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「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」は,現実でもサバイバルを生き抜こうという人にオススメの一冊(ゲーマーのためのブックガイド:第6回)
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印刷2022/09/22 12:00

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「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」は,現実でもサバイバルを生き抜こうという人にオススメの一冊(ゲーマーのためのブックガイド:第6回)

画像集 No.001のサムネイル画像 / 「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」は,現実でもサバイバルを生き抜こうという人にオススメの一冊(ゲーマーのためのブックガイド:第6回)

 「ゲーマーのためのブックガイド」は,ゲーマーが興味を持ちそうな内容の本や,ゲームのモチーフとなっているものの理解につながるような書籍を,ジャンルを問わず幅広く紹介する隔週連載だ。気軽に本を手に取ってもらえるような紹介記事から,とことん深く濃厚に掘り下げるものまで,さまざまなテーマでお届けする。

 第6回で取り上げるのは,「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」。インパクトが先に来る書名だが,ゲームをプレイしていて「自分自身もサバイバル術を身に着けたい!」と考えたことがある人にはオススメの一冊だ。



“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術


 ポストアポカリプスものやサバイバルゲームを好んでプレイしている人の中には,ゲームの体験をとおして「いつ現実でもこういう世界になるか分からない。そんな世界を生き延びるためにも,自分自身でも生存術を身につけなければ」と考えたことがある人も少なくないだろう。

ゲームの表現がリアルになった分,ポストアポカリプスものをプレイして「リアルに世界がこうなったら,自分は生き延びることはできるのか」とシミュレート(もしくは妄想)する人は増えたのではないだろうか(左写真はポストアポカリプスものの“定番”シリーズのナンバリング作品「Fallout 4」,右写真は昨年(2021年)大きな話題となったサバイバルFPS「RUST」)
画像集 No.016のサムネイル画像 / 「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」は,現実でもサバイバルを生き抜こうという人にオススメの一冊(ゲーマーのためのブックガイド:第6回) 画像集 No.017のサムネイル画像 / 「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」は,現実でもサバイバルを生き抜こうという人にオススメの一冊(ゲーマーのためのブックガイド:第6回)

 ある日,“そんな一人”である筆者の目に飛び込んできたのが「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」という,インパクトのある書名の一冊だった。「無人地帯」「遊び方」「人力移動」「野営術」……なんとも無駄のないワードの組み合わせで,その一つひとつにゲーマーとしてけっこう刺さるものがある。
 気になって手に取ってみると,その内容もまさに「こういうサバイバルの入門書を求めていた!」という内容だったのだ。

「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」

画像集 No.002のサムネイル画像 / 「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」は,現実でもサバイバルを生き抜こうという人にオススメの一冊(ゲーマーのためのブックガイド:第6回)
編著:高橋庄太郎、土屋智哉,池田圭,藤原祥弘,小雀陣二,矢島慎一
版元:グラフィック社
発行:2021年5月25日
価格:2000円(税別)
ISBN:9784766134858

購入ページ:
Honya Club.com
e-hon
Amazon.co.jp(単行本)
※Amazonアソシエイト


グラフィック社公式サイトの「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」詳細ページ


 本書は,日本に残されている“誰にも会わない”場所――深山幽谷や無人島,河川の源流域といった,人が容易に立ち入ることのできない場所でのアウトドアに主眼を置いた“実戦ガイド”だ。アウトドア系の編集者やライター,カメラマン,ショップの店主など6名が執筆と撮影を担当しており,すべての内容が著者たちの実体験をベースにしている。

 行き場所の特性を知り,安全対策を練る「計画と準備」,野営地の選び方や飲み水確保の術を知る「生活術」,野生食材の採集や活用方法を解説する「狩猟採集術」など7つの章に分かれており,各章それぞれの執筆をメンバーのうち1人が担当。執筆陣の誰もが仕事として,そして遊びとして長きにわたりアウトドアに関わっている“プロ”だけに,読み物としてまず楽しく,ぐいぐい引き込まれるものがある。

 また,専門的にならず,写真や図版,イラストをたっぷり使って分かりやすく説明してくれているので,これからサバイバルに足を踏み込む人にも安心だ。
 全体的に「すべて現地調達だ!」という話ではなく,持ち込める食材は持ち込み,便利なツールは活用する。安全性や健康面をしっかり考慮したうえで楽しむ。締めるところは締めて,安全を確保できたら堅苦しいこと抜きに遊ぶといった感じで,丁寧に,安全に無人地帯を楽しむ術を教えてくれる。

 自然の雄大さと過酷さ,メンバーがその中で楽しそうに遊ぶさまが写真からもありありと伝わり,見ているだけで楽しくなってくる。文章そのものが面白く情報も興味深い内容ばかりだが,写真1枚からも本書が伝えようとしているものがしっかり感じられるのだ。
 グラフィックス社公式サイトの商品ページ(リンク)にサンプルが掲載されているので,気になる人はこちらをチェックしてみてほしい。

※画像はグラフィックス社公式サイトの商品ページ(リンク)をキャプチャしたもの
画像集 No.018のサムネイル画像 / 「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」は,現実でもサバイバルを生き抜こうという人にオススメの一冊(ゲーマーのためのブックガイド:第6回)

 ゲーマー的な部分でオススメできるのが,慣れ親しんだゲームの攻略に近い感覚で読めるところ。グループ行動の際に必要な食料係や装備係,記録係などの担当を割り振るくだりはRPGのパーティ編成,山や川,海といった場所で異なる必要な装備の解説は,攻略対象のフィールドに向かうときの準備と重なるようにも感じる。もともと分かりやすい文章やビジュアルになっているところに加えて,ゲームのプレイヤーならこのあたりにも読みやすさを感じるはずだ。

筆者は相当感化されていたのか,知らないうちに本書についてかなり熱弁していたらしい。この本を手に入れた直後に迎えた誕生日に,「いま一番ほしいのはこれでしょ?」と,家族からLEATHERMAN製のマルチプライヤー(本書で「現代のキャンプの必携品」と紹介されているツール)をプレゼントされた。それだけ,「この本の話をしたい!」と思えることが盛りだくさんな本であることは伝えておきたい
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 本書でとくに印象に残り,しっかり伝えたいと感じたのが,本書の“リーダー”でもある山岳/アウトドアライターの高橋庄太郎さんによるエピローグ「日本のフィールドで遊ぶ前に」だ。
 無人地帯と言えども,そこはどこかの行政区に属しており,たとえ居住地域が遠く離れていても,そこには“地元の人”が存在する。本書の締めとして,そういった場所で“遊ぶ”ことについて,この本の制作に関わったメンバーが伝えたいことが3つまとめられているのだが,それが「自然と“ヒトの社会”について,こういう考えを持っている人たちの書いた本なら信頼できる。ほかの人にオススメできる」とあらためて思えるほど胸を打つ内容なのだ。

 この本で装備や行動を学び,それを実践すれば,来るべきポストアポカリプス時代を生き抜ける……というのは物騒だが,ゲームの体験をとおして実際にアウトドアやサバイバルに興味を持った人にはぜひ手に取ってほしい一冊だ。

物資や食料が尽き,ろ過されていない汚水を啜り,野草をむさぼり,火を通していない生肉を食らって生き長らえる……さまざまなサバイバルゲームをプレイし,そんな経験(もちろん,ゲームの中での話)をしてきた人なら,「現実の自分にもこういうガイドがほしかった」となるはず(写真は恐竜サバイバルアクション「ARK: Survival Evolved」)
画像集 No.014のサムネイル画像 / 「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」は,現実でもサバイバルを生き抜こうという人にオススメの一冊(ゲーマーのためのブックガイド:第6回) 画像集 No.015のサムネイル画像 / 「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」は,現実でもサバイバルを生き抜こうという人にオススメの一冊(ゲーマーのためのブックガイド:第6回)
本書を読んで無性にプレイしたくなったのが「DEATH STRANDING」。本の内容はもちろん,書名にある“移動”というワードや,大きなバックパックを背負って道なき道を歩く写真の影響か,同作品の“無人地帯”(本書が指すものとはだいぶ異なる世界だが)をまた旅したくなった。……自分自身のサバイバルを始めなければならないのだけど
画像集 No.013のサムネイル画像 / 「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」は,現実でもサバイバルを生き抜こうという人にオススメの一冊(ゲーマーのためのブックガイド:第6回) 画像集 No.012のサムネイル画像 / 「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」は,現実でもサバイバルを生き抜こうという人にオススメの一冊(ゲーマーのためのブックガイド:第6回)

グラフィック社公式サイトの「“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術」詳細ページ


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■■Junpoco(4Gamer編集部)■■
本企画の担当で,書店の文芸書担当,DTPデザイン,雑誌編集と,かつて本を売る人&作る人の両方をしていたことがある4Gamerスタッフ。本もゲームも,気になったものはジャンルや主義主張問わず,流行のものからニッチなものまでわりと何でも手を出すが,自身の“attitude(姿勢)”にあった作品へのこだわりもけっこう強かったりもする。
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