インタビュー
ゲーム開発者への出資を行う「集英社ゲームズ」のキーマンにインタビュー。なぜ集英社がゲーム事業に注力するのか,目指す会社の形などを聞いた
誰もが知るように,集英社は強力なマンガ作品の数々を連載している大手出版社だが,そんな出版社が新たにゲーム事業をスタートする狙いは何なのだろうか。
今回4Gamerは,集英社ゲームズの山本正美氏,鈴木達也氏,林 真理氏,森 通治氏の4名にインタビューを実施し,会社設立の経緯や中心となる事業,今後目指すビジョンを聞いた。
山本正美氏 執行役員/開発プロデュース部統括。過去にソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のジャパンスタジオに所属し,「NewみんなのGOLF」「SOUL SACRIFICE」「Bloodborne」といったゲームの制作ラインを統括 |
鈴木達也氏 開発プロデュース部/プロデューサー。ソニー・コンピュータエンタテインメント(現SIE)で,「やるドラPSP」シリーズ,「無限回廊」シリーズ,「銃声とダイヤモンド」などを手掛ける。2015年には,独立し125を起業,「シンゾウアプリ」「ステオス -雇われ砲撃手の哀愁歌-」といったゲームを発表する |
林 真理氏 開発プロデュース部/プロデューサー兼マーケティング担当。ポリゴンマジックや,エイベックス・ピクチャーズゲームで企画部部長やシニアプロデューサーを経験した後,ディライトワークスでインディーズゲームブランド「ディライトワークス インディーズ」の立ち上げに携わる |
森 通治氏 執行役員/経営管理・マーケティング統括。Apple Japanで,教育機関,エンタープライズ市場向けの事業開発・パートナー事業推進を担当したのち,2015年に集英社へ入社。新規事業開発部でゲーム開発者の支援プロジェクト「集英社ゲームクリエイターズCAMP」の立ち上げる |
編集者と作家に近い関係性でゲームクリエイターを支援する,集英社ゲームズの取り組み
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まず,集英社ゲームズが何をする会社なのか,中心となる事業などについて聞かせてください。
森氏:
近年集英社では,新しい事業へのチャレンジを行い,活動の範囲を広げています。集英社ゲームズは,ゲームパブリッシャとベンチャーキャピタルを足したような事業に取り組んでいます。現在,個人・少人数制作のゲームの開発支援やパブリッシング,ほかのゲーム会社との協業制作などを中心に行っています。
4Gamer:
新たな事業としてゲームを選択したのは何故でしょうか。
森氏:
個人的にゲーム好きなのと,ゲーム事業にチャンスを感じたことが理由です。3年ほど前から集英社の新規事業として取り組みをスタートし,ゲーム開発者の支援プロジェクトである「集英社ゲームクリエイターズCAMP」を行っていました(関連記事)。
4Gamer:
今回,集英社として取り組んでいたゲーム事業を分け,別会社を立ち上げたのはなぜでしょう。
森氏:
ゲーム業界に関わる以上,集英社という出版会社の事業ではなく,“ゲームのプロ組織”としてやっていく必要があると思ったからですね。山本さん,鈴木さん,林さんは業界歴も長いベテランですし,今までも業務委託という形で一緒にお仕事をさせていただいていました。
しかし,業務委託では最終的な決定権が集英社にあり,スムーズに仕事が進めづらい側面がありました。そのため,ゲーム制作のプロがコミットしてもらえる組織として別会社が必要だったんです。
4Gamer:
きちんとゲーム作りに向き合うためには,人材にもゲーム業界のプロが必要で,それを受ける器も必要だったと。
森氏:
集英社本体がゲーム事業を進める形では「結局は出版社の一事業で,その活動も出版ありきなんでしょう?」と見えてしまいますよね。
ゲームパブリッシャとして,「週刊少年ジャンプ」や「Vジャンプ」といった集英社の出版事業やライセンスの事業と切り離した別組織にした方が良いという判断があったんです。
集英社ゲームズが今の事業方針になったきっかけは,2018年から行われている「Google Play インディー ゲーム フェスティバル」に協賛したことでした。
その活動の中で,ゲーム開発者の皆さんを支援するという事業への関心が高まり,こちらの方が出版社らしい取り組みだし,何より集英社らしさがあるなと思ったんです。
4Gamer:
“集英社らしさ”というのはどういった部分になるのでしょう。
山本氏:
集英社がマンガ作りで得たメソッドをゲーム開発に生かすというところでしょうか。マンガの創作は,そのメディア特性もあり,短い期間で多彩な才能,作品を確度高く生み出すことに長けていると思います。
ゲーム業界でもオリジナリティのある作品を大きな投資の中から生み出す努力をしていますが,集英社がマンガ作りで得たスピード感と,我々のゲーム業界経験が合わさった時に新しい作り方が生まれるんじゃないかと思っています。
4Gamer:
集英社ゲームズとクリエイターの関係性は,マンガ業界における編集と作家のようなものなのでしょうか。
林氏:
近いと思います。これまでゲーム開発は高い資金力や特殊なツール,技術力が必要だったため,企業しか行えないという時代がありました。しかし,近年はツールの無料化や発達などで,ゲームを少人数で作れるようになり,日本国内でも個人開発や独立系クリエイターが登場してきています。こうした時代背景から,編集と作家的な関係性が必要になってきているのではないかと。
一方で,大企業が作るゲームは大型化が進んでいます。初代PlayStationのあたりではクリエイティビティ溢れた個人制作に近いゲームもあったんですが,今はそういった個人的な思いだけで大企業が簡単にゲームを作れる時代ではなくなってきています。
4Gamer:
別会社にしたことで良くなった点はどこでしょう。
山本氏:
前職と比べてもフットワークが軽くなりましたね。普通のゲーム会社だと,気になるクリエイターさんを見つけても,アプローチするまでに踏まなければならない段取りが多い。
弊社では,森がクリエイターさんを見つけ,次の日には鈴木がTwitterで直接連絡を取り,「一緒にやりましょう!」と決まるスピード感とダイナミズムがあります。新しいものごとが立ち上がる時の熱気がありますよね。
鈴木氏:
私は会社勤めが長く,企画書やら稟議書やらといった手続きに慣れてしまっているところがあったので,今ならSNSで一気にクリエイターさんとの距離を縮めていけるという点に驚きましたね。こういったスピード感が当たり前になるように,自分自身のマインドも変えていかなくてはと改めて思いました。
山本氏:
“稟議の数がクリエイティブの敵”とでも言いましょうか。ものを作る衝動のようなものが,組織上の手続きや慣習といったもので薄められていく,という会社は多いと思います。
4Gamer:
稟議を多くの人が見れば見るほど,企画内容も多くの人がうなずくものにしなくてはいけなくなりそうですね。
山本氏:
はい。そもそも,日本人のクリエイティビティは特殊で,“尖った内容のアイデアを,尖ったまま世に出すことで世界にインパクトを与える”といった部分に強さがあったはずなんです。最近のゲームは必要になる予算が多いので,グローバル展開で元を取らなければならないため,必然的にマーケティングの段階で海外の方の意見もヒアリングし,結果的にアイデアが丸まってしまうようなこともあって,こうした強さは生かせないことが多い。もちろん弊社にもしっかりとした必要な手続きはありますが,その場でさえ,我々ゲーム畑の人間が気づかない編集者視点のフィードバックをもらえるので,コンテンツを良くするという意味でのプロセスの固さがあります。
クリエイターさんたちが,自分の信じる面白さやカッコ良さをむき出しにしたゲームを作る様子は,見ていて本当に眩しいですね。ただ,人は霞を食べて生きていくわけにはいかないですからね。我々が支援をさせていただくことで,仕事の合間を縫って休日だけゲーム開発をしていた方が専業でクリエイティビティを深めていけるような選択肢を提示できるようにしたい。クリエイターさんが企画書や稟議書作りで疲弊するようなことをさせず,ローカライズやゲームデザインのアドバイス,プロモーションなど,マンガでいう編集者的立ち位置でお手伝いさせていただきたいんです。
森氏:
今は編集者と作家さんもTwitterでやり取りする時代ですからね。ゲームでも制作過程をTwitterで公開されている方が多いです。我々からお声がけしても,既にほかのパブリッシャから打診されているといったケースもありますし。
鈴木氏:
個人から発信できるようになったのは本当に大きいですし,1990年代は開発機を入手するために,法人を作って契約しないといけませんでしたから。
森氏:
個人で使える開発環境の普及とTwitterによる個人の情報発信,各プラットフォーマーが個人開発のゲームを販売するようになった現代の状況において,集英社ゲームズの取り組みは時代とマッチしていると思います。
4Gamer:
サポートの中身は,資金面での支援を重要視されているのでしょうか。
森氏:
クリエイターさんの状況に合わせて資金援助をいたします。仕事を辞めて開発に専念されたい方なら当面の生活費を含めた額を支援しますし,足りないスタッフや人材が必要なら,我々が集英社とゲーム業界に持つ人脈から総合支援することもできます。
4Gamer:
プログラマーやサウンドの人が欲しいというニーズにも対応できるということでしょうか。
森氏:
そうですね。そのほかにも,シナリオを書き進める際,途中過程のものを読んで反応を返してくれる“壁打ち”用の編集者をアサインすることもできます。
4Gamer:
クリエイティビティの面から見ると,“壁打ち”を通して作品のアドバイスを受けられるのは,とても大きいと思います。個人制作だと,そもそもゲームを完成させることがとても難しいというのは,よく聞きます。理由は,自分の作るものの本質を見失ったり,モチベーションがなくなったり,仕事が忙しかったりとさまざまだそうですが,そこにマンガ制作のノウハウを持つ編集者から助言を受けられるのは大きなメリットになるのではないでしょうか。
森氏:
我々としては,編集者が作家さんのポテンシャルを引き出したという考え方をしています。作家さんが“壁打ち”をする際,編集者に話すためにアイデアをまとめることが役立つんです。
1人でやっていると,迷うんですよね。編集者との会話の中から新しいアイデアが出てくることもありますし。集英社ゲームズでもクリエイターさんとは週1回ミーティングをしていますし,チャットは24時間つながるようにしています。真夜中にアイデアを思いついたクリエイターさんから連絡があり,そこから進んでいくこともありますね。
山本氏:
「週刊少年ジャンプ」のように毎週の締め切りを守りつつ,尖った面白いものを提供するというところは学んでいきたいですね。自分が作りたいものを作り,常にバッターボックスに立ち続ける姿勢がある方にはいい環境だと思いますよ。
4Gamer:
現在「集英社ゲームクリエイターズCAMP」の公式サイトでは,集英社ゲームズの支援している作品が多く掲載されていますが,これまでの作品の中で,特に印象的なものはありましたか。
山本氏:
たくさんありますが,象徴的なのは「浮世/Ukiyo」ですね。コンテンツアピールとしてまず必要なのは,企画の面白さとやはりルックのインパクトだと考えていますが,「浮世/Ukiyo」は絵の凄さでまず“一本”を取れている作品でした。量産は効かないスタイルで作っているだけに絵の隅々にクリエイターの感情がみっちりと詰まっている,普通のスタジオでは絶対にやらないような作り方なんです。
森氏:
「浮世/Ukiyo」に関しては,我々からプロデューサーに加えて,4〜5人ほどいろいろな職種のゲーム作りのプロ人材を支援して,現在は10人超のチームになっています。クリエイターの方も「集英社チームの存在がなければ完成してなかったかも」とおっしゃっていただいいてて,我々独自のノウハウが生かせた事例じゃないかと思います。
失敗しても,何かを失うわけではない。求む,ガツガツとした才能
4Gamer:
これはゲームに限らないんですが,作品を完成させて他者から評価をもらうことに臆病になってしまう人もいると思います。いわば“バッターボックスに立つ”ことが怖いわけですが,こういう人に対して何かアドバイスはありますか。
山本氏:
個人でゲームを作れるような恵まれた時代ですから,そもそもバッターボックスに立つこと自体を恐れるというのがもったいないですね。とても損をしていると思うので,恐れずにガンガン立ってほしいですし,今は若い方ほど,ガツガツとした姿勢でバッターボックスに立ちます。例えば,高校3年生以下を対象とした「Unityユースクリエイターカップ」の審査員を務めるようになって8年ほど経ちますが,最年少の受賞者は10歳でした。
4Gamer:
10歳のゲームクリエイターですか。それは凄いですね。どういった作品を手掛けているのでしょう。
山本氏:
応募作として多いのは,まずは「好きなゲームをお手本として,自分でも作ってみた」という習作ですね。こういう作品は割と時代を反映していて,一時期は“舞台は学校で,ゾンビが襲いかかってくる”系のゲームが凄く多かったんです(笑)。
そうしたクリエイターさんたちも,いくつか作っていくうちにこなれてきて,そのときどきのトレンドに影響されつつもひとひねり入ってきて,設定的な意味でも完成度が高くなってくるんです。
鈴木氏:
個人的には,応募者が凄いゲームを作っているのを見ると,クリエイターとしては「やられた!」と思いますし,悔しくて悔しくて仕方ないんですよね(笑)。それくらい応募者のレベルが高いんです。
今はインターネット環境があれば開発ツールや知識も手に入りますから,まずはチャレンジしてみてほしいですね。
森氏:
失敗したからって何かを失うというわけでもないと思うんですよ。今は若い人も気軽に起業できるけれど,そこで失敗しても人生真っ暗というわけではなく,“起業までできる人”ということで企業が欲しがったりもする。同じ流れがゲーム関連に来るとするなら,個人開発ではうまくいかなかったとしてもその経験が求めらてくると思っています。
集英社ゲームズとのパートナーシップで言うなら,失敗してもお金的な部分は我々がリスクを負いますし,この経験があれば就職もできると信じています。もちろん,うまくいけば次のお仕事をお願いできるでしょうし。
林氏:
クリエイターを評価する基準,クリエイターが自立して挑戦できる環境が海外並みに整うといいんじゃないかとは思いますね。銀行にしても,海外なら映画監督やゲームクリエイターにお金を貸すための評価基準が明確に存在しています。日本でもこうした部分が法を含めて整備されていけば,これまでだと会社組織の中でしか得られなかった経験を独自起業で得ていく,強い人材が増えるんじゃないでしょうか。
森氏:
一緒にやってくださっている方の中でも,会社勤めからの独立を決められる方が結構おられますね。僕らとしても嬉しいですし,「作品を絶対にヒットさせなきゃ!」というプレッシャーにもなります。うまくいけばモデルケースができて,ほかの人も続きやすくなるでしょう。今までも超有名クリエイターの独立はありましたが,これからはもう少し幅広いクリエイターが独立しやすくなるかもしれません。
林氏:
日本には「ペルソナ」の橋野 桂さんや「メタルギア」の小島秀夫監督のように,ゲーム会社の中で苦労してオリジナリティや作家性を出されている方が沢山おられました。独立系開発会社から同じような作家性を志向する方々ともに,日本から世界へ挑戦できればと考えています。
山本氏:
マンガ家を目指す方が作品を編集部に持ち込み,編集者からアドバイスを受けて手直ししていく。マンガでは当たり前ですが,ゲームにはこういった,個人がパブリッシャに対してアプローチするような仕組みはほとんどありませんでした。だから,これを我々がやれるようになればすごいことなんじゃないかと思います。
4Gamer:
「こんなクリエイターからのコンタクトが欲しい」というような希望はありますか?
森氏:
集英社ゲームクリエイターズCAMPでも引き続きコンテストをやっていきますし,力試しということで挑戦していただきたいですね。また,まとまった企画や尖ったアイデアでバッターボックスに立ちたいという方にも,いつでも来ていただきたいです。すぐにバッターボックスに立てなかったとしても,そこを目指して二人三脚で頑張っていきたいです。
山本氏:
クリエイターの方が欲しがっておられる,PRとグローバル展開についても体制を整えているところです。本体が集英社なので資金の面も安心してもらえますし,我々がコネクションを持つ人材をご紹介することで広がっていくところはあると思います。なので,世に出したいアイデアの種をお持ちの方はぜひお声がけください。
林氏:
本気で来ていただければ,我々も本気でやります。お互いに切磋琢磨していきたいですね。
森氏:
あと,集英社ゲームズとして一緒に働いていただける方も募集しております。詳細はコーポレートサイトをご確認ください!
4Gamer:
あと気になったのが,集英社ゲームズの支援というのは,個人開発の1本目に限られるものなのでしょうか。2本目を作ろうと思っている方へのサポートを行う展望はあるのでしょうか。
森氏:
単発ではなく長いお付き合いができればと思っています。マンガにおける例になってしまいますが,初連載が厳しい結果になったとしても,2作目以降の連載で才能が花開く例も数多くあることを考えると,集英社ゲームズもそういったスパンでプロジェクトを捉えていけると良いなと。
ただ,集英社ゲームズの支援作品は,どれもまだ1本目を開発している最中ですので,「2本目をどうするかという点は,まだ現実では分かっていないのが正直なところですね。クリエイターさんと我々の双方が望めば……ということになると思いますが,2本目をやるということは,ノウハウというよりは覚悟に近いところがありますので。
林氏:
1つ言えるのは,集英社ゲームズのプロデューサーたちは,“持ち込みをいただいた企画だけのお付き合い”とは考えていないということです。作品はもちろんですが,今後長くお付き合いできそうかなど,そういった部分も含めて支援させていただいているので,2本目を作るという可能性は十分あると思います。
ボードゲーム事業をはじめ,ビデオゲーム以外のさまざまなアプローチも検討中
4Gamer:
集英社ゲームズでは,開発者の支援以外の取り組みのほかにボードゲームを発表されていますよね。
山本氏:
そうですね。ビデオゲーム作りではオリジナルIPを主に創出していきますが,ボードゲームについては,集英社作品にボードゲームとしてのルールを絡めることで,作品世界をより深く味わえるものを作っていきたいと思っています。
森氏:
集英社ゲームズのボードゲーム作りのアプローチは,面白いゲームデザインをまず考えたり,面白いアイデアを持つクリエイターを見つけてきたりして,そのゲームデザインに合う集英社の作品を考え,ゲームと作品の双方の広がりを作っていきたいんです。
久保帯人先生のファンクラブ限定で先行発売された「BLEACH 巻頭歌骨牌」はいい例です。「BLEACH」のコミックスに掲載されている「巻頭詩」を読み札,コミックスの表紙を絵札にしてカルタを楽しむというものですが,数千セットが数時間で売り切れました。このアイデアもマンガ作品の表紙をカルタにしようという担当プロデューサーのアイデアから生まれたもので,せっかく集英社で作るなら,集英社だからこそできるパッケージデザインも考え,“最終巻の横に刺せるボードゲーム”をコンセプトにしました。ジャンプコミックスと大きさを揃えて作っていて,ファングッズとしてもしっかりしたものになっています。
4Gamer:
ボードゲームはゲームシステムやメカニクスを押し出すものが多く,キャラクターも影絵など抽象的なものだったりすることもあります。そうした意味では,キャラクターや世界観をしっかり組み立てるビデオゲームとは対照的で,クリエイターが考えたゲームシステムに集英社作品のキャラクターを乗せるやり方がマッチするのかもしれませんね。
森氏:
これまでのボードゲームは,ゲームシステムの面白さで買われていくものが多かったと思います。ここに集英社作品を絡めることでファングッズとしても買われるようになり,そこからボードゲームの魅力に触れる方も出てきて,市場も広がっていけばいいなと思っています。集英社としても,これまで手がけてこなかったボードゲームへの取り組みによって,集英社グループとしての選択肢も増えていきます。幅広いクリエイターさんとお付き合いすることで新たなチャンスが生まれるかもしれません。
4Gamer:
最後に今後,集英社ゲームズが目指していく形を聞かせてください。
山本氏:
いろいろ模索している最中ですね。皆が皆なりの集英社ゲームズの形を心の中に持っているとは思うんですが,僕はとにかくオリジナルのゲームを生み出していける組織でありたいと思っています。それを生み出すのが個人の制作者さんなのか,協力していただくゲーム会社さんなのか我々なのか,起点は関係なく,世界の皆さんに”新しい”と感じて遊んでいただけるようなゲームを作っていきたいです。
鈴木氏:
個人的には,2000年代半ばに行われたGDCでの講演が印象に残っています。「1990年代は世界中で流通するゲームの7割が日本製だったが,今は欧米製ゲームに押されている。頑張れ日本!」と,海外の開発者が日本へエールを送る内容でした。日本人はゲームに限らず,浮世絵や能など独自文化を生み出し発信する力を持っているはずです。我々が日本のゲームを世界に発信するお手伝いをすることで,そうした力をもう一度世界に示したいですね。
林氏:
これまでも,スマートフォンが出てきてモバイルゲームが作られるようになり,VRの発達でメタバースが注目されるなど,技術の発達・流行に合わせてゲームを作っていくという流れはありました。
一方の僕らは“クリエイティブ先行”という考え方の組織になっていくんじゃないでしょうか。技術の流行に合わせてゲームを作るのも間違いではないですけれど,単純に話が面白い,絵がカッコイイというような,技術にあまり関係ないところを追求できるようなゲーム会社になるといいんじゃないかなと個人的に思っています。
4Gamer:
クリエイティブを重視した面白さを重視したいと。
森氏:
面白さ優先という話だと,この前の会議が印象的でしたね。クリエイターの方から集まったいろいろな企画を検討していたのですが,中には見る人が見れば「これは通して大丈夫なのか?」と思ってしまうような,ものすごく尖ったものがあるんです。ただ,会議に参加していたメンバーは満場一致で「やった方がいいよ!」と大盛り上がりで(笑)。
鈴木氏:
フロアにただようあのムードも凄かったですよね。
森氏:
「え,誰も止めないんだ」って空気でしたよね。同席していたとあるプロデューサーも「普通の会社だと止めるような企画を止めない,このチームのことが僕は好きだ!」って喜んでいて(笑)。
山本氏:
今は制作統括という立場になって,かつての上司の皆さんが,現場から上がってきた案件を断らなければならない苦悩が分かるようになってきました。だからこそ,判断軸として「置きに行った」とは思われたくないですし,いろんな所に溢れているアイデアを,ビジネスとして考えるのではなく「今までにないものだからこそ作ろうよ!」と言える蛇口になりたいんです。
その「今までにないアイデア」をクリエイターの方と共に形づくり,僕たちならではのサポートなり,工夫をするというフレキシブルな作り方ができる組織ではあるので,これからリリースされるタイトルを皆さんに遊んでいただき,「あそこから出てくるモノはなんか変わっているな」と思ってもらえれば嬉しいですね。
4Gamer:
集英社ゲームズがこれから送り出していく“尖ったゲーム”に期待しています。本日はありがとうございました。
集英社ゲームズ公式サイト
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