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「ファミレスを享受せよ」のクリエイターによる新たな挑戦。閉鎖的な地下世界での凶悪なペンギンとの戦いを描く「METRO PENGUIN EUTOPIA」
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印刷2024/07/24 11:00

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「ファミレスを享受せよ」のクリエイターによる新たな挑戦。閉鎖的な地下世界での凶悪なペンギンとの戦いを描く「METRO PENGUIN EUTOPIA」

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 永遠の時が流れるファミレス「ムーンパレス」に迷い込んだ主人公と,そこで出会う人々の会話や物語が大きな話題となったアドベンチャーゲーム「ファミレスを享受せよ」PC / Nintendo Switch)。その開発者である月刊湿地帯おいし水氏が現在手掛けているのが,氏独特の雰囲気あるビジュアルやテキスト,新たな挑戦であるストラテジー要素を取り入れたバトルを特徴に持つMETRO PENGUIN EUTOPIAだ(パブリッシングは,わくわくゲームズ)。

 ペンギン彗星によって引き起こされた永遠にやまない吹雪により,不毛の地と化した北海道。その危機を逃れた人たちが暮らす地下都市・サポロシティを舞台に,人々を襲う殺人ペンギンと戦う戦士「ペンギン頭」となった主人公のバームをとおし,外部との接触がない閉鎖的な世界での過酷な戦いが描かれる。

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 そんな「METRO PENGUIN EUTOPIA」が,京都で7月19日から21日まで開催されたBitSummit Driftに出展されていた。4Gamerでは,現地にておいし水氏とプログラミングを担当するきょむけん氏にインタビューを実施。新たな挑戦となった「METRO PENGUIN EUTOPIA」について話を聞いた。

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閉鎖的な地下世界で凶悪なペンギンと戦う。月刊湿地帯の新たな挑戦は“RPG”


4Gamer:
 初めて4Gamerに登場いただいたところでいきなりですが,どうしてゲームの舞台がサポロシティ,つまり札幌なのかをお聞きしたくて。
 というのも,個人的な話で恐縮なのですが,私は札幌出身なんですね。なので本作の発表のときから,「札幌で地下生活って,つまり……」というふうに気になっておりまして。

おいし水氏:
おいし水氏(Xアカウント:@oississui
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 はい(笑)。私が札幌在住というのと,イメージのもとには札幌の地下通りがあります。

4Gamer:
 ああ,やはり。札幌はもともと地下街が栄えている街ですが,札幌駅と大通りを結ぶ札幌駅前通地下広場は「ここで多くの人々が暮らせるんじゃないか」みたいなことを想起させますよね(笑)。
 急にローカルな話をしましたが,あらためて本作の制作の始まりについて聞かせてください。構想はいつごろからあったのでしょう。

おいし水氏:
 札幌の地下でペンギンと戦うみたいなものは,高校生のころから落書きとかでなんとなく形はありました。
 といっても思いつきくらいで,ゲームの舞台としてやっていこうとなったのは,「ファミレスを享受せよ」を作っているときぐらいですね。

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4Gamer:
 「ファミレスを享受せよ」を作りながらこっちも始めたんですか?

おいし水氏:
 私は1つのゲームを作ってるときに,また次のゲームのこととかを考え出しちゃうんですね。「今作っているゲームと違うけど,こういうことがやりたいな」みたいなのを固めていったという感じです。

4Gamer:
 ゲームには凶暴な殺人ペンギンが登場し,地下に暮らす市民を襲います。これってそもそも,敵……といってもおいし水さんのお話ならそう表す存在ではないのかもしれないですが,なぜペンギンだったのでしょうか。

おいし水氏:
 作品のイメージもとに,村上春樹さんの「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」があるんですが,この小説に“やみくろ”という,地下鉄に潜んで人を襲う怪物みたいなものが登場するんですね。

4Gamer:
 あっ,そう言われると本作のペンギンの存在って,やみくろ的な感じありますね。

おいし水氏:
 そのやみくろのことを自分なりに想像したときに,ペンギンっぽいのがなんとなくがっちりハマって。具体的に説明するのは難しいんですが,身体構造が特殊で,あとは適応力とか見た目のバリエーションもつけられるところとかも,なんだかいいなと思いました。

4Gamer:
 本作で驚いたのがバトルの要素があることです。それもけっこう本格的なRPGのバトルという雰囲気ですよね。表現もけっこう過激で。バトルの要素はなぜ入れたのでしょう。

おいし水氏:
 開発を始めたころは「ファミレスを享受せよ」を作っていたときの反動みたいなので,「とにかくなんか暴力を入れたい」ってなっていたのがあります。

4Gamer:
 暴力を入れたい! なかなかの直球ですね(笑)。

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おいし水氏:
 そうですね(笑)。今はそこまでではないんですけど,しっとりしたものを作っていたから,今度は違う方向にいこうという思いが強かったんです。私は「Darkest Dungeon(ダーケストダンジョン)」の戦闘の雰囲気,プレイヤーと敵の位置取りの感じが好きなんですが,この自分の好きなものを自分の解釈でゲームにしてみたいと,イメージを膨らませていきました。

4Gamer:
 確かに,バトルの構図はダーケストダンジョン感がありますね。武器を振り下ろして血が〜みたいな表現も。こういったバトルの仕組みを作ったのは初めてですか?

おいし水氏:
 そうですね。今までのゲームは数値を管理するようなものはなかったので。最小ダメージと最大ダメージの振れ幅とか,命中率とか,ランダム性はどの程度入れるべきなのかとか,作りながら気がついて,そこでまた調整をしてというのが大変です。

4Gamer:
 それが場面ごとにではなく,全体をとおしたバランスとなると……という感じですよね。

おいし水氏:
 はい,まさにそれですね。BitSummitで出展したものはあくまで短い範囲なので,全然完成した数値じゃないというのは感じていて。これをしっかり全体を見て仕上げていったとき,それが面白いものになるか本当に不安だったりします。
 今とても大変ですし,これからも苦労するんだろうなというのは感じますね。


4Gamer:
 そのあたりのキーマンにもなるであろうプログラマのきょむけんさんは,どのあたりから開発に参加したんですか?

きょむけん氏:
 「ファミレスを享受せよ」を作っていたころから,なんとなくくらいですが「一緒になんかゲーム作らない?」とは誘ってもらっていましたね。

4Gamer:
 それが今回から本格的にといった感じですか。そもそもどういう形で知り合ったんでしょう。

おいし水氏:
 学生時代からの友だちで,大学は別々ですがちょくちょく連絡を取っていました。それで「こういうゲームが作りたいんだけど」ってコンセプトアートを見せて,開発に参加してもらったという流れですね。

きょむけん氏:
 高校生のころからプログラミングが好きで,ゲーム作りも興味があったんですが,アイデアを思い浮かべるというのが苦手なんですね。そこでおいし水が声をかけてくれて,なんかいっぱいアイデアありそうだし,一緒に作るよと。
 ただ,企画がまとまる前段階みたいなところから一緒に始めたので,そのあと仕様がめちゃくちゃに変わったりしたので苦労かけられています。

おいし水氏:
 かけていますね。

4Gamer:
 このやりとりの雰囲気で,ああ友だち同士だなっていうのがつかめました(笑)。
 シナリオについてはいかがでしょう。「ファミレスを享受せよ」は,ゲームを始めてすぐは不思議な雰囲気で,じわじわと不穏なものが伝わってくるみたいな感じがありました。
 それと違って本作は,先ほど暴力を描くみたいな話があったとおり,今出ている情報や試遊版を見る限りでは最初からだいぶはっきり不穏な感じを出しているなと。Steamのページなどにはマルチエンディングについても言及されているんですが,今どれくらい進んでいるんでしょうか。

おいし水氏:
 頭の中ではだいぶ出来上がっているものはあるんですが,書き出したものはどれくらいかというと,「……」な感じです。
 マルチエンディングについては,書き進めていくうちに変わっていくかなとは思います。途中でいくつかのルートに分岐するけど,最終的に一つの結末に着地するみたいな話になる可能性もありますし,どういうシナリオになるかはこれから次第ですね。

4Gamer:
 先ほどもバランス調整の話が出ましたが,もう少しバトルの仕組みについて聞きたいです。ダーケストダンジョンを自分なりの解釈でみたいな話がありましたが,パズル的な要素があって面白いですね。

 上から大中小とペンギンが並んでいると,一列目全体への範囲攻撃の効果が上がるとか,仲間の返り血を浴びたペンギンを叩き潰すと一発で倒せるとか。雛が成長したら,「思ってたのと違う……」という手強い化け物になったりもする(笑)。
 特殊な効果があるけど使用回数が限られているセカンダリをどう使うか……このあたりの思考する楽しさはRPG好きには刺さります。回復がないのも印象的で,連戦に挑んでステージを順にクリアしていくうえで,あまり考えなく進めると後々辛くなるという。

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おいし水氏:
 すでにあるジャンルのものをそのままではなく,違う方向性を探ってみたいという考えがあって,その一つが回復がないことでした。やられる前にやらなければならないという部分は,物語で描いていることにもつながっているかと思います。

きょむけん氏:
 被害を最小限に減らすことを意識しつつ,敵を処理していくというところは,けっこううまくハマった感じで作れたと思います。あとは先ほどの数値的な調整をしっかりやるところですね。

4Gamer:
 数値的なところ以外で大変だったことはありますか?

きょむけん氏:
 コントローラのボタンの割り振り方は課題だと認識しています。

4Gamer:
 使う武器の選択が左スティックで,攻撃対象を選ぶのが方向キーみたいな割り振りになっているところですね。「そうですね」というのは失礼ですが……プレイしてこれは改善してほしいと感じました(笑)。

きょむけん氏:
 キーボードとマウスの操作をむりやりコントローラに押し込んだみたいなのが今の状態なんですね。よろしくないほうになってしまったのは理解していて,抜本的に見直しをします。

4Gamer:
 今までのゲームは,ストーリーを進めるうえでの会話や行動のコマンド選択が主でしたよね。ときおりポイントクリックの操作が入るという。やはり同じコマンド選択でも,バトルとなるとぜんぜん変わってくるだろうなと。

おいし水氏:
 はい。コントローラとキーボードでの違いは大きいですし,では入力を替えたときどうするのかとか,操作方法の移植対応は苦労しますね。とても大事なことなのは分かっているのですが,「本当に作りたいのは面白いシステムとストーリーなのに。こんなはずじゃなかったのに」みたいに思ったりもします(笑)。

4Gamer:
 退屈だけど大事な仕事だからやらなければと。
 あと,音楽はどうでしょう。おいし水さんの作品の特徴の一つですが,バトルの音楽は,何度も繰り返し聴いても飽きないようなフレーズやループ感が大事なので,これまでとまた違う感覚なのかなと。

おいし水氏:
 はい。今回のBitSummitのバトル曲もそのあたりの考えですごく苦労しました。初めて買ったドラムの音源を導入したり,5曲くらいデモ曲を作ったりしましたね。

4Gamer:
 ゲームの全体的なボリュームはイメージできているんでしょうか。プレイ時間で言うとどれくらいになるんでしょう。

おいし水氏:
 たぶん10時間から20時間の間ですね。ストーリー部分はもちろんしっかりあって,そこにバトルが加わるので,けっこうしっかり長くなるだろうなと考えています。

4Gamer:
 最後にメッセージをお願いします。

きょむけん氏:
 私は裏方寄りの人間なので,こういうコメントを残すのも……とは思うんですが,このBitSummitのようにゲームに触れる機会があればぜひ楽しんでほしいと思います。BitSummitで試遊した人には,コントローラについては開発側も分かっているので,改善に努めますと伝えたいです。

おいし水氏:
 初出展のBitSummitでは,操作性の問題はありましたが,バトルの仕組みや手触りの良さ,音の良さなどは今段階でもしっかり作ったつもりなので,その辺りは確かめながら遊んでいただけたかなと思います。

 今まで作ったゲームに比べてけっこう規模の大きなものになりますし,それだけ開発で苦労していることもありますが,いい感じになると思うので楽しみに待っていてくれるとうれしいです。

4Gamer:
 今後の開発状況も追いかけたいと思います。ありがとうございました。

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