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ペーパーマリオはどんなゲームで,なにがファンを魅了し続けるのか。Switch版「ペーパーマリオRPG」発売を機にシリーズを振り返る
初めて3Dマリオが誕生した「スーパーマリオ64」以降,グッズや映画でもおなじみの“今のマリオ”のビジュアルが定まった感があるが,マリオとの出会いとなったゲームや一番好きなゲームなどによって,人それぞれで異なるマリオの姿を思い浮かべることだろう。
赤い帽子にオーバーオール,大きな鼻とヒゲは基本変わらないが,たとえばスーパーマリオとスーパーマリオ3のように,同じゲーム機で出たゲームを比べてもその姿はちょっと違う。
ゲーム機の表現能力や,個々の作品の雰囲気によって異なるマリオのビジュアルは,40年以上続くシリーズの歴史を感じさせるもののひとつだ。
そんなマリオのゲームのなかに,マリオのビジュアルがほぼ変わらず続いているゲームシリーズがある。紙のようにペラペラなマリオが活躍する「ペーパーマリオ」だ。
そのペーパーマリオのシリーズ第2作「ペーパーマリオRPG」のSwitch版が,任天堂から2024年5月23日に発売された。
ペーパーマリオRPGは,2004年7月にニンテンドーゲームキューブ用ソフトとして登場し,20年経った今も人気の高いシリーズ作品のひとつ。それがSwitchという現行ハードで,より遊びやすく,そして美しく豊かになったビジュアルや表現となった“今のゲーム”として楽しめるのだ。
そんな本作の発売を機に,ペーパーマリオとはどのようなゲームで,なにがファンを魅了し続けるのかを,“今Switchで遊べるシリーズタイトル”を中心にシリーズの歩みを振り返りつつ紹介したい。
[プレイレポ]ペラペラなマリオがペラペラな世界で大冒険。「ペーパーマリオRPG」の独特の世界と丁寧なつくりのコマンドバトルをSwitchで体験
ペラペラな見た目のマリオたちが,ペーパークラフトのような世界を冒険する「ペーパーマリオRPG」のSwitch版がついに発売された。今のゲームとしての調整はもちろんあれど,ペーパーマリオらしさはそのままにSwitchにやってきたペーパーマリオ第2弾タイトルを紹介しよう。
どうしてペラペラなマリオが生まれたのか? 1作目「マリオストーリー」でシリーズのはじまりを振り返る
さて,そもそもなんで紙のようにペラペラなマリオが生まれたのか。
これについては2012年12月リリースのシリーズ4作目「ペーパーマリオ スーパーシール」が発売された時期に掲載された任天堂公式サイトの企画「社長が訊く『ペーパーマリオ スーパーシール』」(リンク)で詳しく語られているので,そちらを参照しつつ説明したい。
ペラペラのマリオを主人公としたペーパーマリオシリーズは,2000年8月にNINTENDO64向けに発売された「マリオストーリー」で始まる。
本作はもともと,1996年3月に発売されたスーパーファミコン用ソフト「スーパーマリオRPG」に続く“スーパーマリオのRPG第2弾”として発表されたゲームだった。
すでに1990年代後半には,ゲーム雑誌やムック本などで「スーパーマリオRPG 2」という仮タイトル名で紹介されていたマリオストーリーだが,実際に発売されたのは2000年8月。最初の発表から発売までだいぶ時期が空いており,タイトル名も変わっている。そしてなにより,前作(?)に該当するスーパーマリオRPGと見た目が大きく異なる。
当時もそう感じていた人も少なくないと思うが,こう振り返ってみるとあらためて「紆余曲折があったんだろうな」ということがうかがえる。
実際,開発を担当したインテリジェントシステムズは,ビジュアルをどういった路線でいくかで相当な試行錯誤を繰り返していたという。
ときはマリオ初の3Dアクションで,その後のスーパーマリオの表現に大きな影響を与えた「スーパーマリオ64」が発売された時期。今後そのスーパーマリオ64と一緒に並べられるものとなるわけで,それとは違うビジュアルをどう打ち出すかで,かなり難航していたそうだ。
転機となったのは,当時インテリジェントシステムズの新入社員だった碧山直彦氏が,自分の趣味で何気なく作成したというイメージラフだった。
立体的で奥行きのあるステージだが,そこに立っているキャラクターや背景はペラペラ。それは,これまでの2Dマリオとも,スーパーマリオ64で生まれた3Dマリオとも違ったものだった。
実際のイメージラフは「社長が訊く『ペーパーマリオ スーパーシール』」の第2回(リンク)で公開されているが,これを見ると絵本のようなビジュアルは最初からできあがっていたことを感じる。
そこから,スーパーマリオRPGの開発で大きな役割を果たし,以降のシリーズでもディレクションやシナリオなどに深く関わる工藤太郎氏がオブザーバーとして参加。こうしてマリオストーリーは,マリオらしさを守りつつスーパーマリオRPGのような独特のノリとストーリーを持つという,その後の自由な作風へと発展する兆しも感じられるゲームとなったわけだ。
マリオらしさとRPGの調和,あふれんばかりの遊び心。「スーパーマリオRPG」の魅力を,今あらためて伝えたい
2023年11月17日,Nintendo Switchにあの作品がやってくる。「スーパーマリオRPG」――マリオシリーズ初のRPGタイトルだ。発売を直前に控えたいま,あらためて本作の魅力をみなさんに知っていただきたいと思い,原作版を幼少期に狂ったようにプレイした男が筆を執りました。
こうしてマリオストーリーは,スーパーマリオRPGの続編ではなく,ペーパーマリオと呼ばれるゲームシリーズへとつながる,新しいマリオのゲームの形を生んだ作品となった。
その後これにペーパークラフトや飛び出す絵本のような仕組みや遊びが加わり,また変化を繰り返しながら現在も続くシリーズへと展開していくわけだ。
そんなシリーズの原点であるマリオストーリーは,任天堂のオンラインサービス「Nintendo Switch Online + 追加パック」に加入することでSwitchでもプレイ可能だ。
実際にどのようなゲームなのか気になった人は,サービス内容を確認したうえで追加パックの加入もしくはアップグレードを検討するといいだろう。
「Nintendo Switch Online」公式サイト
ペーパーマリオRPGは“RPGとしての集大成”。タイトルによってはジャンルすら変わるペーパーマリオ
変化というのも,ゲームのシステム面が強化されたり見直されたりといったことだけではない。ゲームのジャンルごとガラッと変わるような変化があったことで,作品それぞれに別々のファンがいるような,またそれも人それぞれで印象や評価が異なるという,なかなか珍しいゲームシリーズとなっている。
では,Switch版が発売されたシリーズ第2作「ペーパーマリオRPG」はどのようなゲームかというと,RPGとしてのペーパーマリオの集大成と呼べる一作だ。
スーパーマリオRPGから数えると,マリオのRPGとしては3作目となるペーパーマリオRPGは,よどみ無く展開するストーリー,のんびりコツコツ遊べる工夫やアイデアといった当時のRPGファンが求める「RPGらしいRPG」と言える要素が詰め込まれた作品だった。
敵の種類に合わせてさまざまな技を使い分け,ボタンやスティックの操作で攻撃の威力をアップする。メンバーそれぞれの特徴を見極めてパーティメンバーを入れ替え,レベルアップや装備(武器やバッジ)でキャラクターを強化し,新たな技や能力を習得していく。
それらのシステムのベースはマリオストーリーでほぼできあがっていたが,ペーパーマリオRPGはさらにその完成度が高められたという印象のゲームだった。
コツをつかめばほぼダメージを受けず戦える「スーパーガード」が加わったことで,プレイヤーのアクションの腕前はより反映されるようになった。一方,レベルの上限が99まで引き上げられたため,アクションが苦手な人もキャラクターをコツコツ育てることで先に進められるようにもなっている。
このように,アクション性,RPG性の両面で見事な仕上がりだったのだ。
ペラペラなマリオの身体を生かしたアクション。シンプルな構造ながら,ちょっとした謎解きや仕掛けで楽しませてくれるステージ。キャラクター性が強い登場人物(?)たち。あちこちで始まる小ネタ的なイベントに遭遇しながら進めていくメインストーリー。それらも1990年代〜2000年代初頭にかけてたくさんリリースされていた,現在“JRPG”と呼ばれる日本のRPGのスタンダードといえるものだった。
そんな当時の空気を感じながら今のゲームとして遊べるのがSwitch版であり,あらためてここでしっかりオススメしておきたい。
グラフィックスが向上している点はもちろんのこと,イベントシーンのキャラクターたちのしぐさや表情,カメラワークとライティングといった見せ方や演出が新しく,そして大幅にパワーアップしている。
遊びやすさも適度に調整されており,昔からのRPGファンだけでなく,こういったスタイルのゲームを遊んだことがない人,そもそもゲームをあまりしないけどマリオのゲームは遊びたい……といった人の入口としてもピッタリだと思う。
ペーパーマリオの“RPGとして”の現在の集大成であるペーパーマリオRPG。Switchでリリースされたいまこそぜひプレイを!
「ペーパーマリオRPG」公式サイト
[プレイレポ]ペラペラなマリオがペラペラな世界で大冒険。「ペーパーマリオRPG」の独特の世界と丁寧なつくりのコマンドバトルをSwitchで体験
ペラペラな見た目のマリオたちが,ペーパークラフトのような世界を冒険する「ペーパーマリオRPG」のSwitch版がついに発売された。今のゲームとしての調整はもちろんあれど,ペーパーマリオらしさはそのままにSwitchにやってきたペーパーマリオ第2弾タイトルを紹介しよう。
現在のシリーズ最新作「オリガミキング」は,RPG路線とアドベンチャー路線両方のいいとこどり
Switchで遊べるペーパーマリオシリーズはもうひとつ。それが2020年7月に発売された現時点でのシリーズ最新作「ペーパーマリオ オリガミキング」だ。ペーパマリオRPGまでのRPG路線と,同作以降のアクションアドベンチャー路線,その両方のいいとこどりをしたようなゲームだ。
「ペーパーマリオ オリガミキング」公式サイト
「……えっ? 同作以降のアクションアドベンチャー路線?」とお気づきになられた方。そうです。ペーパーマリオは,RPGとしての集大成となった「ペーパーマリオRPG」でこの路線はひと区切り。以後シリーズはアクションアドベンチャー的な方向へと舵を切っていくのです。
それってどういうこと? オリガミキングがどんなゲームかを説明する前に,ペーパーマリオRPGからオリガミキングまでの歩みを振り返つつ,ちょっとそのあたりに迫ってみよう。
2007年4月にWii向けに発売された第3作「スーパーペーパーマリオ」は,RPGだったこれまでの2作品からガラッと変わり,いわゆる2Dマリオのようなアクションゲームに,ストーリーや冒険,成長といったRPG的要素を加えたようなアクションメインのアドベンチャーゲームになった。
先ほど少し触れた“ジャンルごと変化した”というのはこのタイミングのことである。
今でも語り草となっている,「愛」と「終末」をテーマにした物語と敵となるノワール伯爵のシリアスな雰囲気。アクション面の特徴だった,ボタンひとつでステージの向きを2Dから3Dへと切り替える「次元ワザ」など,幅広い層に普及したWiiでリリースされたこともあり,本作を最高傑作として挙げる熱心なファンも多い。
バトルや謎解きに「シール」を使う本作は,ステージのあちこちに貼られたシールを集め,それをできるだけ無駄使いしないよう探索を進めていくのが独特の緊張感があり,今までのシリーズ作品とはまた違った楽しさがあった。
シール帳のような役割を担う3DSの下画面でキラキラしたシールを並べて悦に入ることができた点は,「シール大好き」な子ども(大人も)の心をくすぐるものがあった。シールを“キュポン”とはがす気持ちよさがクセになったというプレイヤーも多いはず。
物語の世界やストーリーは,スーパーマリオの派生作品としての原点に立ち返りが図られたのか,ほかのスーパーマリオ作品とは一線を画したペーパーマリオ独自の“色”は抑えられていた。この点はシリーズファンの間では賛否両論となり,いろいろな意味で話題となった作品でもあった。
筆者個人としてはなかなか印象深い作品だった。見た目は一緒(失礼)だけど丁寧な性格の描き分けで個性が感じられたキノピオたち。砂漠ステージのスフィンクスがヨッシーの顔。雪山ステージであちこちに配されたアイスブロスやペンタロー。登場キャラクターの描き方や表現が魅力で,制約の中で研ぎ澄まされた「俳句」のようなキレや味わいがあった。
ただ,個性的なゲームを期待していたペーパーマリオファンが戸惑ったという気持ちも当然分かる。長年シリーズを続けていくことって,本当に難しいですね……。
2016年10月にWii Uで発売されたシリーズ第4作「ペーパーマリオ カラースプラッシュ」は,シールに代わって「カード」を駆使するゲームに。色がところどころ抜けて白くなってしまったイロドリアイランドを冒険し,世界に彩りを取り戻していくという物語が展開する本作は,ゲーム面も制作側がアドベンチャー路線に大きな手応えを感じ,より洗練させてきたことがうかがえる作りだった。
スーパーシールで煩雑だった部分,あっさり気味だったボリューム面などが見直され,謎解きやイベントのキレ味もますます冴え渡るものに。物語やシチュエーションも,「船長キノピオともに味わう海洋冒険ロマン」「暴走機関車での優雅(?)な旅」「化石発掘現場で思わぬ事件が勃発」「レストランでのお料理チャレンジ」などなど,マリオ本編にも匹敵……いや,アドベンチャーだからこそ描けるそれ以上のユーモアやウイットに富んだものとなっていた。
リリース時期がNintendo Switchの発売日の正式発表近くというのもあって,比較的プレイした人が少ないゲームではあるが,個人的に思い入れのある作品だ。
……と,簡単に説明するつもりがついつい思いがあふれて長くなってしまったが,やっと戻ってきましたオリガミキング。あらためてだが,本作はペーパーマリオRPGまでのRPG要素とペーパマリオRPG以降のアクションアドベンチャー路線,その両方のいいとこどりであり,これまでの紹介したシリーズの歩みをアタマの片隅に置きながらプレイしてほしい一作だ。
突如現れたオリガミの王・オリー王により,折り紙のように折られてしまったペーパーマリオ世界の住人たち。さらにオリー王に仕えるブンボ―軍団により(その姿はフォトリアルな文房具そのもの。ハサミやホッチキスなど,紙のようにペラペラな住人たちには見た目からして恐怖の存在だ)この世界そのものが破壊されつつある。
マリオはオリー王の妹であるオリビアとともに世界を救うべく,集めたカミッペラで世界のほころび「スカスカ穴」を修復する旅に出る。実に王道なRPGな導入だ。
そんな王道RPG的な展開を見せるオリガミキングの冒険だが,森,洞窟,紅葉の山とススキ野原,遺跡,劇場,日本風のお城であるOEDOランド,そして世界を司るカミさまたちの神殿とさまざまなシチュエーションが用意されている。
こちらも王道感をたっぷり漂わせつつ,ペーパーマリオならではの独特な雰囲気の場所も用意されており,これまでのいいとこどりといった感がある。物語の始まりはけっこうホラーだが,舞台が変わればムードも一変する。このあたりもペーパーマリオシリーズの多くに共通する魅力だ。
ストーリー進行もムービーたっぷりなストーリー主導型のRPGといったところだろう。
そしてこの旅では,さまざまなキャラクターたちとの出会いと別れが待っている。彼ら一人ひとりが背負っているものが描かれた物語がまた素晴らしい。
どう素晴らしいか,その例を挙げたいと思う。ただこれはネタバレかつ先入観を与えるものになるので,それを気にしない人や,すでにクリアしている人などに読んでほしい。
……以上でネタバレはおしまいです。
ゲームの基本の部分については発売時期に掲載したプレイレポートで紹介しているので,「ネタバレは避けたいけどゲームのことを詳しく知りたい」という人はこちらをどうぞ。
「ペーパーマリオ オリガミキング」プレイレポート。オリガミの敵やパズル要素のあるバトル,ユーモアと奥深さのある物語が魅力
任天堂が2020年7月17日に発売を予定しているSwitch用ソフト「ペーパーマリオ オリガミキング」のプレイレポートをお届けしよう。紙のように薄い“ペラペラ”のマリオが活躍する「ペーパーマリオ」シリーズ最新作は,アクションの新機能,パズル要素のあるバトル,そして奥深い物語が魅力的な作品となっていた。
最後にあらためてSwitchで遊べるペーパーマリオ作品をまとめると,シリーズ第1作の「マリオストーリー」と第2作の「ペーパーマリオRPG」,最新作の「ペーパーマリオ オリガミキング」の3つ。「マリオストーリー」は任天堂のオンラインサービス「Nintendo Switch Online + 追加パック」への加入でプレイできるオリジナル(NINTENDO64)版,「ペーパーマリオRPG」は新たに制作されたSwitch版となる。
作品ごとに変化し,ゲーム性もガラッと変わったことで,“どれが合うかはプレイするあなた次第”なところがあるペーパーマリオシリーズだが,そんな歩みを経て現在の完成形となったオリガミキングとSwitch版ペーパーマリオRPGは,多くの人の心に“届く”作品であると言い切れるゲームだ。この2作をプレイし,なにか“届くもの”を感じた人は,その始まりとなるマリオストーリーに手を伸ばしてみるといいだろう。
そして,ペーパーマリオに魅了された人は,きっとこう期待せずにいられなくなるだろう。
「今期中にアナウンスされるというSwitchの後継機種では,どんな物語と遊びをもったペーパーマリオが出てくるのだろう」と――。
「ペーパーマリオRPG」公式サイト
「ペーパーマリオ オリガミキング」公式サイト
「Nintendo Switch Online」公式サイト
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