レビュー
ダミーヘッドを用いた計測で明らかにする,ゲーマー向けヘッドセット46製品の音質(3)製品検証,ブランド名H〜Ra
ブランド名のアルファベット順,同一ブランドでは実勢価格の高い順で並べ,一気に評価を行っていくが,本稿で対象となるのは,以下のとおり,ブランド名Hから,Rの途中までの計15製品となる。
テスト対象としたヘッドセット
- HyperX(Kingston Technology) HyperX CloudX
- HyperX(Kingston Technology) HyperX Cloud Revolver
- Klipsch KG-200 Pro Audio Wired Gaming Headset
- Logicool G(ロジクール) G933 Artemis Spectrum Wireless 7.1 Gaming Headset
- Logicool G(ロジクール) G633 Artemis Spectrum RGB 7.1 Surround Gaming Headset
- Logicool G(ロジクール) G430 Surround Sound Gaming Headset
- Logicool G(ロジクール) G230 Stereo Gaming Headset
- Mad Catz F.R.E.Q. 5 Stereo Gaming Headset for PC/Mac
- Mad Catz F.R.E.Q. 3 Stereo Gaming Headset for PC and Mac
- F.R.E.Q. M Wired Mobile Gaming Headset for Smart Devices and PC/Mac
- Mionix NASH 20
- Plantronics Gaming(Plantronics) RIG Surround
- Razer Razer ManO'War
- Razer Razer Kraken 7.1 Chroma
- Razer Razer Kraken Pro(Kraken Pro 2015)
本インプレッションをチェックするにあたって気を付けてほしいのは,「シリーズ初回となる解説記事の内容が大前提」ということである。初回の解説記事を読んでいないと,そもそもグラフの見方からして分からないと思われるので,くれぐれもご注意を。リファレンスとなるピンクノイズの波形も先の記事にあるので,Webブラウザの別タブで開いておくことをお勧めする。
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製品評価(ブランド名H〜Ra)
■HyperX CloudX
- メーカー:Kingston Technology
- 問い合わせ先:マイルストーンサポートセンター 03-3864-3763(平日9:00〜17:00)
- 実勢価格:1万6000〜1万6500円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:53mm
- 公称周波数特性:15Hz〜25kHz
- インピーダンス:60Ω
- 出力音圧レベル:98dB SPL/mW(@1kHz)
- 接続インタフェース:4極3.5mmミニピン
× 1(3極 × 2への変換ケーブル付属)
波形評価と試聴印象
メッシュと合皮,2種類のイヤーパッドが付属するため,それぞれでテストを行うことになる。といわけでメッシュ地からだが,素材の特性上,低域から中低域が「音抜け」する傾向にあるが,本機の場合,中低域の350Hz付近を下限のピークとした100〜750Hzのの大きな谷がこれに該当する。この「音抜け」のために,30〜60Hz付近というかなり低い重低域にピークがあるものの,聴感上は低域が抜けた低弱高強の音質傾向に聞こえる。ただ,この350Hz付近を下限とする大きな谷のおかげで,強い重低域が高域をマスクすることはなく,総じてきれいめの音が得られている側面もある。
ただ,高域の5〜9kHzにある山が相対的に強調され,高域がかなり強く感じられる。超高域がまったく落ち込まず,特性自体は見事なのだが,いかんせん低域と高域のバランスがよろしくなく,筆者には,右肩上がりにすぎる音質傾向に聞こえた。
一方の合皮製イヤーパッドだと,メッシュ地のイヤーパッド装着時に出てくる350Hz付近の凹みがなくなり――ダミーヘッドで計測すれば,イヤーパッド素材の違いで生じる周波数特性の違いを視覚化できるわけだ――200Hzあたりから3.5kHzくらいまで,大きな破綻がなく,高域に向けて緩やかに下がっていく波形を確認できる。
メッシュ地のイヤーパッドを装着したときとは対照的な,低強高弱,右肩下がりに近い音質傾向となった。しかも,メッシュイヤーパッド装着時ほどではないが,低強高弱型にも関わらず20kHzまで超高域がほとんど落ち込まず,高域の再生能力も高い。試聴時,重低域が少し強すぎると感じたので,その点では完璧と言えないものの,少なくともメッシュよりは相当によいバランスだ。
■HyperX Cloud Revolver
- メーカー:Kingston Technology
- 問い合わせ先:マイルストーンサポートセンター 03-3864-3763(平日9:00〜17:00)
- 実勢価格:1万4300〜1万5000円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:50mm
- 公称周波数特性:12Hz〜28kHz
- インピーダンス:30Ω
- 出力音圧レベル:104.5dB SPL/mW(@1kHz)
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2(※Audio Control Box経由),4極3.5mmミニピン × 1
波形評価と試聴印象
300〜600Hz付近に,450Hz付近を下限とする谷がある,強めのドンシャリ型。ドンシャリを形成するのは60〜125Hz付近の山と1.6〜3kHz付近の山だ。3〜8kHzの高域は弱めながらも,後者がプレゼンス帯域を含むため,全体としては中高域がかなり強い,低弱高強のドンシャリに聞こえる。一方,超高域が20kHzまでほとんど落ち込まないのは見事だ。
■KG-200 Pro Audio Wired Gaming Headset
- メーカー:Klipsch Group
- 問い合わせ先:フロンティアファクトリー(販売代理店)購入前問い合わせ窓口
- 実勢価格:1万〜1万5000円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログおよびUSB接続型ワイヤードタイプ(※USB給電必須)
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:16Hz〜23kHz
- インピーダンス:32Ω
- 出力音圧レベル:110dB
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2,USB Type-A
波形評価と試聴印象
以前のレビュー記事でも指摘したとおり,アナログ接続時,USB接続時とも,ヘッドフォンアンプのノイズが多い。ボリュームを下げてもノイズが聞こえるのは残念。なお,本機はヘッドセット内にDSPを内蔵しているが,その設定は行わず,デフォルトプリセットを選択している。さて,アナログ接続時の波形は,60Hz付近の山が非常に大きいうえに,1kHz付近より高い帯域が大きく落ち込む「低強高弱」の右肩下がり型だ。特性が極端なので,超高域は16kHzくらいまで再生されているにもかかわらず,試聴印象としては,やや籠もって聞こえる。
600Hz〜1.3kHzあたりがやや強く,2番目に高い山になっているのも見てとれるが,強い低域によってマスクされるためか,この帯域が相対的に強いとは感じなかった。
USB接続も基本的な音質傾向は同じだが,60Hzの低域の山が若干低くなる一方,200Hz〜1.2kHzあたりがなだらかな右肩下がりとなって,高低の差分が減り(=低域の強さが相対的に弱まり),結果として幾分すっきりした音質傾向になる。超高域も20kHz付近まで出ている。
2kHz〜4kHz付近が相対的に弱く,低域は相対的に強いため,どうしても,若干籠もった印象は拭えない。ただ,本機は本体内部にバイパスできないヘッドフォンアンプを内蔵しているので,今回のテスト結果を考慮しても,使うならUSB接続“一択”ということになるだろう。ヘッドフォンアンプの拾うノイズがもう少し減り,プレゼンスがもう少し出ていればよかったように思う。
■G933 Artemis Spectrum Wireless 7.1 Gaming Headset
- メーカー:ロジクール(日本以外ではLogitech)
- 問い合わせ先:ロジクール カスタマーリレーションセンター 電話:050-3786-2085(平日 9:00〜19:00)
- 実勢価格:1万8500〜2万3000円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:USB接続型ワイヤレスタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:20Hz〜20kHz
- インピーダンス:39Ω(パッシブ),5000Ω(アクティブ)
- 出力音圧レベル:107dB SPL/mW
- 接続インタフェース:USB Type-A(※無線周波数2.4GHz),
4極3.5mmミニピン × 1
波形評価と試聴印象
USB接続のトランスミッタ兼レシーバー経由ではDTS Headphone:Xによるバーチャル7.1chサラウンドサウンド出力に対応し,別途,ゲーム機(のコントローラ)などとのアナログ接続が可能という製品だ。もちろんテストの際はイコライザ,バーチャルサラウンドとも無効化している。USB接続時の周波数特性は350Hz以下の低域が強く,350Hz〜2kHzくらいがほぼフラット。5kHzくらいに「ドンシャリを形成する山」があり,8kHz以上でなだらかに落ち込んでいく。総じて,リファレンスに5kHzの山を足してドンシャリ傾向とした波形といった印象だ。
ワイヤレス接続にもかかわらず,20kHz近くまで信号を確認できるのは見事。重低域〜低域は非常に強いものの,350Hz〜2kHzがフラットなので高域に被らず,5kHz付近が強いので高域も失われたように聞こえない。よくできている,と感心する。
一方のアナログ接続だと,相応のヘッドフォンアンプを組み合わせた場合,ワイヤレス接続時と区別が付かないくらい似通った周波数特性が得られる。ただ,よく見ると500〜3.5kHz付近の中域からプレゼンスの帯域が持ち上がってくるので,試聴時は若干中域がパワフルな音質傾向になる。
低域〜高域と中域の差分が大きい分,ワイヤレス接続のほうがドンシャリ度は高く,アナログ接続時は差分が少ない分,より上品になる印象だ。
■G633 Artemis Spectrum RGB 7.1 Surround Gaming Headset
- メーカー:ロジクール(日本以外ではLogitech)
- 問い合わせ先:ロジクール カスタマーリレーションセンター 電話:050-3786-2085(平日 9:00〜19:00)
- 実勢価格:1万4000〜1万7000円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:USB接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:20Hz〜20kHz
- インピーダンス:39Ω(パッシブ),5000Ω(アクティブ)
- 出力音圧レベル:107dB SPL/mW
- 接続インタフェース:USB Type-A
× 1, 4極3.5mmミニピン × 1
波形評価と試聴印象
USB接続時はDTS Headphone:Xによりバーチャル7.1chサラウンドサウンド出力に対応し,別途,アナログでゲーム機などとの接続も想定するという仕様のヘッドセットだ。もちろんUSB接続時のテストにあたっては,イコライザ,バーチャルサラウンド機能はいずれも無効化している。USB接続時の波形は,35Hz付近を頂点とする大きな山が500Hzくらいまで続き,その後は3kHzくらいまでなだらかに落ちていって,4kHzに1つ山があるという,分かりやすいドンシャリ型。4kHzより上はなだらかに落ちていって,20kHz超級で急激に落ち込むイメージである。
必要十分な低域とイヤにならない程度にしっかりとしたプレゼンス,20kHzまで急峻に落ち込まない十分な高域も試聴時にも確認できる。ヘッドフォンアンプの音量も必要十分だ。
アナログ接続時の周波数特性は,USB接続時とけっこう異なる。一見して分かる違いは60Hz以下の大きなロールオフと,USB接続時に特徴的だった4kHzの山が低くなり,一方で1.7kHz付近に山が増えていること。その結果,中域とプレゼンスが相対的に強くなる音質傾向になっている。
USB接続時と比べると高域は多少荒っぽい印象だが,これは高域というより,中域からプレゼンスの帯域が強いからだろう。また,20kHz付近で落ち込まずむしろ再度持ち上がっているのも気になるところだが,いずれにせよ,中域が引っ込んでドンシャリ気味のUSB接続に対し,より中域にパワーが集まった感じのアナログ接続といった感じではある。
■G430 Surround Sound Gaming Headset
- メーカー:ロジクール(日本以外ではLogitech)
- 問い合わせ先:ロジクール カスタマーリレーションセンター 電話:050-3786-2085(平日 9:00〜19:00)
- 実勢価格:7000〜9000円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:USB接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:20Hz〜20kHz
- インピーダンス:32Ω
- 出力音圧レベル:90dB SPL/mW
- 接続インタフェース:USB Type-A
× 1,3極3.5mmステレオミニピン × 2
波形評価と試聴印象
USB接続時はDolby Laboratoriesの技術を用いてバーチャル7.1chサラウンドサウンド出力に対応しつつ,アナログ接続にも対応するという仕様なので,順に見ていこう。もちろん,テストにあたってはバーチャルサラウンドサウンド出力を無効化している。USB接続時の波形は,60Hz付近を頂点として,割となだらかな右肩下がりといえる周波数特性を示しており,600Hz付近と5〜6kHz付近に小さめの山がある。とくに5〜6kHzの山があるため,試聴印象は軽めのドンシャリ型だ。
8kHz以上の帯域はそれ以下の帯域よりやや下がっているが,直前にあるプレゼンスの山のためか,高域が失われている印象はほとんどない。一方,超高域は18kHzくらいまで十分に存在し,その後も弱いながらもまだある。何というか,低域と高域のバランスもよく,「普通にいい音」だったりする。
注意点としては,USBアンプの駆動能力があまり高くないため,音量が足りないというユーザーが出てくる可能性があること。この点が気になる人はいるはずだ。
対するアナログ接続時だと,USB接続時と比べ,60Hz付近を中心とした低域の山はより高くなっているのが分かる。
また,6kHz付近を中心とした高域の山が,18kHzくらいまでやはりUSB接続時より高い状態を維持している。ただ,周波数特性の波形自体に大きな破綻はないため,耳に痛くなく,低域も強すぎずで,よいバランスに感じた。
もっとも,アナログ接続であっても,出力音量は抑えめだ。音量を抑え気味にすることで,音を綺麗に聞かせようとしているのだと思われるが,ここは好みが分かれるところだろう。
■G230 Stereo Gaming Headset
- メーカー:ロジクール(日本以外ではLogitech)
- 問い合わせ先:ロジクール カスタマーリレーションセンター 電話:050-3786-2085(平日 9:00〜19:00)
- 実勢価格:5500〜6400円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:20Hz〜20kHz
- インピーダンス:32Ω
- 出力音圧レベル:90dB
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2(※後継製品であるマイナーチェンジモデル「G231 Prodigy Gaming Headset」は4極3.5mmミニピン × 1で,3極3.5mmミニピン変換アダプターが付属)
波形評価と試聴印象
現行製品はマイナーチェンジモデル「G231 Prodigy Gaming Headset」だが,本製品と音質は変わらないとされているので,テストタイミングの都合により,従来モデルの検証となる。周波数特性は,60Hzを頂点とした右肩下がりに近いドンシャリで,200〜600Hzくらいと1.8〜3.5kHzくらいが凹み,5kHzを頂点にした小さな山がドンシャリの「シャリ」を構成している。
低域が強いため,試聴時には低域が高域を若干マスクしている印象も受けるが,一方で高域は相応にしっかりしていることもあって,籠もった印象はない。「低域が高域に少し被ってる」と感じる程度だ。
高域は10kHzくらいまで十分にあり,18kHzくらいまでしっかり存在。重低音というより低音が強く感じられるうえに,低強高弱系の「ややドンシャリ」なので,プレゼンスや高域も下品な感じはしない。価格を考慮すると,好感の持てる音質傾向である。
■F.R.E.Q. 5 Stereo Gaming Headset for PC/Mac
- メーカー:Mad Catz Interactive
- 問い合わせ先:マッドキャッツ [email protected]
- 実勢価格:1万〜1万1000円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:USB・アナログ両対応ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:50mm
- 公称周波数特性:未公開
- インピーダンス:未公開
- 出力音圧レベル:未公開
- 接続インタフェース:USB Type-A
× 1,4極3.5mmミニピン × 1
波形評価と試聴印象
60Hz付近に低域の山があり,また高域に小さな山が存在する軽いドンシャリ型だと思うかもしれないが,実際には低域の山が低いこともあって,高域重視の低弱高強型,いわゆる右肩上がりの音質傾向に感じられる。900Hz付近に軽い山があるものの,大きな山や谷はないので,試聴時の違和感は少ない。高域も歪んでいない。
一方のアナログ接続だと,750Hz付近より上の帯域こそUSB接続時と似ているものの,それより低い周波数帯域はかなり強くなって,全体的には右肩下がり気味になった。USB接続時は典型的な低弱高強なのに対し,こちらではちょっとボンボン鳴りすぎだ。
高域が耳に痛くない分,USB接続と比べると音がスムーズに出てはいるのだが,ただ,ちょっと低域のエネルギーが強すぎて飽和してしまっている感じも否めない。
■F.R.E.Q. 3 Stereo Gaming Headset for PC and Mac
- メーカー:Mad Catz Interactive
- 問い合わせ先:マッドキャッツ [email protected]
- 実勢価格:6300〜7700円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:50mm
- 公称周波数特性:未公開
- インピーダンス:未公開
- 出力音圧レベル:未公開
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2,4極3.5mmミニピン × 1
波形評価と試聴印象
何とも分類しづらいグラフだが,右肩下がりと中域重視の中間くらい,といったところであろうか。中低域と中域の境目にあたる600〜700Hz付近に局所的なピークがあると,試聴したとき,「コー」という,妙に変調がかったような感じに聞こえるのだが,ドンピシャでそこに山のある本機で,見事にその変調感があるのはとても気になる。
一方,1〜3kHzのプレゼンス帯域は(ロールオフする)16kHz以上を除けば最も低い。高域は8kHz以上で落ち込み始め,16kHzくらいから急峻に落ち込む。
幸いにして耳周りに余裕がるため,圧迫感まではないが,装着感はやや硬めで,この点は人を選ぶだろう。
■F.R.E.Q. M Wired Mobile Gaming Headset for Smart Devices and PC/Mac
- メーカー:Mad Catz Interactive
- 問い合わせ先:マッドキャッツ [email protected]
- 実勢価格:9500〜1万300円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:未公開
- インピーダンス:未公開
- 出力音圧レベル:未公開
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2
波形評価と試聴印象
低強高弱の右肩下がりな周波数特性だ。500Hz以下がたっぷりなうえに,1.2kHz以上で落ち込み始めるため,高域がなく,籠もった感じに聞こえる。それを除けば聴感上の違和感はないものの,籠もって聞こえるので,ゲームで情報としての音を聞き取るにはあまり向いていないように感じる。モバイル向けということなのかもしれないが,小型エンクロージャの側圧が強く,装着感があまりよろしくないのも気になった。
■NASH 20
- メーカー:Mionix
- 問い合わせ先:ゲート(販売代理店) 03-5280-5285
- 実勢価格:1万700〜1万2000円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:50mm
- 公称周波数特性:未公開
- インピーダンス:32Ω±15%(@20kHz)
- 出力音圧レベル:103dB
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2
波形評価と試聴印象
60〜110Hz付近に山のある,右肩下がり,低強高弱の周波数特性。750Hz〜1.5kHzは凹んでいるものの,全体で見ると350〜2kHzがほぼフラットで,350Hz以下が相応に強く,2kHz以上の落ち込みがリファレンスより大きい印象である。つまり,「リファレンスに近似しているが,高域の落ち込み度合いはより大きい」わけだ。そのため,人によっては「暗い音」と感じるかもしれないが,スムーズで落ち着いた音が好きな人にはよい選択肢となるだろう。なお,16kHz以上が波形で弱く見えるかもしれないが,完全になくなってはおらず,聴感上も超高域まで存在はしている。8kHz以上の超高周波帯における落ち込みはより激しく,ぱっと聞いた印象は地味ながら,長時間のゲームプレイでも聞き疲れする恐れはないだろう。筆者は,この音が嫌いではない。
■RIG Surround
- メーカー:Plantronics
- 問い合わせ先:問い合わせ先:ゲート CP営業部(販売代理店) 06-6208-7172(平日10:00〜18:00)
- 実勢価格:1万1300〜1万3200円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:USB接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:未公開
- インピーダンス:未公開
- 出力音圧レベル:未公開 接続インタフェース:USB Type-A
波形評価と試聴印象
Dolby Laboratoriesの技術を用いてバーチャル7.1chサラウンドサウンド出力に対応する製品だ。テストにあたっては,もちろんイコライザと合わせてバーチャルサラウンドサウンド出力は無効化している。周波数特性は,60Hz付近と4〜8kHz付近をそれぞれ山とする,典型的なドンシャリ型。1.7kHz付近が中域の谷になるが,250Hz〜2kHzを少し引いて見ると,急な山や谷といった破綻がまったくない,スムーズな波形なのが分かるだろう。超高域は17kHzくらいから落ち込み始める。
試聴した印象はかなり強いドンシャリで,ドンシャリ系は往々にして高域が歪んだ感じに聞こえるのだが,本機ではそういうことがまったくないので,ドンシャリ好きにはお勧めだ。
というか本機の場合,以前掲載したハードウェア短評で指摘したとおり,問題は「音質以外」のところにある。
■Razer ManO'War
- メーカー:Razer
- 問い合わせ先:MSY(販売代理店) MSYサポートセンター TEL 048-934-5003(平日9: 30〜12:00,13:00〜17:30),メール [email protected]
- 実勢価格:2万2200〜2万4500円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:USB接続型ワイヤレスタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:50mm
- 公称周波数特性:20Hz〜20kHz
- インピーダンス:32Ω(@1kHz)
- 出力音圧レベル:112±3dB(@1kHz)
- 接続インタフェース:USB Type-A(無線周波数2.4GHz)
波形評価と試聴印象
端的に述べて,読み解くのが難しい周波数特性である。最終的に筆者は,「60Hzを頂点とする低域のピークが一番高く,125〜500Hzくらいは200Hz付近を中心に凹んでいる。500Hz〜2kHzはリファレンスと比較してやや乖離があるものの,おおむねリファレンスどおりのフラットさがある。2kHz以上で落ち込み始めるが,8kHz付近に高域のピークが存在し,ワイヤレスながら20kHz近くまで超高域を維持できている」と読んだ。つまり,「右肩下がりのようにも見えるが,8kHzにある山のため,軽いドンシャリに聞こえる」ということである。
ただ,200Hz付近にある凹みの影響で,低域はすっきりしていて重低域が目立ち,低域,高域共にやり過ぎ感は皆無となっており,非常によいバランスに聞こえる。「ワイヤレス」だとか「ゲーム用」だとか関係なく,普通に「いい音」のヘッドセットだという理解でいいだろう。
なお,バーチャルサラウンドサウンド技術としてはRazer独自の「Razer Surround」を採用している。
■Razer Kraken 7.1 Chroma
- メーカー:Razer
- 問い合わせ先:MSY(販売代理店) MSYサポートセンター TEL 048-934-5003(平日9: 30〜12:00,13:00〜17:30),メール [email protected]
- 実勢価格:1万3200〜1万4000円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:USB接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:20Hz〜20kHz
- インピーダンス:32Ω
- 出力音圧レベル:112dB(@1kHz)
- 接続インタフェース:USB Type-A
× 1
波形評価と試聴印象
60Hz付近を頂点とした低域から400Hzくらいまでなだらかに下がり,900Hz付近に山があって,その上の帯域では1.5kHzに向けて下がり,4kHzでまた山という,「ドンシャリ型に900Hz付近の山が加わった亜種」といった感じ。900Hz付近にこういったピークがあると,けっこうな変調感が出そうなのだが,実のところ本機ではそれ以前の問題として,スピーカードライバーレベルで低域が飽和しているような感じがある。具体的に言い換えると,バスドラムの音といった低音――重低音ではなく――がドッカンドッカン鳴っていて,これがほかの帯域を全部“持って行って”しまっている感があるのだ。4kHzに山があって,ドンシャリの「シャリ」もちゃんと存在しており,さらに,超高域は超高域で落ち込みつつちゃんとあるのだが,低域の飽和感で全部台無しになっている。周波数計測だけだと,こういったハードウェアの飽和感は計測できないので,試聴テストも大事なことがよく分かる。
ちなみにバーチャル7.1chサラウンド機能は「Razer Surround」ベースの実装。もちろん,今回のテストにあたっては無効化している。
■Razer Kraken Pro(Razer Kraken Pro 2015)
- メーカー:Razer
- 問い合わせ先:MSY(販売代理店) MSYサポートセンター TEL 048-934-5003(平日9: 30〜12:00,13:00〜17:30),メール [email protected]
- 実勢価格:9700〜1万1500円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:20Hz〜20kHz
- インピーダンス:32Ω(@1kHz)
- 出力音圧レベル:110±4dB(@1kHz,1V/Pa)
- 接続インタフェース:4極3.5mmミニピン
× 1(3極 × 2への変換ケーブル付属)
波形評価と試聴印象
低域と高域のバランスがどう見ても悪く,極端に低強高弱,右肩下がりの周波数特性結果が得られた。60Hz付近の山より上の帯域では,750Hzくらいまで緩やかに落ちていき,750Hzより高い帯域が突然大きく落ち込みはじめ,2〜3kHz付近が谷になっている。プレゼンスの帯域が大きく削られた格好になっているわけだ。高域は8kHzを中心に存在し,超高域は12kHz付近で一度大きく落ち込みつつも16kHz付近まであるのだが,低域とのレベル差はいかんともしがたい。結果,試聴するとプレゼンスのない,いわゆる籠もった音に聞こえてしまっている。個体差かもしれないが,音は左右で3dBも違いがあり,かなり左寄りに聞こえる。はっきり書いてしまうと,Razer製ヘッドセットとしてはダメな製品である。
- 関連タイトル:
HyperX
- 関連タイトル:
Klipsch
- 関連タイトル:
Logitech G/Logicool G
- 関連タイトル:
Mad Catz
- 関連タイトル:
Mionix
- 関連タイトル:
Plantronics Gaming
- 関連タイトル:
Razer
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- サウンド
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- Mionix(メーカー)
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- HARDWARE:Razer
- Razer(メーカー)
- HARDWARE
- レビュー
- ライター:榎本 涼
- ハードウェア購入ガイド
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