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[インタビュー]「OCTOPATH TRAVELER II」の音楽演出は綿密な打ち合わせによって生まれていた。西木康智氏と宮内継介氏が語る音楽づくりでこだわった点とは
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印刷2023/09/25 12:00

インタビュー

[インタビュー]「OCTOPATH TRAVELER II」の音楽演出は綿密な打ち合わせによって生まれていた。西木康智氏と宮内継介氏が語る音楽づくりでこだわった点とは

 スクウェア・エニックスのRPG「OCTOPATH TRAVELER」シリーズ。2018年に発売された第1作「OCTOPATH TRAVELER」の発売から5周年を迎えた現在では,2020年にスマホ向けアプリ「OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者」が,2023年には「OCTOPATH TRAVELER II」PS5/Switch/PS4/PC)がリリースされるなど,今や同社を代表するIP作品として成長した。

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 8人の主人公の旅を追体験していくシナリオやブーストを駆使した爽快なバトル,HD-2Dと呼ばれるドット絵と3DCGを合わせた特徴的なグラフィックスなど,さまざまな点がファンから支持されているが,本稿でフィーチャーするのは「OCTOPATH TRAVELER」の“音楽”である。

 本シリーズの作曲は,すべて西木康智氏が手がけており,「OCTOPATH TRAVELER」の世界観と巧みにマッチした音楽が高い評価を得ている。曲単体が好評なのはもちろんだが,OCTOPATH TRAVELERは,音楽を適切なタイミングで効果的に使用してゲーム体験を盛り上げているという点も見逃せないポイントだ。
 ボス戦前のイベントシーンの曲からシームレスにボス戦の曲へと遷移していく「バトルエクステンド」と呼ばれる手法など,「音楽を使ってどのようにゲームを盛り上げるか」という部分に力が入れられている。

 特に最新作「OCTOPATH TRAVELER II」では,この音楽を使った演出がかなりパワーアップしている。主人公の1人アグネアのストーリーでは,ボーカル曲を取り入れたり,旅をしながら自身の歌を作り上げていく様子が描かれていたりと「音楽」を通じて,ゲーム体験のレベルが1つ上の段階まで引き上げられていたように筆者はプレイしながら感じていた。

ビジュアルも進化した「OCTOPATH TRAVELER II」だが,音楽を使用した演出も前作以上だ
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 そこで今回は,コンポーザーの西木康智氏とディレクターの宮内継介氏にオンラインインタビューを実施し,前作から「OCTOPATH TRAVELER II」で音楽の作り方で変化した部分や,印象的な演出の作り方などを聞いてみた。なお,今回のインタビューには本編後半のネタバレを含んでいるので,その点はご了承いただきたい。

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西木康智氏(「OCOTOPATH TRAVELER」シリーズ コンポーザー
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宮内継介氏(「OCTOPATH TRAVELER」「OCTOPATH TRAVELER II」ディレクター,アクワイア)

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「OCTOPATH TRAVELER II」公式サイト

「OCTOPATH TRAVELER Orchestra Concert ?To travel is to live?」公式サイト


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。私自身「OCTOPATH TRAVELER II」は音楽を用いた演出のレベルが前作に比べてかなり引き上げられていた印象をプレイして感じました。

西木康智氏(以下,西木氏):
 ありがとうございます。

4Gamer:
 このクオリティアップにつながった要因をお聞きしたいです。たとえば,前作から作り方として大きく変わった点などはあるのでしょうか。

西木氏:
 前作から「OCTOPATH TRAVELER II」で大きく変わったのは,ディレクターの宮内さんと話し合いの時間を十分に取って制作に臨めたという点です。実は,前作の音楽を制作した時は,プロデューサーの高橋さんを介してやり取りをしていたので,宮内さんとは顔を合わせたことがなかったんです。直接お会いしたのは,東京ゲームショウのイベントの時なんですよ。

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宮内継介氏(以下,宮内氏):
 それから一緒に食事にいったり,コラボカフェに行ったりして仲良くなったんですよね(笑)。

西木氏:
 そうです,そうです(笑)。そんな中,「OCTOPATH TRAVELER II」の企画が立ち上がる時に宮内さんから「今回は,西木さんと直接やり取りをしたいです。アイデアなどがあれば,ぜひ意見をください」という提案をいただいたんです。そこから私自身の中で温めていた案を宮内さんと話し合うなど,本格的に開発がスタートする前に十分な打ち合わせをすることができました。

4Gamer:
 曲のイメージのすり合わせが前作よりも細かくできたということでしょうか。

宮内氏:
 はい。今回は,イベントやシナリオの初稿ができた段階で西木さんに直接テキストを渡していましたね。「このシナリオのこういったシチュエーションで,こういうふうに使う曲をお願いします」という風に,開発側が思い描く音楽のイメージを細かく伝えながら制作してもらっていました。

4Gamer:
 今回は踊り子「アグネア」のシナリオで“歌”が1つの大きなテーマとして掲げられていたのが印象的でしたが,こちらも西木さんとのやり取りの中で生まれたのでしょうか。

宮内氏:
 ええ。アグネアのシナリオでは,彼女自身がスターになるために世界中を旅していき,その体験が“歌”として,ゲーム中で表現されていきます。歌をテーマにしたシナリオにしたいという話は,割と初期のころから西木さんと話していた記憶があります。

西木氏:
 アグネアのシナリオに関しては,僕自身が「続編があればぜひやりたい」と思っていたアイデアを宮内さんたちが組み取ってくれた結果,実現できた演出でした。
 前作で妥協していたつもりはないんですが,「OCTOPATH TRAVELER II」は,みんなでコンセプトを練り上げていけたので,いろいろな挑戦ができました。

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4Gamer:
 「旅立ちの唄」や「きぼうの唄」といったアグネア編で使われている音楽を始めとして,ボーカルが入った曲が前作より増えています。これもIIにおける挑戦の1つなのでしょうか。

西木氏:
 そうですね。今回サウンドトラックにインパクトを持たせるために歌を明確に取り入れていきたいという思いがありました。ただ,それにあたっても単に歌を入れるだけではゲーム的な意味がないので,宮内さんと相談しながらアグネア編のようにゲームの演出や設定とマッチさせながら取り入れることにしました。

4Gamer:
 アグネア編以外で歌が使われているシーンというと,夜のフィールドや街で流れるアレンジバージョンの曲が思い浮かびます。ボーカルが印象的に使われていましたね。

西木氏:
 夜の楽曲は,最初は単にテンポや楽器を変更したりといった,昼の楽曲を少しアレンジしたものにするつもりだったんです。でも,それだと「夜」感が少ないものもあったので,ボーカルを楽曲に組み入れることを思いつきました。結果的に「OCTOPATH TRAVELER II」の夜を象徴する音色になったかなと思います。シナリオ的にも夜は大きな意味を持つので,ボーカルという前作には無かった要素で,その印象をプレイヤーに根付かせるという役割も担っています。 

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4Gamer:
 そういえば,前作で歌が使われていたのは「魔女と呼ばれる者」「魔神の血を継ぐ者」という裏ボスの曲のみでした。こちらも,「人智を越えた存在との対峙を表現するためにクワイア(合唱)を用いている」とnoteで解説していましたが,IIでも同様の意図があったということですか(関連リンク)。

西木氏:
 はい。さらにIIでは夜が明けなくなり,不気味なモンスターたちが出てくる状態があるんですが,その時のフィールドの音楽「深き夜」は,さらに歌を全面に押し出した不気味なものになっています。
 夜が侵食すればするほど,歌の要素を強くして主人公たちに人智を超えた存在が迫っていることを音楽で伝えているんです。

4Gamer:
 なるほど……。今回音楽の部分は演出も含めて本当に西木さんがガッツリ関わっているんですね。

宮内氏:
 前作はあくまで作曲家として西木さんに参加してもらっていたんですが,今回は「1人の開発者としてチームに参加してもらっている」と言えるぐらい近い距離でやり取りしていました。アグネア編や歌をフィーチャーした音楽以外にも,本当にいろいろな提案をしてもらっているんですよ。

4Gamer:
 具体的にはどのような案をされたのでしょうか。

西木氏:
 大きなところだと各主人公のシナリオのラストバトルでの音楽演出は特徴的だと思います。
 「OCTOPATH TRAVELER」シリーズは,ボス戦のイベントシーンで流れる各主人公固有の楽曲からシームレスにボス戦の曲へと遷移していく「バトルエクステンド」という仕組みを採用しています。今回は,そのボス戦前のイベントシーンで流れる楽曲のフレーズを各主人公のシナリオのラストバトルに挿入するという演出を入れているんです。

4Gamer:
 あの演出はプレイして私もびっくりしました。オーシュットなら固有曲が「伝説を求めて」,ラストバトルの曲が「至る、伝説の果て」というように楽曲名もリンクしていました。あのアイデアはIIの開発が始まる前から温めていたものだったんですか。

西木氏:
 制作の終盤で思いついたものですね。やはり各主人公のラストシナリオなので,何か特別な演出を入れたいという思いがあり,ボス戦で使用しているバトルエクステンドの仕組みを応用してみようと考えたんです。挿入部分に関しては,キーを変更したり,アレンジを加えたりしているんですが,基本的な部分はバトルエクステンドを流用しているので,意外と省エネ設計になっているんです(笑)
こう書くと手抜きみたいに見えてしまうかもしれませんが,「やってることはシンプルだけど,効果は強力!」というような,そういう演出に個人的に魅力を感じるんですよね。

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シーンに合わせた効果的なタイミングで音楽を流し,プレイヤーの印象を強く残す


4Gamer:
 演出もそうですが,個人的に印象的だったのが,イベントシーンで音楽を流すタイミングが絶妙だったことになります。プレイヤーの感情を揺さぶるような音楽がイベントシーンの絶妙なタイミングで流れることが多く,ゲーム体験を1つ上の次元に引き上げていたように感じました。こうしたプレイヤーの感情を揺さぶるような音楽の流し方は,意識していたのでしょうか。

宮内氏:
 イベントシーンに合わせて効果的なタイミングで音楽を流す,というのは明確に意識して作っていた点です。前作の「OCTOPATH TRAVELER」でも意識していなかったわけではないんですが,今回は西木さんと打ち合わせを深くできたおかげでイベントシーンごとに必要な楽曲のイメージとシナリオを,私がすべて事前に把握できていたんですよね。

4Gamer:
 すべての楽曲となると,苦労もあったのではないでしょうか。

宮内氏:
 イベントで流れる音楽って大体10曲ちょっとなので,実はそこまで大変ではないんですよ。しかも西木さんに発注する段階で似たような曲を作らないようにしたり,この曲はここで流すといったことを決めたりしていたので,ゲーム内に組み込む前段階である程度流すシチュエーションを絞れていたんです。それによって曲の管理がしやすく,流すタイミングの精度も上げられたのかもしれません。
 あと,前作はイベントシーンをスクリプトで作っていたんですが,今回はシーケンサーというUnreal Engineの機能を使っていたので,意図したタイミングで音楽を流すように細かく調整できたのも大きかったですね。

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西木氏:
 イベント楽曲については,曲ごとにゲーム内で何度流れるのか数値化して,取捨選択していきました。個別のイベントごとの楽曲を作ると管理も大変ですし,楽曲がプレイヤーの印象に残らない可能性も出てきます。なので,汎用的に使えるようなイベントとして使える曲を作るようにして,1つの楽曲を流せる回数を増やして,プレイヤーに印象づけるようにしていました。

宮内氏:
 逆にヒカリの章で流れる「風翔ける、戦場」のような数回しか流さない楽曲については,プレイヤーの印象に残りやすいようにかなり盛った曲にしてもらっています。

4Gamer:
 なるほど。

西木氏:
 「OCTOPATH TRAVELER」は,音楽の鳴らすタイミングをゲームの演出として明確に利用しているんですよね。例えば,プレイヤーの印象に残るタイミングでキャラクターのテーマを流したり,ボス戦の前という山場でキャラクター固有の楽曲を流したりすることで,「これがキャラクターのテーマなんだな」ということを印象づけています。

 先ほど,各主人公のシナリオのラストバトルでキャラクター固有の楽曲を入れるという話をしましたが,これもプレイヤーに楽曲自体を印象づけられていないと,演出の意図が分かってもらえません。なので,かなり大げさに「これがこのキャラクターの専用曲なんだぞ」と分かるタイミングで流すようにしていました。

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宮内氏:
 各キャラクターの最終章で楽曲を流すタイミングについては,イベントシーンのサンプルを全部西木さんに送って指示をもらっていましたね。

4Gamer:
 先ほど「開発者としてチームに参加してもらっている」くらいの距離感で仕事ができたという話がありましたが,フリーランスの作曲者がここまで開発の細かな部分まで携わるのは,ゲーム開発においては普通のことなんですか。

宮内氏:
 私は「OCTOPATH TRAVELER」の開発体制が当たり前になっているのでよく分からないんですが……西木さん的にはどうなんでしょう。

西木氏:
 ゲーム会社に所属しているコンポーザーだったら,これぐらい密なコミュニケーションを取っていると思いますが,フリーランスのコンポーザーだとあまりないかもしれません。
 コミュニケーションの取り方も問題になってくると思いますし,そもそも「この数の曲を納期の中で作ってください」と契約書の中で決めていることが多いんです。なので,「OCTOPATH TRAVELER」のようにゲームを作っていく中で曲数を増やしたり,演出を足したりすると,新たに契約を締結する必要があるといったことが起きてしまうんです。

 先ほど宮内さんも言っていましたが,今回はフリーランスながらもチームに参加している開発者の1人くらいの立ち位置でやれたのが,ここまで音楽にこだわれた要因だったのかなと思います。

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バトル曲は外しちゃいけないというプレッシャーがすごいんです


4Gamer:
 さて,ちょっと定番の質問なのですが,今回作った中で西木さんのお気に入りの曲を聞かせてください。

西木氏:
 個人的にはウェルグローブやティンバーレインで流れる街のBGM「都に吹く、緑の風」が一番お気に入りです。前作でも街のBGMである「悠然たる山腹の街」が好きだったんですが,それと同様に書きたかった曲を思いのままに作れたなと。
 デモの段階では宮内さんから「ちょっと街の風景に対して,曲が豪華すぎるんじゃないか」と言われたんですが,どうしてもこのままゲームに入れたかったので,押し通した記憶があります。それくらい気に入っている曲ですね。

宮内氏:
 最終的にプロデューサーの高橋さんの意見も聞いてOKになったんですよね。
 西木さんってメインテーマとかバトル曲に関しては,あまり意見を押し通してくることはないんですが,フィールドとか街の曲は「これは絶対この方がいいよ!」と推してくることが多かった印象があります。

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4Gamer:
 それは意外ですね。「OCTOPATH TRAVELER」と言えば,バトル曲が花形の印象が強いので,西木さんもそちらがお気に入りなのかなと思っていたのですが。

西木氏:
 もちろん嫌いなわけではないんですが,メインテーマやバトルの曲って求められている役割が明確にあるので,それを実現することを考えて作る必要があるんですよ。
 感情のままに作った曲というより,理論に基づいた部分を多めにして作っているのが,メインテーマやバトル曲になるんです。

4Gamer:
 自由にやれた街のBGMの方が西木さんとしてはお気に入りになんですね。

西木氏:
 やっぱり感情を押し出して作った曲がお気に入りになりますね。今回押したタウンの曲は作りたかった音楽を無理矢理ゲームにぶち込んでもらったみたいな感じですから(笑)。

4Gamer:
 これはなかなか大変だったなという曲はありますか。

西木氏:
 やっぱりバトル曲ですね。

4Gamer:
 バトル曲が得意なイメージがあるので,サラサラと作れているのかと勝手に思っていたんですが,そんなことはないんですか。

西木氏:
 やっぱりプレッシャーがすごいんですよね(笑)。僕の中で「OCTOPATH TRAVELER」のバトル曲というのは,アニメで言うところのオープニングテーマみたいなもので,“好きになってもらうことを宿命づけられている曲”なんですよ。

4Gamer:
 確かにバトル曲はファンの期待がすごく高そうです。

西木氏:
 ええ。ユーザーの人気投票を見ても,バトル曲の人気はもう圧倒的なんです。それだけ期待を寄せてもらっているとなると,「絶対に外しちゃいけない」という気持ちが強くなるんですよね。
 バトル曲の制作に入る際には「これからはバトルの制作フェーズに入るんで,よろしくお願いします」とあらかじめチームにも伝えて,逐一確認をお願いしてもらえるような体制を敷いて時間をかけて作っていました。

画像集 No.011のサムネイル画像 / [インタビュー]「OCTOPATH TRAVELER II」の音楽演出は綿密な打ち合わせによって生まれていた。西木康智氏と宮内継介氏が語る音楽づくりでこだわった点とは

4Gamer:
 ほかの曲とバトル曲ではどれくらい制作期間に違いが出るのでしょう。

西木氏:
 例えばフィールド曲は大体2日,調子が良ければ1日あれば作れるんですが,バトル曲については1曲につき1週間ほどスケジュールを設けています。
 先ほども話した通り,バトル曲は求められている役割が明確にあるので,入れなければならない要素がかなりあるんですよね。そこがキチンとできているのか,確認の時間も込めて余裕をもって進めています。

4Gamer:
 そういえば,今回のバトル曲は,曲の持っている雰囲気が前作のものに近い印象を受けました。「ノーマルバトル1」は前作の「バトル1」とイントロが一緒だったり,「決戦2」が「ボスバトル2」を思わせる激しめの曲だったりと,これらの要素は意図的に組み込んだものなのでしょうか。

西木氏:
 そこは明確に前作と楽曲をリンクさせるように作っています。ありがたいことに前作の楽曲はユーザーから多くの好評をいただきました。
 同時にユーザーが考える「OCTOPATH TRAVELERらしさ」のようなものも前作の段階で形成されたと思うので,ある程度前作のフォーマットを変えないまま,「OCTOPATH TRAVELER II」なりの新要素を入れていくことにしました。

4Gamer:
 ある程度前作を意識した結果,今の形になったということですね。

西木氏:
 とはいえ,あまりチャレンジせずに理論ガチガチで作ると,「ユーザーに媚びてる」と受け取られて逆に冷められてしまう可能性もあるので,外さない要素と新しく取り入れる要素の塩梅には苦労しました。かなり頭を悩ませて作った部分ですね。

画像は「OCTOPATH TRAVELER」より。バトル曲については前作と「II」を比較してみるのも面白いかもしれない
画像集 No.012のサムネイル画像 / [インタビュー]「OCTOPATH TRAVELER II」の音楽演出は綿密な打ち合わせによって生まれていた。西木康智氏と宮内継介氏が語る音楽づくりでこだわった点とは


ファン待望のオーケストラコンサートは普通とはかなり違ったものに


4Gamer:
 「OCTOPATH TRAVELER II」は前作に比べて曲数が非常に増えています。曲が多くなるほど,それぞれの楽曲の印象が薄くなってしまう気もするんですが,曲数を増やすことに迷いはなかったのでしょうか。

西木氏:
 今回に関しては特にありませんでしたね。
 「OCTOPATH TRAVELER II」で曲数が増えた最大の要因は,フィールドや街の曲に昼夜2つのバージョンを作ったことだと思うんですよ。新たにメロディーを増やしたというよりは,アレンジを増やしたという感じなので,「OCTOPATH TRAVELER」としての音楽の幅は広がりつつも,メロディーの総数としてはあまり前作と変わっていなかったりします。

4Gamer:
 なるほど。メロディーは変わらないので,プレイヤーの印象には残るように設計されているんですね。

画像集 No.014のサムネイル画像 / [インタビュー]「OCTOPATH TRAVELER II」の音楽演出は綿密な打ち合わせによって生まれていた。西木康智氏と宮内継介氏が語る音楽づくりでこだわった点とは

西木氏:
 曲数については多ければ多いほどいいというわけでもないので,仮に今後続編を作るとなったときには,2よりも減る可能性は十分にあります。その辺はゲームの演出との兼ね合いなので,実際に企画が進まないと分からないところではありますが。

4Gamer:
 最後に音楽関連の大きなトピックスとして,シリーズ5周年のタイミングでアナウンスされた「オーケストラコンサート」について聞かせてください。

西木氏:
 音楽イベント自体は2019年に「OCTOPATH TRAVELER Break, Boost and Beyond」というライブをやっていたのですが,これは小編成の室内楽器とバンドによるものでした(関連記事)。
 僕としてはこの編成の音楽アレンジもとても気に入っていて,まだまだ可能性を感じますしその延長線上でコンサートを企画しても良かったんですよね。しかしコラボカフェなどのイベントでユーザーの方と直接お話した時に「BBも良かったんですが、やっぱり原曲に近いオーケストラ編成で聞きたい」という声が多くあったんです。
 今回は,シリーズ5周年という区切りのいいタイミングかつ,IIがリリースされた年なので,オーケストラコンサートを発表するならここしかない,絶好のタイミングでした。

4Gamer:
 開催は2024年の春とのことですが,セットリストなどコンサートの構成はもう決まっているのでしょうか。

西木氏:
 すでにセットリストはほぼ確定していて楽譜を作り始めている状態ですね。曲目に関してはこれからの発表をお待ちいただければと思います。

4Gamer:
 「OCTOPATH TRAVELER Break, Boost and Beyond」では,バトルエクステンドの再現やアンコール曲としてメインテーマのボーカルバージョンが演奏されていました。今回のオーケストラコンサートでもゲーム内を再現した演出やサプライズに期待してもいいでしょうか。

「OCTOPATH TRAVELER Break, Boost and Beyond」より(関連記事
画像集 No.016のサムネイル画像 / [インタビュー]「OCTOPATH TRAVELER II」の音楽演出は綿密な打ち合わせによって生まれていた。西木康智氏と宮内継介氏が語る音楽づくりでこだわった点とは

西木氏:
 うーん,ちょっと現段階では話せないですね(笑)。ただ普通のオーケストラコンサートとはかなり違ったものになると思いますので,楽しみにしてもらえるとうれしいです。

4Gamer:
 これからもシリーズの音楽が広がっていくことに期待しています。本日はありがとうございました。

「OCTOPATH TRAVELER II」公式サイト

「OCTOPATH TRAVELER Orchestra Concert ?To travel is to live?」公式サイト

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