イベント
グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏がクリエイティブのスタイルを語り,ゲーム業界の新人にメッセージを贈る
須田氏が代表を務めるグラスホッパー・マニファクチュアと言えば,独特の世界設定や作家性を前面に出した作風が国内外にコアなファンを持つデベロッパである。
須田氏はクリエイターの仕事を「0から1を作ること」「発明する」と表現している。その1を10にも100にもしていくのが,ビジネスパーソンの役割であり,それぞれの立場を明確にする。
そのため,クリエイターである須田氏はビジネスやマーケティングを意識するのではなく,世界のムードや日常の生活の中から感じ取ったものをゲームに落とし込むことを考えているという。事実,グラスホッパー設立後は「ヒット作を作る」という意識では,あまり作っていないと語る。
須田氏のクリエイティブを支えるインスピレーション,その根っこには子供の頃や多感な青春期に見たもの,聴いたもの,感じたものがあるという。ただ,それだけでなく,チームのスタッフの発想するもの,外部のアーティストやクリエイターとのコラボレーションを交えながら,1つの作品に落とし込んでいく。その作業こそが「僕が持っているゲーム作りのスキルの中で,一番得意なところ」と述べている。
グラスホッパー・マニファクチュアの独特なアートスタイルにも触れており,ストーリードリブンのゲームの場合,須田氏はシーンやキャラクターのイメージといったアートスタイルを固めながら書くことが多いという。そのため,第三者には「絵が浮かびやすい」と言われることもあり,シナリオとアートスタイルが直結していることが,同社の特徴の1つと表現する。シナリオが仕様やアートのメモの役割を果たすこともあるそうだ。
ゲーム機の未来については,現行機のスタイルではなくなり,プラグインとして首の後ろに挿して,ゲームの世界に入れるようになるという予見を明かした。また,熱烈な映画ファンとして知られる須田氏らしく,デヴィッド・クローネンバーグ監督の「イグジステンズ」を例に挙げて,ゲーム機が生物になって体内に寄生するようになる可能性も否定できないと語っている。
グラスホッパー・マニファクチュアは昨年,NetEase Gamesグループに加わった。グローバル化の成功の要因には,ゲームの舞台や登場人物のバッググラウンド,世界を意識しているかどうか,といったものは関係ないと述べた。「いかに面白いゲーム体験をゲーマーに伝えるか」という一点に,熱量が高いクリエイターが勝っていると分析している。
最後に須田氏は,ゲーム業界の新人へのアドバイスとして「背伸びをしろ」と伝えた。現在はネットワークを介して,いろいろなものに触れられるようになっているが,その反面,自分の好きなもの,興味のあるものだけに囲まれた文化圏を形成できる。
しかし,須田氏は文化圏の外にあるもの,苦手なもの,知らないものにあえて触れて,経験してほしいと語る。これは大きな刺激になり,また自分の可能性や視野を広げてくれると説く。自身の若い頃の経験を交え,そうした刺激が今でも財産であり,ものづくりの原点,立ち帰れる場所だと振り返った。
「グラスホッパー・マニファクチュア」公式サイト
- この記事のURL: