プレイレポート
[プレイレポ]ストラテジーゲームとRPGの“いいとこ取り”。「SpellForce: Conquest of Eo」の魅力に迫る
2003年にPhenomic Game Development(現:EA Phenomic)が製作した「SpellForce」は,その後もデベロッパやパブリッシャを変えながら様々な続編やスピンオフが生み出されてきた。
第1作から2021年に発売された「SpellForce 3 Reforced」(PC / PS5 / PS4 / Xbox Series X|S / Xbox One)に至るまで,これらの作品はすべてRPG要素の強いリアルタイムストラテジーとしてリリースされている。
だが,デベロッパをOwned by Gravityに変えて2023年2月3日にリリースされた本作は,同デベロッパの作品である「Fantasy General II」と同じ,ターンベースの4X(探検・拡張・開発・殲滅)ストラテジーとして登場した。
しかしジャンルは変わったものの,ロールプレイングとストラテジーという異なるジャンルをミックスさせた「SpellForce」シリーズの魅力は健在だ。残念ながら日本語化は行われていないが,今後のサポートを期待しつつ,本作の魅力と特徴を紹介しよう。
※プレイ及び執筆の内容は,2月24日に実施されたアップデート以前のバージョンです
「SpellForce: Conquest of Eo」公式サイト
個性的な本拠地「タワー」を有効活用
「SpellForce: Conquest of Eo」の舞台は,タイトルにもなっている惑星イオだ。プレイヤーは見習い魔術師として師匠の志を継ぎ,各地を探索しつつ魔法力の源「オールファイア」の秘密を解明していくことが,本作の大まかなストーリーとなっている。
プレイヤーの本拠地となるのは,師匠が遺してくれた研究施設の「タワー」である。そして,資源であるゴールド,マナ,熟練点(Profiency),研究点などは,タワーやマップ上にある施設「小屋」の支配圏内に,資源を産出するマップタイルを取り込むことで収集できる仕組みになっている。
資源のうち,ゴールドはアイテムの購入やユニットの維持に使用し,マナは魔法を使用するのに必要となる。また,繁栄力や研究ポイントを貯めれば,タワーを強化し,強力な魔法を発見していける。
ゲーム開始時に,プレイヤーのアーキタイプを選択可能。アルケミスト,ネクロマンサー,アーティフィサーの3タイプは,それぞれ作成できるアイテムに違いがある。各種の特性をカスタマイズして好きなタイプの魔術師を創ることも可能だ |
惑星イオの各地には,オールファイアの力の一部を入手できるノードが点在している。収集したオールファイアは,マナ,熟練点,研究点へと任意に配分できる |
研究ポイントを貯めて,世界各地に散逸した魔導書のページを収集することも,プレイ中の大きな目標のひとつ。本作ではこのような設定によって,技術開発的な要素がうまく演出されている |
資源を収集し施設や軍勢を拡大,ほかの軍勢と戦いながら自勢力を発展させていくゲーム展開は,4Xストラテジーを遊んだことがある人にはすぐに理解できるだろう。
ただ注意したいのは,「タワーは追加で建設することはできず,小屋の建設にも上限がある」ということだ。さらに,大半の資源タイルはターンの経過とともに枯渇してしまうので,同じ土地を支配しているだけでは,プレイヤーの経済力は徐々に弱体化していくことになる。
だが,安心してほしい。プレイヤーが有するこのタワーは,何と“空を飛んで移動することができる”のだ!
序盤で利用可能になるこの機能を積極的に使い,資源の豊かな地域へと本拠地を転々とさせていくのが,赤字経営に陥らないコツとなる。
タワーの移動には別の目的もある。本作では,マップ上で多数のイベントが発生するのだが,ゲームの進行上重要なイベントは,特定のマップタイルをタワーの支配圏内に収めないといけない。このため,深刻な資源不足に陥っていなくとも本拠地を移動させていく必要がある。
もちろん,タワーが敵勢力に落とされることは,ゲームの敗北を意味する。ゲーム中盤になると,遠方に部隊を派遣している間に敵勢力が本拠地を攻めてくることもあるので,気を付けたい。
各地を旅しながら目標に向かっていく展開は,「指輪物語」などを彷彿させてくれることもあり,本作のファンタジーRPG的な雰囲気づくりに大きく貢献している。
この「浮遊移動する本拠地タワー」の仕組みは,4Xストラテジーゲームとしてユニークな面白さを提供しつつ,メインストーリーが進んでいく原動力にもなっており,ゲーム内では非常に大きな存在感を放っているのだ。
タワー内部に施設を建設し拡張していくことも,勢力を強化するうえで重要だ。これらの施設を充実させていくことで,資源を求めてマップ各地を渡り歩く遊牧民プレイが快適になっていく |
ストラテジーゲームとRPG,どちらの切り口からも楽しめる良作
タワーの存在に目が行きがちな本作だが,ストラテジーゲームとしても丁寧に作られており,ファンタジー世界の登場人物として敵対勢力に打ち勝つ戦略を考える楽しみが随所で味わえる。
ゲーム内でプレイヤーが雇用できる多種多彩なユニットはその好例だ。人間,エルフ,オーク,ゴブリン,ドワーフ,ゴーレム,アンデッドなどファンタジー世界お馴染みの様々な種族を仲間にでき,それぞれが多彩な長所と短所を持っている。
ユニットは15レベルまで強化できる。プレイが進むと,元々個性的なユニットがさらに尖った特徴を獲得していく |
これらのキャラクターはランクによる差異こそあるものの,一見した限りでは明らかに無駄だと感じるタイプのユニットがない。
例えば,労働者は資源の収集・採掘には欠かせないが,戦闘力そのものはさほど高いわけではない。しかし,このユニットを部隊に加えることで戦闘時の手数が増え,別の編成では負けた戦いに勝てるということもある。
ヒーロータイプといった,多少の劣勢を覆せる強力なユニットもいるのだが,仲間にできる人数や編成できる数には限りがある。基本的には,ユニットの構成と敵との相性が大事になってくるだろう。
戦闘時に各ユニットは,それぞれ3回のアクションが行える。アクションの種類や実行する順番を正しく選択すれば,戦力では大きく劣る戦い勝つことも可能だ。「あえて敵に反撃させることで敵のアクション回数を減らす」「敵の士気を挫いて撤退させる」など,様々な作戦をとれるのもストラテジーゲーマーにはうれしい |
個々のユニットにしっかりと見せ場がある戦闘だが,アイテムや魔法の威力が絶大なのも爽快感があって気持ちがいい。
これらのアイテムや魔法は無尽蔵に使えるわけではない。強力なアイテムは事前に作成しないといけないし,魔法の発動には日頃から貯めておいたマナが必要になるので,常に戦いに備えた貯えも重要になる。
プレイ中に収集したアイテムからは,更に高度なアイテムを生成できる。筆者のお気に入りは火炎と聖水のポーション。どちらも戦闘で範囲攻撃により敵に大ダメージを与えられる |
本作の戦闘は,質量で上回る部隊を用意しておくなど,短期・中期的な戦略を事前にしっかり立てておけば勝ちやすくなるし,多少の戦略的ミスをしても手持ちのユニットを戦術的に上手く立ち回れば勝てるようになっている。
個人的には,4Xストラテジーゲームの戦術モードとしてはかなりよくできたシステムであり,RPG要素とのバランスがうまく取れていると感じた。
なお,多くのRPGでは気が済むまでキャラクターを強化できるが,それでは有限の時間やリソースの使い方を考えていく戦略ゲームならではの緊張感や醍醐味が失われてしまうこともある。
その点本作では,一定ターンごとに敵対勢力である「サークル」の魔導師との友好度が低下するイベントが発生する。このイベントによって,プレイヤーは時間が有限であることを意識し,やがて来る戦いに備えるには何がベストの戦略かを,ロールプレイをしながら考えていくことになる。
敵対勢力である「サークル」の魔導師たちはいずれも個性的だ。サークルは魔法の濫用を戒め秩序を保つ目的で結成された組織だが,そこに属する魔導師が必ずしも善なる存在でないことは,このシリーズをプレイしたことがある方はよくお分かりだろう |
ゲームにおけるランダム性のバランスも絶妙である。固定マップである惑星イオは,プレイ開始時に難度が異なる4種類の地域からスタート地点を選択できるので,最低でも4回は新鮮な気持ちでプレイできる。
さらに同じ地点からの開始でも,新プレイ毎に,資源タイルやイベントの場所,発見できる魔導書のページやそこでアンロックできる魔法の順番,敵対勢力や仲間にできるキャラクターまでもがランダムに変更されるのだ。
筆者はゲームシステムに慣れるまでに何度もリスタートをしたのだが,同じゲーム展開になったことは1度もなく,リプレイ性は高く感じた。
このようなランダム性に満ちた展開は,運の要素が大きくなりすぎることでストラテジーゲームとしての面白さを削いでしまう危険もある。
しかし本作は,固定マップやRPGとしてのストーリーラインのおかげで,ランダム性によってプレイヤーが採るべき根本の戦略そのものが変わるわけではなく,プレイの本質がブレることもない。RPGとストラテジーゲームの要素が上手くミックスされている作品ならではの特徴だろう。
ひとつひとつのイベントの選択肢も豊富であり,様々なロールプレイを楽しめるようになっている |
メインストーリーを進める以外にも,マップ上には様々なサブイベントが用意されている |
これは余談になるが,ゲームのシステムや攻略とは直接関係ないところで筆者が興味深いと感じた点がひとつある。それは,「勢力圏」の表現だ。
ストラテジーゲームの勢力圏は,一般的に「プレイヤーが所有する拠点が直接支配するエリア」であることが多い。だが先にも述べたように,本作ではこのような形で支配できるタイルには,“ターン経過によって得られる資源が枯渇する”といった大きな制限がある。
そして,プレイを進めて各地で探検や戦闘を繰り広げていくと,敵がスポーンするタイルを消滅させたり,敵対勢力を一掃したりすることで,それ以上敵に攻撃されない「安全ゾーン」というものが自然と生まれてくるのだ。
友好的な中立地とでも言うべきこれらの地域が増えていくことで,領土そのものは増えなくてもプレイヤーが安心できる領域が拡大していくように感じられたのが,ほかのストラテジーゲームとは異なりおもしろい。
狩猟・採集は,事前に周辺地域から敵を排除しておくと安全に行える。このスクリーンショットのように,敵の目の前でアイテムを集めるのは,止めておいた方がいい |
「SpellForce」シリーズの豊かで確固とした世界観を活かした個性的なストラテジーゲームの「SpellForce: Conquest of Eo」は,RPGとしての魅力を併せ持ち,両ジャンルの「いいとこ取り」をした作品といえる。
特徴的な“移動する本拠地であるタワー”に代表される,本作ならではの個性的なゲームメカニズムを使いこなせるようになれば,「あと1ターンだけプレイしよう……」という抜けられない快楽が待っているだろう。
固定マップでシングルプレイのみに対応していることもあり,ファンタジー世界を舞台にしたストラテジーゲームの入門としても適しているのではないだろうか。
現時点では公式に日本語化される予定はなく言語面での敷居が高いのが難点だが,「Age of Wonders」シリーズや「Total War: Warhammer」シリーズなど,ファンタジーストラテジーゲームが好きな人は,ぜひ遊んでほしい。
「SpellForce: Conquest of Eo」公式サイト
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