遊びをせんとや生れけむ
戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば
我が身さえこそ動がるれ
平安時代,後白河法皇が歌謡集・梁塵秘抄に収録した今様歌謡の一句です。簡単に現代語へ直すと
「ベイビーのプレイングはファンタスティックでアゲアゲだぜオゥイェー!(プォプォプォプォ〜〜〜ン!!(レイヴホーン))」 といったところですね。ウィーミャーウギョギョギョギョーン(ワブルベース)。
人生観などの方向で深読みした解釈もあるようですが,ストレートに読み解けば
“人間はゲームをプレイするためにこの世に生まれ出て,ゲーマーの声は世界を揺るがす” ということになります(ぐるぐるした目で)。
実際,オランダの歴史家であるヨハン・ホイジンガは「ホモ・ルーデンス」(=遊ぶ人)の概念を提唱して
人間は“遊ぶ”ことで文明を築いた のだと説きましたし,Newsweek日本版の2019年版
「世界が尊敬する日本人100」 では「ストリートファイター」シリーズのプロプレイヤーである
梅原大吾氏が選出されたり (※) ,TIMEの
「TIME 100: The Most Influential People of 2019」 (2019年版・世界で最も影響力のある100人)には人気ストリーマーの
Ninja氏が選出されたり もしました。ハイ! もう一度言いますが“人間はゲームをプレイするためにこの世に生まれ出て,ゲーマーの声は世界を揺るがす”ってわけですよ!(ぐるぐる高速化)
※Newsweekの当該記事では梅原氏が「日本人初のプロゲーマー」と記されていますが,定義には諸説あるものの,2005年にアスクのスポンサードを受けたSIGUMA氏(関連記事 )や,同年にPSYMINのスポンサードを受けたチーム・4dN(関連記事 )が最初期の国内プロゲーマーであるという認識が識者間の定説となっています(梅原氏のプロデビューは2010年 )。※参考:エンターブレイン刊・月刊アルカディア 2013年3月号(No.154)
ただ,子供のころは目に見えないパワーを感じていても大人になると
「現実 対 虚構」 だったり,小さい頃は神様がいて不思議な感じに夢を叶えてくれても大人になると
「生きねば」 だったり,そうそう“遊びを純粋に楽しむ”ことも難しくなってきます。2つのボケが奇しくも庵野秀明氏関連で被ったのはさておき,一度童心を取り戻して“遊びを純粋に楽しむ”ことに立ち返ってみるのも,ときには良いかもしれません。
「龍が如く」 シリーズの権田原組長もソレ的なことを言っていた気がします(嘆きの轟音)。
そんな折,筆者がド子供の頃に発売されたゲームの最新作が現れました。そんなわけで今回は,レジスタから2021年5月6日に発売されたNintendo Switch用ソフト「
Sofia 」でやっていきましょう。5月26日まで約
50%オフ の990円(税込)で買えますし。
【Sofia】Nintendo Switch ダウンロードソフト・プロモーション動画
VIDEO
みつめて闘神α外伝(ソフィア)
「Sofia」は,主に左右移動・はしごの登り降り・ジャンプを駆使してステージ端にあるゴールを目指す,オーソドックスなプラットフォームアクションゲームです。
ストーリーは,ご当地キャラを愛する少女・ソフィアが,森の中で見つけたクリスタルに好奇心で触れようとしたところ別世界にリープしてしまい,元の世界に戻るためにクリスタルの行方を追う……というもの。ご当地キャラもソフィアのリープに巻き込まれて迷子となっているので,彼らを救出することも目標となります。
だいたいダンジョンの奥に隠れている,ゆるいノリのご当地キャラ達。ゆるいキャラのコレクション要素も面白さのひとつ
ゆるいキャラを救出するたび,スタート画面が少しずつ豪華に! 余談ですが「ゆるキャラ」という文言はみうらじゅん事務所および扶桑社の登録商標です
ソフィアのドット絵は可愛らしいですし,特定のステージで衣装が変わるといった芸コマ部分も魅力的です。ただしステージが進むにつれてレベルデザインが凶悪化。配置に明確な“殺意”を感じるトラップ群がプレイヤーを苦しめます。
ステージによって変わる衣装
敵キャラが! 炎が! 鉄球が! 放電が! 触手が!(!?) ソフィアを襲う!
それでも不条理なトラップは無いと言ってよく,「入手したキーでロックを解除し,新たなキーを入手」というギミックも非常にうまく作られています。言うなれば
“サイドビュー型アクションアドベンチャーゲームの教科書” みたいな,手堅くも魅力的な出来栄えです。
困難なシチュエーションに何度も挑み,「死に覚え」で攻略していくというのは現代で言うとソウルライクな要素なので,残機制&無限コンティニューという仕様にはオールドスクールを踏襲しすぎな気がしなくもありません。ですが,本作が
「34年前に発売されたゲームの実質的なリメイク」 であることを踏まえると,そこも“らしさ”を感じられるポイントだと言えるでしょう。
ザナドゥでポン Till the End of Time(ソフィア)
もともと「Sofia」は,電波新聞社から発売されたMZ-1500 / X1 / MSX向けのタイトルでした。同社が刊行していた
「マイコンBASICマガジン」 (以下,ベーマガ)では,1987年4月号のセンターカラーで見開き広告,“パソコンソフト新作情報”コーナーで紹介記事が掲載されています。
詳細な発売日までは分かりませんでしたが,同コーナーで掲載された日本コンピュータシステムの
「エルスリード」 は1987年3月20日の発売だったそうなので,MZ-1500版「ソフィア」の発売もおおよそ同時期でしょう。それから少し遅れてX1版も発売され,さらにMSX版が1988年1月24日に発売されたそうです。ちなみに
ピクセル の通販サイトでは,くりひろし氏によるMZ-1500版のアートを用いた
アクリルキーホルダー と
ミニトートバッグ が販売されています。
ベーマガ1987年4月号より,MZ-1500発売時の自社広告&紹介ページ。「ソフィアー」と誤植されていますが,当時としては新鮮な語感の名称だったということでしょう
ベーマガ1988年2月号より,MSX版発売直後の自社広告
徳間書店インターメディア「MSX・FAN」1988年2月号より引用の「ソフィア」紹介記事。ソフトは現在だと非常に入手困難となっているものの,誌面からゲーム画面の雰囲気を見て取れます。MSX版は,MZ-1500 / X1版からUIやマップチップが簡易化されたものですが,Nintendo Switch版のUIはこちらに似ていますね。ちなみに上記の「MSX版が1988年1月24日に発売された」という情報は,同誌の“発売予定ソフトカレンダー”に基づくもの
アスキー「MSXマガジン」1988年2月号より引用の「ソフィア」紹介記事。こちらではタイトル画面も小さい写真ながら確認できます。当然ながら,ご当地キャラが並んでいたりはしませんね。それにしても「掲載画像が各誌で違うってことは,宣材は画像じゃなくてサンプルROMだったのか。まあ当時の画撮って当然F12キーでもPrt Scキーでもなく,機材周りがリッチならビデオプリンタ,プアならブラウン管をフィルムカメラで撮影だったそうだから,デベロッパで適当な宣材を作るってのも難しいよな。で,その写真を現像して版下に乗っけて入稿して……うわキツ。『MSX・FAN』のマップなんて,どんだけ時間かけたの……?」と,誌面から当時の苦労が偲ばれます
1987年……当時の筆者は,
「ぐわんげ」 のぐわんげ様や,
「パラサイト・イヴ」 の“完全体”や,
「ドラッグ オン ドラグーン」 の“敵”みたいな人間未満の容姿をしていて,狂気と蒙昧の混沌に苛まれて地獄に吹き荒ぶ死臭をまとった風の如き絶叫を日々吐き散らしていました(訳:嬰児でした)。あと
「ブレイジングスター」 のヴラウシェラとか
「Half-Life」 のニヒランスとか
「Dead Space 2」 のクロウラーとかにも似ていたと思います。マーベルのデッドプールだったら「マジキモい」って言う系のやつです。キモいので
「Fallout 4」 ではヌカランチャーからショーンを撃つ的な
MOD を入れて
爆笑 したりするやつです。て言うか筆者と「ソフィア」は
タメ です。
皆さんも,もしビデオゲームが世間に浸透した1980年以降の生まれでしたら,自分の生誕と同年に発売された
“タメゲー” を探してみると,面白い出会いがあるかもしれません。例えば23歳のFPSプレイヤーだったら,
「俺『レインボーシックス シージ』を毎日遊んでるけど,初代『レインボーシックス』ってタメゲーだったんだ!?」 みたいな発見があるでしょう。
ちなみに1998年発売の初代「レインボーシックス」はUBISOFT STOREで買えます。安い!
そのほか,
「『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズって,初代は僕とタメゲーなんですね!」 とか,
「タメゲーの『ラチェット&クランク』が小さい頃に大好きだったんですけど,PS5版『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』で約20年ぶりに再会しました!」 とか,
「『Halo』はタメゲーなので,マスターチーフが実質的にやつがれの親父みたいなもんでごんす。『Halo Infinite』も楽しみですけえのう!」 とか,発見があったら誰かに言ってみましょう。とくに
おじゲーマー に聞かせると,身悶えして液状化したり,灰になって崩れ落ちたりするので楽しいですよ!
でも,おじゲーマーは歴戦の戦士ですから,ただ液状化したり灰になったりするばかりではありません。ベーマガは2003年に休刊となりましたが,近年は
「電子工作マガジン」 に“マイコンBASICコーナー”という形でその系譜が再興していたり,ベーマガの別冊として1985年に刊行された
「ALL ABOUT namco ナムコゲームのすべて」 および,その続刊
「ALL ABOUT namco II ナムコゲームのすべて」 が復刊されたりしています。おじゲーマーのパワーを感じる昨今です。
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2021/04/08 19:37
ただし,それも旧時代のパワーだけで成し遂げられているものではありません。「ALL ABOUT namco ナムコゲームのすべて」の復刊には高度スキャニングやOCR(光学文字認識)といった現代技術が使われているそうですし,新旧の「Sofia」を開発したYMCAT(迎霧狼慢氏)は,野田クリスタルさんが企画し,クラウドファンディングで資金調達を行った,実に現代的なスタイルのゲームであるNintendo Switch「
スーパー野田ゲーPARTY 」でもプログラミングを担当されています。つまり,良い現代があるからこそ過去が輝き,良い過去があるからこそ現代が栄える。世の中にジェネレーションギャップを嘆く人は少なくないですが,それはむしろ過去の魅力を見直せるチャンスかもしれません。
そして「Sofia」に続くYMCATの新作は
「Re:ダークストーム(仮)」 とのこと。
「デーモンクリスタル」 (
Nintendo Switch /
PC )と「
デーモンクリスタル2 ナイザー 」はリメイクだったものの,Twitterでの発言によると旧作
「ダークストーム・デーモンクリスタルIII」 とは見た目も内容も
別物 になるそうです。さらに,2018年にAndroidアプリとしてリリースされた
「デーモンクリスタルIV」 は現在では提供が停止されていますが,これも何かしらの展開を行うための措置なのだとか。
中島みゆきさん風に言えば,喜びと悲しみ,別れと出逢いを繰り返して時代の流れは回り続けるもの(1988年)。その中で語り継ぐ人もなく忘れられても,旅はまだ終わらない(2000年)。あの日々や愛が消えても夢は消えない!(1995年) 幼い日に見た夢を思い出してみれ!(1993年) 泣いてる日も笑う日もありまぁす!(1987年) ファイト!(1983年)