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  • TYPE-MOON
  • 発売日:2021/08/26
  • 価格:パッケージ/ダウンロード 通常版:7700円(税込)
    パッケージ 初回限定版:8800円(税込)
    ダウンロード デジタルデラックス版:8250円(税込)
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月姫 -A piece of blue glass moon-

月姫 -A piece of blue glass moon-
公式サイト http://www.typemoon.com/products/tsukihime/
発売元・開発元
発売日 2021/08/26
価格 パッケージ/ダウンロード 通常版:7700円(税込)
パッケージ 初回限定版:8800円(税込)
ダウンロード デジタルデラックス版:8250円(税込)
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  • エンタメ化しすぎてしまったかな? 85
    良い点
    ・圧倒的大迫力の演出

    まほよ同様に演出クオリティは圧倒的です。
    もはやビジュアルノベルというジャンル名を超えて、ムービーノベルといってもよいレベルです。

    ありとあらゆるシーンで派手な演出とカメラワークが行われていますが、
    決してただ派手にしているだけではなく、ちゃんとストーリーの理解を助ける意味のある演出が行われています。

    実のところ、Fate、まほよ、を知っている身としてはそれほどの驚きではないのですが、
    FGOしかしらない人からしたら驚愕モノだと思います。


    ・シエルルートの超幅変更

    オリジナル版のシエルルートは、
    60%くらいがアルクェイドと共通で、
    設定的にはシエルは人間キャラ内では志貴と同じくらいに異常かつ最強であるにも関わらず、
    ほぼ負けイベントばかりという、非常に報われない立場のキャラでした。

    しかし今作ではルート全体が完全に別モノとなっており、
    シエルは最初から圧倒的な存在感を示してくれます。
    とくにラストバトルはもはや怪獣映画かなにか? とまで言えるレベルになっており、必見です。

    それでいて、究極の巻き込まれ被害者でもあるシエル自身についての描写も全く劣化しておらず、
    むしろ過去のシーンがより克明に描かれることで、シエルというキャラへの理解が深まりやすくなっています。
    理想的なルート変更といって良いのではないでしょか。


    ・十七分割が一枚絵ビジュアルで克明に描写されている

    そのインパクトからよく知られている「十七分割」ですが、
    オリジナル版ではビジュアルがなく、テキストだけで表現されているシーンです。
    したがってテキストをナナメ読みしているような人だと、
    あのシーンをきっかけに日常と非日常の全てが反転するということがわかりにくくなっています。

    しかし今作ではコンシューマーであるにも関わらず十七分割が克明に描写されました。
    文字通り血みどろで、文字通りに十七分割された、完全なグロ画像です。
    このシーンは規制などで描写できないのではないかなと思っていたので、予想外のサプライズでした。

    ※グロ画像がすごいから良いという意味ではなくて、
     全てが反転する作中で最も重要なシーンに対して明確な絵の描写がなかったオリジナル版の欠点が、
     完全に払拭されたことに対しての高評価です


    ・死の線のビジュアル化

    同様に死の線が常時ビジュアル化されるようになったのは素晴らしいです。
    ビジュアル化は徹底しており、主人公の状態にあわせてリアルタイムにきっちり切り替わります。

    これが明確に描写されてこそ主人公の異常性がよりわかりやすくなるのであり、
    ここにこだわってくれたことはとても評価できます。


    ・教会側の人物の大幅増加

    オリジナル版には教会側の人物が実質的にシエルしかいなかったため、
    聖堂教会という組織の存在感が薄く、吸血鬼に対する人間という構図の説得力がありませんでした。
    また比較対象がいなかったことからシエルの異常さを表現しきれていませんでした。

    今作では教会側の人物が大幅に増加しており、
    彼らの多くは組織の論理で動いてくれるため、聖堂教会という組織の存在感が感じられます。
    また、比較対象ができたことにより、シエルの存在感を大幅に増すことにも成功しています。


    ・現代を舞台にしつつも破綻しない物語

    パソコンも携帯電話もなかったオリジナル版の時代から、
    誰もがスマホを持っている現代への舞台変更が行われていますが、
    全く違和感なく、オリジナルの雰囲気を再現できています。

    そもそも登場人物にまともな人間がほとんどいない(笑)こともあってか、
    スマホで頻繁に連絡を取り合って雰囲気を台無しにするようなことはなく、
    それでいてニュースや都市伝説ではスマホが効果的に使われており、見事な時代変更です。


    ・理解を助けてくれるビジュアル

    今作では説明のためのビジュアルも豊富に差し込まれるようになっています。
    しかも意外とよくできて説明としてわかりやすい。
    特にアルクェイドによる吸血鬼講座は必見でしょう。

    オリジナル版では何度も読み直して理解するという側面がありましたが、
    今作ではストーリーの根幹に関わる部分についてはすんなりと理解できると思います。


    ・ヒロインとちゃんと結ばれる

    いわゆる朝チュン描写ではありますが、明確に描写されます。
    それなしではその後の大決戦に向かう動機が弱くなってしまうため、明確に描写してくれたのは非常に良いことです。


    ・教えてシエル先生

    ありがとうございます。ありがとうございます。





    悪い点
    ・遠野家ルートなし

    やはりこれがないのは致命的です。
    遠野家ルートがないことにより、様々な伏線が回収されないまま(※オリジナル版では回収済み)終わってしまいます。
    特に志貴の謎については全くと言ってよいほど何も明かされないままであるため、極めて片手落ちの展開となります。

    したがって、どれだけ演出が優れていようとも、どれだけ説明がわかりやすくなっていようとも、
    今作単体ではオリジナル版以下であると評価せざるを得ません。
    評価ができるのは(何年後になるのかわかりませんが)遠野家ルート版も発売されたときになるでしょう


    ・(何年後になるのかわからない)次回作まで正体不明の新キャラが多すぎる


    今回は教会側だけでなく遠野家にも興味深い新キャラが何人も追加されていますが、
    それら新キャラ全員が正体を明かされないまま終わります。
    非常に憎たらしいことです。


    ・アルクェイドの萌キャラ化が過剰

    美少女ゲームに対してヒロインが可愛いことに文句をつけるというのもおかしな話ですが、
    オリジナルの雰囲気がやや損なわれている感じは否めません。
    端的に言って格が下がってしまっています。(これまでのネタ扱いを考えると今更感はありますが)

    オリジナル版では吸血鬼であるという自覚が非常に強烈で、
    それは「人間なんてどうでもいい」という発言すら滅多にしないほどであり
    (※本当に当たり前のこととして人間を度外視しているので、わざわざそんな発言すらしない)
    志貴への好意を自覚するのすら相当後半で、自覚してからすらもあくまで吸血鬼であるというスタンスが前面に出ています。

    それが今作では早々に好意を自覚してあざとくアピールをかけてくる有様です。
    オリジナル版にあった「こいつ自覚あるのか?」という独特の空気感は失われてしまっています。

    ※なお、シエルの描写については完璧だったと思います。
     彼女は設定的には人間キャラ中でも規格外に最強クラスであるにも関わらず、
     オリジナル版では活躍するシーンが少なかったことで、
     何かと軽く扱われがち(※しばしばただの家政婦さんより弱く描写されることすら)だったのが不満でしたが、
     今作ではその点は完全に払拭されたと思います。


    ・中ボスの変更


    今作では中ボスは完全に新キャラに入れ替わっており、
    オリジナル版の中ボスは影くらいしかでてきません。

    たしかに登場人物全員が奇妙な関係図でつながっている月姫において、
    主要キャラ内で唯一ほとんど無関係なキャラなのが中ボスであり、
    中ボスが変更されてもストーリーの根幹には変更がありません。

    とはいえ新キャラの中ボスはオリジナル版に比べて明らかに格が下がっています。
    オリジナル版の中ボスは、不死と自己存在のバランスを限界まで追求し続ける、非常に魅力的なキャラだったのに対して、
    今作の中ボスは、単に戦闘力と生命力に優れているだけの、ありがちな化け物になってしまいました。


    ・伝奇性が薄れてエンタメ度が向上している

    全体的にエンタメ度が向上したかわりに伝奇性が薄れてしまっているように感じました。
    良くも悪くも「これどこのマーベルですか?」みたいな感じがあります。

    オリジナル版の雰囲気は、どちらかといえば和風ホラー的であり、
    明確に見えないからこそのヤバさ、隠されている部分に対するヤバさ、みたいな感じが強かったのですが、
    今作では良くも悪くもあけっぴろげになりすぎてしまっている感じは否めません。

    とはいえこれは遠野家ルートがないことでよりそう感じてしまう側面もあるでしょう。



    総評
    インタビューも掲載されたのでそろそろ書いてもいい頃だと判断させていただきました。
    ネタバレには可能な範囲で配慮していますが、作品の性質上、限界があります。

    オリジナル版の大ファンであるため、オリジナル版との比較になってしまいますが

    ・単体ADVとしてみると史上最高のクオリティ
    ・伝奇性が薄れてエンタメ度が向上している
    ・遠野家ルートがないため全てが中途半端に終わる

    というのが全体的な感想となります。

    単良くも悪くもオリジナル版とは違いが大きいです。
    オリジナル版はわりと貞子だったのに対して、今作はかなりマーベルという感じです。

    とくにオリジナル版では(同人作品ゆえの描写不足がむしろ好作用して)強烈に怪しさを漂わせていたシーンが、
    今作では爽快活劇シーンと化してしまっているところが少なくありません。

    そして遠野家ルートがないため、重大な伏線がまるで回収されないまま終わってしまい、
    単体のプレイ感としては確実にオリジナル版には劣ります。
    オリジナル版で、複雑な人物関係図がバシッと埋まり、全てが明らかになったときの高揚感は、今作では味わえません。


    とはいえFGOでクッソ忙しいと思われる中で、しかもFGOだけやっていたほうが儲かるであろうにも関わらず、
    諦めることなくこうしてリリースしてくれたことには感謝しかありません。
    何年後になるのかはわかりませんが、遠野家ルートも含めた完全版が出るその日を待ち続けたいと思います。

    ※遠野家ルートだけのバージョンは出さないでほしいですね。
     吸血鬼ルートと遠野家ルートでそれぞれの謎を補完しあってこその月姫ですので、
     今作分も含めた単体でパッケージでの完全版としてお願いします。
    プレイ時間
    40〜60時間
    グラフィックス サウンド 快適さ/運営 熱中度/ストーリー ボリューム
    5 5 5 4 2
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