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「MotoGP 22」プレイレポート。チュートリアルが充実した今作で,モータースポーツ知識に乏しい初心者は一体どこまで走れるのか?
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印刷2022/05/03 12:00

プレイレポート

「MotoGP 22」プレイレポート。チュートリアルが充実した今作で,モータースポーツ知識に乏しい初心者は一体どこまで走れるのか?

 Koch Mediaは,2022年4月28日にモータースポーツゲーム「MotoGP 22」PC / PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One / Nintendo Switch)を発売した。

画像集#001のサムネイル/「MotoGP 22」プレイレポート。チュートリアルが充実した今作で,モータースポーツ知識に乏しい初心者は一体どこまで走れるのか?

 本作は,Milestoneが制作する,二輪ロードレースの最高峰レース「MotoGP世界選手権」のオフィシャルゲームで,2022年シーズンのデータを反映させた最新作となる。美しいCGによるマシンやサーキットの再現とシミュレーターレベルでのマシンの挙動,そして2022年シーズンの最新データに基づいた多彩なモードが売りで,モータースポーツファンにとっては馴染み深いシリーズだ。

 一方で,この手の硬派なスポーツ作品となると,初心者は入りづらいという印象がある。オートバイが好きだったり,かっこいいと思っていたりしても,レースゲームとなる難しそうで手が出せないという人も多いのではないだろうか。
 実のところ筆者は,モータースポーツについて昔読んだマンガでかじった程度の知識しかなく,同系のゲームも近年では同じMilestoneが手がけた「Monster Energy Supercross」という毛色の異なるタイトルを触ったことがあるぐらいの,完全な初心者である。

 ところで本作は,初心者にも分かりやすくするために,チュートリアルが一から作り直されているという。そこで,筆者レベルの知識や経験をもってどこまで遊べるのかを試す意味で,初心者目線でのプレイに特化したレポートをお届けしたいと思う。なお,今回のプレイには,PS5の製品版を使用している。


 「MotoGP(ロードレース世界選手権)」とは,FIM(Federation Internationale de Motocyclisme:国際モーターサイクリズム連盟)が主催する二輪レースの最高峰カテゴリーのこと。1949年より実施されている歴史のあるレースで,レース用に開発されたオートバイを使用して,世界各国のサーキットを転戦し,順位によるポイントでチャンピオンが決定する。
 クラスには下から「Moto3」「Moto2」「MotoGP」の3つが存在していて,クラスによってマシンの排気量や参加できる選手の年齢などのレギュレーションが異なる。本作のタイトルにもなっている「MotoGP」が最高クラスとなるが,本作ではすべてのクラスでプレイが可能だ。

クラスによってマシンの排気量が異なり,速度や操作感覚もずいぶん変わる
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 ゲーム開始時に難度を4段階から選び,その後,自動的にチュートリアルがスタートする。もちろん必要ないという人にはスキップも可能だ。

難度によって走行距離やAIの強さが異なる。設定はいつでも変更可能
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チュートリアルは順番にアンロックされていく。体験すれば次に進める
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 チュートリアルでは「基本セッション」と「上級セッション」の2項目を順番に進められる。初歩の初歩である,マシンを走らせるところから始められるのはいいが,慣れないうちは単純に走らせることも難しい。そんなプレイヤーをサポートしてくれるのが,2番めに学ぶ「理想走行ライン」「コーナーインジケーター」という設定の存在だ。
 前者はその名のとおり,各コースを走るうえでの理想とするラインであり,このラインどおり走れば最低限の走行タイムを出すことができる。ラインの色はマシンの速度に対応していて,青ければ加速が可能で,黄と赤は逆に減速推奨と,リアルタイムで色が変わっていくので,走るための基準として役立つ。
 もう一方は,ラインではなくマーカーとして表示されるコーナーのポイントで,ラインほど目立つものではないため,基準に引きずられることなく自分の走行ラインを開拓できるというものだ。
 ゲーム本編でもいずれか一方を表示させられるので,好みに応じて設定しておけば,走行時の役に立つだろう。

まずは基本的な操作性を理解する。コーナーでうまく曲がることが最初の難関となるはず
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理想走行ラインの表示。マシンの速度によってリアルタイムで色が変わる
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コーナーインジケーターは標識としての意味合いが強い。赤はブレーキングポイント,青はコーナーのエイペックス(頂点)や出口を意味する
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同じクラスのライダーとの簡易的なレースがチュートリアル基本セッションの締めとなる
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 ゲームには幅広いプレイヤーのプレイスタイルに対応する「ライディングエイド」なるシステムも備えられている。これは難度設定などとは別の,プレイヤーをサポートする機能で,コースの基準に合わせた自動ブレーキやブレーキ入力の調節,トランスミッション,スタート時のクラッチ操作の設定,電子制御,アクセルやコーナリングの入力調節,コースアウト時の補助といった要素を,プレイヤーの好みに合わせて設定できるようになっている。

 各種設定をオート寄りに設定しておくことで,走行中に意識する要素が少なくなって,純粋にマシンの操作に集中できる。一方,マニュアルやシミュレータ寄りの設定なら,実物のマシンと同じような緻密な操作や意識が必要となるが,その分成績の伸びしろは大きくなるというわけである。

 とくに自動ブレーキに関しては,前述の理想走行ラインとともに設定しておくことで,コーナー手前で最低限の減速が行われるようになり,初心者でもグッと走りやすくなる。ブレーキシステムは自動ブレーキを無効にした場合でも,細かな調整ができるので,プレイヤーのスキルレベルに合わせて少しずつ変更していくことも可能だ。

ライディングエイドはマシンの物理シミュレーションレベルを調整できる
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 なおゲームには「リワインド」の機能も標準搭載されている。該当のボタンを押すと一定時間分の走行をリアルタイムで巻き戻すことができ,転倒時や理想のラインを走れなかったときなどに重宝する。冒頭で触れた「Monster Energy Supercross」などにも搭載されていたもので,一部使用制限もあるが,レースでミスをしたときにも使用でき,さらにコーナーの曲がり方の反復練習などにも向いている。

コーナーでクラッシュ! 車載カメラの映像が乱れる演出が入るのがリアルだ
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ボタンを押したところから手前のシーンを巻き戻せる
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 もう1つ,今作では練習要素として「MotoGPアカデミー」が搭載された。これは2022年の公式サーキット21コースを任意に選び,コースごとに区切られたセクションの走行タイムを計測できるというもの。コース全体を走るのとはまた違い,苦手なセクションを集中して走行できるので,初心者に限らず“使える”モードとなりそうだ。

MotoGPアカデミーは,各国の21コースの各セクションを選べる
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3段階の目標タイムを目指して練習できる
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 スピードを出しすぎればコーナーで膨らむか飛び出してしまい,逆に遅すぎると曲がりすぎてコーナー内側に食い込むか転倒してしまう。アナログスティックの倒し方やトリガーの押し込み加減に微調整が必要で,コーナーを迎えるたびに緊張してしまう。
 操作の難しさはシリーズ伝統のものらしく,初心者にはチュートリアルの段階から「ピーキー過ぎてお前にゃ無理だ」なんて声が聞こえてきそうな感触なのだが,ゲーム自体の完成度は高く,走り込むことに特化したモードや要素が充実しているおかげで,少しずつ走り方が掴めてくる感覚はかなり心地いい。感覚をある程度掴んで,理想走行ラインのどおりにカーブを曲がれたときは感動を覚えたほどだ。と言っても,まだ練習の段階ではあるのだが……。

 レースではこうした操作のみならず,タイヤの温度や消耗具合,ガソリンの量,ブレーキの前後の使い分けや温度,コースのショートカットにおけるペナルティなども考慮する必要があり,現実のグランプリがいかにシビアな世界かを実感する。
 その一部はチュートリアルの「上級セッション」でカバーされているのだが,理論の解説がテキストベースで専門用語も多く,まだ少しハードルが高いような気もした。どうすれば正しく対応できるのか,どうすると間違いなのかを,体験も含めてもう少し具体的に知ることができれば,さらにハードルは下げられるのではないだろうか。

画面の右下のHUDには速度やシフト,タイヤの状態,ガソリンの量などが表示されている。これらの情報に関するヘルプも欲しかったところ
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 本作はチュートリアルだけでなく,ゲーム本編のモードも充実している。メインモードである「キャリア」は,アバターを作って好みのクラスを選び,既存のチームと契約するか自身のチームに所属して手持ちの資金でスタッフを雇い,マシンの開発をしながらシーズンへ挑んでいくモードだ。現実と同様のスケジュールに則ってレースが行われ,その結果によって報酬を得て,次のレースへと進めていく。Moto3やMoto2からキャリアアップしていくのもいいし,いきなりMotoGPから挑むことも可能だ。

アバターとなるライダーは,見た目のほか,ライディングスタイルなども設定できる
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契約の交渉役のパーソナルマネージャーや,車体開発に携わる技術スタッフを雇う。優秀な人員ほど賃金が高い
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走るだけでなく,マシンの開発にも気を配らなければならない
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レースは3日間で2日めに予選。その結果が最終日のスターティングポジションに影響する
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レース本番だけをプレイしてもOK。緊張のスタート
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低めの難度設定でリワインドを駆使してなんとか6位に入賞した
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レースの結果によって報酬が手に入り,次のレースへと進んでいく
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 「クイックモード」は,選手(キャリアで育成中の選手も選択可能)やコース,あるいは選手権を任意に選んで走れるアーケードライクなモードで,さらにタイムトライアルや画面分割のローカルプレイ(Nintendo Switchは非対応)も行える。タイムトライアルでは,コースのほかにクラスやレギュレーションも選べるので,練習にも最適なモードだ。

選手は新旧の著名なライダー70人以上を収録。2022シーズンのトップライダーも選べる
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グランプリは単独のレース,選手権はいくつかのシーズンを通して走るモードだ
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 本作ならではのモードとして,MotoGPの歴史の中で伝説として語られる2009年の世界選手権を17のチャプターに分けたレースを追体験していく「NINE SEASON 2009」も収録されている。
 ここでは当時撮影されたドキュメンタリー映像とともに,チャプターごとに現実のシチュエーションに沿った目標に挑んでいく。筆者のようなMotoGPに詳しくないプレイヤーでも,その歴史の一部に触れられる記念碑的なモードだ。
 目標達成はかなり難しかったのだが,ここで見られる映像によって,実在する選手達の活躍と葛藤を知ることができ,さらに本作におけるレースの再現やマシンの挙動がいかにクオリティが高いかも味わえた。リワインドができない現実世界のレースは本当にシビアだ……。

2001年から8年間のライダー達のドキュメントがプロローグとして実写映像で流れる。レースに詳しくなくても熱くなれる
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特定のライダーにスポットを当て,ゲームでその追体験をする。映像と同じアングルからゲームが始まるのが熱い
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条件をクリアすると次のエピソードがアンロックされる。リワードとして,カスタマイズ用のカラーリングも手に入る
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 ほかにもクロスプレイ対応のオンライン対戦モード「マルチプレイヤー」もあり,対戦ツールとしても優秀だ。人間同士の対戦なのでリワインドは効かないが,当然個々のミスも出てくるので,より現実的なレースを楽しめるはず。ただしこちらのモードは,Nintendo Switchのみ非対応となっている。

 PS5で体験した今回のプレイでは,映像の美しさも特筆すべきポイントだった。走行中は視点が決まっていて背景も流れてしまうのだが,走行後のリプレイは中継を意識したカメラワークも手伝って,見ているだけで惚れ惚れする。リプレイ映えする走りをしたいというモチベーションアップにもつながるはずだ。
 また,路面や車体の状況がDualSenseのアダプティブトリガーによる演出でフィードバックされ,アクセルやブレーキのトリガーを押し込んだときの感触が変化したり,(通常の振動とは別に)トリガーが振動したりするのだ。このあたりは,シリーズを長く手がけているMilestoneのうまさを感じられた。

レース前の映像も目を見張る完成度だ
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視点変更時は,ヘルメット越しの視点も選べる。ライダーの目線そのままだ
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リプレイ時の映像はリワインドを使った場合でも,つなげられた状態で再生される
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アングルや注目する選手の切り替えなども変更可能
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ポーズメニューではフォトモードもある
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 従来のファンはもちろん,可能な限りプレイヤーの間口を広げようとする真摯なゲームデザインは好感が持てるものであった。欲をいえば前述のとおり,テキストだけでは理解が難しい部分がまだたくさんあるので,そこのフォローがあればより多くのプレイヤーを取り込めるのではないだろうか。

 ハードル高めのタイトルではあるが,レースゲームとしての完成度は高く,極めていくことの楽しさを十分に備えた作品だ。知識があればさらに楽しめるのはもちろんだが,本作から現実のMotoGPの世界に入っていくこともできるはず。オートバイによるレースに興味があれば,この機会にプレイしてみてはいかがだろうか。

単発のグランプリでは,3位に入賞できた。今後はリワインドを使う数を減らすことを課題としたい
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