プレイレポート
[プレイレポ]VR世界ならではのアナログゲームの楽しみ方。カードゲーム「ガンナガン」を体験できるワールドが「VRChat」にて公開
「ガンナガン」は,1対1でプレイする対戦型のカードゲームだ。プレイヤーはそれぞれ,自分が使うメインキャラクターの“銃士(ガンナー)”と,デッキを構築する2丁の“機銃(ナガン)”を選んでゲームを行う。これらの組み合わせによって,プレイヤーごとにさまざまな戦略を選べるのが特徴だ。
もともと,4年前に開催されたアナログゲームイベント「ゲームマーケット2019秋」にて発売されたカードゲームで,現在では,「ガンナガン OVER HEAT」「ガンナガン W SHOUT」という2つの拡張パックもリリースされている。VRChatにて体験できるのは,基本セットとなるガンナー4種,ナガン6種のカードたちだ。
「ガンナガン」公式サイト
カード選びから読み合いが始まる“高速2丁銃バトル”
まずは,本作の基本的なルールを紹介しよう。最初にゲーム開始準備として,先手と後手を決め,先手のプレイヤーから好きなガンナーを選択する。それぞれがガンナーを選んだら,続いて先手のプレイヤーがナガンを“1つ”選び,後手のプレイヤーが“2つ”選ぶ。そして先手のプレイヤーが2つ目を選び終えたら,最後にガンナーが持つ3種類の“技能”から1つ選ぶ。この時選んだ技能は,相手には見せない。
これでゲームの開始準備は整ったが,実はすでに読み合いが始まっている。本作はいわゆる“ドラフト”形式でカードを取り合うので,カードを選ぶ順番で有利な部分と不利な部分が生じるのだ。
例えば,先手は先にカードを選べるので「好きなカードを取りやすい」というメリットがある。一方で後手は「相手のカードを見てから選択できる」というメリットがある。また,ナガン選択時,先手1枚,後手2枚,先手1枚という順なので,先手は一番欲しい銃が取れるが,それに相性の良い銃を相手が残してくれるかは分からない。
ナガンには,それぞれ20枚のデッキがセットになっており,これがゲーム中に使う自身のデッキとなる。ポイントとなるのは,2つのデッキを混ぜるのではなく,20枚ずつ別々に運用することだ。ドロー時にはデッキを選択することになるのだが,1度のドロータイミングで選択できるデッキは1つだけなので「今どちらのデッキのカードが必要なのか」を判断しなければいけない。
デッキ枚数は20枚とそれほど多くないので,複数枚用意されているカードならよほど運が悪くなければすぐに引けるだろう。
使用カードの選択を終えたら,いよいよゲーム開始だ。ゲーム中の先攻後攻は先程決めた順番ではなく,選択したガンナーの“速度”が速いほうが先攻となる(速度が同じ場合はナガンの合計重量が軽い方が先攻)。手札の枚数も同じくガンナーに設定されているので,記載された枚数分カードをドローしよう。
ターンは大きく分けて「メインフェイズ」と「ダウンフェイズ」で構築され,メインフェイズでは,カードの使用,装填と射撃(後述),技能の発動など,さまざまなアクションを好きな順番で可能な限り行える。一方ダウンフェイズは,手札の補充や,ターン終了時効果の発動といった,ターン移行の処理のみだ。
ゲームの勝利条件は「相手のHPを0にする」か,「相手のデッキを両方尽きさせる」こと。相手のHPを削る方法はいくつかあるが「ナガンにカードを“装填”し“射撃”を行う」というのが,最も基本的な攻撃方法となる。
装填と射撃はメインフェイズ中の好きなタイミングで行えるが,装填はそれぞれのナガンに設定された装填上限の枚数まで,射撃は各ナガンごとにターン中1回まで,と限度があるので注意だ。また,装填は手札のカードを銃弾として使用するので,基本的にそのカードの効果を使用することはできない。
カード効果を優先して装填に回すカードを減らすか,射撃を優先してカードの使用を控えるか,その選択はプレイヤー次第だ。
ナガンのデッキに含まれるカードは大きく分けて4種類あり,それぞれ「行動」「機能」「対応」「銃弾」と呼ばれる。
行動カードは,発動時に記載されたコスト分の手札を捨てることで,即時効果を発動できる。ドローや装填,相手プレイヤーへの直接攻撃など,その効果はさまざまだ。
機能カードは,同じくコスト分の手札を捨て,場に設置できるカードだ。カードはなんらかの効果で除去されない限り残り,その効果が発動され続ける。
対応カードは場に裏向きで設置できるカードだ。相手の射撃などに対して発動できるカウンター型のカードで,設置時にはコストを必要とせず,発動時に初めてコストを消費する。
最後に銃弾カードだが,これはナガンに装填することで効果が発揮されるカードだ。通常,カードの装填は裏向きにして行われるが,銃弾カードは表向きで装填できる。そうした場合,射撃のダメージに銃弾カードの効果が追加されるという仕組みだ。
最後に“技能”について触れておこう。射撃によって消費された銃弾(カード)は,捨て札ではなく“ボルテージ”というコストとして溜まっていく。そのコストを必要枚数支払うことで発動できるのが,各ガンナーの必殺技とも言える“技能”カードだ。
技能は,先ほど紹介したように各ガンナー3種類ずつ用意されているが,選べるのは1枚だけだ。ただ,技能は両プレイヤーともに一番最後に選ぶので,相手の構成を見たうえで選択できるのがポイントとなっている。
その効果はどれも強力で,直接ダメージを与えるものだけでなく,相手のターンを1回スキップしてしまうものもある。基本的には一度きりの使い切りカードだが,中にはコストが足りていれば毎ターン使える技能や,機能カードのように永続効果を持つものもある。まさに勝利への鍵となるシステムだ。
作り込まれた世界観と魅力的なキャラクターたち
本作はゲームとしても魅力的だが,その作り込まれた世界観と,“銃士(ガンナー)”たちにも注目してほしい。
ガンナガンは,史上最悪の災害“大崩落”によって汚染されてしまった世界を舞台としている。人類が生き延びるために選んだ道は,崩壊を免れたビル群を住処とし,自らの肉体を機械化させることだった。
そして,大崩落が過去の出来事になった現在,とある銃の存在が噂されていた。現存する銃を圧倒する力を持つ大崩落以前の技術を用いた“適応外の銃(Not Applicated Gun)”,それが“ナガン(N.A.Gun)”だ。ある者は富のため,ある者は力のため,ある者は名声のため,それぞれの目的のためにナガンを巡って戦うというのが,主なストーリーとなる。
VRガンナガンで使用できるキャラクターは4人いる。
パッケージにも描かれているキャラクター「ヒバナ」は,過去に関する記憶を失った寡黙な少女だ。キルコという襲撃者との邂逅を経て,唯一の所持品であった2丁の銃が“適応外の銃”であることを知る。彼女は欠落した過去を埋めるため,ナガンの謎に迫っていく。
ゲーム中は,自分の捨て札から毎ターン2枚までボルテージへ補充できる能力を持つ。技能も何度も発動できる直接攻撃や,ボルテージの枚数に応じてダメージを与えるものなど攻撃的で,速攻が得意なキャラクターだ。
「キルコ」は裏稼業専門の便利屋だ。高額な報酬を見返りとしているが,その実力は管理者が住まう上層「クラウズ」にも顧客がいると噂されるほど。“適用外の銃”を奪うため,ヒバナへと接触する。
ゲーム中は,ゲーム開始時に手札を一度引き直せる,いわゆる“マリガン”を行える。技能も瞬間的なダメージ増加や,永続的な被ダメージ軽減と,汎用的な効果が目立つ。安定した立ち回りをしたい人向けと言えるだろう。
「ナトリ」は,最下層の「ネザー」へと追放された,クラウズの名家の令嬢だ。“適応外の銃”の研究に明け暮れていたせいで,反体制派の嫌疑をかけられ,本名と身分を剥奪されてしまった。ネザーで目撃したアイドル「ラン」に感銘を受け,行動を共にする。
ゲーム中は,受けたダメージに応じて相手にもダメージを与える,カウンターのような能力を持つ。技能はデッキ破壊や回復,捨て札からの補充など多岐にわたり,使用者の腕次第でさまざまな戦略を持てるキャラクターだ。
「ラン」は,ネザーでアイドル活動に勤しむ幼女だ。この世で最もカワイイものは爆発だと信じてやまず,機械化した巨大な両腕とド派手な高出力器を駆使した動画は,カルト的な人気を誇っている。有名になるための道具として“適応外の銃”を狙っている。
ゲーム中は,毎ターン終了時,デッキから自身のナガンそれぞれに,1発まで銃弾を装填できる能力を持つ。高コストだが,強力な効果を持つ技能が多く,特に相手のターンをスキップできる技能は,決めることができればとても気持ちがいい。
VRならではの雰囲気作りと世界観の再現
前述の通り,「VRガンナガン」は,VRSNS「VRChat」内のワールドとして公開されている。そのため,アナログではできないようなVRならではのギミックが多数用意されているのも特徴だ。
例えば,ダメージのシステムとして,相手に攻撃する“銃”と,自身を回復できる“注射器”が用意されている。もちろん現在の体力は自動的に計算されてテーブルに表示される仕様だ。テーブルにはほかにも,デッキ枚数やボルテージの枚数,装填弾数など,さまざまな情報がひと目で分かるようにできている。
このほかにも,カードをまとめて移動できるデッキケースのようなアイテムがあったり,カードをテーブル近くで手離すと,ちょうどテーブルの表面に沿うように置かれたりと,VRのデメリット部分を補う工夫も多数見られる。さらに,カードをテーブル横のカードリーダーに通せば,横に置かれたタブレットにカード情報が表示されるなど,至れり尽くせりだ。
空間そのものにもガンナガンの世界観は反映されている。薄暗く,コンクリートの壁に囲まれた冷たい雰囲気の室内や,荒廃してしまった外の風景など,まさにガンナガンの世界に入り込んだかのような気分になれる。
VRという最新技術とアナログゲームは,一見ちぐはくな組み合わせに感じるかもしれない。しかし,カードやトークンなどゲーム用のアイテムを,実際に自らの手で動かしてプレイできるので,雰囲気をそのまま味わえるという意味では,むしろ相性の良いゲームと言える。
VRガンナガンが公開されている「VRChat」は,基本プレイ無料なだけでなく,デスクトップモードで遊ぶことも可能だ。正直なところ,VRガンナガンをデスクトップで遊ぶのは少々苦労するので,VRを持つ友人に協力を仰げる人は,声をかけてみるといいだろう。
アナログゲームが好きな人も,デジタルゲームばかりプレイしているという人も,一度この「VR世界ならではのアナログゲームの楽しみ方」を味わってみてほしい。
「ガンナガン」公式サイト
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