れた魔法の力により大幅に強化され,文字通りの「魔法パルクール」となって,[○]ボタンを押し続けるだけで猛烈な速度で移動できる。低い段差はもちろん一切の障害にならないし,高めの段差も垂直の見上げるような壁でなければ,ジャンプを組み合わせることによってたいがいのものは乗り越えることが可能だ。移動しているだけで非常に気持ちよく,長距離の移動も苦にならない爽快感がある。
高所からの落下してもスタミナを失うだけで死ぬことはないので,ある程度気楽に崖や段差に挑める。探索欲をそそる怪しい場所は高所にあることが多いので,自然に魔法パルクールを多用することになるだろうし,戦闘中に敵の攻撃を避けたり,頭上を飛び越えて背後に回ったりもでき,とにかく使用機会が多い。通常のダッシュも存在するが,魔法が使えない街以外ではあまり使う理由もないので,とにかく魔法パルクールを駆使して,スピーディーかつスタイリッシュにアーシアの世界を駆けていこう。
「魔法」を駆使し,ブレイクで生まれたモンスターに立ち向かおう
本作の戦闘はフィールドからシームレスに始まる。フレイの攻撃手段はアーシアに飛ばされた際に備わった魔法であり,大まかに「攻撃魔法」「支援魔法」「チャージ魔法」に分かれている。攻撃魔法と支援魔法は,[L1]と「R1」ボタンで起動するリングコマンドから種類を選び,[L2]と[R2]トリガーで発動させるのが基本だ。必殺技とも言えるチャージ魔法は,ほかの魔法を使うことでゲージが溜まっていき,満タンになると発動できる。
攻撃魔法は文字通りメインとなる攻撃手段で,発動に一切のコストがかからない。射程は短いが一定の範囲を破壊できる「爆裂の魔弾」や,盾を形成して強力な反撃を行える「盾の魔弾」などさまざまな種類があるが,どれもボタンを押し続けて“溜め”を作らないと最大の効果が発揮できないので,スキが若干大きめなのが玉にキズだ。
一方の支援魔法は再使用に一定のクールダウンが必要だが,発動直後にフルに効果を発揮する。こちらは「支援」の文字通りに直接的に敵を攻撃するというよりも,敵を弱らせるなど,より有利な状況を作り出すために使用する機会が多い。
例えば「束縛する蔓草」は広範囲の敵を,一定時間そこに拘束する効果を持つ。これは単に当てるだけでも時間を稼げるが,続けて無防備な横や背後に回って攻撃すれば,さらに大きなダメージを与えられるのだ。また「咲き誇る射手」はその場に自動で攻撃を続ける花を生成できるので,十字砲火を狙ったり,攻撃を当てにくい空中の敵を撃退してもらったりなど,シチュエーションに応じていろいろと使える。
本作の敵は獣のように機動性が高いタイプも多く,さらに場所によってはザコでも大集団が現れることもある。また,弱点以外の装甲が厚かったり,盾を持ち正面からの攻撃が効きにくい特性を持っていたりすることも珍しくなく,単純に攻撃魔法を撃ち続けるだけでは苦戦することもしばしばだ。特に魔法の特性が分からず,敵に攻撃を当てるのが精一杯の序盤は,少しクセがある攻撃魔法に使いにくさを感じるかもしれない。
もちろん前述の魔法パルクールは優秀で,[○]ボタンを押し続けるだけで回避してくれるし,スタミナが残っていればカフが自動でガードを張ってくれるので,そう簡単に死ぬことはない。魔法パルクールは逃げるだけでなく牽制にも利用可能で,あえて敵に突っ込んで死角に回ったりすることもできたりする。
敵の攻撃をうまくかわしてノーダメージで倒すなど,スタイリッシュに戦えば戦闘終了時に評価が上がりボーナスももらえるので,プレイに慣れてきたら“カッコイイ”魔法バトルを目指したいところだ。
魔法自体は,レベルアップ時に入手できたりフィールドの各地にわき出している「マナ」を集めることによって,新たに取得や強化ができる。これはいわゆるスキルツリー方式になっていて,ポイントさえあればいつでも強化可能で,気に入らなければポイント(マナ)に戻すことも可能だ。また取得したスキルも,各地にある本棚から「一定数の敵を倒す」などのミッションを受けてそれを達成することで,さらに強化できる。最初は頼りない魔法も目に見えて強くなっていくので,多少寄り道してでも,積極的にアンロックしていきたい。
元の世界に戻りたい主人公と,毒舌腕輪の掛け合いも見どころ
レベルアップと魔法のアンロック以外では,クラフトもフレイの重要なパワーアップ要素だ。本作で装備可能な防具はマントとネックレスなのだが,アーシアには通貨の概念がなく,店は特定のアイテムを交換することにしか使えない。そのため,強力な装備は自分で用意するしかないのだ。
防具は種類によって多少性能が異なるが,入手した段階では最低限の機能しか持たず,クラフトによって防御力や魔力を上げたり,バフを付与したりする必要がある。素材は基本的に探索で入手するものなので,これをゲットするためにもフィールドを駆け回る意味があるというわけだ。
クエストに関しては物語を進めるメインのものが主軸になるが,主に街で引き受けることができるサブクエストの「サイドパス」もなかなか印象に残る。人を見つけたり,物を探したりといったシンプルなものが多いが,世界観を反映してブレイクの影響を受けず魔法を使えるフレイを英雄のように祭り上げたり,あるいは逆に異物の如く徹底的に卑下したりと,迷い込んだ“異世界らしさ”を感じられるものが多い。一方で猫を飼っていたフレイらしく,動物とふれ合う機会が多いのも面白い。滅亡が迫った世界なのでピリピリしたやり取りも多い本作だが,こういった動物たちが一種の清涼剤になってくれている。
またシナリオ面では“相棒”となるカフの存在も見逃せないだろう。フレイにとっては異世界に来てしまった元凶であるものの,離れる(捨てる)ことはできず,同時に右も左もわからない世界のガイドのようなモノでもあって,憎まれ口を叩くものの頼りにもしているような,絶妙な立場の相手になっている。
一方のカフもフレイの皮肉には皮肉で返す,ほかの人物の言葉や行動には身も蓋もない痛烈な言動をするなど,ツッコミ役として序盤から活躍して,物語の進行に欠かせない存在になっていくのも面白い。
プレイヤーとしては,周囲のアイテムや敵の場所を知ることができる「カフスキャン」の便利さもさることながら,淡泊になりがちなフィールドでの探索や戦闘時に頻繁にフレイとカフの軽妙なやり取りが発生するので,それを聞きながら進められるのが楽しい。さらにカフは皮肉屋ではあるのだが,褒めるところでは意外と褒めてくれるのもまた,結構嬉しかったりする。
前述のように,特に戦闘では慣れが必要な場面も多いのだが,本作のオプションは充実しており,単純にゲームの難度をEASYやHARDなどの段階に応じて切り替えるだけでなく,リングコマンドの起動時に時間を止めたり,回復薬を自動で使ったり,敵から受けるダメージやスタミナの回復速度を調節したりなど,非常に細かく設定することが可能だ。
なので最初はサポートを多めに設定しておき,慣れてきたら徐々に外していくなど,プレイヤーごとの腕前に応じた調節ができる。最近は細かい難度調節が可能な作品も増えているので,これらは本作特有の要素というわけではないが,かゆいところに手が届くユーザーフレンドリーな配慮であるのは間違いない。
本作はオープンワールドのアクションRPGであるが,要素そのものは「探索」「戦闘」「成長」とそれぞれシンプルにまとまっており,あまり細かいことを考えずに済むのが好印象だ。探索に出てアイテムやポイントを入手し,それでフレイを成長させ,成長した能力で敵を倒す……というサイクルがうまく噛み合っており,基本的にリソースの管理を考える必要がほとんどないので,冒険や物語に集中できる。クラフト用の素材こそそれなりに種類が多いものの,回復用のアイテムが回復薬の1種類しかないなど,特にアイテム周りの要素を大胆にスリム化しているのは,煩雑な管理作業が増えがちなジャンルの中で英断と言えると思う。
移動用のアクションが一気に開放されるわけではない関係上,プレイしていると「行けそうで行けない」場所が意外と目立つのが気になったりはするものの,魔法パルクールは操作がシンプルかつ爽快で,単純にアーシアを身一つで駆け回るだけでも楽しく感じた。マップやガイドが充実しており「次にやること」の目標が非常に立てやすいし,逆にウロウロしているだけでも探索する場所はたくさんあるので,著者のように寄り道を楽しむタイプの人は,なかなかプレイを止めるタイミングが見つけられないだろう。
序盤の取っつきこそあまりよく感じられないかもしれないが,本作は“操作に慣れてから”が本番という印象が強い。決して平和な世界ではないが,思った以上に美しいアーシアを駆け巡る冒険に興味が出たら,ぜひ手に取ってみてほしい。
「FORSPOKEN」公式サイト
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