イベント
ファンタジー世界を舞台にした魔法を操る新作FPS「アヴェウムの騎士団」発表会レポート。2023年7月20日発売で,新進気鋭のAscendant Studiosが開発
スタジオの成り立ちからゲームのストーリー,実際のゲームプレイなどが解説されたほか,開発チームへのQ&Aセッションも実施された発表会の内容をお伝えしよう。
本作は魔法と紛争に満ち,忘却の危機に瀕するファンタジー世界を舞台とする,一人称視点のシューティングゲームだ(公式なジャンルとしては“Single-Player Magic FPS”と呼称するらしい)。開発を手がけるのは,本作がデビュー作となるAscendant Studios。「Dead Space」「Call of Duty」「Halo」「BioShock」といった,数々のベストセラー作品に携わってきたメンバーが集結して結成されたスタジオである。
「アヴェウムの騎士団」は2023年中の発売予定だったが,発表会では2023年7月20日と告知された。また日本語音声も実装される予定とのこと。
Ascendant Studiosとは?
Ascendant StudiosのCEOであるBret Robbins氏は,1996年にCRYSTAL DYNAMICSに入社後,数々のゲームデベロッパを渡り歩いてきた。26年以上というゲーム業界のキャリアを持つベテランで,本作のゲームディレクターを務める人物だ。過去に携わった作品には「Call of Duty: World War II」「Call of Duty: Advanced Warfare」「Call of Duty: Modern Warfare 3」「Dead Space」「The Lord of the Rings: The Return of the King」「007 From Russia With Love」「Blood Omen: Legacy of Kain」「Gex」と数々のベストセラーが並ぶ。
その後,強力なパートナーシップの獲得など,紆余曲折を経て,Robbins氏は2018年にAscendant Studiosを設立する。しかし,東京ゲームショウ2018真っ只中であった2018年9月21日,Telltale Gamesがスタジオの閉鎖に向けた従業員の解雇を発表した。これに伴い,職を失ったゲーム開発者の受け入れを行った結果,社員数は約25人から50人へとほぼ倍増。しかし,その後に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に流行し,開発も自宅からリモートで行わざるをえないといった,困難が続く。
とはいえ,「働き方の根本的な変化により,世界中から才能のあるクリエイターをリクルートできるようになった」と,コロナ禍でも良いことはあったそうだ。そうした結果,社員数は100人を超えるデベロッパへと成長。Robbins氏が抱く情熱や,スタジオとしての成長と共に作り上げられたのが,本作「アヴェウムの騎士団」というわけだ。
「アヴェウムの騎士団」のプレイフィールとは
さて,先に“Single-Player Magic FPS”と記したが,その言葉の意味通りに,本作はストーリーを体験していくシングルプレイタイトルである。詳細は後述するが,いわゆるオンラインでの協力プレイ,対戦といった要素は存在しない。
プレイヤーはBattlemageであるJakと呼ばれる青年となり,大国同士の戦争のさなか,未来を救う壮大な物語に巻き込まれていく。
ゲームシステム“FPS”だが,銃やロケットランチャーはもちろん登場しない。そんなファンタジーな本作でJakが扱うのは“Magic”(魔法)である。Chaos(赤),Life(緑),Force(青)という3種類の魔法を切り替えながら戦う。最終的に登場する魔法は25を超えるとのことだが,Chaosが主に至近距離で高いダメージを与える拡散魔法,Lifeが敵の追尾機能を持つ魔法,Forceが遠くにいる敵に有効な遠距離魔法というように,大まかな方向性があるようだ。
このほかに敵からの攻撃を防ぐシールド(展開中は動きが鈍ってしまう)や,Lash(敵を引き寄せる魔法),テレポート(ブリンク)などを駆使して戦闘を進めていく。
キャラクターの成長要素としては,先述した魔法のほか,装備,タレントといったものが一通り揃っているようだ。冒険の中には戦闘だけではなく,パズル的な要素を持つステージもあるとのこと。なお,説明会では「開発版である」との前置きがありつつも,実際のゲームプレイ動画を視聴でき,グラフィックスのクオリティにはかなり胸が躍るものがあった。実際の製品版がどのような仕上がりになっているか,今から非常に楽しみだ。
開発チームへのQ&Aセッション
説明会後半,参加した各国のメディアによるデベロッパチームへのQ&Aセッションが行われた。セッションに登壇したのは,先に紹介したBret Robbins氏(Game Director)をはじめ,Kevin Boyle氏(Executive Producer),Dave Bogan氏(Senior Art Director),Julia Lichtblau氏(Associate Art Director)の4名である。この模様をお届けし,本稿の締めくくりとしよう。
──以前の作品・経験から踏襲したもの,また新しく見出したものはなんでしょうか。
Bret Robbins氏:
やはり「Call of Duty」,“CoD”からの経験は大きかったと思います。スムーズかつクイックで,フレームレートをしっかりと維持できる戦闘シーンは必須です。ですから,そうした部分を維持しつつも,プレイヤーの皆さんにインパクトを与え,それでいてシューターファンに違和感を与えない。そんなプレイフィールを持つことなど,多くのことに注意を払って制作に取り組みました。魔法という部分も既にあるイメージを連想させるのではなく,「この世界における魔法とはなにか。Battlemageとはなにか」といった根本的な部分から作りこみました。
──「Call of Duty」+Magicという初期のコンセプトをどのように越えましたか。
Bret Robbins氏:
初期は本当にラフなアイデアでした。ただ,実際に作業を始めると「ファンタジー風CoD」ではない,新たな作品を目指して突き進んでいきました。冒険,パズル,さまざまな要素があり,メインストーリーだけでも30時間程度はありますし,細かい部分まで冒険すれば,それ以上の時間を楽しんでいただけます。
──伝統的なFPSのラインから外れる作品作りで楽しかったことはありますか。
Bret Robbins氏:
たとえばですが,銃を撃つときだけ顔を出すといったカバーリングではなく,本作ではプレイヤーがガンスリンガーのように,厳つくてカッコいいキャラクターとして戦闘を楽しめるようにしました。シールドが一つの例ですね。伝統的な部分を残しつつも,ユニークかつ独創的な体験を作り出すことができたのは,我々としても非常に楽しい経験でした。
──キャラクターの多くにはタトゥーが入っているように見受けられました。タトゥーはゲーム内でどのような意味合いを持つのですか。
タトゥーによってゲーム内のステータスが変わるといったことはありません。ですが,我々が作りこむアートスタイルには必ず意味や意図があります。ここでは“ゲームプレイには影響しないが重要なもの”としておきましょう。ネタバレは避けてお話します(笑)。
──建築物や魔法のビジュアルなど,プレイヤーがゲームを初めてプレイした時,どのような印象を持ってほしいと考えていますか。
ゲームを初めてプレイするときでも,ゲーム内で初めて訪れる場所でも,その場所の重みを感じ取ってほしいですね。どこか地球のような風景がありつつも,本作の舞台は何度も崩壊や戦争を乗り越えてきているので,そうした背景を感じ取ってほしいです。隠された謎を解き明かすのも楽しいですよ。
Dave Bogan氏:
典型的なファンタジーの中から逸脱し,新鮮なキャンバスの中で,プレイヤーの期待をいい意味で裏切ろうと模索しました。その結果,非常にユニークな世界を描くことができたと思います。
──ユニークな魔法はありますか?
Bret Robbins氏:
いろいろと用意していますよ。全体的に言うことがあるとすれば,いわゆるシナジーを生み出したかったんです。我々はコンボシステムと広く呼称していますが,戦況に応じて魔法を組み合わせ,使い分けるわけですね。さまざまな個性のある魔法が登場することで,ゲームプレイに深みを与えることができたのではないかと考えています。プレイヤーのスタイルによってカスタマイズできるロードアウトも楽しみにしていてください。
──今後の計画としてマルチプレイなどはありますか。
Bret Robbins氏:
我々もそうした点を考慮していましたし,過去には作業に取り組んでいた時期もありましたが,現段階でお伝えできることはありません。今はシングルプレイでの体験を最重視してゲームを制作しています。
──フォトモードはありますか。
ゲーム内の詳細な機能は後日に公開予定です。非常にクールで楽しんでいただけると思いますよ。
──シングルプレイヤーとうかがっていますが,プレイにオンライン環境は必要ですか(常にオンライン環境がないとプレイできないのか)。また,マネタイズはどのようになっていますか。
Bret Robbins氏:
どちらも“NO”です。ゲームはオフラインで動作しますし,ゲーム内の課金もありません。
──アートチームに質問です。ゲーム内のビジュアルのインスピレーションは,現実のどのようなものから得ましたか?
Julia Lichtblau氏:
ゲームの中には非現実的なものが多数登場しますが,どこか地球の面影を再現したかったんです。環境主義の理念を取り入れつつ,樹木や植物など,さまざまな環境をナチュラルに捉えられるように構成しました。ゲーム内の自然を見ることで,プレイヤーの皆さんにさまざまな発見があればいいなと考えています。
Dave Bogan氏:
我々の世界と共通の要素があると感じてもらえれば嬉しいです。私がプロジェクトにジョインした際,Bretが60ページくらいのデザイン文書を見せてくれたんですね。コンセプトアートやさまざまなビジュアル図が載っていましたが,それを基にしつつ,私が過去に経験したこと,見たものから受けたインスピレーションを加えました。開発は本当に楽しくて,そして驚きに溢れるものでした。
──皆さんに質問です。本作で誇りに思っていること,プレイヤーに楽しんでもらいたいことを一つ教えてください。
Kevin Boyle氏:
きらびやかな画面はもちろんですが,キャラクターたちの関係性を挙げたいです。ストーリーの中での爽快感と衝撃の要素がどのように組み合わさっているか,素晴らしいストーリーライティングに加えて,さまざまクリエイティブによって重厚な物語が生み出されています。皆さんに体験していただけるのが待ち遠しいです。
Julia Lichtblau氏:
続く話にはなりますが,キャラクターの人柄,話し方,背景など,ウィットに富んだ個性を持つキャラクターたちとの掛け合いは本当に素晴らしいものですし,私自身も未だに楽しんでいます。
Dave Bogan氏:
技術,エフェクト,キャラクターモデルといった要素が高クオリティなのはもちろんですが,やはり本作の根幹となるのは世界観です。チームとして,我々の理想としていた世界,ストーリーを実現できたと思います。Unreal Engine 5での制作も非常に楽しかったです。
Bret Robbins氏:
この世界を楽しんでいただければと思います。すべてが真っ新な状態から開発はスタートしましたが,戦闘やストーリー,環境の一貫性など,多くの要素を複合させて世界観を作ってきました。説得力を持たせつつ,ファンタジー要素を組み込むバランスは非常にうまくいった部分だと思います。ぜひ楽しんでください。
「Ascendant Studios」公式サイト
キーワード
条件および制限が適用されます。詳しくは、https://www.ea.com/games/immortals-of-aveum/immortals-of-aveum/disclaimersをご覧ください。