企画記事
名作ローグライクの続編「Hades II」は前作となにが違う? どこがパワーアップした? さっそくアーリーアクセス版をプレイして確かめてみた
2024年5月7日に配信が始まり,大きな話題となったことでご存じのゲームファンは多いだろう。Supergiant Gamesにとって初の続編展開となる「Hades II」は,Steamでは配信から2日ほどで1万5000件を超えるユーザーレビューが寄せられ,「圧倒的に好評」のステータスを獲得している(2024年5月9日15:00時点)。
そんな“話題作”と呼ぶにふさわしいスタートダッシュっぷりを見せている本作だが,実際どのようなゲームになっているのか。さっそくアーリーアクセス版をプレイして確かめたので,1作目を踏まえつつなにが変わり,どこがパワーアップしているのかを伝えていこう。
「Hades II」公式サイト
そもそもHadesってどういうゲームだった?
まず最初に,そもそも「Hades」とはどういうゲームなのか,1作目を通して説明しておこう。
「Hades」は,ギリシャ神話を題材としたクォータービューのローグライクアクションゲームだ。主人公は,冥界の神ハデスの息子ザグレウス。不死の力を備えたザグレウスは,何度も死んではもといた場所に戻りながらも,とある理由で地上を目指して冥界からの脱出に挑む。
そんなザグレウスの物語のテーマは,冥界からの“家出”と言っても過言ではないだろう。
ザグレウスが脱出を図る冥界は,ランダム生成のダンジョンとして表現されている。
ザグレウスは,出発時に近接武器の剣,槍,盾,拳,遠隔武器の弓,電磁砲という6種類の武具から1つを選択し,挑戦するたびに構造が変わる冥界のダンジョンを進んでいく。
基本のアクションは移動と回避(ダッシュ),そして攻撃のみ。攻撃手段は通常攻撃,特殊攻撃,回収型の遠距離攻撃である魔弾,ゲージを溜めて使用する祈りの4種類あるが,複雑な操作は求められない。
ダンジョンはいくつもの部屋があるかのようにエリアで分かれており,エリアでの戦闘が終了すると神々からの祝福(功徳)や素材などを獲得でき,それによってザグレウスがパワーアップする。これらの成長要素と武具の特性を組み合わせて,プレイヤーは自分だけの戦闘スタイルをカスタマイズするのだ。
死んでしまうとスタート地点からやり直しとなり,ダンジョンの構成も変化する。迷宮で得た素材で“自身の能力を永続的に強化する”システムが存在し,これによってゲームを始めてすぐのときは突破できなかった難関も超えられるようになる。
このように「Hades」は,何度も死んではまたトライするという“死んで覚える”タイプのゲームだ。
HP回復手段の少なさや被弾時のダメージの高さ,そして初見殺しの多さゆえ,「少しプレイすればクリアできるようなゲーム」ではない。ローグライクならではのプレイヤー自身の知識と経験値がとても重要かつ,ランダム要素や武具ごとの戦闘スタイルの違いもあり,リプレイ性が非常に高い作品だ。
一方,基本はシンプルな操作で,死ぬたびに能力が強化されるゴッドモードがあるなど,アクションが苦手な人やストーリー重視でプレイしたい人でも楽しめるような間口の広さのある設計にもなっている。
そういった,素早くスムーズでありながら状況に応じた戦略性が求められる戦闘を気軽に,そして深く楽しめるアクションはもちろん,ギリシャ神話を元にしたストーリーやキャラクターデザイン,そして美しいアートスタイルと音楽も高く評価されている。
名作ローグライクアクションの続編は,なにが変わり,どこがパワーアップしたのか?
では,その続編となる「Hades II」はというと,基本的なゲームの流れは変わらず,死を経験して強くなっていくシステムももちろん健在だ。
本作の主人公は,暗黒の魔術を操る冥府の王女メリノエ。彼女もザグレウスと同じく不死の力を備えており,これまた前作同様,前置きなしでいきなり1周目に放り込まれる。
チュートリアルなんてものは存在しないし,「とりあえず,いっぺん死んでこい!」という感じで,このあたりもHadesらしい。
ストーリーは,オリュンポスを戦火に包んだ因縁の相手である時の巨神・クロノスを討つというものだ。
不死の力を持つメリノエは,クロノスに対抗するための拠点である辻の郷の代表として,その大役を任されることになる。
登場するキャラクターたちのほとんどがクロノスに恨みを持っており,メリノエはときに励まされ,助力を得るという,団結感のあるストーリーになっている。
前作のキャラクターが一部登場したり,前作とのつながりを感じさせられたりする要素はあるが,ストーリーは単体でも楽しめるものとなっているので,続編とはいえいきなり本作から始めても問題なさそう。
と言っても「知ってるキャラが出て嬉しい!」みたいな楽しさはあるので,本作で初めてHADESに触れる人は,これを機に1作目もプレイしてみるといいだろう。
武具を選んで迷宮に潜り,道中で敵と戦い,メリノエを強化しながら奥へと進む。死んだら持ち帰った素材でメリノエを強化。そしてまた武具を選んで迷宮へと旅立つ……このとおり,基本的なゲームの流れは変わらないのは先ほどお伝えしたとおり。一方で戦闘システムは大きく変化している。
前作にはない要素として,マナというリソースが追加された。
マナはエリア移動をするたびに回復する仕様で,後述するチャージ攻撃を使うときなどに消費される。初期状態では自然回復しないが,マナに関連するパワーアップなどを行うことで回復が可能となる。
そして魔弾はなくなり,代わりに魔陣という魔法陣を設置するアクションが追加された。魔陣は範囲内の敵を足止めする効果があり,またチャージすることでダメージを与える効果を追加できる。
マナを消費するチャージ攻撃は,通常攻撃,特殊攻撃,魔陣のすべてに存在する。
通常攻撃,特殊攻撃の挙動は選んだ武具によって違うが,たとえば初期武具である魔女の杖では,通常攻撃が近距離攻撃だが,チャージすると遠距離まで届く直線の魔法攻撃になる。
前作のスピード感あるバトルを知る人であれば,「チャージなんてしてるヒマなくない?」と思うかもしれないが,永続的な強化要素である魔札の1つに「チャージ中は自分以外の動きが遅くなる」という効果がある。
これがかなりいい調整になっており,反射神経に自信がない筆者としては,チャージ攻撃主体のビルドをすることで,敵の攻撃をじっくり見ながら対応でき,前作にない本作ならではの楽しさを感じられた。
もちろん,前作同様にスピード感ある戦闘を楽しめる武具もある。
姉妹刃がその代表で,ダガーとショーテルを合わせた双剣スタイルなのだが,チャージした通常攻撃で敵の背後に瞬間移動する切りつけ攻撃を行う。
スピード感ある動きがスタイリッシュで爽快かつ,優れた攻撃力を持つものの近距離戦ゆえのハイリスクさもあるというところもまたカッコいい。
前作の祈りのような必殺技にあたるものは,降月術という名の新しい技になった。
敵の近くでマナを消費したときにゲージが溜まり,最大になると使用できるという,これまたマナが関わっている。初期状態では使用することができず,上向きの三日月模様のエリアにいるセレネから教わることで使えるようになる。
どれも強力かつ個性的な効果を持っているので,強敵や難関に挑むときに活用できるのはもちろん,戦闘にアクセントを加えてくれる要素にもなっている印象だ。
基本のアクションは移動+ダッシュで前作とほぼ同じ仕様だが,ダッシュボタンを長押しすることで疾走という高速移動ができるようになった。
敵と距離を取りたいときに便利であり,また敵によっては疾走を使わないと避けづらい攻撃もあるので,使用する場面は少なくないだろう。
前作のように刻むようにダッシュを繰り返すプレイングに加え,ダッシュに疾走を織り交ぜた動きも戦略的に重要となりそうだ。
ダンジョンにはドレスという新要素も追加されている。
ドレスはその周回のみ有効となるアイテムで,数値分のアーマーとバフを獲得できるというものだ。アーマーは追加HPとして表示されるのだが,アーマーが破壊(数値がゼロ)されるとドレスのバフ効果も消滅する。
バフはないがアーマーの数値がとても高い,アーマーの数値がとても低い代わりに強力なバフ効果をもつなど,“顧客のニーズ”に合わせた豊富な種類のドレスが用意されているので,メリノエのパワーアップの進め方やプレイスタイルに合わせて着飾ってみよう。
永続的にメリノエを強化してくれる要素の1つ,魔札についてももう少し詳しく説明したい。
魔札は前作でいうところの冥夜の鏡に当たる強化要素で,決められたコストの中でデッキを組むような感覚でメリノエにさらなる特性を与えられる。
マナを自然回復させるものや,通常攻撃を強化するものなど,こちらもまた自分のプレイスタイルに合ったカスタマイズができるという楽しさがある。
装備品やアクセサリのようなアイテムでキャラクターを強化する賜物は,前作とほぼ同様の仕様だ。
迷宮に入る前に1つを選んで装備するとその効果が得られ,NPCにネクタルを贈ると獲得できるというのも変わらず。ただ,マナという新しいリソースが追加されたぶん,効果は多様化したように感じられた。
ダンジョン探索の新たな要素が採集だ。
これは迷宮内で鉱石の採掘や種を採取をするというもので,それらの素材を拠点に持ち替えることで,新たな武具を開放したり,畑を耕したりといったことができる。
素材は主に調合で使用することになり,調合を進めていくことで迷宮探索をサポートしてくれる要素が追加されていく。前作のプレイヤーであれば,宮大工のようなものと伝えると分かりやすいかもしれない。
鉱石を掘りたいなら三日月のつるはしを,種を集めるなら銀の鋤(すき)を,釣りをするなら釣り竿を……といったように,特定の素材の採集には採集装備が必要になる。武具とは別で1つ装備できるので,集めたい素材を考えて選択しよう。
前作からかなりの進化。でもこれからさらに進化する!? HADES IIの今後のアップデートにも期待
あらためて全体的な感想を伝えると,前作の良い部分を踏襲しつつ,さらに戦略性が高くなったと感じた。
魔陣による敵の足止め,マナの管理,チャージ攻撃追加による攻撃の多様化,ダッシュと疾走の使い分けなど,状況に応じてどう戦うかが前作以上に重要になった印象だ。
ローグライクにおけるリプレイ性の高さと,リアルタイムな戦略性を求められる高難度アクションの相性の良さを証明した前作から,さらに深みを持たせて正統進化を遂げたといって差し支えないだろう。
当然,アートワークや音楽についても素晴らしい出来で,前作から大きくパワーアップしていると感じた。
とくにグラフィックスについては,Hades特有の世界観や雰囲気を崩さず,それでいて細かなところまでしっかり描かれており,ゲームの没入感を高めてくれている。
個性的で魅力的なキャラクターデザインもしっかりと確認できたし,ビジュアル面でも前作に続く名作として後世に名を残すゲームになりそうだ。
さらに言えば,本作はまだアーリーアクセスが始まったばかり。これから正式リリースに向けて,我々プレイヤーの声を反映しながら完成度を高めていくとのことなので,期待は高まるばかりだ。
新たな機能やキャラクターの追加を含む大型アップデートも予定されているということで,どのような進化を見せるかも非常に楽しみなところ。
プレイ時間的にまだまだ見られていないところもたくさんあるので,今後のアップデートを待ちつつ,現在の環境でもゲームをたっぷり楽しみたいと思う。
前作にハマった人はもちろん,「高難度のローグライクアクション」や「死にゲー」というワードにピンときた人,ギリシャ神話モチーフの物語や個性的で美しいビジュアルに興味がわいた人にもぜひプレイしてほしい。
「Hades II」公式サイト
- 関連タイトル:
Hades II
- この記事のURL:
(C)Supergiant Games, LLC 2022. All rights reserved.