インタビュー
[インタビュー]「グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-」,発表された新情報の深掘りや新システムの狙いを福原哲也氏に聞いた
今回,同作のクリエイティブディレクターを務める福原哲也氏にインタビューを実施する機会を得た。直近の発表イベントとなったEVO 2023で公開された新情報や,新たなシステムを追加する狙いなど,気になる質問をぶつけてきたので,ぜひ読み進めてほしい。
ゲージ周りのテコ入れで読み合いが大幅に変化。「グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-」オンラインβテストレポート
Cygamesは対戦格闘ゲーム「グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-」のオープンβテストを7月29日と30日,PS5/PS4向けに実施する。本稿では,27日に実施された先行プレイテストで確認できた,新要素やプレイフィールをまとめてお届けしていく。
「グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-」公式サイト
新キャラクターは多くのプレイヤーに喜ばれるであろうキャラクターから選出
――本日はよろしくお願いします。福原さんの「グランブルーファンタジーヴァーサス」(以下GBVS)シリーズでの立場をあらためて聞かせてください。
福原哲也氏(以下福原氏):
本作では,クリエイティブディレクターという肩書ですが,ぼくがグラブル関連作品で行っているのは,“グラブルたらしめる要素”の監修と作成であり,グラフィックス,キャラクター,シナリオ,サウンドなどは一括して見させてもらっています。
GBVSシリーズでは,開発元のアークシステムワークスさんと相談しつつ,ゲームを作り上げています。
――グラブルを格闘ゲーム化するに当たって「ここだけは外せない!」と考えている,核となる部分はどのような要素でしょうか?
福原氏:
やはりバトルとキャラクターになってくると思います。1対1で戦う格闘ゲームの場合は,原作のデフォルメキャラを等身大なった時,こいつはこんなアクションをしていたのか!と驚いてもらったり納得してもらえるよう,かなり気を使いつつも力を入れています。
特に格闘ゲームというジャンルはプレイヤーが1人のキャラクターと向き合い,長ければ何年も付き合い続けることになるのが特徴としてあると思います。また,それだけに1人のキャラクターを作るのにも物凄いコストをかけていますから,キャラクター人気の高いグラブルのスピンオフとしては相性がいいと思いますし,逆に原作を知らなくてもそのキャラクターの魅力を知ってもらうためのきっかけになればとも思っています。
――グラブルのキャラクターを格闘ゲームのプレイアブルキャラとして成り立たせるために気を付けている点やこだわりはありますか?
福原氏:
まずキャラクターの選出ですが,前作はグラブルでの人気や立ち位置に加えて,バトルスタイルのバランスも考慮していました。キャラクターを追加する際は毎回悩み抜いて決めているのですが,GBVSRからは原作における人気をより重視しています。現時点で発表しているのは,本作のリリース時から追加されるアニラ,ジークフリート,ニーア,グリームニルの4人になります。
そして新キャラクターのバトルコンセプトは既存キャラとのバランスを考えつつ決めています。たとえばアニラなら,ナルメアがテクニカルなキャラクターになったので,シンプルな操作を基本にしつつ,使いこなすことで上手さをアピールできる要素が組み込まれました。
――ダウンロードコンテンツでさらに6人追加されることが発表されています。その6人は現時点で決まっているのでしょうか。
福原氏:
ええ。内訳は決まっており順次制作中となります。グラブルの場合,断片的な情報を出すだけでも「○○なのでは?」とある程度絞られてしまうので,「多くの人に喜ばれるキャラクターを選んでいます」以上のことは言えません(笑)。
――キャラクター関連の要素だと,コスチュームスキンの実装も大きいですよね。技術的に実現するのは難しかったと思いますが,どうやって問題をクリアしたのでしょうか?
福原氏:
アークシステムワークスさんはキャラクターのアニメーション,髪やアクセサリーといった“揺れもの“を全部手付けで作っているので,新しいコスチュームを用意するとモーションを全部手作業でやり直す必要があるんですよ。だから制作コスト的にコスチュームスキンは難しいという話をこれまでしてきました。
とは言え,なんとかしたいという話をぼくの方からし続けていまして,落とし所を決めたと言いますか,厳しい制限の中で部分的に揺れものをシミュレーションで補うなど,これまでやらなかった技術も導入することで実現しました。コストを抑えたと言っても,設定画やモデルの段階でかなり繊細な調整をしているので結構かかってはいますが,グラブルとしては絶対に喜ばれる要素と考えていたのもあり,がんばってもらいました。
――その話を聞くと気軽には追加できない要素ということですね。
福原氏:
いえ,実はもうけっこうな数が制作進行中です。ぜひ期待していてください。
新たなバトルシステム導入の狙いとβテストの反響
――今回アルティメットアビリティ,レイジングストライクという新しい共通バトルシステムが追加された一方で,前作にあったオーバードライブやラッシュ,バックシフトなどの一部システムがなくなりました。続編でシステムを足すだけではなく,削るという決断をした理由はありますか。
福原氏:
まず,オーバードライブ,ラッシュ,バックシフトは,もとからGBVSRには入れる予定はありませんでした。というのも,これらのシステムはある程度成熟した環境に導入するものとして企画されたからです。
中段のオーバーヘッドアタックもなくなっていますが,これは崩しの要素が多くなりすぎるからですね。GBVSRにはそれ以上に強力なレイジングストライクがありますので。
前作はガードを筆頭に守りの行動が強く,そのためお互いが膠着状態になりやすい傾向がありました。GBVSRは,よりアグレッシブに動ける攻めが強いゲームにしたい,プレイヤーが行動を起こしたらそれに応じて試合も派手に動く内容にしたいという考えから,一部セオリーの変更も入れつつシステムをリニューアルすることが決まりました。
――リニューアルされたバトルシステムに関しては,先日実施されたβテストでいろいろな意見が寄せられたと思います。それに対しての率直な感想や,プレイヤーの意見でこれは取り入れていきたいと思ったものがあれば教えてください。
福原氏:
まだすべてのアンケートをチェックできていないんですが,みなさんがおっしゃる方向性はおおよそ定まっている印象です。アークさんのバトル担当と相談しつつ,製品版に向けてどうしていくか決める予定です。
――レイジングストライクに関する意見は,βテスト中,とくに多く見かけました。
福原氏:
レイジングストライクは投げより強い崩しの手段という立ち位置の技で,初心者でも出してしまえばとりあえず当たる技,試合が動く技として用意されました。ただ,βテストの反響を見ると,奥義ゲージが50%ないとレイジングストライクに当たった時に対処できないという部分が,逆に行動の幅を狭めていると感じている方が多い印象を受けました。
もう少しほかの新アクションの使い方や、キャラごとの技性能などの仕様が浸透するとまた印象は変わっていくとは思うのですが,アルティメットアビリティなど使い方がわかりづらい要素は確かにあり,加えてすべて奥義ゲージを消費することから,わかりやすく強力なレイジングストライクの強み部分が目立ってしまったのはあるかと思います。とは言えわかりにくい,気づきにくいという部分はゲームとしてよくはないので,アンケートに目を通しつつ,なんらかの調整をしていこうと考えています。
――クイック入力とテクニカル入力の差を撤廃したことと,その意図をTwitterで発表したことにも大きな反響がありました。こちらに関しては発表する前の段階で開発陣の中でもいろいろと意見は出そうに思えます。
福原氏:
入力によって必殺技の性能に差が出ないようにすることは,本当は前作の時点でやりたかったんです。ただ格闘ゲームにはコマンド入力が必要という意見が開発内でもあり,最終的にはコマンド入力で必殺技を出すとクールダウンが短くなる,そのほか細々とした数値がわずかに違うといった,上達ポイントを感じられる要素としてテクニカル入力側にメリットとして取り入れました。
ただプレイヤー目線では,入力によってわずかでも技の性能が違ってくるという要素が,デメリットとして捉えられてしまったようで……。初心者がワンボタンで必殺技を出せることを,「コマンドがうまくできないから、劣化版の必殺技を出さざるをえない」と認識させてしまっているような例をいくつか見たので、再挑戦したかった部分でもあります。
GBVSRでは,最初にクイック入力とテクニカル入力に差を付けないとバトル面にどう影響が出るかを検証しました。その結果,全体としては問題にはなり得ないだろうという結論に至ったので,性能を統一しました。システムが増えてる分、そちらの入力にも意識を割く必要はあるのでそこまで手元が暇になることはなく、入力の楽しさという醍醐味自体は味わえるはずです。
――格闘ゲームにかなり触れている人でさえミスはしますし,読み合いに集中できるのは上級者にとっても歓迎な気はします。
福原氏:
逆にテクニカル入力を消して欲しいという意見もありましたが,これはシステムでテクニカル入力をオフにできるようにしています。というのも,ぼくも含め,格闘ゲームを長年遊んでいる人は,クイック入力の方が速くて正確とわかっていても,手癖と反射でコマンドを入力してしまうんですよね。なのでハイブリッドな形式は残しました。
――あらためてGBVSRに触れる機会を用意する予定はありますか。
2回目のβテストを秋頃に実施する予定で,そこではSteam版や「ぐらぶるレジェンドばとるっ!」(以下,ぐらばとっ!)も遊べるようになると思います。対戦部分に関しては,なんらかの調整を入れたものにできればと思っていますし,そこでの反響を見て,さらに多くのプレイヤーに楽しんでもらえるゲームになることを目指していきます。
長期運営と幅広いプレイヤー層の獲得を目指して
――ここ1,2年は他社タイトルの影響もあって,格ゲーというジャンル自体が盛り上がっているように感じます。この状況でGBVSRの対戦を楽しむプレイヤー層を作るために,どういった施策を考えていますか?
福原氏:
ジャンル自体が盛り上がっているのはシンプルにうれしいという気持ちが強いですね。プロモーションに関しては,前作は1作目だったこともあって,開発ノウハウが足りず,いくつかやろうとしていたことができなかった面も正直ありました。
GBVSRでは,最初から長期の運用に耐えられるような設計や開発を想定して進めています。大会やコミュニティ向けイベントなど,長期で触ってもらえるアプローチをしていく予定です。
――4キャラクターが使える無料版も発表されました。より多くのプレイヤーが触りやすくなりそうです。
福原氏:
フリーエディションでは,通常の対戦はもちろん,「ぐらばとっ!」もフルで遊べます。多くの人に,まず1度触れていただきたいですね。
――フリーエディションの4キャラクターは誰になる予定ですか。
福原氏:
グランは固定で使えるようにしつつ,残り3キャラクターは一定期間で切り替えていきます。期間がどれぐらいになるかは検討中ですが,「このキャラが無料で触れるならやってみようかな」などと思っていただける機会を用意できるのではと思っています。
――「ぐらぶるレジェンドばとるっ!」の追加も含め,GBVSRはオンラインロビーまわりの機能がかなり拡充されているように感じます。
福原氏:
オンラインロビーは,前作のロビーとアバターのビジュアルが好評だったので,ストレートにパワーアップさせたいなと考えていました。とくにアバターは,ロビーで歩く以外でも使いたいという意見が多くあったので,パーティーゲームの「ぐらばとっ!」が生み出されました。
――「ぐらばとっ!」は最大30人で遊べるとのことですが,マッチングからゲーム開始まではどういった流れでしょうか。
福原氏:
「ぐらばとっ!」用のスタート画面があって,そこに入るとマッチングが始まって,一定人数が集まったらゲームが始まります。基本的に自動マッチングですが,リリース後のアップデートで任意の人を集めて大会なども行えるようにする予定です。
――オンラインロビーのアバターとして,前作にはゴールドシップが用意されていました。ゴルシはGBVSRでも登場するのでしょうか。
福原氏:
前作で登場したロビーアバターはすべて登場します。ただ最初から全部使えるわけではなく,前作のDLCで登場したアバターなどは,ゲーム内で条件を満たすと入手できるものがあったりします。
――そのほか,前作からの引継ぎ要素は何かありますか。
福原氏:
たとえばRAGEなどの大会にちなんだ称号や,Cygames Cupに参加するともらえたEXカラー,バトルパスでもらえた武器スキンやカラーは引き継げるようにしています。
あとは前作のストーリーモードの進行度も引き継げるようになっているんですが,こちらはかなり長いこともあり,前作をプレイしていなくても任意で1部,2部をスキップできる機能も付ける予定です。
――オンラインのランクはリセットされますよね?
福原氏:
新しいゲームなので,ランクはリセットされた状態でスタートします。ただし前作経験者や格闘ゲーマーと,新規プレイヤーの住み分けは,ある程度できた方がいいと思うので,最初にいくつか質問があり,その回答で初期段位が変わるようになっています。
また,ランクマッチの仕組み自体もちょっとだけではありますが変わります。こちらは続報をお待ちください。
――本日はありがとうございました。最後にGBVSRの発売を待つグラブルファン,格闘ゲーマーにメッセージをお願いします。
福原氏:
GBVSRは,通常のアップデートでは実現できないレベルの追加要素を加えるために,新作としてリリースすることになりました。格闘ゲームというジャンルとコミュニティは,ゲームのなかでも特殊であり,特別なものだと考えていまして,前作以上に長期にわたって盛り上げていきたいと思います。
前作から好評だったグラフィックス面の強化はもちろん,全体として大幅にパワーアップしています。新規のプレイヤーだけでなく,前作をやりこんでくださったプレイヤーにも満足していただけるよう,ギリギリまで調整を続けていきますので,ぜひご期待ください。
「グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-」公式サイト
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